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カテゴリ:インスリン分泌( 11 )

β細胞は初期分泌顆粒の分解とそれに伴うオートファジー抑制により空腹時インスリン分泌を低下させる

Insulin secretory granules control autophagy in pancreatic β cells.

Goginashvili A, Zhang Z, Erbs E, Spiegelhalter C, Kessler P, Mihlan M, Pasquier A, Krupina K, Schieber N, Cinque L, Morvan J, Sumara I, Schwab Y, Settembre C, Ricci R.

Science. 2015 Feb 20;347(6224):878-82.

【まとめ】

① 生体における空腹時や、培養細胞をアミノ酸なしまたは低グルコースの培地に置いた状態は、栄養飢餓(nutrient depletion)の状態と呼ばれる。膵β細胞は栄養飢餓の状態では、インスリン分泌を低下させる。では、β細胞では栄養飢餓時にオートファジーが起きるのだろうか?

通常の細胞なら栄養飢餓時にはオートファジーが誘導されて、細胞質蛋白や細胞内小器官を消化して、それにより細胞生存のためのエネルギーが供給される。(このオートファジーを限定してマクロオートファジーともいう。ここでは単にオートファジーとする。)ところが、β細胞には生理的にオートファジーがほとんど観察されず、空腹時にもオートファジーファジーが誘導されないことが知られている。2008年に発表されたオートファジー関連蛋白Atg7のβ細胞特異的欠損マウスの報告(Ebato C, 2008Jung HS, 2008)では、β細胞でオートファジーを欠損させるとインスリン分泌障害が起こることが示された。そこから、「β細胞にはbasal autophagyともいうべき、低レベルの恒常的なオートファジーが起きており、そしてそれが欠損するとβ細胞のインスリン分泌低下が起きるのだろう」という説明がなされている。β細胞では栄養飢餓の状態であってもオートファジーは起きないが、通常観察されないようなbasalなオートファジーは維持されている、というのが現時点での考え方だろう。

② では、β細胞でオートファジーを亢進させるとインスリン分泌は増加するのか?
本論文では、低グルコース培地に置いたβ細胞に(mTOR阻害剤またはオートファジー誘導ペプチドtat-beclin1により)強制的にオートファジーを亢進させると、インスリン分泌が増加するという結果を示している。

これは非生理的な状況を作っているだけで、この結果だけからβ細胞にオートファジーが生理的なインスリン分泌を促進しているとは言えないだろうが、それでもオートファジーを強制的にでも亢進させればインスリン分泌は促進されるようである。なお、なぜオートファジー亢進がインスリン分泌を増加させるかのメカニズムは不明のままである(ATP感受性Kチャネルを介することは示されるがそれ以上は不明)。

③ 従来から下垂体プロラクチン産生細胞などの神経内分泌細胞で、分泌顆粒がリソソームに融合して分解される現象は観察されていて、crinophagyと呼ばれることもある (crinは、endocrineのように分泌を表す語)。これは、古い分泌顆粒が分解されるオートファジーのようだが、オートファジーとの関係はよく分かっていない。

それに対し、本研究で同定したのは、新しいインスリン初期分泌顆粒がリソソームによって分解されるSINGD (starvation-induced nascent granule degradation)というものである。これは通常のオートファジー(マクロオートファジー)ではない。オートファジーは細胞内蛋白を非選択的に分解するものだが、SINGDはβ細胞ではインスリン初期分泌顆粒のみを分解する。そして、SINGDが起きると、オートファジーは抑制されることを示した。

