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膵島の低酸素化亜集団は内分泌細胞の機能的備蓄として働いている

A low-oxygenated subpopulation of pancreatic islets constitutes a functional reserve of endocrine cells.

Olsson R, Carlsson PO.

Diabetes. 2011 Aug;60(8):2068-75.

【まとめ】
膵島の血液還流は大きく変動し、血糖値によって緊密に調節されている。膵島の酸素化についてはin vitroで詳しく検討されてきたが、in vivoでの知見は少ない。Pimonidazoleは、組織の酸素分圧が10 mmHg未満で細胞内に蓄積するため、免疫染色で低酸素マーカーとして用いられる。正常マウスでは20-25%の膵島が低酸素状態(酸素分圧10 mmHg未満)であるのに対し、膵移植後のマウスでは低酸素化膵島の割合が2倍であり、60%部分膵切除マウスではその割合がほとんどなかった。さらに、よく酸素化された膵島はleucine依存性の蛋白合成(プロインスリン合成を含む)が50%多く、酸素化は代謝に関連していることが明らかになった。以上から、休眠中の低酸素化膵島(dormant low-oxygenated islets)の亜集団(subpopulation)があることが明らかになり、これらは膵内分泌細胞の機能的備蓄(functional reserve)として働いていると考えられた。

【論文内容】
膵島は、膵全体の1-2%の体積しか占めないが、膵全体の5-10%の血流を受けている。表面積の大きい膵島の酸素分圧は40 mmHg程度で、他の腹腔内臓器に比べ大幅に高い。このような高度な血管形成はβ細胞の複製や膵島ホルモンの速い流出に重要な役割を果たしていると考えられる。膵島の血液還流は膵島の大きさによってさまざまであるが、この不均一な酸素化(heterogeneous islet oxygenation)が各々の膵島の機能に異なる影響を与えている。

正常ラットに膵移植、または60%膵部分切除を行い、それぞれ膵島を2倍、または40-50%にしたラットを作製した。これらのラットの膵島を取り出してカバーグラスに乗せ、pimonidazole取り込み(低酸素のマーカー:酸素分圧が10 mmHg未満の臓器に蓄積する)を検討した。

コントロールのラットでは、20-25%の膵島がpimonidazole陽性となる。膵移植をしたラットではpimonidazole陽性細胞の割合が増加しており、膵切除をしたラットでは陽性細胞の割合が大きく低下していた。

β細胞の蛋白合成には不均一性(heterogeneity)があることが知られている。この研究では、pimonidazoleに染色されない膵島の方が、蛋白合成(leucine-dependent protein biosynthesis=プロインスリン生合成を含む)が多いことが示された。また、pimonidazoleに染色されない膵島の方が、血流が多い(=microsphere(血流を測定するために注入した高分子微粒子)の分布数が多い)ことが分かった。

【結論】
本研究では、膵島の酸素化に大きな不均一性があることを初めて示した。さらに、低酸素化の亜集団(20-25%)は、血流が少なく蛋白合成が少ないため機能的に不活性であり、インスリン産生の機能的備蓄として働いていることが示唆された。この休眠中の膵島(dormant islet)の割合は、マウスにおいて膵移植/膵切除によって大きく減少/増加したことから、妊娠やインスリン抵抗性などの場合に同様のことが起こる可能性もあると考えられた。今後、「ヒトの膵島ではどのくらいの割合が不活性なのか」、「肥満や運動時にそれがどのように変わるか」、「活性化・不活性化を決めるメカニズムは」などの問題が想定される。
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by md345797 | 2011-08-17 07:17 | インスリン分泌