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カロリー制限はアカゲザルにおいて健康は改善するが、寿命は延長しない:NIA研究

Impact of caloric restriction on health and survival in rhesus monkeys from the NIA study.

Mattison JA, Roth GS, Beasley TM, Tilmont EM, Handy AM, Herbert RL, Longo DL, Allison DB, Young JE, Bryant M, Barnard D, Ward WF, Qi W, Ingram DK, de Cabo R.

Nature. Published online 29 August 2012.

【まとめ】
カロリー制限(CR=栄養素の摂取を10-40%減少させる)は、寿命(lifespan)および健康寿命(healthspan)を延長させる、最も確実な方法とされてきた。アカゲザル(rhesus monkey)では、CRは免疫機能や運動協調機能を改善し、骨格筋減少を防止することが最近示されている。

National Institute on Aging (NIA)で行われた本研究では、アカゲザルにおいてCRは生存期間延長をもたらさないことが示された。この結果は、現在進行中のWisconsin National Primate Research Center (WNPRC)での研究結果(=30%のCRによってアカゲザルの生存が7-14年延長した)とは異なるものである。WNPRCは、げっ歯類におけるCRの寿命延長効果を、より長期生存する霊長類でも証明した。しかし、NIAにおける本研究は、霊長類においてCRは健康への好影響をもたらすものの、寿命延長効果はないことを示し、CRの寿命延長には研究計画や食餌の組成などが影響している可能性を示唆するものである。

【論文内容】
NIAにおけるCR研究は1987年に開始され、若年および高齢の非ヒト霊長類(Macaca mulatta、平均年齢は約27歳、最高齢は約40歳)を対象に20年以上行われている。

このNIA研究において、高齢(16-23歳)からCRを開始されたサルは、コントロールに比べて生存は延長しなかった。両群での死因にも明らかな差は認めなかった。ただし、高齢からCRを開始したサルはコントトロールに比べて、健康機能が改善しており、中性脂肪・コレステロール・空腹時血糖・酸化ストレスマーカー(isoprostane)が低値であった。なお、高齢からCRを開始したサルは免疫機能は悪化傾向にあった。

さらに、NIA研究では、若年からCRを開始したオスおよびメスのサルで、全死因および加齢関連死因による生存曲線に差は認めなかった。現在も若年サルの50%未満は生存していることを考えると、これは本研究の最終結果とは言えないが、hazard関数を用いた寿命予測に基づくと、さらに5-10年研究期間を延長しても平均生存に有意差が認められる確率は非常に低いと考えられた。

若年からCRを開始したサルでは、予測されるCRの効果が見られなかった(空腹時血糖はCRとコントロールで差がなく、中性脂肪はオスのCRサルでやや低いのみであった)。ただし、癌の発症率はCRサルで有意に低下していた。加齢関連疾患の発症は、CRに比べコントロールの方が早かったが有意差はなかった。

では、NIAとWNPRCの寿命延長の結果の違いは何によるものであろうか?

まず、これら2つの研究では食餌組成の違いがあった。NIAでは天然組成の食餌(バッチ間での混合物の差がありうる)が用いられたが、WNPRCでは精製食餌(ビタミン・ミネラルなどは後から加えられている)が用いられている。食餌中のタンパク質の由来も異なり、NIAでは小麦、トウモロコシ、大豆、魚、アルファルファ由来であるが、WNPRCではラクトアルブミン由来である。NIAの食餌には抗酸化作用のあるフラボノイド、魚由来の脂質(omega-3脂肪酸が豊富)を含むのに対し、WNRPCの食餌脂質はトウモロコシ油由来である。炭水化物組成も異なり、NIAでは小麦とトウモロコシ由来なのに対し、WNRPCではコーンスターチとショ糖由来である。NIAの食餌は3.9%のショ糖しか含まないが、WNRPCの食餌は28.5%含んでおり、ショ糖が多いことは2型糖尿病発症にも関連しうる。さらに、NIAとWNRPCでは、ビタミンとミネラルの補充も異なっている。

さらに、NIA研究におけるコントロールサルは、WNPRC研究のように自由摂食(fed ad libitum)ではなく、肥満をきたさない程度に分割された食餌を与えられていた。すなわち、NIA研究のコントロールは軽度のカロリー制限が行われていた可能性がある。そのため、WNPRC研究のコントロールはNIAのコントロールに比べ全体的に体重が多かった。また、NIAのサルは中国とインド由来で、厳密にインドのコロニー由来のWNPRCのサルに比べて遺伝的多様性が大きかった。

ヒトにおける最初のランダム化試験では、6か月のCRによって加齢のバイオマーカーや心血管の健康が改善し、加齢関連疾患のリスクが減ることが示唆されているが、ヒトにおける寿命研究はできそうもない。今後は、2つのサルのCR研究の結果を比較しながら、CRによる健康指標の改善を除いた寿命そのものに対する影響を継続して検討する必要がある。
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by md345797 | 2012-08-30 23:42 | その他

健康なヒトのmicrobiomeの構造、機能、多様性

Structure, function and diversity of the healthy human microbiome.