④本研究の内容は下図のように要約される。β細胞は、栄養飢餓時(図の左側)にはp38δMAPキナーゼが活性化され(そのメカニズムは不明)、p38δによってPKD1がリン酸化され不活性化される。(PKDは食後などの栄養があるとき(図の右側)には、活性が上昇しインスリン分泌を促進する(Sumara G, 2009))。栄養飢餓時には、PKDの不活性化を介して、インスリンの初期分泌顆粒がリソソームで分解される(SINGD: starvation-induced nascent granule degradation)。その時、分解産物としてアミノ酸が増加するのでリソソーム膜でmTOR活性が上昇し、それが通常のオートファジーを抑制。オートファジーは前述のようにインスリン分泌を促進する作用があるので(右下の上向き矢印がそれを表している)、栄養飢餓時はSINGDによるオートファジー抑制によってインスリン分泌は抑制される。この仕組みは、空腹時にβ細胞がインスリン分泌を抑制するのに役立っている。

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【オートファジーの経路とその調節機構】

 オートファジーは細胞質成分をリソソームに輸送し分解する現象であり、栄養飢餓時の細胞の生存に重要な役割を果たしている。オートファジーの段階を以下の図に示す。

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オートファジーは、細胞質中に隔離膜(isolation membrane, phagophore)が出現するところから始まる。この隔離膜が細胞質成分を取り囲んで延長し、成熟した二重膜のオートファゴソームを形成する。次にオートファゴソームはリソソームと融合し、オートファゴソームの内膜と隔離した細胞質成分がリソソーム由来の酸性加水分解酵素により分解されて、一重膜のオートリソソームとなる。こうして分解された細胞内蛋白由来のアミノ酸が細胞に供給され、栄養飢餓時の細胞生存のために用いられる。なお、増加したアミノ酸はmTORを活性化し、これがオートファジーを不活性化させる負のフィードバックのシグナルとなる。

また、オートファゴソーム形成と成熟の調節機構は、下図のようなものである。

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飢餓状態(starvation)では、mTOR活性が抑制され、それによりULK1が活性化される。これがオートファゴソーム形成(膜の核生成:nucleation)を促進するシグナルとなる。逆に、アミノ酸などの栄養素やインスリン刺激は、mTORを活性化して、オートファゴソーム形成を抑制する。
② また、bectin1を含むBeclin-1-interacting complexというオートファジーの調節プラットフォーム が刺激されると、この中にあるVPS34 (class III PI 3-kinase )の活性化によってPI3Pが生成され、オートファゴソーム形成が促進される。
③ 次のオートファゴソームの延長・成熟には2つのユビキチン様結合システム、すなわち「ATG5-ATG12結合システム」と「LC3-ATG8結合システム」が必要である。前者のシステムで産生されるATG16L1はオートファジーに必要である。
④ 後者のシステムにおいては、細胞質のLC3-Iがオートファゴソーム膜に結合するLC3(phosphatidylethanolamine結合型:LC3-II)へと変換される。成熟したオートファゴソームは、その膜上にあるLC3 puncta(免疫蛍光染色の斑点)として可視化できる。そのため、GFP-tagを付けたLC3の蛍光顕微鏡で観察される斑点(GFP-LC3 puncta)は、オートファジー活性を評価するときのマーカーとして一般に用いられている。


【論文内容】

(1) β細胞では、栄養飢餓時にオートファジーが抑制される
本研究では、膵β細胞におけるオートファジーを観察するモデルとして、ラットインスリノーマ由来のβ細胞株であるINS1細胞に一過性にLC3B-GFPを過剰発現されたものを用いた。この細胞を、通常の栄養培地GC (growth culture)または栄養飢餓培地で一定時間培養した。栄養飢餓培地は、アミノ酸 (amino acid, AA)やグルコース(glucose, Glc)と血清 (fatal calf serum, FCS)なしの培地で、論文ではno AA/FCS、no Glc/FSCなどと略している。

LC3B-GFP発現INS1細胞を、2時間または6時間の栄養飢餓培地 (no AA/FCSまたはno Glc/FCS)に置いたところ、LC3B-GFP puncta の減少が認められた(Fig S1A, B)。ただし、血清だけを除いた培地(no FCS)では、このようなLC3B-GFP puncta の減少は起こらなかった(Fig S1C)。したがって、β細胞株では、栄養飢餓の状態でオートファゴソーム形成が減少する、すなわちオートファジーが抑制されることを示された。

