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原発性アルドステロン症 Update

Update in primary aldosteronism.

Stowasser M.

J Clin Endocrinol Metab. 2009 Oct;94(10):3623-30.


Primary aldosteronism (PA)は以前考えられていたより頻度が高く、高血圧の5-10%を占める。また、アルドステロン過剰は高血圧以外にも心血管系に悪影響を及ぼす。

【PAによる悪影響―Beyond Hypertension】
アルドステロン過剰は、血圧に対する影響とは独立に心血管系および腎に障害(炎症、リモデリング、線維化)をもたらす。PA患者は本態性高血圧患者と比較して、頚動脈中膜肥厚の増加や血管内皮機能の低下、左室壁肥厚と拡張機能の低下が見られる。正常血圧のFamilial hyperaldosteronism type I(FH-I)の患者では、対照者と比較して血中IL-6が増加している。腎機能に関しても同様で、PA患者では本態性高血圧患者と比較して尿中アルブミン排泄が多く、アルドステロンによるsodium retentionとvolume expansionに起因するglomerular hyperfiltrationに伴うものと考えられる。PAとメタボリックシンドロームの関連も検討されており、本態性高血圧患者と比較してPA患者ではメタボリックシンドロームの頻度が多いこと、インスリン抵抗性が強いこと(これにはアルドステロン過剰の直接の影響だけでなく、低カリウム血症の影響も関与しているかもしれない)などが報告されている。したがってPAの管理は単に血圧のコントロールだけでなく、アルドステロン過剰そのものに対する治療が必要である。

【PAの治療―Beyond BP Lowering】
片側PAに対する片側副腎摘除術、または両側・片側PA に対するスピロノラクトン、アミロライドによる薬物治療はよく知られている。アルドステロン過剰そのものに対する最近の治療としては、PAに対するエプレレノン(Eplerenone) がselective mineralocoricoid antagonistとして用いられている。これはスピロノラクトンと違い、アルドステロン選択性が高く、性ホルモン関連の副作用(女性化乳房など)がない。アルドステロン合成酵素阻害薬(現在第2相臨床試験中)もPA に対する新しい治療として期待されている。

【PAの診断】
PAの診断には、ARR(Aldosterone-to-Renin Ratio)が重要であるが、採血時の姿勢、時刻、食塩摂取、服薬など注意すべき因子がある。薬剤では偽陽性に出るものとして、βブロッカー、中枢性α2アゴニスト、NSAIDsがあり、偽陰性に出るものとしてACE阻害薬、ARB、ジヒドロピリジン型Caチャネルブロッカーがある。
by md345797 | 2010-11-26 00:02 | 症例検討/臨床総説