Human Microbiome Project Consortium.

Nature. 2012 Jun 13;486(7402):207-14.

【まとめ】
ヒトmicrobiomeの研究によって、腸、皮膚、膣などの体内生息環境(body habitat)に常在する微生物は、健康な個人どうしであっても、大きく異なることが分かっている。この多様性の原因はまだ分かっていないが、食事、環境、宿主の遺伝的特性、幼少期の細菌曝露などがすべて関わっていると考えられている。そこでHuman Microbiome Project (HMP)では、今までで最大規模のコホートで体内生息環境に常在する微生物コミュニティの解析を行った。これにより、健康な個体間であっても、体内生息環境の微生物の多様性や量が大きく異なっており、一個人の体内で、また個人間で、強いニッチの特殊化が見られた。このプロジェクトにより、健康な欧米人のmicrobiomeを占める微生物の属(genera)、酵素ファミリー、微生物構成の推定81-99%を見出すことができた。Metagenome的に見た代謝経路は、微生物群構造の違いがあるにもかかわらず個人間で一定しており、民族的・人種的背景が、代謝経路と微生物の両方を臨床的なメタデータに結び付ける要因の一つであることが示された。これらの結果により、健康なヒトの微生物コミュニティの構成が明らかになり、ヒトmicrobiomeの今後の疫学・生態学・トランスレーショナルな応用が可能となった。

【論文内容】
Human Microbiome Project (HMP)の健康な242名(男性129名、女性113名)からの4,788検体を解析した。女性は18の、男性は15の体内生息環境から検体を採取した。すなわち、口腔と咽頭の9か所、皮膚の4か所、鼻孔、便(下部腸管)および、女性は膣3か所から検体を採取した。個人間のmicrobiomeの安定性を調べるため、113名は平均219日の期間をあけて再度採取した。それらの検体は、16S rRNA遺伝子解析を行い、機能解析のためIllumina shotgun metagenomic readsを用いた配列決定を行った。

体内生息環境における微生物の多様性については、例えば肥満や炎症性腸疾患では腸内細菌の多様性が低下し、膣炎では膣内細菌叢の多様性が増加しているなどのことが分かっている。本研究では、健常人の微生物コミュニティの属の81-99%を明らかにした。口腔と便の微生物コミュニティは特に多様であり、膣は比較的単純であった。また、一検体内での多様性(α多様性=ある生息環境内の多様性)と各個体間の同一生息環境検体の多様性の比較(β多様性=別々の環境間の種多様性の違い)は大きく異なる。例えば、唾液はOTU(operational taxonomic unit、操作的分類単位)のα多様性は高いが、β多様性は低い(唾液の中の微生物種は多いが、個人間で比較しても微生物種の種類は大体同じ)。逆に皮膚はβ多様性は高いが、α多様性は中程度。膣はOTUが高いがα多様性は最も低く、Lactobacillus種が多いため属レベルでのβ多様性も極めて低い。なお、同一個人間の時間ごとの変化は、個人間の差異より常に小さかった。

すべての体内生息環境およびすべての個人に存在する微生物の分類群(taxa=属generaの下の分類)はなかった。ただしいくつかの分岐群(clade)が広く存在することは分かった。ほとんどすべての個人のそれぞれの体内生育環境は一つか少ない特徴的な分類群(signature taxa)を持ち、例えば、口腔内の常在菌は主にStreptococcusであり、頬粘膜のHaemophilusがそれに次ぐなどのことが示された。

ヒトmicrobiomeの分類学的詳細は16Sプロファイリングを補うためのmetagenomeデータのマーカー配列を同定することによって得られた。病原体(Vibrio cholerae, Mycobacterium avium, Campylobacter jejuni, Salmonella enterica)は検出されなかったが、Helicobacter PyloriE.coliはわずかに見られた。すなわち、微生物叢(microbiota)は健康な構造をしていることが本研究でも示された。

Microbiomeの個体間の変異は、特異的で、機能的に関連し(functionally relevant)、個別化されたものである。例えば、口腔のStreptococcus種は、個人間で大きな種の違いが見られる。

この研究ではさらに、微生物コミュニティにおける代謝および機能的な経路(pathway)についても検討した。その結果、分類学的および機能的なα多様性は優位に相関した。また、微生物の分類群とは異なり、いくつかのpathwayは個体および体内生息環境を通じて普遍的であった。もっとも多く見られるpathwayとしては、ribosomeと転写の機構、核酸の交換、ATP合成、解糖系などの微生物の生命の基本となるものであった。

最後に、微生物叢の分岐群と代謝の両方と宿主の特性(年齢、性別、BMI、他の臨床的なメタデータ)との関連を検討した。その結果、960の微生物および酵素のpathwayの量は、15個体の形質とメタデータに有意に関連した。例えば、膣のpHは微生物構成と相関し、高いpHではLactobacillusが減少し代謝の多様性が増加していた。個体の年齢は皮膚のmetagenomeにエンコードされたpathwayの高度な変異と関連していた。

【結論】
今回、多くの個人と体内生息環境から採取したヒトmicrobiomeのデータは、欧米の健康人の正常微生物叢(microbiota)の特徴を初めて示したものである。さらに、microbiomeと臨床パラメータの関連も示され、micobiomeに基づいた疾患の理解も進むことになるだろう。
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by md345797 | 2012-07-10 18:07 | その他

ヒトmicrobiome研究の枠組み

A framework for human microbiome research.