β細胞のような栄養感知性の分泌細胞ではない他の細胞の例として、HEK293細胞(ヒト胎児腎臓由来細胞)を取り上げ、同様の栄養飢餓培地に置いた。HEK293細胞では、栄養飢餓によってLC3B-GFP punctaは増加した(Fig S1D,E)。すなわち、通常の細胞は栄養飢餓状態でオートファジーが誘導されるのに、β細胞では逆であることが分かる。

次に、LC3B-GFPを内因性に発現させた「LC3B-GFP ノックインINS1細胞」を、CRISPR/Cas9 systemを用いて作製した(Fig S2A-C)。このLC3B-GFP ノックインINS1細胞を1時間、栄養飢餓培地(no AA/FCS)に置いた場合も、LC3B-GFP puncta(オートファゴソーム)の減少が認められた(Fig A1, Fig S2D-F)。

LC3Bの減少は、単にリソソームによるLC3Bの分解が亢進しているためなのか?その可能性を除外するために、リソソームの蛋白分解の阻害剤Bafilomycin A1 (BafA1)を添加して、同じ実験を行ったが、栄養飢餓状態によるLC3B-GFP punctaの減少に、BafA1添加の影響は見られなかった(Fig S2D-F)。

次に、LC3BにRFP(赤色蛍光蛋白)とGFP(緑色蛍光蛋白)を直列につないだtandem fluorescent-tagged LC3 (tfLC3)というコンストラクトをINS1細胞に発現させた(FigにあるptfLC3はレポータープラスミド名)。このとき、オートファゴソーム膜上のtfLC3はRFPとGFPの両方で標識されるため、オートファゴソームは赤色と緑色が重なって黄色蛍光で確認できる。これが次のオートリソソームにまで進行すると、GFPはリソソームの酸性で退色するのに対しRFPは退色しないため、オートリソソームは赤色に観察される。これにより、オートファゴソーム(黄色)と オートリソソーム(赤色)を区別し、オートファジーの進行を判定することができる。

tfLC3を発現させたINS1細胞を2時間の栄養飢餓培地(no AA/FCS)に置くと、多くのRFP-GFP斑点(オートファゴソーム)がRFPのみの斑点(オートリソソーム)へと変化した。さらに時間がたつにつれてオートファゴソームは消失し、オートリソソームも減少した(Fig S3)。さらに、CLEM (correlative light and electron microscopy)を用いて蛍光顕微鏡と電子顕微鏡の相関を取って比較することにより、オートファゴソームの始まりも電顕像で確認できた(Fig 1B)。

さらに、通常のINS1細胞を1.5時間の栄養飢餓培地(no AA/FSC)に置いた後、細胞のlysateで界面活性剤可溶性画分 (soluble fraction)を見ると、膜結合型LC3B (LC3B-II)は減少していた(Fig 1C)。これは、BafA1添加によっても影響はなかった(オートリソソームでの分解が亢進しているのではない)。これに対し、同様の栄養飢餓培地に置いても、HEK293細胞ではLC3B-IIが増加していた(Fig S4)。
(Fig 1Cの界面活性剤の不溶性画分(insoluble fraction)は、変性蛋白の凝集体(aggresome)にあるLC3-IIを表すが、これについては特に述べていない。)

p62は、ユビキチン化された蛋白凝集体に結合し、その凝集体をオートファゴソームへ導くアダプター分子である。INS1細胞を栄養飢餓培地に置くと、可溶性画分のp62の量は軽度増加した。これはBafA1添加によって変化しなかった(Fig 1C)。また、栄養飢餓によりp62の免疫染色の斑点が集結するのが見られた。しかし、LC3B-GFP(オートファゴソーム)とp62の共局在は減少した(Fig S5A)。INS1細胞では、栄養飢餓によってオートファジーが低下するので、オートファジー依存性のp62の消失も抑制されたことが分かる。

