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IL-6は、L細胞およびα細胞からのGLP-1分泌を増加させ、インスリン分泌を促進する

Interleukin-6 enhances insulin secretion by increasing glucagon-like peptide-1 secretion from L cells and alpha cells.

Ellingsgaard H, Hauselmann I, Schuler B, Habib AM, Baggio LL, Meier DT, Eppler E, Bouzakri K, Wueest S, Muller YD, Hansen AM, Reinecke M, Konrad D, Gassmann M, Reimann F, Halban PA, Gromada J, Drucker DJ, Gribble FM, Ehses JA, Donath MY.

Nat Med. 2011 Oct 30;17(11):1481-9.

【まとめ】
運動、肥満、2型糖尿病では、血中IL-6の上昇が起こる。本研究は、IL-6の投与または運動によるIL-6濃度の上昇が、小腸L細胞および膵α細胞からのGLP-1の分泌を刺激し、インスリン分泌と高血糖を改善することを明らかにした。IL-6はプログルカゴンとprohormone convertase(PC)1/3の発現を増加させることにより、α細胞からのGLP-1の産生を増加させる。2型糖尿病のモデルにおいては、IL-6は好影響をもたらし、IL-6の中和は高血糖とGLP-1の低下をきたす。このこれまで知られていなかった内分泌ループにおいて、IL-6はインスリン分泌に重要な役割を果たし、糖尿病治療に役立つ可能性がある。

【論文内容】
脂肪組織から分泌されるサイトカインであるIL-6は、インスリン抵抗性の原因となり、糖代謝を悪化させると考えられている。一方で、運動で筋収縮が起こるとIL-6が増加し、このことがインスリン抵抗性を改善することも知られている。このグループは以前、IL-6の主要なターゲットが膵α細胞であることを見出した。IL-6によってα細胞のアポトーシスが阻害され、高脂肪食負荷時の増殖が促進される。全身のIL-6欠損マウスではα細胞増殖が起こらないが、一方でインスリ分泌が障害され、高血糖をきたした。このように、高脂肪食に伴うβ細胞の代償が起きるにはα細胞の増殖が必要であることが示されている。しかし、このメカニズムは不明であった。

また、GLP-1は小腸L細胞で、前駆体であるプログルカゴンからprohormone convertase(PC)1/3によって切断されて分泌される。α細胞では、プログルカゴンは、PC2によって切断されグルカゴンを生成するが、糖尿病動物ではα細胞でもPC1/3の発現が増加して、GLP-1が産生されることが報告されている。そこで、肥満や運動によるIL-6の増加がβ細胞のインスリン分泌を促進する機構として、IL-6がL細胞およびα細胞からGLP-1を産生し、それによりβ細胞のインスリン分泌が促進される可能性を考えた。

運動はIL-6の増加を介して、GLP-1を増加させる
トレッドミル運動によって血中IL-6とGLP-1が増加した。IL-6欠損マウスや抗IL-6抗体投与マウスでは、このGLP-1増加が起きないことを確認した。すなわち、運動による全身のIL-6の増加によってGLP-1分泌を促進される。

IL-6はGLP-1を介してインスリン分泌を増加させる
マウスにIL-6を注入した場合、しないマウスに比べると、ipGTTを行っても血糖変動は変化ないが、OGTTを行うとインクレチン効果の増強により血糖低下が認められた。GLP-1受容体欠損マウスでは、IL-6による糖代謝改善効果は見られず、IL-6のインスリン分泌亢進作用にはGLP-1が必要であることが示された。また、IL-6濃度を間欠的に増加させると(1日2回投与)、GLP-1が増加しβ細胞機能・糖代謝が改善した。

IL-6は腸管および膵のGLP-1を増加させる
次にIL-6注入により組織のプログルカゴン(Gcg)mRNAとGLP-1量が増加するかを検討した。1日2回IL-6を投与したマウスでは、L細胞の多い回腸および大腸でのGcg mRNA発現とGLP-1量が増加した。さらに膵のGLP-1、グルカゴン、インスリン量もIL-6投与により増加した。回腸、大腸では、PC1/3の発現が増加していた(PC2は変化なし)。DPP4の発現量や活性は変化なかったので、IL-6はGLP-1の産生を促進すると言える(GLP-1の消失を減らすのではない)。

IL-6はL細胞でのGLP-1合成と分泌を増加させる
マウスのL細胞株(GLUTag細胞)に対するIL-6の直接の作用を検討した。GLUTag細胞にはIL-6受容体が発現しており、IL-6刺激によりSTAT3のリン酸化が亢進した。また、IL-6刺激により用量依存的にGLP-1発現とGLP-1のexocytosisが増加した。さらに、慢性的なIL-6刺激ではL細胞のグルコース応答性GLP-1分泌が増加した。

IL-6はヒト膵島α細胞からのGLP-1分泌を増加させる
ヒトの膵島にIL-6を添加し4日間培養した。その結果、IL-6刺激によるGLP-1分泌増加が認められ、その増加はIL-6受容体アンタゴニストであるsuper antagonist 7(Sant7)によって抑制された。ヒト膵島をグルコースを含むmediumで培養したconditioned mediumで、膵島を培養すると、インスリン分泌が促進され、これはGLP‐1アンタゴニスト(exendin(9-39))によって抑制された。したがって、ヒト膵島から分泌されたGLP-1は活性がある(bioactiveである)ことがin vitroで示された。次にFACSで濃縮したヒトα細胞をIL-6と培養したところ、GLP‐1発現が増加した。また、IL-6刺激により、プログルカゴンのプロセッシングがグルカゴンからGLP-1にシフトすることが確認され、これはPC1/3発現の増加によることが示された。

糖尿病モデル動物におけるIL-6の急性上昇の効果
肥満・糖尿病モデル動物では慢性的にIL-6が増加しているが、そこに急性にIL-6を増加させるとそれに反応してβ細胞機能が改善する余地があるかを検討した。高脂肪食負荷マウス、ob/obdb/dbマウスにボーラスでIL-6を投与するとインスリン分泌が上昇し、血糖が低下した。β細胞が破壊されたSTZ投与マウスではこのようなインスリン分泌の増強は起こらなかった。

IL-6は肥満に反応してα細胞をリプログラムする
このグループでは以前、高脂肪食を負荷したマウスではIL-6依存的にα細胞量が増加することを示しているが、この場合にグルカゴンは増加せず、GLP-1が増加(GLP-1:グルカゴン発現比が増加)していた。また、α細胞におけるPC1/3の発現の増加が免疫染色で示された。これらのことはIL-6欠損マウスでは起こらなかった。すなわち、IL-6は高脂肪食に伴う肥満に反応して濃度が増加し、α細胞のPC1/3発現が増加してグルカゴン産生からGLP‐1産生にシフトすると考えられる。

IL-6を抗体で阻害することによってdb/dbマウスの高血糖が悪化する
次に、db/dbマウスで増加した内因性IL-6を中和抗体の投与で抑制したところ、耐糖能の悪化が見られた。IL-6の抑制は、インスリン分泌には影響はないが、グルカゴン濃度が増加、膵GLP-1が低下していた。

【結論】
GLP-1はL細胞で産生され、血流に乗ってβ細胞に作用すると考えられている。本研究では、IL-6が、α細胞でプログルカゴン増加・PC1/3発現増加を介して、GLP-1産生を増加させることを示した。このGLP-1産生が膵島においてparacrine様に作用してβ細胞からのインスリン分泌を増加させると考えられた。
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by md345797 | 2011-11-29 21:19 | インスリン分泌