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カテゴリ:糖尿病の病態生理( 8 )

PPAR-γは脂肪組織のregulatory T細胞の蓄積と形質の重要な調節因子である

PPAR-γ is a major driver of the accumulation and phenotype of adipose tissue Treg cells.
Cipolletta D, Feuerer M, Li A, Kamei N, Lee J, Shoelson SE, Benoist C, Mathis D.

Nature. 2012 Jun 28;486(7404):549-53.

【まとめ】
栄養過剰の状態では、内臓脂肪組織(VAT)に炎症性マクロファージが浸潤してくることが脂肪組織の炎症とインスリン抵抗性を引き起こす原因と考えられている。しかし、この過程における他の免疫細胞の関与はほとんど知られていない。近年、VATに存在するregulatory T(Treg)細胞(宿主に対し有害な過剰な免疫反応を抑制する作用があるT細胞)は、脂肪組織の炎症とインスリン抵抗性の回避に重要であることが示唆されている。今回の研究で、脂肪分化のmaster regulatorであるPPAR-γが、VAT Treg細胞の蓄積、形質、機能を調節していることが明らかになった。VAT Treg細胞におけるPPAR-γ発現は、肥満動物がpioglitazoneによってインスリン感受性を完全に回復するのに不可欠であった。本研究により、チアゾリジン系薬剤の今まで知られていなかった機能が明らかになり、Treg細胞のうちのユニークな機能を持つある集団はインスリン抵抗性治療に用いることができるということの概念が証明された。

【論文内容】
Foxp3+ CD4+ Treg細胞は正常者の内臓脂肪組織(VAT)に見られ、通常のリンパ組織に見られるCD4+ T細胞コンパートメントの上位の分画に存在する。このVAT Treg細胞は脾およびリンパ節のT細胞とは区別できる形質(遺伝子発現プロファイル、T cell receptor repertoire、ケモカインおよびケモカイン受容体の発現)を持つが、その役割は不明であった。

マウスのVATとリンパ節(LN)のTreg細胞の遺伝子プロファイルを比較したところ、VATのTreg細胞ではPPAR-γの転写産物が増加していた。さらに、正常食を負荷したC57Bl/6(B6)マウスおよびB6.Lep ob/obマウス、高脂肪食を負荷したB6マウスのVATとLNのTreg細胞の転写プロファイルのクラスター解析を行った。正常食B6マウスのVATとLNのTreg細胞を比較したところ、Pparg転写に相関する遺伝子を調べたところ、ケモカインやケモカイン受容体遺伝子(Ccr1、Ccr3、Cxcr6、Cxcl2、Cxcl3)、脂質代謝関連遺伝子(Pcyt1a, Dgat1)、Il10の転写産物がVATにより多く含まれることが分かった。

次にVAT Treg細胞におけるPPAR-γの役割を直接評価するため、naive CD4+ T細胞にFoxp3単独または、Foxp3Ppargを一緒に発現させるretrovirusを導入した。PPAR-γにはPPAR-γ1とPPAR-γ2の2種類のアイソフォームがあるため、それぞれのアイソフォームがFoxp3と協調してVAT Treg細胞の遺伝子発現signatureを促進するかを検討した。Pparg+Foxp3発現細胞とFoxp3のみの発現細胞の発現遺伝子を比較したvolcano plotにより、PPAR-γのどちらのアイソフォームもFoxp3と協調してVAT Treg細胞に特徴的な遺伝子発現を増加させていることが示された。

次に、retrovirusでPparg1+foxp3Pparg2+Foxp3Foxp3のみを導入した細胞に、PPAR-γの合成アゴニストTZD薬であるpioglitazone(Pio)を48h添加した。Pioの添加により脂質代謝関連遺伝子、すなわち脂肪酸トランスポーター(Cd36, Slc27a2)、脂肪酸合成酵素(Lipe, Scd1)、脂肪酸酸化酵素(Cpt1a)、トリグリセリド合成酵素(Dgat1)、脂肪滴関連蛋白(Plin2)の発現が亢進した。RosiglitazoneおよびGW1929(non-TZD PPAR-γアゴニスト)の添加でも同様の結果が得られた。PPAR-γがFoxp3と協調してnaive CD4+ T細胞にVAT Treg細胞の形質をもたらすということから、PPAR-γとFoxp3が結合していると考えられ、HEK293細胞を用いた免疫沈降でも結合が示された。