ATG16L1は、オートファゴソームに結合し、オートファゴソームの延長と成熟に不可欠な因子である。栄養飢餓時のINS1細胞の免疫染色で、ATG16L1およびATG16L1/LC3B-GFPの斑点は軽度減少した(Fig S5B)。

また、マウス単離培養膵島を2時間の栄養飢餓培地 (no AA/FCS)に置いた場合、β細胞のオートファジーの細胞内コンパートメントは減少した。これは定量的電子顕微鏡(quantitative electron microscopy; QEM)によって定量的に確認した(Fig S6)。

さらに、LC3B-GFPを発現させたトランスジェニックマウスでは、空腹時はβ細胞のオートファゴソームは減少していた(Fig 1D, Fig S7)。なお、栄養素が分泌に関係しない他の分泌細胞、例えばマウスの形質細胞を栄養飢餓培地 (no AA/FCS)に置いても、IgGの分泌は低下するが、オートファジーの細胞内コンパートメント(autophagic compartment; AC)は増加した(Fig S8)。

以上のように、通常の細胞では栄養飢餓によってオートファジーが起きるが、β細胞は逆に飢餓状態でオートファジーが抑制される。したがって、β細胞は、他の多くの細胞とは違うメカニズムを用いて栄養飢餓を乗り越えていると考えられる。

(2)β細胞では栄養飢餓時に、オートファジーではなく初期分泌顆粒の分解が亢進する

下垂体前葉のプロラクチン産生細胞では、分泌顆粒が多く産生され過ぎると、分泌顆粒はリソソームに移行して分解されており、このような分泌顆粒のリソソームによる分解がプロラクチン分泌の調節につながることが報告されている。そこで、β細胞でも、生成初期のインスリン分泌顆粒がリソソームによって分解されることでインスリン分泌が調節されている可能性がないかを考え、以下の検討を行った。

実験では、INS1細胞を栄養飢餓状態に置いた場合、インスリンの初期分泌顆粒がリソソームによって分解される現象があるかをまず確認することにした。これは、リソソームが、分解する分泌顆粒を含んだ顆粒含有リソソーム(granule-containing lysosomes; GCLs)になっていることを確認する。このGCLsの確認のために、「リソソーム膜蛋白Lamp1と分泌顆粒蛋白Phogrinがゴルジ体(pGolgi-CFPで可視化)の近くに共局在する斑点(puncta)」を蛍光顕微鏡で観察・定量化した。

INS1細胞を30分間栄養飢餓培地(no AA/FCS)に置いたところ、Lamp1とPhogrinがゴルジ体の近くに共局在するのが確認された(Fig S9)。リソソーム阻害剤を添加すると、この共局在は増加した(リソソーム阻害剤により、顆粒分解が抑制されたためリソソーム内の顆粒蛋白が増加したということか?)。

この栄養飢餓状態に置いたINS1細胞で顆粒含有リソソームが増加する現象は、QEM、CLEM、免疫金標識によっても確認できた (Fig S10)。

NS1細胞を30分の栄養飢餓培地(no AA/FCS)に置いてそのlysateを濃度勾配で分画したところ、Phogrin (=分泌顆粒蛋白)とLamp (=リソソーム膜蛋白)は、顆粒含有リソソームを含むと考えられる重い分画の方に移行した。この移行した分画にはLC3B (=オートファゴソーム膜蛋白)はほとんど検出されなかったので、初期分泌顆粒がリソソームにて分解される現象はオートファジーとは独立であることが示唆された。

また、栄養飢餓培地に置いたINS1細胞では、LC3B-GFP/Phogrinの共局在は増加しないことが免疫染色で確認された(Fig S11) 。すなわち、栄養飢餓によって分泌顆粒のオートファジーが増加するわけではない

