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脂肪酸によるNLRP3-ASC inflammasomeの活性化はインスリンシグナル伝達を障害する

Fatty acid-induced NLRP3-ASC inflammasome activation interferes with insulin signaling.

Wen H, Gris D, Lei Y, Jha S, Zhang L, Huang MT, Brickey WJ, Ting JP.

Nat Immunol. 2011 May;12(5):408-15. Epub 2011 Apr 10.

【まとめ】
高脂肪食と炎症がインスリン抵抗性を惹起することはよく知られており、IL-1βの関与が示唆されているが、高脂肪食中の脂肪酸がどのようにIL-1βを誘導し、IL-1βがどのようにインスリンシグナル伝達を変えるかは不明である。この研究では、飽和脂肪酸であるパルミチン酸(palmitate)がNLRP3-ASC inflammasomeを活性化し、caspase-1、IL-1β、IL-18の産生につながることを示す。この経路には、AMPKの不活化、ミトコンドリアの活性酸素種(ROS)産生亢進、ULK1オートファジーシグナル伝達の低下が関与している。マクロファージにおけるinflammasomeの活性化はIL-1βを介してインスリンシグナル伝達を障害し、in vivoで耐糖能とインスリン感受性を障害する。

【論文内容】
インスリン抵抗性は低レベルの全身性炎症を伴い、炎症性サイトカインの産生が増加している状態と考えられている。IL-1βは2型糖尿病のインスリン抵抗性への関与が知られており、臨床研究ではIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA=anakynra)やIL-1β抗体が2型糖尿病の治療に有用であることが示されている。また、高脂肪食による血漿中FFAの増加はTLRsを介して、NF-κB依存性にTNFやIL-6を産生につながるが、TLRsに加えてNLR(Nod-like receptor)ファミリーがどのようにFFAへの反応に関わっているのかは分かっていない。そこで、NLR分子であるNLR3(nucleotide-binding domain, leucine-rich–containing family, pyrin domain–containing-3)、アダプター蛋白であるASC(別名PYCARD)、およびprocaspase-1を含む複合体であるinflammasomeがIL-1β分泌にどのように関与し、IL-1βがインスリンシグナル伝達をどう障害するかを検討した。

パルミチン酸はNLRP3-ASC inflammasomeを活性化する
Caspase-1によるIL-1βとIL-18の産生には2つのシグナルが必要で、一つはLPSなどによってprimingされたマクロファージによるpro-IL-1β、pro-IL-18の転写とtranslocationで、もう一つがprocaspase-1をcaspase-1にcleaveするinflammasomeの活性化である。高脂肪食によって増加するパルミチン酸は、血漿中に最も豊富に存在する飽和脂肪酸の一つである。パルミチン酸はLPS刺激後の骨髄由来マクロファージからのIL-1βの産生を促進するが、このパルミチン酸によるIL-1β産生促進は、NLRP3、ASC、caspase-1(Nlrp3-/-、Pycard-/-またはCasp1-/-)欠損のマクロファージでは認められず、NLRP3-ASC inflammasome活性化依存性と考えられる。

Inflammasome活性化はAMPK-ROSシグナル伝達を伴う
活性酸素種(ROS)はinflammasome活性化に必要である。マクロファージをパルミチン酸とLPSで刺激するとROSが産生され、これはROS阻害剤であるAPDCで抑制される。APDCはパルミチン酸によるIL-1β産生やcaspase、IL-1βのcleavageも阻害した。また、AMPKは脂肪酸代謝のメディエーターであり、NADPH oxidaseを阻害することでROSを抑制し、マクロファージで抗炎症作用を持つと考えられている。マクロファージをパルミチン酸とLPSで刺激すると、AMPK-αサブユニットのリン酸化が低下した。AMPK刺激剤AICARを加えると、パルミチン酸とLPSによるROS産生が減少し、IL-1β産生が阻害された。マクロファージにAMPKのconstitutive active α1サブユニットを発現させても、パルミチン酸とLPSによるIL-1β産生が抑制された。

