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HDL亜分画の生物学的活性と心血管疾患との関連

Biological activities of HDL subpopulations and their relevance to cardiovascular disease.

Camont L, Chapman MJ, Kontush A.

Trends Mol Med. 2011 Oct;17(10):594-603.

【総説内容】
HDLコレステロールと心血管疾患

HDLコレステロール低下と冠動脈心疾患のリスクの間には強い相関があるが、近年問題になっているのは、HDLの量(血中のHDL値)だけでなく、HDLの質(生物学的機能)である。HDLは、動脈壁のマクロファージなど末梢組織からコレステロールを引き抜き肝に運んで胆汁から排泄する、コレステロール逆転送系(reverse cholesterol transport; RCT)の中心的な役割を果たしている。さらに、HDLはさまざまな生物学的活性(抗酸化作用、抗炎症作用など後述)を持つことが知られるようになっている。

HDLの不均一性(heterogeneity)
HDLは構造、組成、生物学的活性などの点で不均一な粒子である。形態は、円盤状(discoid)と球状(spherical)があり、コレステリルエステルとトリグリセリドを疎水性の核として含むものは球状になる。また、超遠心によってlarge、light、lipid-rich HDL2と、small、dense、protein-rich HDL3に分けられる。アポ蛋白の構成により、apoA-Iのみを含むLpA-I、apoA-IとapoA-IIを含むLpA-I:A-II、およびapoEを含む粒子がある。また、2次元電気泳動によって、10以上のHDL亜集団に分けられる。これは、円盤状の前駆体であるpre-β、αおよびpre-α粒子である。

HDLは最大でも50種の蛋白を含み(例えばsmall、dense、protein-rich HDL3では、LCAT、PON1、PAF-AHなどを含む)それによってもHDLの不均一性が高まる。HDL亜分画では含む脂質の種類も違っている(コレステロール:コレステリルエステル比、SM/PC比や、dense HDL3粒子におけるsphingosine-1-phosphate(S1P)など)。

HDL亜分画の生物学的活性
コレステロール引き抜き作用:コレステロール引き抜きは、一方向性のABCA1、ABCG1および双方向性のSR-BIなどを介して起こる。ABCA1を介するコレステロール引き抜きはapoA-Iを介してだけでなく、small discoid reconstituted HDL(rHDL)粒子によっても起こる。

抗酸化作用:small、dense HDL3にはLDLを酸化的障害から保護する作用がある。HDL3では、前述のLCAT、PON1、PAF-AHなどを含むため、過酸化脂質からの防御作用がある。

抗炎症作用:HDLは、サイトカインによる血管内皮細胞への接着分子の発現を抑制し、単球の血管内皮への結合を阻害する役割がある。

細胞保護作用:HDL3は血管内皮細胞保護作用を持ち、これにはapoA-IおよびS1Pが関与している。

血管拡張作用:HDLはNO放出とPGI2産生によって血管拡張に働く。HDLがSR-BIに結合するとPI3K/Aktシグナル経路が活性化され、eNOSのリン酸化が起こる。また、HDL2およびHDL3は血管内皮細胞からPGI2分泌を促進する。CETP阻害薬のdalcetrapibは、large HDL粒子を増やして、NOを介した血管拡張を起こす。

抗血栓作用:HDLは血小板活性化や凝固因子活性化の抑制を介する抗血栓作用を持つ。Large light HDL2はHDL3よりその作用が強い。

抗感染作用:HDLは、血中のLPS(lipopolysaccharide)に結合し、胆汁から捨てることによって抗感染作用を持つ。

機能欠陥のあるHDL
HDLは進行性に組成や構造が変化し、正常な生物学的機能を失っていく。メタボリックシンドロームでは、HDL3の組成の変化(コレステリルエステルの減少、トリグリセリドの増加、apoA-I、PON1、LCATの減少など)によりコレステロールの容量が減少し、抗酸化・抗炎症作用を失ってしまう。特異的な生物学的機能と機能欠陥のあるHDL亜分画を同定することにより、新たな心血管疾患のバイオマーカーと薬剤ターゲットが得られると思われる。
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by md345797 | 2011-11-13 12:56 | その他