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カテゴリ:腎高血圧( 5 )

Rac1 GTPaseは、ミネラロコルチコイド受容体(MR)を活性化させ、食塩感受性高血圧の発症に必須である

Rac1 GTPase in rodent kidneys is essential for salt-sensitive hypertension via a mineralocorticoid receptor-dependent pathway.

Shibata S, Mu S, Kawarazaki H, Muraoka K, Ishizawa K, Yoshida S, Kawarazaki W, Takeuchi M, Ayuzawa N, Miyoshi J, Takai Y, Ishikawa A, Shimosawa T, Ando K, Nagase M, Fujita T.

J Clin Invest. 2011 Aug 1;121(8):323-43

【まとめ】
以前このグループでは、アルドステロンによって調節される核内転写因子であるミネラロコルチコイド受容体(MR)と、small GTPaseであるRac1のクロストークが蛋白尿を伴う腎臓病に重要な役割を果たしていることを報告した。今回の研究では、高食塩負荷が食塩感受性動物の腎でRac1を活性化し、MR活性化を介して血圧上昇と腎障害をきたすことを明らかにした。

高食塩食は、食塩感受性Dahl-SラットではRac1の活性増加を、食塩非感受性Dahl-Rラットでは活性低下をもたらす。高食塩負荷したDahl-Sラットは、血清アルドステロン値が低下しているにもかかわらず、Rac1の活性増加によってMRシグナルが増加しており、Rac1を阻害するとMRの抑制を伴って高血圧と腎障害が防止された。さらに、アルドステロン注入ラットおよび、副腎切除後にアルドステロン補充を行ったDahl-Sラットでは、食塩誘導性のRac1活性化とアルドステロンが相互依存的にMRの活性亢進と高血圧を示した。最後に、食塩感受性におけるRac1の役割を、Rho GDP-dissociation inhibitor αを欠損したマウスで確認した。以上より、Rac1は食塩感受性の決定因子であり、この知見は食塩感受性の高血圧および腎障害のメカニズムの解明につながると考えられた。

【論文内容】
現代社会では塩分の過剰摂取により、アルドステロンの減少にもかかわらず、高血圧、心血管障害、腎障害の進行が進んでいる。最近、このグループではMRとRac1のシグナルのクロストークを同定した。本研究では、高食塩食下でRac1の活性化が食塩感受性高血圧を起こすことを示す。

Rac1はMRの調節を介して、血圧の食塩感受性に関与している
Dahl食塩感受性ラット(Dahl-S)とDahl食塩非感受性ラット(Dahl-R)にそれぞれ正常食塩食(0.3%)と高食塩食(8%)を3週間投与したところ、Dahl-Sに高食塩食を投与したときのみ血圧が上昇し、アルブミン尿が出現した。アルドステロン濃度はDahl-RよりDahl-Sの方が低く、それぞれ高食塩負荷でさらに低下した。腎でのRac1活性を測定したところ、高食塩食を投与したDahl-SでRac1活性が増加し、核へのMRの移行も増加していた。Dahl-Rでは高食塩負荷でRac1活性、MRの核移行も低下していた。

Dahl-Sの食塩感受性高血圧におけるMRシグナルの亢進はRac1活性化によるものかを検討するため、これらのラットにRacの特異的阻害剤Nsc23766を投与した。その結果、Dahl-Sに高食塩負荷したラットの血圧が低下し、尿アルブミンが減少した。また、Rac1活性とMRの核への移行、MRの活性(sgk1発現)が低下し、腎硬化症も減少した。以上より、高食塩食はRac1活性化を介してDahl-SのMR活性を増強し食塩感受性高血圧を惹き起こすことが分かった。

食塩とアルドステロンの協調作用におけるRac1の役割
食塩とアルドステロンは協調してMRを活性化し臓器障害を起こすことが知られている。SDラットにアルドステロンを持続注入し、低食塩食(0.05%, Aldo+LS)および高食塩食(8%, Aldo+HS)を負荷した。その結果、Aldo+HSのみ血圧が上昇し、このラットでのみRac1活性上昇、MR活性化が増加した。このAldo+HSにNsc23766を投与すると、Rac1活性が低下、MR活性も低下し、血圧が正常化、尿蛋白も減少した。

