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膵β細胞のClass IA PI 3-キナーゼはインスリン分泌を調節している

Class IA Phosphatidylinositol 3-Kinase in Pancreatic β Cells Controls Insulin Secretion by Multiple Mechanisms.

Kaneko K, Ueki K, Takahashi N, Hashimoto S, Okamoto M, Awazawa M, Okazaki Y, Ohsugi M, Inabe K, Umehara T, Yoshida M,Kakei M, Kitamura T, Luo J, Kulkarni RN, Kahn CR, Kasai H, Cantley LC, Kadowaki T.

Cell Metab. 2010 Dec 1;12(6):619-32.

【まとめ】
膵β細胞でのClass IA PI 3-キナーゼ(PI3K)の役割を検討するため、β細胞でPI3Kを欠損(調節サブユニットの遺伝子pik3r1を膵特異的に欠損、かつpik3r2を全身で欠損)させたβDKOマウスを作製した。このマウスは、インスリン分泌低下に伴う耐糖能異常をきたし、そのメカニズムとしてインスリン顆粒のexocytotic machinery (SNARE complex)の発現低下とCa2+ influxの細胞間同期(synchronization) の消失があることが明らかになった。したがって、β細胞におけるPI3Kシグナルはインスリン分泌調節に重要であり、2型糖尿病の治療ターゲットになりうる。

【論文内容】
PI3Kの調節サブユニットは、70%以上がp85α、20%がp85βであり、それぞれpik3r1、pik3r2によってエンコードされている。膵β細胞でのPI3Kシグナルの役割を検討するため、β細胞特異的pik3r1KOマウス、全身のpik3r2KOマウス、それらをかけ合わせてPI3Kシグナルのほとんどをshut downしたβDKOマウスを作製した。
βpik3r1KOマウスおよびβDKOマウスは体重、血糖、インスリン値はそれぞれのコントロールと差がなかったが、GTTでglucose-stimulated insulin secretion(GSIS)低下による耐糖能異常を認めた。
βDKOマウスはコントロールと比べて、膵島面積が小さくβ細胞のアポトーシスが増加していたが、同時にBrdU-陽性β細胞も増加していた。このマウスの膵島ではPI3Kシグナルが低下しているが、同時にErk1/2リン酸化が増加しており、アポトーシスに代償的に細胞増殖を活性化させていた。

βDKOマウスのインスリン分泌障害のメカニズムを明らかにするため、2光子励起イメージング法を用いてexocytotic eventsを検討した。その結果、このマウスではグルコース刺激に伴うexocytotic eventsの数が減少、Ca2+ influxが低下していた。また、コントロールマウスでは、すべてのβ細胞のCa2+ influxが同時に起こるのに対し、βDKOマウスではそのsynchronicityが消失していた。さらに、インスリン顆粒のexocytosisに重要なSNARE complex蛋白の発現が減少しており、gap-junctionを通じてβ細胞がcell-cell synchronizationを行うためのConnexin36の発現も低下していた。βDKOマウスに見られるこれらの低下は、PI3Kシグナルの下流にあるAktのconstitutive-active formを過剰発現させると正常化し、GSISの回復にもつながった。

【結論】
膵β細胞におけるClass IA PI3Kは、膵β細胞のインスリン分泌に重要な役割を担っている。そのメカニズムとしてPI3Kが、細胞内Ca2+ influxのcell-cell synchronizationを維持していること、exocytosisに重要なSNARE complex蛋白の発現に関わっていること、β細胞の抗アポトーシス効果も担っていることなどが明らかになった。PI3K pathwayの活性化は末梢組織のみならず膵β細胞でも、2型糖尿病治療戦略として重要である。
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by md345797 | 2010-12-02 20:21 | インスリン分泌