VAT Treg形質発現におけるPPAR-γのin vivoでの重要性を検討するため、Treg細胞特異的にPPAR-γ発現を欠損したマウスを作製した(Foxp3 promoter/enhancer下にCreを発現したマウスと’floxed’ Ppargを発現したマウスを交配)。このTreg細胞特異的PPAR-γ欠損マウスは、野生型(WT)マウスに比べVATのTreg細胞の分画と数が減少していた(両者のマウスのリンパ組織におけるTreg細胞の数は同じであり、リンパ組織のTreg細胞でPPAR-γが発現していないためと考えられる)。PPAR-γ欠損マウスとWTマウスのVAT Treg細胞の遺伝子発現を比較したvolcano plotでは、PPAR-γ欠損マウスのVAT Treg細胞のup-signatureが減少、down-signatureが増加していた。PPAR-γは、VAT Treg細胞の蓄積と形質発現に重要な因子と考えられた。なお、このPPAR-γ欠損マウスでは、炎症性CD11b+ CD11c+ F4/80+ macrophageと炎症性CD11b+ Ly6c hi monocyteの増加が認められた。

次にPPAR-γの消失が VAT Treg細胞のturnoverにどのように影響するかを調べるため、GW 9662(非可逆的なPPAR-γ阻害剤)をTreg細胞特異的PPAR-γ欠損マウスとWTマウスに投与し、VAT Treg細胞の半減期を比較した。その結果、PPAR-γ欠損マウスのVATにおいてGATA3+ Treg細胞の分画の減少が認められた(脾では認められなかった)。PPAR-γは、VAT Treg細胞の形質の維持にも必要であると考えられた。

さらに、Pioを高脂肪食負荷マウスに投与すると、VATのTreg細胞分画が増加した(これも脾および皮下脂肪組織では増加しなかった)。Pioを投与した高脂肪食負荷マウスの精巣上脂肪組織のTreg細胞の遺伝子発現は、VAT Treg細胞に典型的な発現プロファイルのシフトが見られた。

それでは、Pioによるインスリン感受性亢進効果は、VAT Treg細胞集団の増加によるものかどうかを検討した。高脂肪食負荷したWTマウスとTreg細胞特異的PPAR-γ欠損マウスにPioを投与したところ、後者のマウスはPio投与によってVAT Treg細胞は増加せず、HOMA-IRと耐糖能は改善しなかった。

【結論】
PPAR-γはVAT Treg細胞の形質を調節する主要な因子であり、Foxp3と協調してnaive CD4+ T細胞にVAT Treg細胞特異的形質を付加する。また、Treg細胞におけるPPAR-γ発現は、Pioのインスリン感受性亢進作用に必要である。
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by md345797 | 2012-07-08 21:53 | 糖尿病の病態生理

β細胞生物学、インスリン抵抗性、糖尿病合併症におけるmicroRNA

MicroRNAs in β-Cell Biology, Insulin Resistance, Diabetes and Its Complications.

Fernandez-Valverde SL, Taft RJ, Mattick JS.

Diabetes. 2011 Jul;60(7):1825-31.

【総説内容】
β細胞生物学におけるmiRNAs

2型糖尿病におけるmiRNAの役割は、2004年にmiR-375がインスリン分泌調節に直接作用していることが明らかになって以来次々と分かってきた。miR-375の増加は、その標的であるMtpn(注:myotrophin、アクチンの脱重合に関与し、分泌顆粒の融合を起こす)の抑制を起こし、インスリン分泌の低下をもたらす。ただし、miR-375を欠損させるとob/obマウスでβ細胞量が減少しインスリン分泌不全に陥ることも報告されている。さらに、miR-9はSYTL4(granulophilin)の発現を抑制して、インスリン分泌を促進する。miR-124aはFoxa2を標的としてインスリンの発現を抑制する。