さらに、高食塩食負荷Dahl-Sラットでのアルドステロンの影響を見るために、このDahl-Sラットの副腎摘出を行った後高食塩食を負荷した。このラットのアルドステロンは感度以下で、高血圧とアルブミン尿は完全にブロックされた。腎のRac1活性も抑制されていたため、高食塩負荷によるRac1活性化にはアルドステロンが必要であることが分かった。このラットでは、MRの核への局在・活性化(sgk1発現)が低下していた。このラットにアルドステロンを補充すると、これらは回復した。したがて、MRシグナル亢進と食塩感受性高血圧の発症には、Rac1シグナルとアルドステロンの「相互依存性」が関与していると考えられる。

Arhgdia-/-マウスは食塩感受性に血圧上昇・腎機能低下を認める
GDIαは非活性型Rac1に結合し、非活性を保つ分子である。この欠損マウスであるArhgdia-/-マウスは、アルドステロンは低値であるが、MR活性化は亢進しており、食塩感受性の高血圧と腎硬化症を起こす。このマウスに高食塩負荷を負荷した場合に生じるアルブミン尿は、Nsc23766およびeplerenoneによって改善した。

【結論】
高食塩食負荷により、Dahl-SラットではRac1活性化が起きる(Dahl-Rでは起きない、この違いの原因は何らかの遺伝子の差によるものだが不明)。Rac1活性化により、アルドステロンが低値であってもMRの活性化が起こり、Na保持によって食塩感受性の高血圧・腎機能障害がもたらされる。高食塩とアルドステロンは相互依存的にRac1を活性化し、Rac1による病的な過程を促進する。
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by md345797 | 2011-11-09 07:01 | 腎高血圧

Rac1 GTPaseによるミネラロコルチコイド受容体(MR)機能の修飾:蛋白尿を伴う腎臓病での役割

Modification of mineralocorticoid receptor function by Rac1 GTPase: implication in proteinuric kidney disease.

Shibata S, Nagase M, Yoshida S, Kawarazaki W, Kurihara H, Tanaka H, Miyoshi J, Takai Y, Fujita T.

Nat Med. 2008 Dec;14(12):1370-6.

【まとめ】
ミネラロコルチコイド受容体(MR)の阻害によって、蛋白尿を伴う腎臓病の転帰が改善することが示されている。しかし、腎臓病におけるMR依存的な転写活性の調節機構についてはほとんど知られていない。この研究では、Rac1(低分子量G蛋白Rhoファミリーに属する)が、MRシグナルの強力な活性化因子として働くという新しい役割を明らかにした。

HEK293細胞に恒常活性型(CA-Rac1)を過剰発現させると、MRのレポーター活性が亢進した。CA-Rac1は、糸球体上皮細胞(podocyte)でもMRの核への集積を促進した。さらに、Arhgdia-/-マウス(Rho GDP解離抑制因子α欠損マウス)では、大量のアルブミン尿やpodocyteの障害を伴う腎機能障害が認められる。このマウスのアルドステロン濃度は正常であるが、腎臓でRac1活性とMRシグナルの増加が認められた。このマウスのMRの過剰な活性化と腎障害は、Rac特異的な低分子阻害剤によって軽減された。さらに、Arhgdia-/-マウスのアルブミン尿と組織学的変化はMRの阻害によって抑制されたことから、Rac1-MRの病的な役割が確認された。これらの結果から、Rac1とMRのシグナルクロストークがMR活性を修飾することが明らかになり、Rac1は慢性腎臓病(CKD)の治療標的になることが示された。

【論文内容】
MRの活性はそのリガンド(アルドステロン)以外にも影響されることが知られていたが、そのtransactivationの機構は不明であった。そこで、Rho GTPaseがMRの機能に及ぼす影響を検討するため、HEK293細胞に恒常活性型Rac1(CA-Rac1)を発現させたところ、アルドステロンなしでもMR受容体の転写活性を促進することが示された。

次に、Rho GTPaseを不活性のままにしておくRho GDP dissociation inhibitorに注目し、疾患モデルとしてArhgdia(Alpaca Rho GDP dissociation inhibitor (GDI) alpha)欠損マウスについて検討した。このマウスでは、(Rac1を不活性にする機構が欠損しているため)アルドステロンが正常にもかかわらず、MR活性が増加し、蛋白尿と腎障害が認められる。

