「ほっ」と。キャンペーン

一人抄読会

syodokukai.exblog.jp
ブログトップ

TALENs:ゲノム編集のための広範に応用可能な技術

TALENs: a widely applicable technology for targeted genome editing.
Joung JK, Sander JD.

Nat Rev Mol Cell Biol. 2012 Dec 12;14(1):49-55.

【まとめ】
特定のDNAに結合するドメインと、人工ヌクレアーゼを結合させた人工蛋白を用いて、多くの生物や細胞種のほとんどすべての遺伝子の改変が可能となった。この新たに開発されたtranscription activator-like effector nucleases (TALENs)を用いることにより、生物種を問わず、簡便かつ短時間にノックアウトやノックインを行うことができる。

【総説内容】
標的ゲノム編集(Targeted genome editing)は細胞や生物において、ほとんどすべての目的の配列を効率よく改変できる、広範に応用可能な技術である。この技術は、①配列非特異的にDNAを切断する人工ヌクレアーゼ(engineered nucleases)と②配列特異的DNA結合ドメインからなる蛋白を融合させたものを用いている。当初は、zinc-finger nucleases (ZFNs)を用いた、点変異、欠損、挿入、逆位、重複、転移などの遺伝子操作が多く行われていた(図1:ZFNによるゲノム編集の原理)。

d0194774_652081.png

近年は、ZFNsの代わりに、transcription activator-like effector nucleases (TALENs)の急速な発展が見られる。TALENsでは、カスタム化されたDNA結合ドメインと非特異的なFokI ヌクレアーゼドメインとを融合させたものである。DNA結合ドメインは、Xanthomonas 種プロテオバクテリアが分泌し宿主植物の遺伝子転写を変えさせる蛋白であるtranscription activator-like effectors (TALEs)由来の保存されたリピートからなっている。(図2 TALENの概要とTALEリピート構造)。このDNA結合TALEリピートは、単純な「蛋白-DNAコード」を用いて、標的部位の塩基に対して簡単・迅速に作製できる(DNA塩基配列の塩基1つを認識するアミノ酸33-35のリピート構造を連結して塩基配列を認識する)。

ここ2年間でTALENsは、酵母、ショウジョウバエ、線虫、コオロギ、ゼブラフィッシュ、カエル、ラット、ブタ、牛、シロイヌナズナ、コメ、カイコ、およびヒトの体細胞と多能性幹細胞など、さまざまな細胞・生物の遺伝子改変に応用されてきた。TALENsの技術は非常に成功率が高く、事実上どのような配列にも応用できるため、非専門家にとっても広い用途があることが期待されている。

カスタムTALE DNA結合ドメイン
DNAに結合するTALEドメインは保存された33-35アミノ酸リピート構造をしているアミノ酸配列である。それぞれのリピートはDNAのそれぞれの塩基に特異的に結合する。ほとんどすべての人工TALEリピート配列は、超可変残基であるNN、NI、HD、NG (それぞれDNAのG、A、C、Tに対応)からなっている。(より特異的にGを認識する超可変残基であるNKやNHも報告されている。)

d0194774_615243.jpg

ヌクレアーゼを用いた遺伝子改変
ZFNによる二重鎖切断(double strand breaks: DSB)は、非相同末端再結合non-homologous end-joining; NHEJ) または相同組換え修復(homology-directed repair; HDR)によって修復されるが、これを利用して切断部位由来のさまざまな長さの挿入/欠失変異 (insertion or deletion mutation; indel mutation)を作製することができる(図3a 切断と修復に基づくゲノム編集)。NHEJによる二重鎖切断の修復は、しばしば遺伝子コーディング配列のフレームシフトを起こすため、遺伝子機能のノックアウトにつながる。また、HDPが起こることにより、切断部位の正確なヌクレオチド置換や切断部位への配列挿入(~7.6 Kb)が可能である。すでに、ZFNでは、NHEJまたはHDRを用いて遺伝子変更を行うのを、ショウジョウバエ、線虫、ゼブラフィッシュ、ニジマス、ナマズ、ウニ、カエル、ブタ、ウシ、コオロギ、ウサギ、カイコ、チョウ、マウス、ラット、ダイズ、白イヌナズナ、トウモロコシ、タバコ、ペチュニア、ハムスター細胞、ヒト体細胞と多能性幹細胞で行うことができる。この方法で、高率に変異体を作製し、選択マーカーなく変異体をスクリーニングすることができる。