肥満と脂肪組織におけるmiRNAs
肥満に伴い脂肪組織でもmiRNAの調節異常が見られる。例えばmiR-29は高血糖によって誘導され、miR-320はインスリン抵抗性を改善する。これらはp85を標的にしており、Aktのリン酸化に関与する。miR-27bはPPARγを標的にしている。また、miR-143は脂肪分化を低下させ、miR-103とmiR-107は脂肪分化を促進する。
(注:肥満によるmiRNA-143の発現亢進は、インスリン刺激によるAKT活性化を阻害し、糖代謝を障害するMir-103/107はインスリン感受性を負に調節する

糖尿病合併症におけるmiRNAs
2型糖尿病患者の筋では、miR-133aおよびmiR-1の抑制が低下している。これらのmiRNAは心機能および心臓発生に重要なため、高血糖に伴う心肥大の発生に関与していると考えられる。STZ糖尿病マウスの肝ではmiR-122の低下に伴い、肝の脂肪酸およびコレステロール合成が低下している。糖尿病の腎では、(高血糖によって誘導される)TGF-βシグナルがmiR-192発現増加をもたらし、PTENを標的として低下させることによってAkt活性の増加をもたらしている(注:これにより基底膜の肥厚・メサンギウム基質の増加が起こる)。また、血管内皮では、miR-126の発現と糖尿病血管合併症の発症に強い負の相関が認められる。このmiRNAの導入によって食事性の動脈硬化を抑制できることが示されており、miR-126は血管合併症の診断マーカーになるとともに動脈硬化の治療ターゲットと考えられている。
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by md345797 | 2011-08-13 08:29 | 糖尿病の病態生理

肥満と糖恒常性に対する腸管微生物叢の影響

Effects of the gut microbiota on obesity and glucose homeostasis.

Greiner T, Bäckhed F.

Trends Endocrinol Metab. 2011 Apr. 22(4)117-123.

【論文内容】
近年の食事の変化は、腸管の微生物構成を変化させ、肥満や糖尿病の増加につながっていると考えられている。ヒトの腸管の微生物叢(gut microbiota)は、約200種の主要な細菌とそうでない約1000種の細菌によって成り立つ。主要な細菌には3群あり(Firmictutes門、Bacteroidetes門、Actinobacteria門)、合計で、細菌叢の95%以上を占める。腸管細菌叢は、食事の変化によって、その組成や転写ネットワークを急速に変化させる動的な「臓器」といえる。例えば、マウスに高脂肪食を負荷すると、24時間以内にFirmicutes門(特にErysipelotrichi )が増加、さらにそのトランスクリプトームも変化する。

腸管細菌叢は、肥満や脂肪の状態に影響を与える環境因子でもある。肥満者は、正常者とは異なる細菌叢を持っている(例えば肥満者はBacteroidesが少なく、体重減少によりBacteroidesが増加する)。また、無菌マウスは、通常のマウスに比べて体重が少なく、摂食による肥満を起こしにくい。このマウスに正常の細菌叢を植えつけると、体脂肪が50%増加しインスリン感受性が低下する。腸管細菌叢は食事から得られるエネルギーを増加させることによって、肥満に直接関与していると考えられる。

自然免疫は、マクロファージにおいてTLRsを介して炎症性シグナル伝達を活性化することにより、インスリン抵抗性や肥満を引き起こす。TLRsは腸管細菌叢の構成を変えることができ、それがメタボリックシンドロームや肥満に関連している。

2型糖尿病では、腸管細菌叢のうちFirmicutes門、特にFaecalibacterium prausnitziiが減少していることが知られており、F. prausnitziiはインスリン抵抗性を軽減する「probiotic」として働いていると考えられている。そのため、腸管細菌叢が糖尿病の診断や治療に使われる可能性がある。

