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Inflammasomeを介したcaspase-1活性化は、脂肪細胞の分化とインスリン感受性を調節する

The inflammasome-mediated caspase-1 activation controls adipocyte differentiation and insulin sensitivity.

Stienstra R, Joosten LA, Koenen T, van Tits B, van Diepen JA, van den Berg SA, Rensen PC, Voshol PJ, Fantuzzi G, Hijmans A, Kersten S, Müller M, van den Berg WB, van Rooijen N, Wabitsch M, Kullberg BJ, van der Meer JW, Kanneganti T, Tack CJ, Netea MG.

Cell Metab. 2010 Dec 1;12(6):593-605.


【まとめ】
肥満に伴う脂肪組織での炎症は、IL-1β・IL-18を介して、インスリン感受性を低下させる。IL-1β・IL-18は、inflammatomeと呼ばれる蛋白複合体によって調節されるcaspase-1によってcleaveされることにより活性化する。この研究では、inflammasome/caspase-1が主にIL-1βを介して、脂肪細胞分化とインスリン感受性を調節することを示す。肥満モデルマウスでは脂肪細胞でのcaspase-1およびIL-1β活性が増加しており、逆にcaspase-1欠損マウスではインスリン感受性が亢進していた。 In vivoで肥満マウスにcaspase-1阻害薬を投与するとインスリン感受性が増加した。Caspase-1欠損マウスでは、脂肪酸化率が上昇していた。
以上より、inflammasomeは脂肪細胞機能の重要な調節因子であり、caspase-1の阻害が肥満とインスリン抵抗性の新たな治療ターゲットであることが示された。

【論文内容】
Inflammasomeによるcaspase-1の活性化が、脂肪細胞におけるIL-1β、IL-18の活性化を介して、インスリン抵抗性を調節していることを検討した。培養脂肪細胞の分化に伴ってcaspase-1の発現と活性が増加していた。ここでcaspase-1阻害薬(Pralnacasan)を用いて活性を抑制したところ、分化マーカーのPPARγ・adiponectin・Glut4発現が増加、IL-1βの分泌は低下した。Recombinant IL-1βを添加すると脂肪細胞の分化は抑制されたが、IL-18では変化がなかった。

高脂肪食負荷マウスおよびdb/db、ob/obマウスの脂肪組織で、肥満に伴いcaspase-1の活性が増加し、それに伴いIL-1βとIL-18の量も増加した。また、caspase-1欠損マウスでは脂肪細胞の分化が亢進し、adiponectinの発現も増加、インスリンによるAktのリン酸化も亢進していた。なお、NLRP3はinflammasomeの重要な構成因子であり、NLRP3欠損マウスの脂肪組織でも同様の現象が起きた。

Caspase-1欠損マウスでは、脂肪細胞の分化が促進され(小型脂肪細胞化)、脂肪量も低下していた。このマウスおよびIL-1β欠損、NLRP3欠損マウスではインスリン感受性が亢進していた。さらにob/obマウスにcaspase-1阻害薬を経口投与すると、インスリン感受性の亢進、体重減少(摂食減少は伴わない)、脂肪組織中のIL-1βの減少が認められた。また、caspase-1欠損マウスでは脂肪酸化率が増加していた。

【結論】
肥満により、脂肪細胞においてinflammasomeのNLRP3が活性化され、これによりcaspase-1の活性化が起こる。Caspase-1は、IL-1βをcleaveすることにより活性型とし、活性型IL-1βがインスリン抵抗性を惹き起こす。これらの経路の阻害により、脂肪細胞の分化およびインスリン感受性亢進が起き、脂肪酸化が促進される。
by md345797 | 2011-01-14 18:08 | インスリン抵抗性