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Niemann-Pick C1–like 1コレステロール吸収受容体は、新規C型肝炎ウイルス侵入因子である

Identification of the Niemann-Pick C1–like 1 cholesterol absorption receptor as a new hepatitis C virus entry factor.

Sainz Jr B, Barretto N, Martin DN, Hiraga N,Imamura M, Hussain S, MarshKA, Yu X, Chayama K, Alrefai WA, Uprichard SL.

Nat Med. 2012 Jan 8;18(2):281-5.

【まとめ】
この研究では、Niemann-Pick C1-like 1 (NPC1L1) コレステロール取り込み受容体がHCVの侵入因子(entry factor)であり、HCV治療に役立つことを明らかにした。NPC1L1のサイレンシングまたは抗体による阻害がcell culture-derived HCV (HCVcc)の感染の開始を障害することから、NPC1L1発現がHCV感染に必要であると考えられた。また、臨床的に用いられているNPC1L1アゴニストezetimibeが、ウイルス粒子(virion)と細胞膜との融合の前のvirion コレステロール依存性のステップを介して、in vitroでHCV取り込みを強力に阻害することが分かった。さらに、ezetimibeは、すべての主要なHCV genotypeによる感染をin vitroで阻害し、ヒト肝移植をしたマウスへのHCV genotype 1bのin vivoでの感染の成立を遅延させる。このように、このグループは、NPC1L1がHCVの細胞侵入因子であること、さらに抗ウイルス治療の新しいターゲットであることを発見した。

【論文内容】
HCVは、細胞表面の受容体を介するエンドサイトーシスによって細胞内に侵入する。HCVの受容体としては、CD81、 scavenger receptor class B member I (SR-BI)、claudin-1 (CLDN1) 、occludin (OCLN), が知られている。HCV粒子はコレステロールに富み、リポ蛋白(LDLおよびVLDL)にも結合する。HCVの感染がHCV粒子のコレステロールに依存的であることから、コレステロール受容体NPC1L1がHCV侵入に何らかの役割を果たしている可能性が考えられた。

NPC1L1は13の膜貫通ドメインを持つコレステロール受容体であり、腸管細胞の頂部表面およびヒト肝細胞(Huh7細胞を含む)に発現している。 Huh7細胞において、siRNAを用いてNPC1L1の発現を低下させるとHCVcc感染(HCV RNA level)が少なくなった。これはHCV感染に特異的であり、他のウイルス(VSVG-protein pseudotyped particle)では認められない現象であった。さらに、NPC1L1の阻害抗体を細胞とincubateすると、HCVccの感染が減少した。NPC1L1には3つのlarge extracellular loops(LELs)があるが、それぞれの特異的抗体を用いて検討したところ、LEL1の部分の阻害によってHCVの感染が減少した。

Ezetimibeは、NPC1L1のinternalizationの直接の阻害薬であるため、抗HCV効果があると考えられた。そこで、Huh7細胞を用いてHCVcc focus形成を検討したところ、ezetimibeをウイルス接種前または接種中に投与すると、用量依存的にHCVのfocus形成が阻害された。ウイルス接種後に投与しても阻害は認められず、ezetimibeはウイルス侵入阻害剤であることが確認された。次に、ezetimibeはHCVccの結合を阻害するのか、結合後のステップを阻害するのかを検討するため、HCV感染細胞のHCV RNAと蛋白発現を調べた。その結果、HCVはezetimibe投与細胞に結合はするが、結合後のステップが阻害されることが分かった。さらに、HCVccを蛍光で標識しfusion assayを行ったところ、ezetimibeはHCV粒子と宿主細胞のfusionを強力に阻害した。

HCVのNPC1L1を介する細胞侵入はHCV粒子に含まれるコレステロールが関与していることを示すため、コレステロール含有量の異なるHCV粒子を用いて検討を進めた。含有コレステロールが野生型HCVccより94%少ないHCVpp、50%多いHCVcc G451R (viral E2 glycoproteinのG451Rの点変異)で、それぞれsiRNAおよびezetimibeでNPC1L1を阻害した場合を比較した。その結果、コレステロールが少ないHCVppはNPC1L1を阻害しても細胞侵入が阻害されないのに対し、コレステロールが多いHCVcc G451Rは細胞侵入の阻害が増強されることが示された。したがって、NPC1L1によるHCVの侵入は、HCV粒子のコレステロール量に相関することが分かった。

最後に、in vivoでのezetimibeの効果を検討するため、ヒト肝細胞を移植したuPA-SCIDマウスに、HCV genotype 1b陽性血清を接種する前(2週前、1週前、2日前)にezetimibeを経口投与する検討を行った。2週前にezetimibeを投与したマウスでは、HCV感染の成立が遅れ、71%のマウスで感染が阻害された。しかし、1週前のezetimibe投与ではその効果は少なく(43%)、2日前では効果がなかった。このことから、最近報告されているHCV侵入阻害剤erlotinibと同様、ezetimibeもin vivoでのHCV感染を遅延させる効果があることが示された。

【結論】
HCV粒子はコレステロールに富んでおり、コレステロール受容体であるNPC1L1はHCVの細胞侵入因子であることが分かった。NPC1L1はヒトおよび霊長類のみで肝細胞に発現しているため、HCVの指向性決定因子(tropism determinant)として役立つと考えられ、抗ウイルス治療の新しいターゲットであることが示された。
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by md345797 | 2012-01-11 05:34 | その他