さらには、siBeclin1やsiATG5による遺伝子サイレンシングや、オートファジー阻害剤3-methyladenineを用いてオートファジーを不活性化させた状態で、INS1細胞を栄養飢餓培地に置いた場合は、顆粒含有リソソームの量は変化しなかった (Fig S12)。これらの結果は、オートファジーが分泌顆粒のリソソームによる分解に関連しないことを示している。

インスリンの初期分泌顆粒のマーカーはプロインスリンだが、INS1細胞を6時間栄養飢餓培地(no AA/FCS)に置くと、細胞全体のlysateにおいてプロインスリンのimmunoblotのシグナルが著明に減少した(Fig 2A)。このプロインスリンの減少はリソソーム阻害剤によって部分的に回復した。

マウス膵島の初期培養で、β細胞をex vivoで2時間栄養飢餓(no AA/FCS)にすると、ゴルジ領域に分泌顆粒含有リソソームが電顕像(QEM)で多く確認された (Fig 2C) (分泌顆粒はゴルジ体で産生される)。

GFP-LC3B発現マウスを空腹にすると、Lamp2(=リソソーム膜蛋白)とプロインスリン(=分泌顆粒蛋白、インスリンも含むので論文では(Pro)insulinと記載)の共局在は増加したが、GFP-LC3B(オートファゴソーム膜)と(Pro)insulinの共局在は増加しなかった(Fig 2D)。

以上の結果より、β細胞は栄養飢餓時には、インスリン初期分泌顆粒(マーカー:(Pro)insulin)は、オートファゴソーム(マーカー:LC3B)内でオートファジーを受けるのではなく、直接、リソソーム(マーカー:Lamp2)で分解されるのである。新しく同定したこの現象を、「栄養飢餓によって誘導される初期(分泌)顆粒の分解」(starvation-induced nascent granule degradation, SINGD)と呼ぶことにする。

(3) β細胞では栄養飢餓時であっても、mTOR活性を阻害すれば、UKL1脱リン酸化(活性化)を介して、オートファジーは促進される

リソソーム由来のアミノ酸によって、mTOR complex 1 (mTORC1)がリソソーム膜に移行して活性化され、これによりオートファジーの抑制が起きる。Rapamycinまたはtorin 1でmTOR活性を阻害すると、2時間栄養飢餓培地に置いたINS1細胞のLC3B-GFP punctaの数(オートファゴソーム形成)は増加した (Fig 3A)。すなわち、INS1細胞は栄養飢餓状態ではオートファゴソーム形成が低下するはずなのに、mTORを抑制しておけば栄養飢餓状態であってもオートファジーが起きることが分かる。

さらに、INS1細胞を1時間の栄養飢餓培地(no AA/FCSまたはno Glu/FCS)に置くと、ゴルジ体(マーカー:giantin)の近くのPhogrin/Lamp1の斑点(顆粒含有リソソーム)にmTORが局在した (Fig 3B)。

さらに、栄養飢餓状態に置いてもリン酸化ULK1 (S757-ULK1)は多いままだったが、rapamycinでmTORを阻害するとリン酸化は消失した (Fig 3C)。栄養飢餓でもmTORを阻害すればULK1脱リン酸化(活性化)は起きる。(なお、mTORを介するS6K1のリン酸化 (T389-S6K1)は栄養飢餓によって減少していた。これにより、S6K1リン酸化にはULK1リン酸化よりもmTORの高い活性が求められるためと思われる。)

そして、INS1細胞を栄養飢餓培地に置くと、顆粒含有リソソーム(Lamp1/Phogrinの斑点)と共局在するリン酸化ULK1(S757-ULK1)の斑点の形成が増加した (Fig S14)。

以上の結果から、栄養飢餓状態であっても、mTOR活性を阻害すれば、ULK1脱リン酸化(活性化)を介して、オートファジーが活性化されることが示された。実際はβ細胞は、栄養飢餓状態で、リソソームによる初期分泌顆粒分解(SINGD)によってアミノ酸が供給されてmTORが活性化され、ULK1リン酸化(不活性化)を介してオートファジーは抑制されているのだろう。

(4) β細胞が空腹時にインスリン分泌を低下させるのためには、SINGDを介するオートファジーの抑制が必要


上記のように栄養飢餓時であってもmTORを阻害すればオートファジーが誘導されるのなら、それによって(栄養飢餓時でも)インスリン分泌は増加するのか?