このArhgdia-/-マウスに、Rac特異的な阻害薬であるNSC23766を投与すると、腎のRac1活性が低下、MRシグナルも低下し、蛋白尿と腎機能は改善した。

最後にArhgdia-/-マウスにMRの選択的アンタゴニストであるeplerenoneを投与したところ、このマウスの蛋白尿はほぼ消失した。また、電顕像でも腎硬化症は改善した。(NSC23766では蛋白尿が部分的に改善し、eplerenoneではほぼ完全に消失した理由として、NSC23766がRac1を完全には阻害しない可能性、またはRac1がMRを活性化する経路以外にもMR活性系が在る可能性、などが考えられる。)

本研究で、small GTPaseであるRac1のMRの調節因子という新しい役割が明らかになった。また、in vivoでRac1を阻害することが腎機能に好影響を与えることを初めて示した。
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by md345797 | 2011-11-07 22:42 | 腎高血圧

慢性腎臓病

Chronic kidney disease.

Levey AS, Coresh J.

Lancet. Aug 15 online publication.

【総説内容】
慢性腎臓病(CKD)とは、腎の構造と機能に関する不均一(heterogeneous)な疾患を表す用語である。2002年の米国ガイドラインでは、世界的な公衆衛生問題として、早期には一般内科医が管理するものという認識が高められた。CKDの管理は、GFRとアルブミン尿によるステージに基づいた分類に従って行われる。CKDはルーチンの検査で発見でき、進行を遅らせ、心血管疾患のリスクを減らしQOLを改善する治療が可能である。

概念的なモデル・定義・転帰
CKDの概念的なモデルは、正常→高リスク→腎障害→GFR低下→腎不全→死へと進行するもので、各段階から合併症にいたる危険がある。CKDの定義は、現在の腎障害(アルブミン尿)または腎機能低下(GFRが60ml/min/1.73m2未満)が3か月以上続くことである。CKDは、GFRに基づいて5つのステージに分けられる(GFR 90以上=stage1、60-89=stage2、30-59=stage3、15-29=stage4、15未満=stage5)。腎不全はCKDの最も重篤な転帰であり、GFR 15未満と定義される。

CKDの原因
先進国では、CKDは加齢、糖尿病、高血圧、肥満、心血管疾患などが関連しており、原因疾患としては糖尿病性腎硬化症、高血圧性腎硬化症がある。発展途上国では、感染や薬剤・毒物が原因の糸球体疾患・尿管間質疾患が多い。

CKDの発見と診断
CKD発見と診断のためには、5つのステップがある。① CKDのハイリスク(加齢、家族歴、急性腎障害の既往、心血管疾患およびそのリスク、自己免疫疾患、感染、薬剤など)を認識する、②血清クレアチニンの測定とGFRの推定、③GFRが60未満、または腎障害が3か月以上続いていれば CKDと判断、④糖尿病性の腎疾患か、そうでないか(糸球体疾患、血管疾患、腎移植後など)、⑤GFRによるステージングを行う。

CKDの管理
CKDの進行を遅らせ、アルブミン尿を減少させる:

40歳以降では通常、GFRが毎年0.75-1.00減少する。アルブミン尿、糖尿病、高血圧がある人はこの速度が速い。この進行を遅らせるのに最も推奨されるのは、 ACE阻害薬とARBの使用である。これらはアルブミン尿減少にも効果を示す。また、強化血糖コントロールは糖尿病腎症の進展遅延に有効である。

GFR低下による合併症を予防する:
薬剤の濃度の異常、細胞外液不足、造影剤の使用など、医療上の原因でGFRが低下することがある(NSAIDsやヨード造影剤による急性腎障害(AKI)など)。
尿毒症(uremia)は当初は無症状であるが、GFRの低下に伴い高血圧、貧血、副甲状腺機能亢進症、高リン血症、低Ca血症、アシドーシスなどをきたし、それぞれの治療が必要となる。また、ネフローゼ症候群は糸球体疾患の主要な症状の一つであり、ACE阻害薬・ARBによる尿蛋白の減少、塩分制限、浮腫のための利尿剤の投与などが必要となる。

問題点と今後の課題
加齢と血管疾患がGFRの低下に大きく関与するため、現在の定義ではCKDを過剰診断してしまうことが問われている。また、CKDの転帰を改善する大規模臨床試験が少ないことも、新規治療を臨床に導入する上で問題になっている。
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by md345797 | 2011-08-16 08:13 | 腎高血圧

TZDsは近位尿細管にてPPARγのnongenomicなシグナル伝達を介してNa+と共役したHCO3-の吸収を促進する

Thiazolidinediones Enhance Sodium-Coupled Bicarbonate Absorption from Renal Proximal Tubules via PPARγ-Dependent Nongenomic Signaling.