ZFNsとI-SceI homing endonucleaseによって、2つのDSBとそれに続く介在配列の欠失(~15Mb)や異なる染色体の2つのDSBによる転座など、より複雑なゲノムの変更が可能となる(図3b)。操作性がよりシンプルなTALENsは初めて2年前に導入されたが、すでに同様の多くの応用がなされている。

d0194774_6777.jpg

ゲノム編集への応用
モデル生物

TALENsもZFNsと同様に以前は操作困難だった多くの生物モデルに効率よく応用可能である。現在まで、ショウジョウバエ、線虫、ゼブラフィッシュ、カエル、ラット、ブタ、ウシ、コオロギ、カイコに用いられている。また最近、ブタ(Ossabaw swine)を用いたヒト疾患(LDL受容体変異による家族性高コレステロール血症)のモデル作製に用いられた。

細胞を用いた疾患モデリング
TALENsに伴うNHEJを用いてコーディング配列にindelを導入することによって、loss-of-mutationを導入した細胞の疾患モデルが作製できる。また、HDRによって内因性のヒト遺伝子に正確な挿入配列を入れることもできる。この際、蛍光蛋白やエピトープタグを挿入して蛋白を視覚化することも可能である。GWASやENCODEで明らかになった特定の一塩基多型(SNPs)を持った細胞を作製することもできる。

治療に対する応用
ZFNに伴うHDRは最近、鎌状赤血球症やα1-アンチトリプシン病、パーキンソン病(SNCA遺伝子)の患者由来のiPS細胞からそれぞれの遺伝的変異を修正するために用いられた。このような修正をex vivoで行い、患者に戻す治療が行われる。ヒトiPS細胞や体細胞に対するTALENsに伴うHDRを用いた治療も行われている。また、NHEJを用いた遺伝子の活性消失も治療に用いられる(HIV感染のco-receptorであるCCR5遺伝子を破壊する、というAIDSの治療)。TALENsはいかなるDNA配列もターゲットにできるため、遺伝子修正と遺伝子破壊による遺伝病の治療に対する役割は計り知れないと考えられる。

TALENs作製のためのプラットフォーム
TALENsリピートアレイをエンコードするプラスミドをデザインするプラットフォームが存在する。この方法は、標準的な制限酵素とligationに基づくクローニングである「Golden Gateクローニング」などである。TALENsの特異的な設計は注意深く検討する必要があり、Rebarらによる枠組みが最も広く試されているものである。

将来への方向性
TALENs技術はここ3年で急速に進歩しているが、重要な問題点もある。①TALENsは特異的な部位のHDRを起こすが、NHEJによる変異導入はHDRによって変化したアリルの予期しない部位への変異を起こさないか。これにはNHEJによる修復とHDRによる修復のバランスをとることが大切であろう。②NHEJによるoff-targetの変異を作らないために、TALENsのゲノムワイドの特異性の確立が不可欠である。③TALENsを細胞内に効率よく導入する方法(現在はmRNAを細胞または受精卵の核にマイクロインジェクションして細胞内で発現させる)は、今後の研究の重要な課題になるだろう。さらに、TALEに基づく転写因子(activators and repressors)の導入はすでに報告がされつつある。

TALENsは簡便で成功率が高く、多くの生物や細胞種に応用可能なゲノム編集技術であり、将来の生物学研究にとって重要な技術となるに違いない。


[PR]
by md345797 | 2013-02-08 06:08 | その他