低グルコース培地に置いたINS1細胞に(グルコース濃度はインスリン分泌を刺激しない2.8 mMとした)、rapamycinを添加しmTORを阻害し、栄養飢餓にもかかわらずオートファジーが促進されるようにすると、インスリン分泌は40%程度増加した(Fig S15)。すなわち、低グルコース状態でも、オートファジーを強制的に亢進させるとインスリン分泌は増加する。

さらに別のオートファジー誘導方法として、tat-beclin1を用いた。tat-beclin1は、一部のアミノ酸を置換したbeclin1に、HIV tatタンパクのtransduction domainを結合させて細胞膜を透過性を持たせたオートファジー誘導ペプチドである。

マウスの初代培養膵島を低グルコース培地(2.8 mM glucose)におき、そこにtat-beclin1を添加してオートファジーを特異的に惹起させた。この場合も、低グルコースにもかかわらず、Tat-beclin1によるオートファジー惹起が原因で、インスリン分泌は高グルコース刺激時(16.7 mM glucose)に見られるのに近づく程度まで増加した(Fig S16C、一応有意差がないという程度だが・・・)。この時細胞の生存には変化はなかった。すなわちインスリン分泌が増加したのは、細胞死によってインスリンが培地中に放出された現象などを見ているのではない(Fig S16B)。

なお、ヒト膵島をex vivoで低グルコース濃度(2.8 mM)の培地に置き、そこにtat-beclin1を添加した場合、同じ膵島をグルコース16.7 mMの濃度で刺激した場合に近い程度までインスリン分泌が亢進した(Fig 3D)。

ではこのような「β細胞におけるオートファジー亢進によるインスリン分泌促進」は、ATP感受性Kチャネルの閉鎖を介するものだろうか?

β細胞において細胞内ATPの増加 (これは通常はGLUT2を介するグルコース取り込みによってミトコンドリアでATP産生が増加することによる)によって起こるATP感受性Kチャネルの閉鎖は、膜の脱分極、Ca2+流入を介して分泌顆粒のエクソサイトーシス、インスリン分泌の増加をもたらす。ATP感受性Kチャネル開口剤であるdiazoxideを添加すると、Kチャネル閉鎖すなわち膜の脱分極が起きなくなり、上記の効果は消失する。

上記のマウス膵島を低グルコース濃度(2.8 mM)培地でtat-beclin1によってインスリン分泌が増加した効果は、diazoxide添加で消失した。

さらに、マウス膵島をインスリン分泌を刺激する程度の高濃度グルコース(16.7 mM)培地に置いた時も、tat-beclin1添加によってインスリン刺激がさらに増加した (Fig S16E)。このtat-beclin1によるインスリン分泌増強効果もdiazoxide添加で阻害された(Fig S16F)。

すなわち、オートファジー誘導によるインスリン分泌促進は、低グルコース濃度でも、高グルコース濃度でも起こり、それはどちらもATP感受性Kチャネル閉鎖を介していることが示唆される。

以上の結果から考えると、空腹時にβ細胞で見られるSINGDは、空腹時のβ細胞のオートファジーを抑制する。これにより「オートファジーがもし起きれば亢進させてまうはず」のインスリン分泌を、空腹時に抑制しているのだろう。

(5) 栄養飢餓時は、PKD活性低下を介してSINGDが惹起される

最後に、β細胞で栄養飢餓時にSINGDが惹起される分子機構を検討する。以前、この研究グループは、β細胞のprotein kinase D (PKD)が活性化されることがインスリン分泌やβ細胞生存を促進するという結果を報告している。β細胞においてPKDの活性化は、ゴルジ体でのインスリン分泌顆粒の生合成を促進することが分かっている。ではPKDの不活性化は、インスリン初期分泌のターンオーバーに影響するのだろうか?