Endo Y, Suzuki M, Yamada H, Horita S, Kunimi M, Yamazaki O, Shirai A, Nakamura M, Iso-O N, Li Y, Hara M, Tsukamoto K, Moriyama N, Kudo A, Kawakami H, Yamauchi T, Kubota N, Kadowaki T, Kume H, Enomoto Y, Homma Y, Seki G, Fujita T.

Cell Metab. 2011 May 4;13(5):550-61.

【まとめ】
チアゾリジン系薬剤(TZDs)は、水分貯留の副作用が問題になるが、その機序は不明である。この研究では、TZDsが、近位尿細管においてNaと共役したbicarbonate(HCO3-)の再吸収を刺激することをin vitro、in vivoで明らかにした。この過程は、PPARγ/Src/EGFR/ERK経路(PPARγによる転写活性化を介さない急性のシグナル伝達経路)を介し、ウサギ・ラット・ヒトで見られる(マウスでは見られない)。

【論文内容】
インスリン抵抗性改善に効果があるチアゾリジン系薬剤(TZDs)は、腎でのNa・水の再吸収を促進して浮腫を起こすことがあるが、そのメカニズムは不明である。PPARγを介したeptherial Na channel (ENaC)の転写促進が重要と考えられているが、それだけでないとする報告もある。

TZDsの、単離ウサギ近位尿細管のNa+/HCO3-輸送機能に対する作用
まず、TZDsが近位尿細管輸送を促進するかを検討するため、Na+-HCO3- cotransporterであるNBCe1に対するTZDsの効果を調べた。単離したウサギ近位尿細管にpioglitazone(PGZ)またはrosiglitazone(RGZ)を投与したところ、submicromolarの濃度で数分以内にNBCe1活性が上昇した。TZDsは急性に近位尿細管でのNa+とHCO3-再吸収を刺激することが分かる。このHCO3-再吸収促進は、PD98059(MEK阻害剤)、GW9662(PPARγantagonist)、AG1478(EGFR tyrosine kinase 阻害剤)によって阻害されたため、TZDsの近位尿細管への作用には、PPARγによって活性化されたEGFR/ERK経路の関与が示唆された。

TZDの近位尿細管輸送に対する影響の、種による違い
上記のウサギによる実験をラットで行っても同様の結果だったが、マウスではPGZによるNBCe1活性上昇は見られなかった。一方、PP2(Src阻害剤)はウサギのこの活性上昇を完全に抑制した。マウスの近位尿細管ではSrcがconstitutiveに活性化されており(近位尿細管以外の他の細胞では活性化されていない)、下流のEGFRシグナル(ERK活性化)が常に起こっていてPGZに反応しないことが分かった。ヒトの近位尿細管はウサギ、ラットと同様Srcのconstitutiveな活性化は起こっておらず、PPARγ刺激によるERK活性化を介するNBCe1活性化が起こることが示された。

TZDの急性 in vivo効果
ラットにPGZを単回投与し、90分以上尿を採取した。PGZ投与によって尿量が減少し、FE of Lithium+と自由水クリアランスが低下し(クレアチニンクリアランスと尿中Na排泄は変化なかった)、尿浸透圧は増加した。PGZと同時にアセタゾラミド(近位尿細管輸送阻害剤)を投与すると、これらの変化は消失した。PGZは急性に近位尿細管再吸収を刺激し水貯留を促進することが示唆された。