Human Microbiome Project Consortium.

Nature. 2012 Jun 13;486(7402):215-21.

【まとめ】
ヒトの体には、さまざまな微生物コミュニティとそれらの遺伝子(microbiome)が存在し、ヒトの健康と病気に基本的な役割を果たしている。今回、NIH(米国立衛生研究所)によって設立されたHuman Microbiome Project Consortiumが、metagenome(微生物コミュニティの遺伝子情報)解析プロトコールための集団規模の枠組みを確立した。その結果、high-throughputなmetagenomeデータの作成、処理、解釈のための標準化された方法など、高品質な情報供給源とデータが得られることになった。この研究では、242人の健康な成人集団を対象に、15(男性)または18(女性)の身体部位から最大3回にわたって採取した試料について述べている。これらから、16S ribosomal RNA遺伝子による5,177種の微生物分類プロファイルと、3.5 x 10の12乗塩基のmetagenome塩基配列がこれまでに明らかにされた。並行して、ヒトの体から単離された約800の参照ゲノムの塩基配列 も決定された。これらのデータは、ヒトmicrobiomeの豊富さと多様性を表す最大の情報資源であり、将来の研究のための枠組みを提供すると考えられる。

【論文内容】
米NIHによって設立されたHuman Microbiome Project (HMP) Consortiumは、健康なヒトコホートにおける微生物コミュニティとその宿主であるヒトとの関連についての報告をまとめた。さらに、microbiomeとさまざまな疾患との関連について、microbiome研究の倫理的・社会的重要性についても検討した。本論文では、臨床検体、参照ゲノム、配列決定と遺伝子注釈のプロトコール、方法、解析について報告する。この研究では、2か所の施設(Baylor College of MedicineとWashington University School of Medicine)において、242ドナーから15(男性)または18(女性)の身体部位(気道、皮膚、口腔、腸、膣)から数回にわたって5,298サンプルを採取した。

Megagenomeデータセットを得るために、まず16S rRNA遺伝子配列決定(16S)のプロトコールを評価、決定した。次に、681サンプルを用いてwhole-genome shotgun(WGS)による遺伝子配列決定を行った。これらのデータセットによりヒトmicrobiomeの全体像を得て、遺伝子とOTU(operational taxonomic unit、操作的分類単位)の解析により、分類学的同定を行った。

さらに、これらHMPで得られた腸微生物遺伝子カタログを、他の大規模腸microbiomeプロジェクトであるmetaHITで得られたものと比べたところ、比較的同様の遺伝子カタログが得られていることが分かった。

本研究で得られたカタログは、健康成人におけるヒトmicrobiomeデータとしては最大で最も包括的なものである。このデータの解析により、新たな病原体、遺伝子機能、代謝ネットワーク、そして健康と病気と微生物コミュニティとの関連についての発見が可能になるだろう。
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by md345797 | 2012-07-10 18:04 | その他

生物学的過程にロバストネスをもたらすmicroRNAの役割

Roles for MicroRNAs in Conferring Robustness to Biological Processes.

Ebert MS, Sharp PA.

Cell. 2012 Apr 27;149(3):515-24.

【総説内容】
MicroRNA (miRNA)は20-24塩基からなるRNAで、標的遺伝子のmRNAの3’ UTRに結合して、その発現を転写後に抑制する。蛋白をコードする遺伝子の60%以上がmiRNAの標的であると考えられている。また、ロバストネス(robustness)とは、システムが内的・外的な擾乱に対して、その機能を維持する能力のことをさす。生物学では、蛋白レベル、細胞レベル、個体レベルなど様々なレベルでのロバストネスが想定されている。この総説では、miRNAが生物学的なロバストネスにどのように貢献しているかを概説する。

