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TBP-2欠損は肥満に影響せず、インスリン感受性・分泌を改善する

Disruption of TBP-2 ameliorates insulin sensitivity and secretion without affecting obesity.

Yoshihara E, Fujimoto S, Inagaki N, Okawa K, Masaki S, Yodoi J, Masutani H.

Nature Communications. Vol 1, Article No. 127, 2010 Nov 23.

【まとめ】
核内蛋白TBP-2 (thioredoxin binding protein-2)は、肥満モデルマウスであるob/obマウスの筋肉・膵島で発現が増加している。TBP-2欠損ob/obマウスを作製したところ、ob/obマウスと比較して過食・肥満は改善されなかったが、インスリン感受性、インスリン分泌は改善した。インスリン感受性改善に伴い、筋肉のIRS-1/Akt経路が活性化され、インスリン分泌改善に伴い、膵島のミトコンドリアATP産生が増加(ミトコンドリアのUCP-2の転写が低下)していた。

【論文内容】
TBP-2は、thioredoxinのnegative regulatorであり、核内に局在している。また、TBP-2はα-arrestinファミリーに属する蛋白であり、細胞死の調節、細胞増殖、分化、免疫応答、エネルギー代謝などさまざまな生物学的機能を果たしている。本グループおよび他のグループは、TBP-2欠損または変異マウスではインスリン感受性、インスリン分泌が亢進することを明らかにしている。

ob/obマウスでは筋肉、脂肪組織、膵島でTBP-2の発現が増加していたため、TBP-2欠損ob/obマウスを作製し、TBP-2の役割を検討した。TBP-2欠損ob/obマウスは、ob/obマウスに比べ体重が増加(オス)か同じ(メス)で、摂食量も同じだが、血糖はWTと同じくらい低く、GTT・ITTで耐糖能、インスリン感受性も亢進していた。またこのマウスは、脂肪量および大型脂肪細胞が多く、血中adiponectin量は有意に低下していた。また、ob/obマウスの筋肉におけるIRS-1の発現低下、Aktのリン酸化低下は、TBP-2欠損によって回復した。

TBP-2欠損ob/obマウスは、ob/obマウスに比べ、GTTでのインスリン分泌が亢進している(膵島のmassは差がない)。これはTBP-2欠損により、glucose-stimulated insulin secretion (GSIS)が亢進することを示している。ob/obマウスにおける膵島のミトコンドリアの形態異常および機能低下(ATP産生低下)が、TBP-2欠損マウスでは改善している。INS-1細胞のTBP-2をsiRNAを用いてknockdownしてもミトコンドリアATP産生とGSISが増加することから、TBP-2はGSISを抑制する作用があると言える。

UCP-2はミトコンドリアのATP産生の主要な調節因子であり、UCP-2欠損はob/obマウスのGSISを回復させることが報告されている。TBP-2を過剰発現させたINS-1細胞ではUCP-2の発現が増加しており、TBP-2はPGC-1α依存性のpathwayによりUCP-2の転写活性を亢進させることが示された。

さらにTBP-2を結合させたビーズを用いて、結合蛋白としてMybbp1aを同定した。この蛋白は、PGC-1の転写を阻害することが知られており、PGC-1依存性UCP-2転写活性も抑制するが、TBP-2との結合によりその阻害がブロックされ、UCP-2転写が活性化されることが示された。

【結論】
TBP-2は、糖尿病においてインスリン感受性とインスリン分泌(GSIS)を調節する因子であり、その阻害または発現低下は2型糖尿病の新しい治療のアプローチとして有望である。
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by md345797 | 2010-11-28 00:06 | インスリン分泌