パルミチン酸は、AMPKを介して、オートファジーを抑制しミトコンドリアROS産生を亢進させる
さらに、パルミチン酸とLPSによるAMPK活性低下とその下流にあるinflammasome活性化の経路の詳細、特にオートファジーとミトコンドリアROS産生について検討した。パルミチン酸とLPSによりAMPK-αリン酸化が低下することに伴いオートファジーの低下が起こり、AICARによってオートファゴソームが増加した。AMPKはオートファジー活性化因子であるULK1をリン酸化・活性化するが、パルミチン酸によりULK1の活性化は阻害された。また、パルミチン酸はミトコンドリアROS産生(MitoSOX stainingで判定)を亢進させた。なお、この亢進はAICARにより消失した。以上よりパルミチン酸とLPSは、AMPKを阻害することにより、オートファジーを抑制し、ミトコンドリアROS産生を亢進させることで、inflammasome活性化を起こしていると考えられた。

パルミチン酸によるIL-1β増加はインスリンシグナル伝達をin vivoで阻害する
次に、パルミチン酸→NLRP3-ASC inflammasome→IL-1β産生がどのようにインスリンシグナル伝達を障害するかについて検討した。マウスの培養肝細胞であるFL38B細胞を用い、IL-1βおよびTNFα添加により、インスリンによるAktのSer473リン酸化が低下し、IRS-1のSer307リン酸化が増加することを確認した。FL38B細胞に野生型(WT)マクロファージのmediumを添加するとインスリンによるAktのリン酸化は抑制されたが、NLRP3、ASC、caspase-1欠損マクロファージのmediumを添加しても変化はなかった。WTマクロファージのmediumにIL-1β阻害剤(anakinra)、TNF中和抗体を加えるとAktリン酸化抑制が解除されたため、これらIL-1βとTNFαがインスリンシグナル伝達を障害していると考えられた。

IL-1βとTNFは協調してインスリン抵抗性を惹起する
IL-1βのin vivoでの効果を検討するため、マウスにIL-1βを注入したところITTでのインスリン感受性は低下した。一方、IL-1β欠損マウスに高脂肪食を負荷してもインスリン抵抗性にならなかった。IL-1βをWTマウスに注入するとTNF濃度が上昇したが、Tnfa-/-マウスに注入した場合は部分的にインスリン抵抗性は改善した。すなわちIL-1β単独でもインスリン抵抗性を悪化させることが示された。

NLRP inflammasomeはin vivoでインスリン抵抗性を促進する
最後に、NLRP3-ASC依存的なIL-1β産生がin vivoでインスリン抵抗性を起こすかを検討した。NLRP3欠損またはASC欠損マウス(いずれもinflammasomeの構成因子が欠損している)に高脂肪食を負荷しても、血糖・インスリンは低値であり、耐糖能・インスリン感受性ともに悪化しないことが分かった。ASC欠損マウスとWTマウスの間での骨髄移植実験により、この改善効果は骨髄由来細胞によるものであることが分かり、造血細胞でのinflammasome活性化が関与している(炎症性サイトカインの放出を促し、インスリンシグナル伝達障害を起こしている) と考えられた。

【結論】
高脂肪食によるパルミチン酸が、マクロファージのAMPKを活性化→オートファジー低下とミトコンドリアROS産生の亢進→マクロファージのNLRP3-ASC inflammasomeを活性化→マクロファージからIL-1β産生亢進→インスリンシグナル伝達の障害、インスリン抵抗性亢進、耐糖能の悪化という経路が明らかになった。高脂肪食によるインスリン抵抗性を説明するメカニズムにinflammasomeが関与していることが示された。

【解説記事】
Dampening insulin signaling by an NLRP3 'meta-flammasome'.
Choi AM, Nakahira K.
Nat Immunol. 2011 May;12(5):379-80.

本論文およびVandanmagsar B et al. (Nat Med, 2011)についての解説記事より。

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by md345797 | 2011-04-14 00:10 | インスリン抵抗性