PPARγ依存性のNHE1活性の刺激
次にPPARγ-/-マウスの唯一の生きている細胞であるEF(embryonic fibroblast) 細胞を用いて、NHE1(Na+/H+ exchanger、ERK経路によって刺激される)の調節について検討した。WTおよびPPARγ-/-のEF細胞は細胞内アシドーシスによってERK依存的にNHE1活性化が起こるが、PGZによる活性化はPPARγ-/-細胞では起きない。WT細胞でのNHE1活性化はPD98059、GW9662、AG1478で阻害されるが、actinomycinD(転写阻害剤)では阻害されない。そのため、PGZによるNHE1活性化阻害はPPARγ依存性のnongenomicな(ゲノムの転写を介さない)、ERK活性化を伴うシグナル伝達によると考えられた。

PPARγ依存性の急速なシグナル伝達はnongenomicであり、Srcを介する
PPARγ-/-のEF細胞に全長PPARγをadenovirusで発現させたところ、PGZによるERK依存性のNHE1活性化がrescueされた。ここで、リガンド結合ドメイン(LBD)のみでDNA結合ドメインのないPPARγコンストラクトを発現させても同様にrescueが起こった。このことからNHE1の活性化にはリガンド結合は必要だが、転写活性化は不要であることが分かった。そこで、PGZによるNHE1活性化におけるSrcの役割を検討するため、Src-/-マウス由来のEF細胞を用いて同様の検討をしたところ、Src-/-ではNHE1活性化が起こらなかった。PPARγによるnongenomicなシグナル伝達にはSrcが必要であり、免疫沈降実験にてPPARγとSrcが共沈すること、PGZは両者の結合を促進することが明らかになった。

【結論】
この研究では、TZDsがウサギ・ラット・ヒトの近位尿細管にてNaと共役したbicarbonateの再吸収を促進することを示し、これはPPARγ/Src/EGFR/ERK経路を介するNBCe1 (Na+-HCO3- cotransporter)の活性化によることを明らかにした。また、EF細胞を用いた検討でPPARγ/Src/EGFR/ERK経路(転写活性化を介さない急性のシグナル伝達経路)を介するNHE1(Na+/H+ exchanger)活性化機構を解明した。近年、核内受容体がnongenomicな作用を及ぼすことが知られている。PPARγも何らかの選択的modulatorによって、部分的に(この場合nongenomicな経路を刺激しない)活性化ができれば、水分貯留の副作用の少ない薬剤が可能になるかもしれない。
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by md345797 | 2011-05-04 20:59 | 腎高血圧

食塩感受性高血圧における腎β-adrenergic–WNK4経路のエピジェネティックな調節

Epigenetic modulation of the renal β-adrenergic–WNK4 pathway in salt-sensitive hypertension.

Mu SY, Shimosawa T, Ogura S, Wang H, Uetake Y, Kawakami-Mori F, Marumo T, Yatomi Y, Geller DS, Tanaka H, Fujita T.

Nat Med. Published online: 17 April 2011.

【まとめ】
高食塩食は腎の交感神経活性を上げ、腎のNa保持を介して高血圧をもたらすが、この分子機序は不明である。この研究では、β2-adrenergic receptor (β2AR) の刺激が、Na再吸収の調節因子であるWNK4の転写を低下させることを示した。β2AR刺激はcAMP依存性にhistone deacetylase-8 (HDAC8)活性を抑制し、ヒストンのアセチル化を増加させる。このことが、グルココルチコイド受容体(GR) がプロモーター部位のグルココルチコイド反応性エレメント(GRE)に結合することにつながり、WNK4発現を低下させる。食塩感受性高血圧ラットでは、交感神経が過剰に活性化し、食塩負荷で腎のWNK4発現が抑制され、Na+-Cl− cotransporterを活性化し、食塩感受性高血圧が起きる。食塩感受性高血圧の発症にはWNK4転写のエピジェネティックな調節が関与していることが示唆され、腎のβ2AR-WNK4経路は食塩感受性高血圧の治療のターゲットになりうる。

【論文内容】
Serine-threonine kinaseであるWNKファミリーは、腎尿細管Na再吸収に重要な役割を果たしている。WNK4遺伝子のloss-of-function変異を持つ人(偽性アルドステロン症Ⅱ型)はNa+-Cl− cotransporter (NCC)とepithelial Na+ channel (ENaC)の活性化を介して遠位ネフロンでのNa再吸収が増加し、食塩感受性高血圧を示す。同様に、WNK4のdominant-negative mutant を過剰発現させたトランスジェニックマウスは、遠位尿細管(DCT)の過形成とDCTでのNCCの発現亢進が起き高血圧をきたす。