生体のエネルギー摂取が多くなると、腸管細菌叢の発酵によりshort chain fatty acids (SCFAs)が増加する。SCFA受容体であるGpr41とGpr 43を欠損させたマウスはコントロールに比べて痩せていることから、SCFAsと肥満の関連が指摘されている。また食事による肥満では、腸管細菌叢は小腸から分泌されるAngptl (angiopoietin-like protein) の発現を抑制し、その結果、脂肪組織でのLPL活性が増加して脂肪のTG貯蔵が増加する。またAngptl4の減少により骨格筋での脂肪酸酸化が低下する。高脂肪食では血液中のlipopolysaccharide (LPS)が増加するが、それによりLPS受容体複合体であるTLR-4/CD14を介して肥満、インスリン抵抗性が出現する。

腸管粘膜の細胞の1%は、腸管内分泌細胞 (enteroendocrine cells)であり、これらの細胞からのホルモン分泌も腸管細菌叢の影響を受けている。腸管内分泌細胞のGrp41(SCFAsの受容体)が刺激されると、PYY発現が増加し、その影響で腸管の食物通過が遅くなりエネルギー摂取量が増加する。また、経口でoligofructose(OFS)を投与すると腸管のBifidobacteriumが増加することによって腸管L-細胞の数が増加し、GLP-1量が増加する。

【結論】
ライフスタイルの変化により食事内容が大きく変わっているが、カロリー摂取量が増加したというだけでなく、腸管細菌叢が変化していることにより、肥満・糖尿病が増加していると考えられる。現在までに腸管細菌叢によってコントロールされるシグナルネットワークについてはあまり分かっていない。「健康な腸」の構成を理解するとともに、それに近付けていくことは疾患の治療につながりうる。
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by md345797 | 2011-04-06 18:23 | 糖尿病の病態生理

CryptochromeはcAMPシグナル伝達と肝糖新生の概日リズムを調節する

Cryptochrome mediates circadian regulation of cAMP signaling and hepatic gluconeogenesis.

Zhang EE, Liu Y, Dentin R, Pongsawakul PY, Liu AC, Hirota T, Nusinow DA, Sun X, Landais S, Kodama Y, Brenner DA, Montminy M, Kay SA.

Nat Med. 2010 Oct;16(10):1152-6.

【まとめ】
空腹時には、グルコース恒常性を維持するために、肝の糖新生が刺激される。このメカニズムは、グルカゴンとエピネフリンがcAMPを介してCreb (cAMP response element –binding protein)をリン酸化、Crtc2 (Creb-regulated transcription coactivator-2)を脱リン酸化することによる。肝の糖新生は概日時計によって調節されることが分かっており、概日リズムは2つの転写活性化因子(ClockとBmal1)、抑制因子(Cry1, 2とPer1-3)が形成するフィードバックループによって調節されている。

この研究では、空腹時には肝においてCry1とCry2がCreb活性を調節していることを示した。Cry1は夜から昼への移行時間帯に発現が上昇し、グルカゴンによる細胞内cAMPの増加を抑制し、PKAによるCrebのリン酸化を抑制、肝の糖新生を減少させている。Cry1はGPCR活性化に反応したcAMPの蓄積を阻害した。CryはGPCRのGsαに直接結合することにより、GPCRの活性を調節している。肝にCry1を過剰発現すると、db/dbマウスの血糖とインスリン抵抗性が改善するので、Cryの活性を増強する物質があれば、2型糖尿病の治療薬として用いられる可能性がある。

【論文内容】
CRE(cAMP response element)によってluciferaseが発現するCRE-lucをアデノウイルスで作製し、肝に発現させ、空腹時のCreb活性の周期性(rhythmicity)について検討した。グルカゴンの腹腔内投与によるCRE-lucの活性化は、昼から夜への移行時間帯(ZT13)の方が夜から昼への移行時間帯(ZT1)に比べ40倍大きかった。グルカゴン投与を行った場合の肝糖新生酵素(G6pc、Pck1)の発現もZT13の方が、ZT1より大きかった。同様にCrebのリン酸化、Crtc2の脱リン酸化もZT13の方がZT1より大きかった。

