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時計因子CLOCKとBMAL1の欠損は、インスリン分泌低下と糖尿病を引き起こす

Disruption of the clock components CLOCK and BMAL1 leads to hypoinsulinaemia and diabetes.

Marcheva B, Ramsey KM, Buhr ED, Kobayashi Y, Su H, Ko CH, Ivanova G, Omura C, Mo S, Vitaterna MH, Lopez JP, Philipson LH, Bradfield CA, Crosby SD, JeBailey L, Wang X, Takahashi JS, Bass J.

Nature. 2010 Jul 29;466(7306):627-31.

【まとめ】
2型糖尿病患者ではインスリン分泌の周期的な調節が障害されていることが知られている(Polonsky, NEJM, 1998)。今回、膵島は独自の概日時計を持っており、転写因子CLOCK とBMAL1の周期的変動が存在することが示された。概日リズムの変異マウス(Clock, BMAL1 mutant マウス)では膵島のサイズ、増殖能が低下し、インスリン分泌が低下するため、耐糖能障害を生じる。概日時計遺伝子を膵特異的にノックアウトすると、β細胞のグルコース応答性インスリン分泌が低下して糖尿病になる。

【論文内容】
膵島での概日リズムの存在を示すため、PER2-LUC (period2-luciferase) knock-inマウスの膵島を単離した。その結果、各膵島で23.58±0.3hの時間間隔で light emissionが見られた。同じくperiod2-luciferaseをknock-inしたClock変異マウスでは、概日リズムが消失していた。

Clock変異マウスを用いて、膵島での時計遺伝子の障害がグルコース代謝に与える影響を検討した。その結果、変異マウスでは明時も暗時もインスリン分泌が低下しており、血糖が増加していた。GTTでのインスリン分泌、血糖上昇も認められた。

さらにClock変異マウスでは、単離した膵島のglucose-induced insulin secretion(GSIS)および他のinsulin secretagogues (KCl、exendin4、forscolin、8-blomo cAMP)によるインスリン分泌が約50%に低下していた。単離膵島の形態は正常だが、サイズはWTマウスに比較して小さかった。サイズが小さいのは膵島の増殖が少ないため(増殖マーカーKi67染色による)である。Bmal1-/-マウスでもGSISおよび膵島サイズは低下しており、概日遺伝子は膵島機能に重要な役割を果たしていることが分かる。

次に膵特異的Bmal1KOマウスを作製(PDX1 promotorでCreを発現)、このマウスは、膵ではBMAL1が欠損しているが、脳の視交叉上核(SCN)にはBMAL1が正常に発現している。そのため概日活動や摂食リズムは正常である。このマウスでは、GTTでの血糖値上昇、インスリン値の低下が見られ、単離膵島のグルコースおよび他のinsulin secretagoguesによるインスリン分泌が低下していた。

【結論】
膵島は独自の概日時計を持っており、この過程にはCLOCKとBMAL1が重要な役割を果たしている。これらの遺伝子に変異または欠損があると、インスリン分泌が低下し糖尿病となってしまう。本研究により、膵β細胞の局所組織での時計は、概日リズムと代謝シグナルを統合していることが示唆される。
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by md345797 | 2010-11-19 00:19 | インスリン分泌