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HDAC3によって組織化された概日リズムは、肝の脂質代謝を調節する

A circadian rhythm orchestrated by histone deacetylase 3 controls hepatic lipid metabolism.

Feng D, Liu T, Sun Z, Bugge A, Mullican SE, Alenghat T, Liu XS, Lazar MA.

Science. 2011 Mar 11;331(6022):1315-9.

【まとめ】
概日時計の障害は、肥満や糖尿病などの代謝疾患を悪化させる。この研究では、マウス肝において、histone deacetylase 3 (HDAC3)のゲノムへの結合が概日リズムを示すことを明らかにした。ヒストンのアセチル化はHDAC3の結合と逆相関があり、HDAC3が欠損するとこのリズムは失われる。HDAC3の発現量は一定であるが、肝におけるゲノムへの結合は、概日核内受容体Rev-erbαの発現パターンに対応している。Rev-erbαとHDAC3は、脂質代謝調節遺伝子の近傍で局在が一致し、マウス肝でHDAC3またはRev-erbαを欠損させると、脂肪肝を引き起こす。このように、Rev-erbαによるHDAC3のゲノムへの結合は、ヒストンのアセチル化の概日リズムと正常の肝の脂肪恒常性に必要な遺伝子発現を調節している。

【論文内容】
さまざまな代謝臓器の遺伝子発現プロファイルは、ヒストンアセチル化(epigenomeの構造変化)の調節によると考えられる概日調節を受けている。ヒストンアセチル化は、いくつかのhistone acetyltransferases (HATs) とhistone deacetylases (HDACs)が調節する複雑な過程である。HDAC3は糖代謝の概日リズムを調節している。この研究では、マウス肝におけるHDAC3のゲノムへの結合をHDAC3特異抗体によるクロマチン免疫沈降とmassively parallel DNA sequencing (ChIP-seq)によって検討した。

マウスが不活発な明期のZT10(ZTはZeitgeber time、照明をZT0につけて、ZT12に消す)では、HDAC3はマウス肝において14,000以上の部位に結合している(HDAC3のZT10 cistrome)。しかし、マウスが活動的で摂食している暗期のZT22では、HDAC3シグナルは劇的に低下し120の結合部位しかない。HDAC3の結合は、24時間サイクルで振動しており、このリズムは常に暗期にしても保たれ、明期に摂食させるとリズムが逆転した。したがって、HDAC3のゲノムへの結合は、概日時計によってコントロールされていると考えられた。

ヒストンH3lysine9(H3K9)のアセチル化はZT22に比べ、ZT10で減少している。HDAC3fl/flマウスにCre-recombinaseを発現させたアデノ関連ウイルス (AAV-Cre)を尾静注することにより、肝のHDAC3を欠損させると、ZT10でのH3K9のアセチル化は野生型のZT22と同程度になった。ZT10でのH3K9のアセチル化の低下はRNA polymerase II (Pol II)の結合の減少を伴っており、遺伝子発現の抑制が活発に起きていることが分かる。HDAC3の欠損後1週間で転写が増加した遺伝子は、野生型のZT10における転写開始部位の10kb以内にHDAC3結合が認められた。このように、ゲノムワイドのHDAC3結合の日内変動にはepigenomicな調節、Pol II結合、遺伝子発現のリズムが認められた。

HDAC3のゲノムへの結合は日内変動があるが、HDAC3の発現量は明期/暗期を通じて一定であった。HDAC3の活性化には核内受容体corepressorsとの結合が必要である。核内受容体Rev-erbαは転写repressorで概日周期によって発現が調節されている。ZT10にはRev-erbα結合部位はHDAC3の結合部位と大部分重なっていた。さらに、ZT10には、Rev-erbは、HDAC3 ZT10部位の大部分に結合していた。しかし、HDAC3の結合は、Rev-erbα欠損マウスでは多くの部位で消失していた。Rev-erbαはnuclear receptor corepressor (NCoR)を介してHDAC3をHDAC3部位に概日リズムをもって結合させるが、Rev-erbα欠損マウスではそれが減弱していた。

したがって、ZT10(明期)にはHDAC3はNCoR、Rev-erbαと結合してゲノムに結合するため、ヒストンは脱アセチル化される。ZT22(暗期)にはRev-erbαが消失してHDACのゲノムへの結合がはずれ、ヒストンアセチル化が増加する。

さらに、マウス肝におけるHDAC3のゲノムへの概日周期的結合の意義について検討した。Rev-erbαとHDAC3が結合する遺伝子で、肝のHDAC3欠損で増加する遺伝子は、脂質代謝関連のものであった。実際、HDAC3を2週間欠損させると、肝の脂肪が劇的に増加し、肝の中性脂肪含量が約10倍に増加した。また、Rev-erbα欠損マウスでも脂肪肝が増加、中性脂肪含量が2倍程度に増加した。Rev-erbαまたはHDAC3の欠損が脂肪肝を呈することは、Rev-erbαのHDAC3への概日周期的結合が脂質代謝遺伝子の発現に不可欠な役割を果たしていることを示している。

Rev-erbα-HDAC3のゲノムへの結合でヒストン脱アセチル化が起こり、脂肪合成遺伝子がoffRev-erbαの消失によりHDAC3がゲノムに結合しなくなるためヒストンがアセチル化し、脂肪合成遺伝子がonとなる。)

Rev-erbαとHDAC3は、ZT10で100以上の脂質合成遺伝子(Fasn、Acacaを含む)上に局在しており、Pol IIのそれら多くの遺伝子の転写開始部位への結合がZT10からZT22にかけて増加していた。パルミチン酸の合成は、肝HDAC3欠損マウスとRev-erbα欠損マウスで増加していた。

以上の結果より、ヒストンアセチル化における概日周期の存在が示され、その障害は代謝機能の異常を引き起こすことが分かった。毎日、暗期にRev-erbαの発現が低下すると、HDAC3のゲノムへの結合が低下し、摂食中は脂肪合成遺伝子が活性化する。いずれ、明期になってRev-erbαの発現が増加してくるとHDAC3がゲノムに結合し、ヒストン脱アセチル化が起こることにより、脂肪合成は停止する。Rev-erbαまたはHDAC3のいずれかが欠損すると、このサイクルが働かなくなり、脂肪肝となる。空腹/摂食や睡眠/覚醒のサイクルの異常は、HDAC3のターゲット遺伝子への結合のリズムを障害することにより、シフトワーカーや時計遺伝子異常のヒトで見られる脂肪肝を引き起こすと考えられる。
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by md345797 | 2012-01-23 06:59 | その他