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Chemerinはマウスのβ細胞機能を調節する

Chemerin regulates β-cell function in mice.

Takahashi M, Okimura Y, Iguchi G, Nishizawa H, Yamamoto M, Suda K, Kitazawa R, Fujimoto W, Takahashi K, Zolotaryov FN, Hong KS, Kiyonari H, Abe T, Kaji H, Kitazawa S, Kasuga M, Chihara K, Takahashi Y.

Scientific Reports. Published on Oct 19, 2011.

【まとめ】
Chemerinにはいくつかの機能があることが知られているが、その生理的役割についてはよく分かっていない。本研究では、chemerin欠損マウスが、肝糖産生の増加とインスリン分泌障害により、耐糖能異常をきたすことを明らかにした。Chemerinとその受容体ChemR23はβ細胞に発現している。単離膵島および膵還流実験により、chemerin欠損マウスではグルコース応答性インスリン分泌(GSIS)の障害があることが分かった。Chemerin欠損マウスの膵島およびchemerinをノックダウンしたβ細胞株では、β細胞機能に重要な役割を果たす転写因子であるMafAの発現が低下しており、MafAのrescueによりGSISが回復する。このことから、chemerinはMafA発現を維持することによりβ細胞機能を調節していることが示された。

【論文内容】
Chemerinは、当初、皮膚において、オーファン受容体ChemR23のリガンドとして同定され、樹状細胞やマクロファージの化学走行を促進すると考えられている。また、抗炎症作用を持つとも考えられているが、chemerin/ChemR23の生理的な機能は不明である。最近、chemerinがadipokineであり、脂肪細胞での糖取り込みを促進するなどの報告がある。

Chemerin欠損マウスは糖代謝障害をきたす
本研究ではchemerin欠損マウスを作製した。Chemerin-/-マウスは外見上正常で体重・食事摂取もchemerin +/+と変わらなかった。IPGTTを行ったところ、chemerin-/-マウスは血糖が有意に高値であった。正常血糖高インスリンクランプによると、GIRは正常であったが(インスリン抵抗性は正常)、Rd(筋肉での糖取り込み)は増加、肝糖産生が増加していた。さらに、G6Pase、PEPCK発現も増加していた。

Chemerin欠損マウスは脂肪組織へのマクロファージ浸潤が減少
Chemerin-/-マウスでは、脂肪組織においてマクロファージマーカーであるCD68、F4/80およびMac3-陽性細胞は有意に減少していた。したがって、Chemerin-/-マウスではマクロファージ浸潤は減少していた。

Chemerinとその受容体ChemR23はβ細胞に発現している
組織でのchemerinの発現を検討したところ、chemerinはヒト膵に多く発現していた。ChemR23は主に白色脂肪組織、心臓、精巣に発現していたが、ChemR23は膵島にも発現しており、chemerinとChemR23はインスリンとの免疫染色によりβ細胞に発現していることが分かった。

Chemerin欠損β細胞はGSISが障害されている
Chemerin-/-マウスでは、膵島の形態や面積は正常だが、単離した膵島および膵還流実験においてGSISが障害されていることが示された。また、chemerinとChemR23の発現が確認されているMIN6細胞株でchemerinまたはChemR23をノックダウンするとGSISが障害された。

高脂肪食負荷chemerin-/-マウスとchemerinトランスジェニックマウス
Chemerin-/-マウスに高脂肪食を負荷すると、chemerin +/+に比べ耐糖能が悪化する。次に、肝でchemerinを過剰発現するためSAPプロモーター下でchemerinを発現するトランスジェニックマウスを作製した(chemerinが最も多く発現しているのが肝のため)。このchemerinトランスジェニックマウスは耐糖能が改善し、GSISが亢進していた。

Chemerinはβ細胞でのMafA発現を維持することによりGSISを調節する
Chemerin-/-マウスの単離膵島での遺伝子発現の変化を比較すると、MafAの発現が有意に低下していることが分かった。MIN6細胞でchemerinまたはChemR23をノックダウンすると、MafAの発現が低下した。Chemerin-/-マウスの単離膵島および前述のMIN6細胞でMafA発現をrescueすると、GSISが有意に改善された。

【結論】
Chemerin-/-マウスの膵島ではGSISが障害されており、chemerinは膵島においてMafA発現を維持することによりGSISを正に調節していると考えられた。
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by md345797 | 2011-11-10 07:27 | インスリン分泌