NCCとENaCは交感神経のNa再吸収調節、血圧調節に関わっており、食塩感受性高血圧ラットでは、腎の交感神経活性化とNCC活性上昇が見られる。腎の交感神経活性化はβ2AR活性化とcAMP増加を伴い、腎のENaC活性化によりNa再吸収を亢進させる。

β2AR刺激は腎のWNK4を抑制し、食塩感受性高血圧を発症させる
Norepinephrine (NE)またはisoproterenol (Iso)をマウスに持続注入すると、正常食では血圧は上がらないが、高食塩食にすると血圧が上昇する。この効果はβ遮断薬であるpropranololで阻害される。このとき、腎におけるWNK4発現はNEで低下し、propranololで低下が阻害される。交感神経活性化による食塩感受性高血圧発症にどのβ adrenergic受容体が重要かをβ1KOとβ2KOを用いて検討したところ、β2KOでは上記の高食塩食での血圧上昇とWNK4発現低下が見られなかったため、β2AR刺激を介するものであることが分かった。

WNK4はNCCの負の調節因子であり、マウスにNEを投与すると、NCCの量およびリン酸化が増加し、これはpropranololで阻害された。NCCのin vivoでの役割を検討するため、NCC阻害剤であるhydrochlorothiazide (HCTZ) を高食塩食負荷Iso注入マウスに投与したところ、FENaとUNaVが増加した。そこにβ2ARアンタゴニスト(ICI118551)を投与すると、その効果が消失したため、β2ARがNCCを活性化していることが分かる。

GRは、β2AR刺激によるWNK4抑制に不可欠である
WNK4転写はGRによって負の調節を受ける。グルココルチコイド(Dex)とIsoをmouse DCT(mDCT)細胞に添加したところ、IsoだけではWNK4発現が低下しなかったが、DexはWNK4発現を低下させ、Isoはその低下を増強した。

さらに、mDCT細胞においてGRをsiRNAで欠損させたところ、Iso・DexによるWNK4発現低下はブロックされた。また、GR欠損マウスにIsoを投与してもWNK4発現は低下せず、高食塩食にしても血圧は上がらなかった。これらのことから、GRはβ2ARによるWNK4発現低下と食塩による高血圧発症に不可欠であると考えられた。

β2AR活性化によるWNK4転写のヒストン調節
ヒストンアセチル化はGR依存性に(核内のGR-GRE結合を介して)遺伝子の転写を促進する。mDCT細胞をIsoで刺激すると、ヒストンH3、H4のアセチル化が増加し、これはPKA阻害薬H89で阻害された。ヒストンアセチル化はHDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)によって調節されるため、HDAC阻害薬(tricostatin A)添加によってIsoによるWNK4転写の抑制がブロックされたことから、IsoによるWNK4抑制の過程はWNK4プロモーターのヒストン修飾はHDAC(mutantを用いた検討からHDAC-8)活性の抑制によるものと考えられた。

食塩感受性高血圧における異常なβ2AR-WNK4経路
正常ラットでは、高食塩食を与えても腎のNEターンオーバーが少ないが、食塩感受性高血圧のDOCA-saltラットでは大きい(腎の交感神経活性化が大きい)。この腎の交感神経の過剰活性化によりWNK4抑制が起こり、NCCが増加してNa保持が過剰になる。Dahl-Sラットでも同様で(Dahl-Rと比較して)、高食塩食でNEターンオーバーが大きく、血圧上昇する。Dahl-Sラットで腎の交感神経切断術を施行すると、高食塩によるWNK4低下が起こらず、高食塩による血圧増加が起こらなくなる。

【結論】
食塩感受性高血圧の分子機序を明らかにした。高食塩食によって交感神経活性化が起こり、β2ARが活性化、PKAを介してHDAC8の活性を低下させる。これにより、核内のGREのヒストンアセチル化が増加、グルココルチコイドおよびGRが結合し、これがWNK4の発現低下をもたらす。さらにWNK4の低下はNCCの活性化を起こし、それがNa保持の増加につながり、高食塩食による高血圧が起きる。
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by md345797 | 2011-04-20 04:07 | 腎高血圧