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Cdkal1によるtRNA Lysの修飾が欠損すると、マウスで2型糖尿病を発症する

Deficit of tRNALys modification by Cdkal1 causes the development of type 2 diabetes in mice.

Wei FY, Suzuki T, Watanabe S, Kimura S, Kaitsuka T, Fujimura A, Matsui H, Atta M, Michiue H, Fontecave M, Yamagata K, Suzuki T, Tomizawa K.

J Clin Invest. 2011 Aug 15 published on line.

【まとめ】
Cdk5 regulatory associated protein 1-like1(Cdkal1)の遺伝子多型は、さまざまな民族でインスリン分泌低下と2型糖尿病のリスクに関連していることが分かっているが、この蛋白の機能は不明であった。本研究では、Cdkal1が、tRNA Lys(UUU)において2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン(ms2t6A)を合成するメチルチオトランスフェラーゼ(MTT)であることを示し、AAAおよびAAGコドンのLys(リシン)ヘの正確な翻訳に必要であることを示した。膵β細胞で特異的にCdkal1を欠損させたマウス(β cell KOマウス)は膵島の過形成、インスリン分泌の低下、血糖調節の障害を示した。Cdkal1欠損β細胞においては、プロインスリン中のLysコドンの翻訳障害により、グルコース応答性のプロインスリン合成が低下している。また、ERストレス関連遺伝子の発現が亢進しており、異常な構造のERが認められた。さらに、β cell KOマウスは高脂肪食誘導性のERストレスが起こりやすかった。これらの結果から、グルコース応答性のプロインスリン翻訳には、tRNA Lys(UUU)の修飾が必要であり、これがcdkal1のリスク対立遺伝子を持つ患者における糖尿病発症のメカニズムであると考えられた。

【論文内容】
このグループは、Cdkal1がMTTであることを明らかにし、細菌においてtRNAのms2t6Aを合成することを報告してきた。本研究では、マウスのMIN6細胞およびヒトHeLa細胞において、Cdkal1が哺乳類のms2t6A合成を修飾することを示し、この修飾がtRNA Lys(UUU)によるAAAおよびAAG→Lysの正確な翻訳に必要であることを明らかにした。

Cdkal1はERに局在する蛋白であり、Cdk5/p35(=インスリン分泌に関連)とは結合せず機能的な関連はない。Cdkal1の膵β細胞特異的KOマウスを作製(βcell KOマウス)したところ、膵島の形態に変化はないがサイズの増大を認めた。さらにグルコース応答性インスリン分泌の低下および血糖の上昇が認められた。

プロインスリンのプロセッシングにおいて、Lys残基は、インスリンA鎖とC-ペプチドの切断部位に存在するため、特に重要である。そのためLysの翻訳異常により(プロ)インスリンの切断異常が起こり、結果的にインスリン産生の低下、耐糖能障害につながりうる。実際、Cdkal1欠損のβ細胞では、14C-リシンのプロインスリンへの取り込みが低下し、βcell KOマウスでは膵および血漿中のC-ペプチドが減少していた。

Cdkal1欠損のβ細胞では、GLUT2の発現が低下しており細胞質に存在した。これはβ細胞のERストレスが関連していると考え、ERストレス関連遺伝子の発現を検討したところspiced Xbp1発現が亢進しており、異常な構造のERが認められた。

βcell KOマウスに高脂肪食を負荷すると、WTに比べ体重には差がなかったが、血糖高値、インスリンの低値が認められた。ITTではインスリン感受性に差はなかった。Cdkal1の欠損によりβ細胞でのERストレスが亢進し、インスリン分泌が低下し、耐糖能異常をきたすと考えられた。

【結論】
tRNAのアンチコドン周辺の核酸の化学修飾は、翻訳の正確性と効率に重要な役割を果たす。今回、Cdkal1によるtRNA Lys(UUU)の修飾が、インスリン中のLysを正確に翻訳するのに必要であることを示した。この翻訳障害はプロインスリンの折り畳み異常を起こし、β細胞でのERストレスを惹起する。これらの結果により、Cdkal1の異常がインスリン分泌を低下させるメカニズムが明らかになった。
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by md345797 | 2011-08-18 08:05 | インスリン分泌