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福島第一原子力発電所の作業員の安全性

Safety of workers at the Fukushima Daiichi nuclear power plant

Tanimoto T, Uchida N, Kodama Y, Teshima T, Taniguchi S

Lancet. April 15, 2011. (Published Online)

【Correspondence内容】
2011年3月11日、マグニチュード9.0の地震とそれに伴う津波が日本の東北部の都市を破壊し、東京電力福島第一原子力発電所の冷却システムが機能しなくなり、現在数百名の作業員が復旧作業を行っている。4月12日には、原子力安全・保安院が危機の深刻度を最悪のレベル7に引き上げ、1986年のチェルノブイリ事故と同等と判断した。

一般的に、急速に分裂する細胞(造血細胞、消化管細胞など)は放射線感受性が高い。5Gy以上の放射線被曝の場合、造血細胞に対しては幹細胞レスキューが必要である。そのため3月25日に、福島の作業員の放射線被曝事故に備えて自家末梢血幹細胞(autologous PBSCs)を採取・貯蔵することを提案した。この自家末梢血幹細胞移植の計画の利点は、①他人からの移植と違ってGVHDがない、②免疫抑制剤が不要、③造血細胞の回復が骨髄細胞より速い、④冷凍保存が容易、⑤安全性が確立している、⑥万一白血病を発症した際の治療にも使える、などである。この方法の限界は、①骨髄障害の障害にしか用いられない(消化管や肺の障害には使えない)、②アフェレーシスの過程などで副作用が生じうる、③医療費のコストが高い(これは製薬会社の寄付で補てん可能であるが)、などである。

3月29日に日本造血細胞移植学会は、この計画に全国107施設が対応可能、とする声明を発表した。一方で、国の原子力安全委員会は、自家末梢血幹細胞採取・貯蔵は不要と発表。理由として作業員の負担が大きい、専門家・国民のコンセンサスが得られていないなどとした。

日本の原子力産業は史上最悪の危機を迎えており、世界中の人がその情報開示の不透明性を懸念している。この事態で最も重視されるのは、作業員の生命と地域社会を守ることである。福島原発を廃炉にするまでには数年を要し、その間の放射線被曝事故のリスクが大きくなると、自家末梢血幹細胞の貯蔵はますます重要になってくる。この計画が正しいかどうかの判断は、通常時の費用対効果のバランスではなく、作業員の観点からなされるべきである。東京の虎の門病院では、要求に応じて自家末梢血幹細胞を採取し貯蔵する用意ができている。
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by md345797 | 2011-04-16 23:08 | その他