次にCreb活性のリズミカルな調節は細胞自律性のものかどうかを検討するため、GPRCリガンドであるVIP(vasoactive intestinal peptide)がマウス線維芽細胞でCRE-luc活性を増加させることを確認し、これを細胞モデルとした。この細胞にCry1またはCry2を過剰発現させると、VIPによるCRE-luc活性化が減弱した。したがって、CryはGPCRによるCreb-、Crtc2-依存性転写活性化を抑制すると言える。

マウス肝臓にAd-Cry1を発現させると、空腹時(ZT13)におけるグルカゴンによるCRE-luc活性化が低下する。グルカゴン投与による肝糖新生酵素(G6pc、Pck1)の発現も大きく減少し、コントロールに比べ血糖も低下した。次にRNAiを用いてCry1、Cry2をノックダウンしたところ、CRE-luc活性が上昇し、糖新生酵素の発現も増加し、実際糖新生も増加した。

CryはGPCR依存的なadenyl cyclase活性の増加を抑制することで、Crebリン酸化を低下させている。Forskolinによる直接のadenyl cyclaseの活性化は抑制しない。このCryはGsαに直接結合してその活性を低下させ、その結果adenyl cyclaseが不活性化する。

【結論】
概日リズムを調節するフィードバック蛋白であるCryは、概日リズムの調節に並行して、GPCR(例:グルカゴン受容体)のGsに結合して活性を抑制するという作用がある。
このGs抑制がadenyl cyclaseの阻害、cAMPの量の低下、PKAによるCrebのリン酸化と活性化の抑制が起こり、糖新生酵素の発現が低下、最終的に糖新生が低下する(これは夜から昼の移行時間帯に起きる)。逆のことが昼からよるの移行時間帯に起き、概日リズムに従った糖新生が行われる。また、Cryの過剰発現は、肝の糖新生を低下させるため、2型糖尿病の治療として有用なターゲットであるかもしれない。
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by md345797 | 2011-04-05 00:07 | 糖尿病の病態生理

カフェテリア食はヒトのメタボリックシンドロームの有用なモデル

Cafeteria Diet Is a Robust Model of Human Metabolic Syndrome With Liver and Adipose Inflammation: Comparison to High-Fat Diet.

Sampey BP, Vanhoose AM, Winfield HM, Freemerman AJ, Muehlbauer MJ, Fueger PT, Newgard CB, Makowski L.

Obesity (Silver Spring). 2011 Feb 17. Online publication.

【まとめ】
げっ歯類で用いられているヒトの肥満のモデルのうち、伝統的に用いられてきたラードを基本とした高脂肪食(HFD)と、カフェテリア食(CAF: 高食塩、高脂肪、低線維、高エネルギー食で、クッキー、チップ、加工肉などを指す)との比較は今までに行われていない。CAFとHFDと正常食をラットに投与して比較したところ、体重増加、GTT、ITTによる耐糖能異常、インスリン抵抗性、脂肪組織・肝臓の炎症(マクロファージ浸潤)はいずれもCAFを投与した群で大きかった。CAFはヒトのメタボリックシンドロームを検討する上で、HFDと比較して有用なモデルであるといえる。

【論文内容】
カフェテリア食(CAF)は、高度に口当たりのいい(highly palatable)、高エネルギー食で、クッキー、シリアル、加工肉、チーズ、クラッカーなどを標準食(SC)と一緒に自由摂食させるもので、ヒトの西洋の食事のモデル・快楽摂食(hedonic feeding)のモデルとして用いられる。しかし、現在までにCAFと他の摂食肥満(DIO)モデルとの適切な比較はなされていなかった。今回、WisterラットにSC、LFD(カロリーの10%がラードと大豆油による脂肪の低脂肪食)、HFD(カロリーの45%が脂肪の高脂肪食)、CAF(SC+3種類のヒトのスナック類)を摂食させ、それぞれの効果を検討した。

CAF食群は他の3群に比べ、摂食量(カロリー)が多く、体重増加も多かった。また、GTTで有意に高血糖を示し、ITTでインスリン抵抗性(有意でなかったが)を示した。さらに、脂肪重量(WAT、BATとも)と血漿NEFAが有意に高値であった。

