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膵β細胞における糖鎖付加と糖輸送の減弱による糖尿病発症への経路

Pathway to diabetes through attenuation of pancreatic beta cell glycosylation and glucose transport

Ohtsubo K, Chen MZ, Olefsky JM, Marth JD

Nat Med. 2011 Aug 14 published on line.

【まとめ】
遊離脂肪酸の濃度が上昇すると、β細胞において転写因子FOXA2およびHNF1Aの核からの除外と発現の低下が起きる。これは、β細胞でグリコシルトランスフェラーゼ4a(GnT-4a)の発現低下をもたらし、高血糖、耐糖能異常、高インスリン血症、脂肪肝、筋肉・脂肪組織でのインスリン作用の低下などをきたす。β細胞特異的に GnT-4a 蛋白発現を増加させると、糖輸送担体の発現および糖輸送が維持され、これらの疾患が起こらなくなる。これらのことはヒト膵島でも起こっており、食事性または肥満に伴う2型糖尿病の発症メカニズムを説明できると考えられる。

【論文内容】
GnT-4a (Mgat4a遺伝子によってエンコードされるグリコシルトランスフェラーゼ)欠損マウスは2型糖尿病のモデル動物として知られている。GnT-4aはβ細胞表面でのGlut2(Slc2a2によってエンコードされる糖輸送担体)発現を促進し、その欠損は高脂肪食負荷による糖尿病発症をもたらす。β細胞のGnT-4aによる糖鎖形成とその結果起こる糖輸送の促進は糖尿病発症に重要な関連があると考えられる。

Mgat4aとSlc2a2の発現調節はFoxa2およびHnf1aによる
WTマウスに高脂肪食を負荷すると、膵島でのMgat4aおよびSlc2a2のRNAが減少する。これらの膵島では転写因子Foxa2およびHnf1aのMgat4a・Slc2a2のプロモーター領域への結合が低下していた。これはFoxa2およびHnf1aの核への局在が妨げられている(nuclear exclusion、細胞質に移行している)ためと発現が低下しているためであることが分かった。

パルミチン酸はβ細胞機能不全を起こす
パルミチン酸によりFoxa2およびHnf1aの核からの除外が促進されるが、アンチオキシダントであるN-アセチルシステインによってこの効果は阻害された。パルミチン酸はMgat4aおよびSlc2a2の発現減少をもたらすが、N-アセチルシステインによって発現は正常化する。これらの効果は非糖尿病ヒトの膵島でも同様であり、パルミチン酸によりGSIS(グルコース応答性インスリン分泌)は阻害された。

2型糖尿病におけるヒト膵島の機能不全
正常のヒトの膵島ではFOXA2およびHNF1Aの核への局在が見られるが、2型糖尿病の膵島ではこれらは核から除外されている。また、2型糖尿病の膵島では、MGAT4AおよびSLC2A2の発現が低下しており、それに伴ってGSISが低下している。さらに、GnT-4aによる糖鎖付加の障害により、糖輸送担体発現が低下していることが示された。

β細胞にGnT-4aを発現させると、糖尿病になりにくい
以上の知見に基づき、β細胞にヒトMGAT4A遺伝子を恒常的に発現させたトランスジェニック(Tg)マウスを作製した。通常、β細胞のGlut2は高脂肪食負荷によって細胞内のエンドソームやリソソームに移行してしまうが、このTgマウスでは高脂肪食負荷してもGlut2が細胞表面に存在した。さらに、高脂肪食負荷Tgマウスでは耐糖能、高インスリン血症、 GSISの正常化が認められた。また、このマウスでは、インスリン抵抗性の改善、インスリンによるAktリン酸化亢進、 IRS-1のSer307のリン酸化低下が認められた。さらに、脂肪肝の減少も見られた。

β細胞にGlut2を発現させると、糖尿病になりにくい
次に、β細胞にヒトSLC2A2遺伝子を恒常的に発現させたTgマウスを作製した。その結果GLUT2糖蛋白は、高脂肪食負荷でも細胞表面に多く存在した。さらに、この Tgマウスでは、高脂肪食負荷をしても血糖・インスリン値が低下、インスリン抵抗性が改善した。
インスリン抵抗性改善については、GnT-4aまたはGlut2のβ細胞での過剰発現により、インスリン分泌が正常化したことに伴って、高インスリン血症に伴うインスリンのdesensitizationが起こらなくなり、インスリン抵抗性が改善したと想定される。

【結論】
高脂血症、肥満に伴う遊離脂肪酸の増加は、Foxa2およびHnf1aの核からの除外によりMgat4aとSlc2a2(GnT-4aとGlut2)の発現低下をもたらす。GnT-4aは、Glut2に糖鎖を付加して膵β細胞表面に安定して発現させる役割があることから、これらの発現低下はβ細胞の糖輸送を低下させ、GSISを減弱し、さらには全身のインスリン抵抗性を惹き起こし、糖尿病発症につながると考えられる。
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by md345797 | 2011-08-15 17:27 | インスリン分泌