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FGF21は、PPARγ活性とTZDの抗糖尿病作用を調節している

Fibroblast Growth Factor-21 Regulates PPARγ Activity and the Antidiabetic Actions of Thiazolidinediones.

Dutchak PA, Katafuchi T, Bookout AL, Choi JH, Yu RT, Mangelsdorf DJ, Kliewer SA.

Cell. 2012 Feb 3;148(3):556-67.

【まとめ】
FGF21は血液中を循環するhepatokineであり、炭水化物や脂質の代謝に好影響を与えると考えられている。今回この研究では、FGF21は脂肪組織のautocrine factorであり、PPARγ活性をフィードフォワード的に調節することを示す。FGF21ノックアウト(KO)マウスは、体重減少、PPARγ依存性遺伝子発現の低下などのPPARγシグナル伝達の障害を示す。さらに、FGF21-KOマウスでは、rosiglitazoneのインスリン感受性亢進作用と副作用が起こりにくい。このFGF-KOマウスの機能消失は、PPARγのsumoylationによる転写活性の減弱を伴っていた。このマウスにFGF21を投与すると、PPARγのsumoylationが阻害され、PPARγ活性が回復した。以上より、FGF21は生理的、薬理的にPPARγ活性を調節する重要な因子であることが示された。

【論文内容】
PPARγ活性は、転写後のSUMO化(sumoylation)によって調節を受ける。PPARγ2のK107のsumoylationは、corepressorの結合を促進することにより、PPARγの転写活性を抑制すると考えられている。

FGF21は摂食によりWATでの発現が誘導される
野生型(WT)マウスにrosiglitazoneを投与すると、白色脂肪組織(WAT)でFGF21の発現が誘導される。肝では、PPARαアゴニスト(GW7647)投与によって発現が誘導され、血中のFGF21濃度が増加したが、rosiglitazoneでは血中濃度は増加しなかった。単離した脂肪細胞では、rosiglitazoneによってFGF21の発現が増加する(GW7647では増加しない)ため、FGF21はWATでautocrine/paracrine様に局所で作用していると考えられた。また、マウスにおいて、摂食によりWATでのFGF21発現が増加したが、血中濃度は増加しなかった。

FGF21-KOマウスは中等度の脂肪萎縮を示す
FGF21-KOマウスは、WTマウスと比べて脂肪量が低下していたが、摂食や総体重は差がなかった。両マウスで精巣上WATのDNA量は差がなく、この脂肪量減少は脂肪細胞数の減少ではなく、脂肪細胞の小型化によるものと考えられた。

FGF21は脂肪細胞分化を促進する
WTマウスとFGF21-KOマウスの脂肪前駆細胞の分化の違いをin vitroで比較した。その結果、FGF21-KOマウスでは、Pparg mRNAの誘導が遅れており、これはrecombinant FGF21の添加により回復した。各種lipogenic geneの発現と脂肪蓄積もFGF21-KOマウスで低下し、FGF21投与で回復した。

FGF21はPPARγの転写活性を刺激する
上記のように、FGF21-KOマウスの脂肪前駆細胞では分化と脂肪蓄積が障害されていたため、FGF21がPPARγの活性化を調節するのではないかと考えられた。WT脂肪細胞にrosiglitazoneを添加すると、lipogenic gene発現と脂肪蓄積が増加したが、FGF21-KO脂肪細胞ではそれらは減弱していた。これはFGF21の添加により回復した。WTおよびFGF21-KO脂肪細胞で、PPARγの総蛋白量に差はなかったが、sumoylated PPARγ(SUMO1抗体で免疫沈降されたPPARγ)はFGF21-KO脂肪細胞で大きく増加しており、これはFGF21添加により正常化した。以上のin vitroのデータと同様、FGF21-KOマウスのWATでのin vivoでのPPARγ sumoylationも増加しており、PPARγターゲット遺伝子の発現は低下していた。すなわち、FGF21はPPARγのsumoylationを抑制することにより、その転写活性を増加させていることが明らかになった。

PPARγは、K107およびK395がsumoylationを受けるため、両部位の変異体を作りlentivirusでFGF21-KO脂肪細胞に導入した。その結果、K395ではなく、K107のsumoylationがPPARγの活性を阻害することが分かった。次にPPARγ-K107Rを導入した(PPARγがsumoylationされない)FGF21-KO脂肪前駆細胞は、コントロールのFGF21-KO細胞と違って、脂肪細胞への分化が障害されないことを示した。

FGF21-KOマウスはrosiglitazoneに不応性である
次に、高脂肪食負荷WTおよびFGF21-KOマウスにrosiglitazoneを投与した。RosiglitazoneはWTのWATでのFGF21発現を増加させたが、肝での発現は逆に低下させ、血中FGF21は減少した。このことからも、WATで産生されるFGF21はホルモンではなくautocrine/paracrine的に作用していると考えられる。WTマウスはrosiglitazone投与によりGTT、ITTでのグルコース変動が改善したが、FGF21-KOマウスでは改善しなかった。さらに、rosiglitazoneの副作用である脂肪増加と体液貯留も、WTでは見られたが、FGF21-KOでは認められなかった。したがって、FGF21はrosiglitazoneのインスリン感受性亢進作用と副作用発現に必要であることが分かった。

高脂肪食負荷においても、FGF21-KOマウスはWTに比べてWATのsumoylated PPARγが増加していた。また、マイクロアレイ解析では、WTマウスでrosiglitazoneで増加・減少している遺伝子のクラスターが、FGF21-KOでは認められなかった。FGF21-KOでのrosiglitazone反応性の消失は、PPARγのターゲット遺伝子でも認められ、特にrosiglitazoneによるTnfa発現の低下がFGF21-KOでは認められず、rosiglitazoneによる血中adiponectin増加がFGF21-KOでは減弱していた。

【結論】
WATにおいて、rosiglitazone刺激によるPPARγ活性化はFGF21の発現を増加させ、これがautocrine/paracrine的にWATに作用してPPARγのsumoylationを阻害して、さらにPPARγ活性化をもたらす、というフィードフォワード機構が存在すると考えられた。さらに、rosiglitazoneによるインスリン感受性亢進作用と副作用発現に、FGF21が必要であることが示された。

FGF21には、肝で産生されホルモンとして分泌されて絶食中の適応反応を調節する「全身作用」と、WATで産生されてautocrine/paracrine的にWATに作用して摂食後のPPARγ活性を増加させる「局所作用」があると考えられた。
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by md345797 | 2012-02-10 07:08 | インスリン抵抗性