正確な発生分化のための調節
最も早くに見出されていたmiRNAの機能は、発生を決まった方向に遷移させる役割であった。例えば、Drosophilaの胚で神経外胚葉前駆細胞がニューロンに分化する過程では、ニューロンの遺伝子はmiRNAであるmiR-124によって抑制される部位を持っていないが、同じ神経外胚葉由来である表皮組織の遺伝子はmiR-124によって抑制される部位を持っているため、miR-124が作用すると表皮組織ではなくニューロンに分化する発生過程が促進される。同じく、表皮組織に分化する過程では外胚葉に特異的なmiR-9aが作用しニューロンへの分化を抑える、という相互作用のパターンが見られる(下図)。このようなパターンを(ニューロン、表皮組織が両者ともお互いの発生をどちらも抑制しあう;位相が合っているという意味で)コヒーレントな調節と呼ぶ。
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細胞運命決定のためのフィードフォワード・フィードバック
コヒーレントなフィードフォワードループ(FFL)とは、下図のAのように、コンポーネントAはCを抑制するが、AはさらにBを活性化する。そのBもCを抑制するといったものである(A、BもどちらもCを抑制する点が「コヒーレント」である)。もし、Aのシグナルが一時的に減少しても、その影響は残存するBによって代償され、下流のCを確実に阻害することができる。このネットワークモチーフは分化系列の決定においてよく見られ、例えば顆粒球形成において、C/EBPαはE2F1の転写を阻害するが、C/EBPαは同時にmiR-223の発現を促進しこれが転写後調節を介してE2F1の発現を抑制している。さらに、このフィードフォワードループには、E2F1がmiR-223の発現を阻害するというフィードバックループが連動している。このフィードバックループにより、細胞は「消去すべき一時的な外乱」を受けたのではなく、「維持されるべき持続的な変化」を遂げる方向に進む。また、下図のBでは、コンポーネントAとBの間に相互に負のフィードバックが見られる。このモチーフは、骨髄系前駆細胞が顆粒球に分化したのち顆粒球が再び前駆細胞の状態に戻るのを防ぐために、転写因子NFI-AがmiR-223を阻害し、さらにmiR-223がNFI-Aを阻害することにより安定性を保つ際に用いられている。下図のCでは、コンポーネントAとBの間に相互に正のフィードバックが存在している。これは線虫において、LIN12がmiR-61の転写を活性化し、miR-61がLIN12の負の制御因子であるvav-1を抑制することで、LIN12活性を保ち分化決定を促進する機構に見られる。
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正のフィードバックが小さな変化を増幅する
個々のmiRNAがターゲットの蛋白発現量に及ぼす影響はわずかであるが、蛋白発現量のわずかな変化が増幅されると大きい生理学的な効果をもたらしうることは以下のような例でみられる(下図)。癌細胞では、Srcの一時的な活性化がNFκB活性化をもたらし、活性化されたNFκBはIL6の転写を活性化する。NFκBは一方で、Lin-28Bの活性化を介してmiRNAであるlet-7の転写を阻害する。ここでlet-7の減少は、直接の抑制ターゲットであるIL6およびRasの抑制解除(derepression)につながり、これらの増加がNFκBのさらなる活性化を介してIL6の増加を増幅する。増幅されたIL6はSTAT3を大きく活性化し、細胞成長を促進する。正常の組織ではlet-7が多く発現しているためにNFκB/IL6間の正のフィードバックは抑制されるが、癌ではlet-7発現が低下しており、NFκB/IL6間の正のフィードバックが暴走してしまう。ヒトの癌ではさらに癌原生の変異(v-Srcやv-Ras)がこの正のフィードバックをさらに増強する。
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バッファーとしてのmiRNA
miRNAには、遺伝子発現量の変化に対抗するための「バッファー」としての働きがある。発現量の変化を抑える一つの方法が、下図AのようにコンポーネントAがBを活性化し、BがAを阻害するという負のフィードバックループである。例えば、MeCP2はBDNFを介して神経のmiR-132の発現を増加させ、miR-132はMeCP2の発現を抑制する。この負のフィードバックループにより、MeCP2の恒常性が保たれる(MeCP2の発現は、増加しすぎても減少しすぎても神経発生の障害を起こしてしまう)。蛋白発現量は、以下で述べるような内因性のノイズや外因性のノイズによってランダムに変動しうるが、miRNAはその変動を小さくする働きを担っている。

内因性のノイズとは、転写のような「確率的なイベントから生じる変動」のことをいう。転写は確率的バースト(ある間隔をおいて送り出される信号)として起こり、転写速度が高いとノイズは少なくなる。翻訳はmRNAバーストを増幅するため、ノイズは翻訳速度の増加とともに直線的に増加する。したがって、ある遺伝子が高速で転写され、同時にmiRNAを用いて翻訳速度を低下させると、細胞は発現蛋白量の変動を少なくできる。下図Bでは、単位時間あたり同じ20分子の蛋白(紫のバー)を発現させる場合、転写速度が大きければmRNAバースト(黒のバー)が多くなり、それぞれのmRNAの翻訳速度が小さければ蛋白発現量の変動は少なくなることを示している。
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また、外因性のノイズとは、転写因子などの違いから生じる変動のことをさす。ある遺伝子の外在性のノイズはターゲット遺伝子を転写因子と共同で調節するmiRNAによって減少させることができる(上図C右)。このようなモチーフは、ターゲット遺伝子は転写因子により発現が「促進」、miRNAにより発現が「抑制」と位相が違うため、「インコヒーレントなフィードフォワードループ」と呼ばれる。ここでもし転写因子活性が低下しても、miRNAの抑制解除によりターゲット遺伝子の発現は増加する。すなわち、蛋白発現量は転写因子活性の変動(外因性のノイズ)を受けにくい。mRNA量とそれに伴う蛋白発現量の関係のグラフ(図C左)を見ると、インコヒーレントなフィードフォワードループでは蛋白発現量が安定している。これらはmiRNAがバッファーとして作用している例と考えることができる。

