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絶食と運動に対する骨格筋の代謝適応におけるAMPKとSIRT1の相互依存性

Interdependence of AMPK and SIRT1 for metabolic adaptation to fasting and exercise in skeletal muscle.

Cantó C, Jiang LQ, Deshmukh AS, Mataki C, Coste A, Lagouge M, Zierath JR, Auwerx J.

Cell Metab. 2010 Mar 3;11(3):213-9.

【まとめ】
骨格筋は、絶食時または運動時に、主要なエネルギー源をグルコースから脂質へと効率的に転換する。骨格筋でこのセンサーとなるのがAMPKであり、AMPK活性化によりNAD+が増加、NAD+依存性脱アセチル化酵素であるSIRT1が活性化される。これにより、PGC-1、FOXO1が脱アセチル化され、結果的にミトコンドリア・脂肪酸酸化遺伝子の転写活性化が起きる。AMPKを欠損(dominant negative adenovirusを筋肉細胞に過剰発現、またはAMPKγ-KOマウスを用いた)させると、この経路が阻害される。AMPKは骨格筋の絶食・運動に対する適応に根本的な役割を担っており、その活性化がSIRT1活性化とその下流シグナル伝達を引き起こす。


【論文内容】
C2C12筋肉細胞を低グルコース培地で48時間培養(nutrient deprivation)すると、AMPKがリン酸化/活性化され、細胞内NAD+の増加に伴って、SIRT1のターゲットであるPGC-1α、FOXO1の脱アセチル化が起こる。

ここで、DN-AMPKαをadenovirusを用いてC2C12細胞に過剰発現させた。その結果、低グルコースにしてもAMPKの活性は低下したままで、PGC-1の脱アセチル化が起きず、PCG-1による転写活性化も抑制される。また、低グルコースによる脂肪酸酸化の増加およびグルコース酸化の増加がDN-AMPKの発現で阻害される(AMPKは、エネルギーストレス下でのグルコースから脂質への酸化基質のシフトに必要)。

これらの結果をin vivoで確認するため、AMPKγ3 subunit-KOマウスを用いた。AMPK-KOマウスを絶食にしても骨格筋細胞内NAD+が増加せず、PGC-1、FOXO1の脱アセチル化が障害されている。そのため、PGC-1のターゲット遺伝子(ミトコンドリア、脂肪酸酸化遺伝子)がWTでは絶食で増加するのに対し、KOでは増加が見られない。

(SIRT1の活性化物質であるレスベラトロール(Rsv)投与でWTのPGC-1脱アセチル化が起きるが、KOの脱アセチル化は起きなかった。Rsvの作用は、直接SIRT1を活性化するのではなく、AMPKを介すると考えられる。)

最後にマウスを運動(2.5h swimming)させた効果を検討した。WTのマウスを運動させると、筋肉中のNAD+が増加し、PGC-1は脱アセチル化するが、AMPK-KOマウスではNAD+が増加せず、PGC-1の脱アセチル化も少ない。

【結論】
絶食(nutrient deprivation)と運動は、AMPKを活性化し、筋肉中のNAD+を増加させる。これがSIRT1を活性化し、PGC-1・FOXO1を脱アセチル化する。これにより、脂肪酸酸化遺伝子の転写活性化が起こる。このメカニズムが絶食・運動時のエネルギー利用のシフト(グルコース利用から脂肪の利用へ)に役立っている。
by md345797 | 2010-11-17 00:24 | エネルギー代謝