メタボリックシンドロームを伴う肥満のヒトでは、脂肪組織における低レベルの慢性炎症、マクロファージ浸潤が認められる。脂肪組織の周囲にマクロファージが浸潤している箇所であるcrown-like structureは、HFD、CAFでSCに比べ有意に増加していた。また、HFD、CAFでは肝脂肪沈着およびマクロファージによるinflammatory lociがSCに比べ多く認められた。CAFの膵島はHFDに比べてもさらに増大しており、構造が変化していた。

【結論】CAFは、ラードを基本としたHFDよりもより確実な(more robust)ヒトのメタボリックシンドロームのモデルとなる食事である。体重増加が早期から始まり、肥満、多臓器機能障害、脂肪・肝での炎症をきたすなどのことから、ヒトの現代病としての肥満のモデルとして最も有用といえる。
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by md345797 | 2011-03-03 01:01 | 糖尿病の病態生理

GH、IGF axis、インスリンと癌のリスク

Growth hormone, the insulin-like growth factor axis, insulin and cancer risk.

Clayton PE, Banerjee I, Murray PG, Renehan AG.

Nat Rev Endocrinol. 2011 Jan;7(1):11-24.

【GH、IGFと癌のリスク】(省略)

【インスリンと癌のリスク】
インスリン投与または血中のインスリン高値によって、大腸癌および前癌状態になるリスクが高まり、インスリン・IGF-Ⅰの高い肥満マウスに癌細胞(肺癌、大腸癌)を注入すると癌の進展がコントロールマウスより速いことが分かっている。A-ZIP/F-1マウス(脂肪がなく高度のインスリン抵抗性でインスリン・IGF-Ⅰ高値)を乳癌マウスと掛け合わせると、早期に癌が増大する。膵癌・乳癌にはインスリン受容体があり、後者にはインスリン-IGF-I hybrid受容体が存在するため、インスリン存在下で増殖する。インスリン、IGF-I、ハイブリッド受容体の下流ではリン酸化IRS-1を介してPI3K、MAPK経路が活性化され、これらの阻害薬により癌細胞の増殖が抑制される。

【インスリン抵抗性と癌】
肥満や運動不足によるインスリン抵抗性は、癌の発症・死亡率のリスクファクターである。Renehanらによるメタアナリシス(Lancet, 2008)では、BMIと20の癌のリスクとの関連が示された。Waist to hip ratioも乳癌、大腸癌とのリスクが示されている。

インスリン抵抗性が癌につながるメカニズムとして、インスリンは肝でのIGFBP-1,2の産生を抑止し、これらが結合しない活性型IGF-1を増加させることによって腫瘍の増殖を促すという考え方がある。

【糖尿病、インスリン治療、癌】
2型糖尿病はいくつかのタイプの癌の発症と関連があるとされている(非ホジキンリンパ腫、閉経後乳癌、直腸癌、子宮内膜癌、肝癌、膵癌)。治療に関しても、インスリンは細胞分裂を促し、疫学的にもインスリン治療と癌の進行は関連がある。しかし、これらのデータは比較者にも問題があり、多くの非インスリン使用者はメトホルミンを使用しており、これが癌の防止に役立っている。メトホルミンはインスリン抵抗性を改善しインスリン濃度を低下させることと、直接AMPKを活性化することで癌細胞のエネルギー制限と同様の現象を起こし、癌の減少をもたらすと考えられている。

インスリンアナログであるインスリングラルギンは、一連の観察研究により癌の発症率増加に関連があるとされた (Diabetologia, 2009)。これらの研究は多くの議論を引き起こし、専門家による欠点の指摘も行われており現在も関心が寄せられている。
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by md345797 | 2011-01-25 17:42 | 糖尿病の病態生理

LADA (Latent Autoimmune Diabetes in Adults:成人潜在性自己免疫型糖尿病)

Latent autoimmune diabetes in adults.

Naik RG, Brooks-Worrell BM, Palmer JP.