mRNA発現の閾値効果と内因性のmiRNA競合
最近、miRNAターゲット遺伝子は、それ以下では発現が効果的に抑制され、それ以上ではmiRNA効果を超えるという「mRNAの閾値」を持つことが示された(下図参照)。ターゲットmRNAの量がある閾値以下のとき、ターゲットは強く抑制され(赤の部分)、閾値以上であれば抑制は弱い(青の部分)、というように、miRNAとそのターゲットmRNAの量の関係によってターゲット蛋白の量は非直線的に増加する(下の白線)。
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また最近、内因性の転写産物で、自然にできたmiRNAデコイ(おとり)のように働く「競合内因性RNA(competitive endogenous RNA; ceRNA)」の存在が報告されている。細胞あたりどのくらいの量のceRNA分子が、どのくらいの量のmiRNAに競合しているのかという定量的な検討はまだ行われていない。
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by md345797 | 2012-05-15 06:45 | その他

γ-グルタミルトランスペプチダーゼで活性化される蛍光プローブの局所スプレーによるがんの迅速な検出法

Rapid cancer detection by topically spraying a γ-glutamyltranspeptidase-activated fluorescent probe.

Urano Y, Sakabe M, Kosaka N, Ogawa M, Mitsunaga M, Asanuma D, Kamiya M, Young MR, Nagano T, Choyke PL, Kobayashi H.

Sci Transl Med. 2011 Nov 23;3(110):110ra119.

【まとめ】
蛍光プローブは微小ながんを可視化するために有用であるが、バックグラウンドのシグナルが高いことや投与から検出まで時間がかかることなどが問題になっていた。この研究では、迅速に活性化される、がん選択的な蛍光イメージングプローブであるγ-glutamyl hydroxymethyl rhodamine green (gGlu-HMRG)を合成した。正常組織では発現しておらず、さまざまながん細胞の細胞膜に過剰発現しているγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)によってこのプローブのグルタミン酸が切断されると、プローブの脱消光(dequenching)が起こり、蛍光を発する。このgGlu-HMRGのin vitroでの活性化を、11種のヒト卵巣がん細胞で確認した。また、卵巣がんの腹膜播種のin vivoマウスモデルにおいて、gGlu-HMRGを局所的にスプレーすると1分以内に活性化が起こり、がんとバックグラウンドの高いシグナルコントラストが得られた。gGlu-HMRGプローブは、がん細胞表面のGGTとの接触により迅速で強力な活性化を受けるため、外科手術または内視鏡検査に臨床応用可能である。

【論文内容】
迅速で正確ながん組織の検出と完全な切除が、がんの治療に必要である。これを高感度・低コストで可能にする蛍光プローブは、「always on」(常に一定のシグナルを発し続ける)プローブと「activatable」(ある環境下で初めて蛍光を発する)プローブに大別される。Always-onプローブはバックグラウンドシグナルが高くなり、 十分なtarget-to-background ratios (TBRs)を得るのが難しく、activatableプローブは活性化に数時間から数日かかりリアルタイムの臨床応用が困難という欠点があった。このグループでは、がん特異的抗体を用いたactivatableプローブを開発したが、十分なTBRを得るために少なくとも1時間かかるものであった。この研究では、ヒトの多くのがん細胞の細胞表面に発現しているGGTを利用して、通常は蛍光団が消光(quenched)している状態だが、GGTによる切断を受けるとこの状態が解除され蛍光を発するプローブ、gGlu-HMRGを論理的に設計した。

アミノペプチダーゼ反応性の蛍光プローブの開発
gGlu-HMRGプローブは親水性のため細胞膜を透過しないが、癌細胞表面のGGTにより加水分解されてHMRGとなると蛍光を発し、疎水性となるため細胞膜を透過して細胞内のリソソームに蓄積する。さまざまなアミノペプチダーゼの酵素活性を検出するために5種類のアミノ酸をもつプローブ(gGluのほかに、Leu、Gly、Ile、Phe)を合成した。これらは無色・無蛍光(分子内閉環のため消光)だが、それぞれのアミノペプチダーゼにより加水分解される(開環になる)と、可視光の蛍光を発する。

