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重篤な低血糖は、血管イベントと死亡のリスクを増加させる(ADVANCE試験より)

Severe hypoglycemia and risks of vascular events and death.

Zoungas S, Patel A, Chalmers J, de Galan BE, Li Q, Billot L, Woodward M, Ninomiya T, Neal B, MacMahon S, Grobbee DE, Kengne AP, Marre M, Heller S; ADVANCE Collaborative Group.

N Engl J Med. 2010 Oct 7;363(15):1410-8.

【まとめ】
ADVANCE試験は、厳格な強化血糖コントロールが血管イベントや死亡のリスクを低下させるか検討するために行われたが、結果としてそれらのリスク低下は認められなかった。その原因として、強化コントロール群は標準コントロール群に比べ体重が増加していたこと、低血糖が多かったことが考えられている。本研究では、ADVANCE試験において低血糖が血管イベントや死亡のリスクに関係しているかをCox比例ハザードモデルを用いて検討した。

【論文内容】
近年、低血糖が急性冠症候群や心筋梗塞の死亡リスクに関係するという報告がある。最近終了したADVANCE試験では、強化血糖コントロールが心血管イベントや死亡のリスク低下につながらなかったが、その理由として強化血糖コントロール群で重篤な低血糖がこれらのリスクを上昇させた可能性がある。そこで、ADVANCE試験の11,140名の2型糖尿病患者において、重篤な低血糖と血管イベントおよび死亡のリスクの関連を検討した。

なお、本研究では血糖50mg/dlおよび典型的な症状を伴うものを低血糖、中枢神経症状により自分では対処できなかったものを重篤な低血糖とした。

5年間の追跡期間中、231例(2.1%)に重篤な低血糖が発生、強化コントロール群で150名(2.7%)、標準コントロール群で81名(1.5%)であった。

追跡期間中、重篤な低血糖は主要大血管イベント(ハザード比 2.88)、主要細小血管イベント(1.81)、心血管系の原因による死亡(2.68)、全死因死亡(2.69)のリスクの有意な上昇に関連していた。呼吸器、消化器、皮膚疾患、癌のリスクも低血糖によりリスクが増大した。

低血糖が心血管疾患を起こす原因として考えられるのは、交感神経・副腎系の異常な活性化、異常な心再分極、血栓形成の増加、炎症・血管収縮の亢進などである。

【結論】
ADVANCE試験では、重篤な低血糖が、大血管イベント、細小血管イベント、死亡、血管以外のイベント(呼吸器・消化器・皮膚疾患・癌)の増加に明らかに関連していた。
by md345797 | 2010-11-12 00:58 | 大規模臨床試験