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低コストで公平に、良好な健康水準を保つ日本の保健システムの将来:国民皆保険を超えて

Future of Japan's system of good health at low cost with equity: beyond universal coverage.

Shibuya K, Hashimoto H, Ikegami N, Nishi A, Tanimoto T, Miyata H, Takemi K, Reich MR.

Lancet. 2011 Aug 30, published online.

【まとめ】
日本が過去50年の間に達成した健康は、低コストで公平な、保健システムを実現してきたことによる。日本の国民皆保険に対する政策は、多くの国がそれぞれの状況において直面している政策論議と同様に発展してきた。しかし、日本の国民皆保険の財政的な持続可能性(financial sustainability)は、人口・経済・政治的な要因から現在危機にさらされている。東日本大震災(Great East Japan Earthquake)による自然災害と原発問題という一連の危機的状況は、日本の社会制度全体をゆるがすとともに、日本の保健システムの構造的な問題を露呈させた。
ここでは、日本が過去50年間にわたって達成した日本の健康の持続可能性と公平性を確保するため、4つの改革案を提案する。① 「人間の安全」というものに価値を置く改革、②中央政府と地方自治体の役割の再編、③保健医療の質を改善すること、④グローバルヘルスに貢献すること、である。今こそ、日本とその保健システムが生まれ変わる時である。

【論文内容】
国民皆保険(universal health insurance coverage)は、全国民が、支払い可能な費用で、主要な保健介入を利用できることを指す。日本は1961年に国民皆保険を実現したが、その後常に修正が加えられてきた。現在、日本の国民皆保険制度は、低い経済成長・不安定な政治状況・大震災による危機によって、その持続可能性が脅かされている。

低コストで公平に、良好な健康水準を維持
低コストで公平に、良好な健康水準を維持している日本の経験は、他国においても重要な教訓が得られるものと考えられている。国民皆保険に関する懸念は、医療費を持続可能な形にコントロールできるか、というところにある。日本の基本政策は、供給の側で支払を厳格に管理する一方で、サービス提供については自由放任(laissez-faire)アプローチを取ってきた。医療の質としては特に慢性疾患において、まだ不十分と思われる。

日本の将来の課題
経済的な持続可能性:高齢化社会(ageing society)の進展と、医療技術の進歩を迎えた現在の日本では、総医療費を抑制しなければならない。しかし、政府には財源を増やす余力がなく、地震・津波・原発の3つの災害が起きた地域の保障のため、政府に対する財政圧力は増している。
政治ガバナンス:原発危機に対処するための、より強力な政治的リーダーシップと意思決定の透明性を高めることが必要である。混乱した政府の対応は、官僚と政治家の間の相互不信によってさらに悪化している。
国民の期待への対応:日本の医療制度は、国民の健康や保健サービスに対する期待に応えきれていない。

未来のための改革
そこで、日本が過去50年間に達成した国民の健康を持続可能にし、公平にするために、次の4つの改革案を提言する。
「人間の安全」(human security)というものに価値を置く改革:日本が直面している危機に向き合うために、「安全」というコンセプトがこれまで以上に重要である。そして、「安全」を公平に与えられることが、日本の保健政策の中核的な価値になる。それにはすべての利害関係者(stakeholder)が新たに関わり、大胆に連携することが重要である。
中央政府と地方自治体の役割の見直し:トップダウンとしては、省庁別の縦割り(ministerial silos)をなくし、国内外の保健医療政策の分析を行う米国のCDCやNIHのような機関を作る必要がある。ボトムアップとしては、保健医療政策の中核組織は中央政府ではなく、地方自治体(都道府県)がなるべきである。震災後の東北地方は、保健システムの改革にとってテストケースの役割を果たす。
保健医療の質を高める:日本では専門医(subspecialty)認定制度はまだ確立しておらず、その一方で残りの医師は家庭医としての正式なトレーニングを受けないまま総合診療を行っている。医師の養成と診療のミスマッチに対応するために、医学教育の改革が必要である。
グローバルヘルスに参画する:日本の、健康保険と長期ケア(介護制度)に関する経験と知見(experience and expertise)は、グローバルヘルスの流れにとって大きな財産となる。

結論
これら4つの改革案はそれぞれ独立したものではなく、同時に実行しなければならないものである。2011年3月の大震災の後では、変革がより早急に行われねばならない。日本では大きな災害の後には、必ず大きな変革が起こってきた。今回、有望な兆しはある。熱心な若者がソーシャルメディアを使い、情報を集め、プロジェクトの支持を取り付け、大規模な寄付運動を開始している。また、この危機によって日本では社会的な団結(social cohesion)の感覚が共有されていることも分かった。日本の安全に対するアプローチは、21世紀の世界の基本となりうるのである。
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by md345797 | 2011-09-26 18:04 | その他