がん細胞におけるアミノペプチダーゼ活性と特異性の評価
腫瘍関連酵素であるGGTとLAP(leucine aminopeptidase)のプローブ(gGlu-HMRGとLeu-HMRG)をそれぞれヒト卵巣がん細胞SHIN3および正常細胞HUVECsに添加した。その結果、gGlu-HMRGプローブにより、SHIN3細胞のみで蛍光シグナルが得られ、高いGGT活性を検出することができた(この区別はLeu-HMRGプローブを用いてはできなかった)。また、gGlu-HMRGプローブによるGGTの検出は、GGT阻害剤やGGT-1のsiRNAを用いて抑制された。

gGlu-HMRGプローブによるSHIN3腫瘍細胞のin vivo検出
上記5種のアミノペプチダーゼプローブおよびFDA(fluorescein diacetate=esterase反応性プローブ)をSHIN3腫瘍を持つマウスの腹腔内に注入した。Leu-HMRGとFDAは、腫瘍部位とバックグラウンドで非特異的に蛍光を発したが、gGlu-HMRGは高いTBRをもって腫瘍部位を蛍光検出し、直径1mm未満の微小腫瘍部位も裸眼で可視化することができた。さらにSHIN3腫瘍を持たないマウスにgGlu-HMRGを注入しても蛍光は見られず、血清中や正常組織でのバックグラウンドのGGT活性が低いことが示された。

gGlu-HMRG によるin vitroでの卵巣がん細胞、およびin vivoでの腹膜腫瘍の蛍光検出
gGlu-HMRを、in vitroで11種のヒト卵巣がん細胞株と、in vivoで移植した6種の卵巣がんに添加した。その結果、11の細胞株はすべてgGlu-HMRGプローブにより蛍光検出された。また、6種の卵巣がんを腹膜に移植したマウスの腹腔内に、gGlu-HMRGプローブを内視鏡でスプレーし観察した(食道がんの検出にルゴール液をスプレーしたり、早期胃がんや大腸がんにメチレンブルーをスプレーするのと同様)ところ、4種の卵巣がんでスプレー後数分で蛍光シグナルが観察された。この蛍光強度や時間経過はがん細胞の種類によって異なっていた。また、麻酔した生きたマウスの腹膜に存在するSHIN3の小結節(1mm以下)はgGlu-HMRGのスプレー後30秒で検出され、蛍光ガイド下で内視鏡的に切除することができた。

gGlu-HMRGによるSHIN3腫瘍の微小な腹膜播種のイメージング
Red fluorescent protein(RFP)-transfected SHIN3細胞(SHIN3-RFP)のマウスの腹膜播種を、gGlu-HMRGプローブを腹腔内注入することにより検出した。その結果、gGlu-HMRGの腹腔内注入10分後には、gGlu-HMRGの緑色とSHIN3-RFPの赤色の蛍光がオーバーラップした。また、gGlu-HMRGプローブ(緑色蛍光シグナル閾値10 arbitrary units)によるSHIN3-RFP細胞(赤色蛍光シグナル閾値4 a.u.)の検出の感度・特異度は、どちらも100%だった。

【結論】
gGlu-HMRGプローブを用いることにより、正確な生検や腫瘍切除が可能になり、腫瘍断端や残存腫瘍を検出することができる。GGTはすべてのがんの特異的なマーカーではないが、腫瘍表面に存在する酵素が分かれば同様の方法で蛍光プロープを開発できると考えられる。
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by md345797 | 2012-02-21 07:43 | その他

Irs1のSerine/Threonineリン酸化によるインスリンシグナル伝達の調節

The Regulation of Insulin Signaling by Serine/Threonine Phosphorylation of Irs1

Morris F. White, Children's Hospital Boston

Keystone Symposia:Pathogenesis of Diabetes Feb 2, 2012, Santa Fe.

Irs1は、インスリン、炎症性サイトカイン、脂肪酸などによりSer/Thr残基がリン酸化される。Irs1のSer/Thrリン酸化は一般的にインスリン抵抗性に関連していることが分かっており、インスリン抵抗性のメカニズムの一つとなっている。Irs1には少なくとも30のSer/Thrリン酸化部位があり、インスリンシグナル伝達を調節しているが、生理的な状態でそのリン酸化を定量するのは困難であった。

そこで、このグループでは、30のSer/Thrリン酸化部位に特異的なモノクローナル抗体を作製した。これを用いて培養細胞(L6、CHO、FAO細胞)において、basalの各Ser/Thr部位のリン酸化およびインスリンによるリン酸化増加のtime courseを定量することができた(細胞の種類、各部位によってリン酸化の程度は異なっていた)。また、kinase阻害薬(PI3K、AKT、TOR、S6Kの各阻害剤)を用いて、インスリンによるSer/Thrリン酸化とTyrリン酸化に逆の関係があることが示された(どの部位のSer/Thrリン酸化がTyrリン酸化の低下とどの程度相関するかまで示された)。

