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γ-グルタミルトランスペプチダーゼで活性化される蛍光プローブの局所スプレーによるがんの迅速な検出法

Rapid cancer detection by topically spraying a γ-glutamyltranspeptidase-activated fluorescent probe.

Urano Y, Sakabe M, Kosaka N, Ogawa M, Mitsunaga M, Asanuma D, Kamiya M, Young MR, Nagano T, Choyke PL, Kobayashi H.

Sci Transl Med. 2011 Nov 23;3(110):110ra119.

【まとめ】
蛍光プローブは微小ながんを可視化するために有用であるが、バックグラウンドのシグナルが高いことや投与から検出まで時間がかかることなどが問題になっていた。この研究では、迅速に活性化される、がん選択的な蛍光イメージングプローブであるγ-glutamyl hydroxymethyl rhodamine green (gGlu-HMRG)を合成した。正常組織では発現しておらず、さまざまながん細胞の細胞膜に過剰発現しているγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)によってこのプローブのグルタミン酸が切断されると、プローブの脱消光(dequenching)が起こり、蛍光を発する。このgGlu-HMRGのin vitroでの活性化を、11種のヒト卵巣がん細胞で確認した。また、卵巣がんの腹膜播種のin vivoマウスモデルにおいて、gGlu-HMRGを局所的にスプレーすると1分以内に活性化が起こり、がんとバックグラウンドの高いシグナルコントラストが得られた。gGlu-HMRGプローブは、がん細胞表面のGGTとの接触により迅速で強力な活性化を受けるため、外科手術または内視鏡検査に臨床応用可能である。

【論文内容】
迅速で正確ながん組織の検出と完全な切除が、がんの治療に必要である。これを高感度・低コストで可能にする蛍光プローブは、「always on」(常に一定のシグナルを発し続ける)プローブと「activatable」(ある環境下で初めて蛍光を発する)プローブに大別される。Always-onプローブはバックグラウンドシグナルが高くなり、 十分なtarget-to-background ratios (TBRs)を得るのが難しく、activatableプローブは活性化に数時間から数日かかりリアルタイムの臨床応用が困難という欠点があった。このグループでは、がん特異的抗体を用いたactivatableプローブを開発したが、十分なTBRを得るために少なくとも1時間かかるものであった。この研究では、ヒトの多くのがん細胞の細胞表面に発現しているGGTを利用して、通常は蛍光団が消光(quenched)している状態だが、GGTによる切断を受けるとこの状態が解除され蛍光を発するプローブ、gGlu-HMRGを論理的に設計した。

アミノペプチダーゼ反応性の蛍光プローブの開発
gGlu-HMRGプローブは親水性のため細胞膜を透過しないが、癌細胞表面のGGTにより加水分解されてHMRGとなると蛍光を発し、疎水性となるため細胞膜を透過して細胞内のリソソームに蓄積する。さまざまなアミノペプチダーゼの酵素活性を検出するために5種類のアミノ酸をもつプローブ(gGluのほかに、Leu、Gly、Ile、Phe)を合成した。これらは無色・無蛍光(分子内閉環のため消光)だが、それぞれのアミノペプチダーゼにより加水分解される(開環になる)と、可視光の蛍光を発する。

がん細胞におけるアミノペプチダーゼ活性と特異性の評価
腫瘍関連酵素であるGGTとLAP(leucine aminopeptidase)のプローブ(gGlu-HMRGとLeu-HMRG)をそれぞれヒト卵巣がん細胞SHIN3および正常細胞HUVECsに添加した。その結果、gGlu-HMRGプローブにより、SHIN3細胞のみで蛍光シグナルが得られ、高いGGT活性を検出することができた(この区別はLeu-HMRGプローブを用いてはできなかった)。また、gGlu-HMRGプローブによるGGTの検出は、GGT阻害剤やGGT-1のsiRNAを用いて抑制された。

gGlu-HMRGプローブによるSHIN3腫瘍細胞のin vivo検出
上記5種のアミノペプチダーゼプローブおよびFDA(fluorescein diacetate=esterase反応性プローブ)をSHIN3腫瘍を持つマウスの腹腔内に注入した。Leu-HMRGとFDAは、腫瘍部位とバックグラウンドで非特異的に蛍光を発したが、gGlu-HMRGは高いTBRをもって腫瘍部位を蛍光検出し、直径1mm未満の微小腫瘍部位も裸眼で可視化することができた。さらにSHIN3腫瘍を持たないマウスにgGlu-HMRGを注入しても蛍光は見られず、血清中や正常組織でのバックグラウンドのGGT活性が低いことが示された。

gGlu-HMRG によるin vitroでの卵巣がん細胞、およびin vivoでの腹膜腫瘍の蛍光検出
gGlu-HMRを、in vitroで11種のヒト卵巣がん細胞株と、in vivoで移植した6種の卵巣がんに添加した。その結果、11の細胞株はすべてgGlu-HMRGプローブにより蛍光検出された。また、6種の卵巣がんを腹膜に移植したマウスの腹腔内に、gGlu-HMRGプローブを内視鏡でスプレーし観察した(食道がんの検出にルゴール液をスプレーしたり、早期胃がんや大腸がんにメチレンブルーをスプレーするのと同様)ところ、4種の卵巣がんでスプレー後数分で蛍光シグナルが観察された。この蛍光強度や時間経過はがん細胞の種類によって異なっていた。また、麻酔した生きたマウスの腹膜に存在するSHIN3の小結節(1mm以下)はgGlu-HMRGのスプレー後30秒で検出され、蛍光ガイド下で内視鏡的に切除することができた。

gGlu-HMRGによるSHIN3腫瘍の微小な腹膜播種のイメージング
Red fluorescent protein(RFP)-transfected SHIN3細胞(SHIN3-RFP)のマウスの腹膜播種を、gGlu-HMRGプローブを腹腔内注入することにより検出した。その結果、gGlu-HMRGの腹腔内注入10分後には、gGlu-HMRGの緑色とSHIN3-RFPの赤色の蛍光がオーバーラップした。また、gGlu-HMRGプローブ(緑色蛍光シグナル閾値10 arbitrary units)によるSHIN3-RFP細胞(赤色蛍光シグナル閾値4 a.u.)の検出の感度・特異度は、どちらも100%だった。

【結論】
gGlu-HMRGプローブを用いることにより、正確な生検や腫瘍切除が可能になり、腫瘍断端や残存腫瘍を検出することができる。GGTはすべてのがんの特異的なマーカーではないが、腫瘍表面に存在する酵素が分かれば同様の方法で蛍光プロープを開発できると考えられる。
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by md345797 | 2012-02-21 07:43 | その他