J Clin Endocrinol Metab. 2009 Dec;94(12):4635-44.

【まとめ】
膵島抗原に対する自己抗体は通常は1型糖尿病で認められるが、2型糖尿病の約10%でも膵島自己抗体の少なくとも1つが認められる。このグループは、LADAと呼ばれている。LADAは自己免疫疾患という点で1型糖尿病と似た遺伝的・免疫学的特徴を示すが、自己抗体クラスターやT細胞反応性、遺伝的感受性などで1型糖尿病とは明らかに異なることが知られている。

【総説内容】
2型糖尿病のうち、約10%が膵島自己抗体=ICA抗体、GAD65抗体、IA-2抗体、インスリン抗体(IAA: insulin autoantibody)のうち少なくとも一つが陽性であり、Zimmet(1995, Diabetes Care)はこのグループをLADA (Latent Autoimmune Diabetes in Adults、成人潜在性自己免疫糖尿病)と呼んだ。これは、slowly progressive type 1 diabetes (緩除進行型1型糖尿病)、type 1.5 diabetesとも呼ばれている。

LADAは、自己抗体の少なくとも1つが陽性で、一般的に35歳以上で、肥満がなく、当初食事療法だけでコントロールが付いていたが、徐々にインスリン依存状態になる糖尿病である。自己抗体陰性の2型糖尿病よりもインスリン治療が急速に必要になる状態であることが分かっている。また、LADAの臨床症状は自己抗体のtiterと数に相関することも知られている。LADAのβ細胞機能は、1型糖尿病と2型糖尿病の中間であり、インスリン抵抗性は1型糖尿病と同様で、2型糖尿病よりは少ないと考えられている。膵島の炎症反応は、1型糖尿病(サイトカインによるβ細胞機能不全)と2型糖尿病(栄養状態によるβ細胞機能不全)ではオーバーラップするところがあり(IL-1βシグナル伝達経路など)、1型と2型は連続する同じ病態の2つの対極にあるものととらえることもできる。

LADAの治療には、①早期のインスリン導入が有用であることが報告されており、そのほかに②thiazolidinedioneにより炎症を抑える治療、③GADワクチンを用いたimmunomodulationなどが考えられている。

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by md345797 | 2011-01-23 20:45 | 糖尿病の病態生理

Adiponectinの多様な作用は、受容体によるセラミダーゼ活性の活性化による

Receptor-mediated activation of ceramidase activity initiates the pleiotropic actions of adiponectin.

Holland WL, Miller RA, Wang ZV, Sun K, Barth BM, Bui HH, Davis KE, Bikman BT, Halberg N, Rutkowski JM, Wade MR, Tenorio VM, Kuo M-S, Brozinick JT, Zhang BB, Birnbaum MJ, Summers SA, Scherer PE.

Nature Medicine (Published online 26 December 2010)

【まとめ】
Adiponectinは、インスリン感受性を亢進させ、炎症を抑制し、細胞生存を促進するなどの全身にわたる有利な作用をきたすが、これらを統合的に説明するメカニズムは不明である。この論文では、adiponectinが2つの受容体AdipoR1 and AdipoR2に伴うセラミダーゼ活性を強く刺激し、セラミド分解を促進し、抗アポトーシス作用をもたらす代謝産物sphingosine-1-phosphate (S1P)の産生を促す(これらはAMPKの作用とは独立して起きる)ことを示した。

さらに、膵β細胞と心筋細胞でのアポトーシス誘導モデルを用いて、adiponectinの過剰発現トランスジェニックマウスではcaspase-8を介した細胞死が減少し、adiponectinの欠損マウスではin vivoのスフィンゴシン経路が増強されることが分かった。2つのadiponectin受容体アイソフォームを欠損させた細胞ではセラミダーゼ活性が障害され、セラミドの増加とpalmitateによる細胞死感受性が増強された。

これらのことから、adiponectinの作用がsphingolipid代謝を上流とする統合的なメカニズムで説明がつくことが示された。
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by md345797 | 2011-01-01 21:00 | 糖尿病の病態生理