特にIrs1のS302, S307, S325およびS346のリン酸化は、培養細胞においてtyrリン酸化と負の相関を示した。そこで、Ser307またはSer302をAlaに置換したノックインマウスを作製した。その結果、高脂肪食を負荷した307A/Aマウスは、コントロールマウスに比べ強いインスリン抵抗性を示した。さらに307S alleleをもつIrs1/Irs2肝臓ダブルノックアウト(LDKO)マウスは耐糖能正常であるが、307A alleleを持つものは耐糖能異常・インスリン抵抗性をきたした。一方、302A/Aマウスは302S/Sマウスと比較してIrs1 tyrリン酸化は同様であり、一つの302Aまたは302S alleleはいずれもLDKOマウスの耐糖能を回復した。したがって、Ser302のインスリンシグナルに対する効果は少なく、Ser307リン酸化はin vivoでは(培養細胞の実験結果と異なり)インスリン感受性を促進すると考えられた(Cell Metab, 2009)。
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by md345797 | 2012-02-03 18:46 | その他

脂肪組織のインスリンシグナル伝達障害

Insulin Signaling Dysfunction in Adipose Tissue

Michael P. Czech, University of Massachusetts Medical School

Keystone Symposia:Pathogenesis of Diabetes Feb 2, 2012, Santa Fe.

このグループはsiRNAスクリーニングを用いて、脂肪細胞のインスリンシグナル伝達を負に制御する新規分子の同定を試み、Map4k4を同定した。Map4k4は、脂肪組織に存在する、脂肪細胞、マクロファージ、内皮細胞の3種の細胞に発現し、マクロファージのサイトカイン(IL-1とTNF-α)発現を調節し、脂肪合成を抑制する(Nature, 2009)。内皮細胞特異的Map4k4欠損により内皮細胞の活性化(=マクロファージの脂肪組織への浸潤に必要)が阻害できる。以上より、Map4k4は、脂肪組織の脂肪細胞、マクロファージ、内皮細胞で作用し、脂肪組織の機能不全を促進する因子と言える。

また、脂肪組織マクロファージが本当に脂肪組織機能不全の原因となっているかを検討するため、内臓脂肪組織(VAT)マクロファージに特異的に gene silencingができる方法を検討した。脂肪組織のマクロファージにsiRNAを到達させるため、マクロファージβ-glucan受容体のリガンドであるβ1,3-D-glucanによってカプセル化したsiRNA(glucan-encapsulated siRNA particles: GeRPs)が利用されている(Biochem J, 2011)。この方法でGeRPsを作用させると、ob/obマウスの精巣上脂肪組織(VAT)のマクロファージのほとんどがGeRPsを含むようになる(肝や皮下脂肪組織のマクロファージにはGeRPsは行かない)。これにより、VATマクロファージに特異的なgene targetingが可能となっている。
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by md345797 | 2012-02-03 18:25 | その他

FGF21の代謝における多様な役割

Multiple Metabolic roles of FGF21

Eleftheria Maratos-Flier, Beth Israel Deaconess Medical Center

Keystone Symposia:Pathogenesis of Diabetes Feb 2, 2012, Santa Fe.

マウスに高脂肪食(HF)を負荷すると体重が増加するが、同じカロリーのケトン誘発食(ketogenic diet:KD)を負荷すると体重は減少する。マウスにHFとKDを負荷した場合に肝で発現が増減する遺伝子をAffimetrixのDNA microarrayでチェックしたところ、KDでFGF21の発現が大きく増加することが明らかになった。

肝におけるFGF21をadenovirusでノックダウンすると、KDで脂肪肝・TG増加をきたした。さらに、FGF21欠損マウスは、中程度の肥満、中程度の過食、耐糖能障害を示し、KDで肝重量が増加、脂肪滴増加が認められた。これらの結果から、FGF21は肝で発現し、肝をターゲットとし(肝のFRS2、ERK1/2リン酸化が増加)し、肝の脂質酸化を調節していると言える。

肥満マウスではFGF21の発現が多く、肥満では「FGF21抵抗性」があると考えられる。実際、肥満マウスにFGF21を投与した場合、肝でのERK1/2リン酸化は低下している。

また、FGF21は寒冷に対する熱産生に重要な役割を果たしている。寒冷条件下では、inguinal WATのFGF21発現は増加し、PGC-1αとUCP1の発現を増加させている(「brite」脂肪細胞に変化させている)。このとき血中FGF21濃度は変化していない。FGF21はhormonalではなく、WATにおいてautocrine様に局所で作用していると言える。FGF21欠損マウスは、野生型と違って、寒冷条件下で体幹温度が低下してしまう。これは、寒冷下でPGC-1α、UCP1の発現が少ない(すなわちbrite脂肪細胞への転換が少ない)ことによる。通常のマウスでも、3日間FGF21を注入すると、WATでUCP1およびBATマーカーの発現が認められ、寒冷条件に対するWATの褐色化が起こる。

以上の知見から、FGF21は古典的な「ホルモン」とは言えない。肝に注目するとhepatokineであり、WATを褐色化させるadipokineでもあり、いろいろな臓器で産生され作用するomnikineとでも言えるものである
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by md345797 | 2012-02-03 07:00 | その他

脂肪組織のインスリン抵抗性のメカニズム

Mechanistic Insights into Adipose Tissue Insulin Sensitivity

Philipp E. Scherer, University of Texas Southwestern Medical Center at Dallas, USA

Keystone Symposia:Pathogenesis of Diabetes Feb 2, 2012, Santa Fe..

①脂肪組織におけるHIF1αは高脂肪食に伴う肥満の発症に重要な役割を果たしている。HIF1α阻害剤で高脂肪食による肥満・耐糖能障害が改善される。また、DOX誘導性に脂肪細胞特異的にdn-HIF1αを発現させると、高脂肪食による肥満・TG増加が抑制される。
②VEGFによる血管新生は代謝に好影響をもたらす。VEGFのトランスジェニックマウスで血糖・TGが低下し、脂肪肝が改善、WATの褐色化(PGC-1α、UCP1の発現増加)が認められる。VEGFのモノクローナル抗体(mcr84IgG)による阻害は、空腹時インスリン値およびTGの増加をもたらす。ただし、脂肪組織が増殖しすぎたときには、VEGFの中和は逆に代謝に良い影響をもたらす。
③脂肪組織と腫瘍増殖をつなぐ分子として、collagen VIの切断産物であるendotrophinが同定された。ob/obマウスではWATでendotrophinが増加している。MMTV(マウス乳癌ウイルス)プロモーターによりendotrophinを過剰発現させたトランスジェニックマウスは、乳腺の腫瘍成長、転移が増加しており、腫瘍の線維化や血管新生、EMT(Epithelial-mesenchymal transition;上皮間葉移行)が促進されている。
④また、正常な脂肪組織の生存にはPPARγが必要であることを、脂肪細胞特異的なinducible deletion of PPARγによって示した。
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by md345797 | 2012-02-03 06:59 | その他

PPARγ1のエピジェネティックなプログラミングは、肥満におけるマクロファージの極性化を調節する

Epigenetic programming of PPARgamma1 regulates macrophage polarization in obesity.

Xianfeng Wang, Hang Shi and Bingzhong Xue.
Wake Forest University School of Medicine.

Keystone Symposia:Pathogenesis of Diabetes Feb 2, 2012 (Poster 438)

肥満は、classically activated M1 adipose tissue macrophages (ATMs)の増加と、alternatively activated M2 ATMsの減少を伴っており、これが肥満に伴う炎症とインスリン抵抗性に寄与している。この根底にはエピジェネティックなメカニズムが重要な働きをしていると考えられる。この研究では、マクロファージに飽和脂肪酸(SFA)を添加するとDNA methyltransferases(DNMT1)の発現が有意に増加することを明らかにした。さらに炎症性サイトカインであるTNFαは肥満マウスから単離したATMsで高値を示すが、classically activated M1 ATMsに比べ、alternatively activated M2 ATMsでは発現が低い。

DNAメチル化を薬剤(5-aza-2'-deoxycytidine)によりまたは、遺伝的に(myeloid-specific DNMT1 knockout mice:MD1KO)から採取したマクロファージを用いて)阻害することにより、マクロファージの極性化をalternatively activated M2形質にすることができた(M2マクロファージのマーカーであるarginase I (ARG1), mannose receptor, Dectin-1, programmed cell death 1 ligand 2, interleukin 1 receptor antagonist, interleukin 10および、macrophage alternative activationを調節する転写因子PPARγ1の発現で確認)。その一方で、マクロファージにDNMT1を過剰発現すると、interleukin 4 (IL4)誘導性ARG1およびPPARγ1の発現が大きく抑制された。

PPARγ1のプロモーターおよび5'-untranslated regionsはCpG部位を多く含む。ステアリン酸とTNFαはPPARγ1の発現を有意に抑制するが、これは、5-メチルシチジンと、DNMT1のPPARγ1プロモーターへの結合、PPARγ1プロモーターDNAメチル化を増加させた。なお、MD1KOマウスは高脂肪食を負荷しても、体重は変化しないのにGTT、ITTにおいてインスリン感受性が亢進していた。

以上の結果より、DNAメチル化は、マクロファージの極性化の調節に重要な役割を果たしており、PPARγ1プロモーターのDNAメチル化を阻害することにより、マクロファージの極性化をalternatively activated M2形質に促進することができる。一方で、飽和脂肪酸やTNFαのような炎症性サイトカインはPPARγ1プロモーターのDNAメチル化を増加させ、マクロファージの極性化を障害し、肥満における炎症とインスリン抵抗性をもたらすと考えられる。
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by md345797 | 2012-02-03 06:17 | その他