まず、INS1細胞にPKD阻害剤(CID755673)を添加すると、細胞lysate中のプロインスリンのimmunoblotの濃度が時間依存的に減少した(Fig 4A)。PKD1の発現をノックダウンINS1細胞(shPKD-INS1)ではプロインスリン生合成自体は変化していなかった(Fig S18AB)。しかし、新しく生成されたインスリンの蓄積は減少していたので(35S-methionineのpulse-chase法で確認、Fig S18C)、de novo合成されたインスリンの分解が亢進していたと考えられる。

PKDノックダウンINS1細胞のQEMおよび免疫金標識による観察で、ゴルジ領域に顆粒含有リソソームが増加していることが分かり、それはさらに細胞分画によっても確認された(Fig 4B、Fig S19)。PKD阻害剤を添加すると、PhogrinとLamp1の共局在(顆粒含有リソソーム)が減少したが、その効果はリソソーム阻害剤の場合よりも強力だった(Fig S19)。そして、PKD阻害剤添加によって、Phogrin/LC3B-GFPの共局在(分泌顆粒のオートファジー)は変化しなかった(Fig S20)。PKD1ノックアウトINS1細胞では、mTORは大部分はLamp1(リソソーム膜蛋白)と共局在し(Fig 4C)、細胞lysateでのリン酸化ULK1量は増加していた(Fig 4D)。またPKDノックアウトINS1細胞に、BafA1(リソソーム蛋白分解阻害剤)を添加すると、LC3B-II量が減少した(Fig S21A)。なお、PKD阻害剤によってLC3B-GFP puncta(オートリソソームの形成) が減少したが、BafA1添加を添加してもこのLC3B-GFP puncta 減少が認められた(Fig S21B)。

上記より、PKDがインスリンの初期分泌顆粒のリソソームでの分解を調節していることが分かる。では、栄養飢餓によって、PKD活性が低下し、SINGDに至るのかどうか?これを以下の実験で検討した。

INS1細胞およびMIN6B細胞(マウスインスリノーマ由来β細胞株)を栄養飢餓培地(no AA/FCSまたはno Glc/FCS)に置いた場合、時間依存的にゴルジ体におけるPKD活性は減少していた(G-PKDrep-liveをtransfectした各細胞でのFRETアッセイにて確認、Fig S22)。PKDは、p38δMAPキナーゼによってリン酸化されることによって不活性化される。そして、p38δ欠損マウスでは、β細胞におけるPKD活性が増加していることはこのグループが以前報告している。

そこで、p38δ欠損マウスの膵島をex vivoで栄養飢餓培地に置いたところ、β細胞における顆粒含有リソソームは、電顕像で著明に減少していた(Fig 4E)。同様に、栄養飢餓培地に置いたp38δ欠損β細胞ではLamp2と(pro)insulinの共局在(インスリン初期分泌のリソソームによる分解を示す)は減少していた(Fig S23CD)。したがって、p38δによってPKDがリン酸化され不活性化されるとSINGDが抑制されると考えられる。それに対し、栄養飢餓培地におけるp38δ欠損β細胞でオートファジーの細胞内コンパートメントは増加していたため、SINGD依存性のオートファジー抑制は低下していたと考えられる(Fig 4E)。以上より、β細胞においてPKDはSINGDとオートファジーの主要な調節因子であることが示された。

【結論】
β細胞では、栄養飢餓の状態ではp38δ活性化を介してPKD不活性化が起こり、それによりSINGD、局所でのmTOR活性化、オートファジーの抑制が起きる。オートファジーはもし強制的に起こせばインスリン分泌を促進するが、それは上記の仕組みで栄養飢餓時には抑制されている。これが空腹時におけるインスリン分泌抑制につながっている。

そしてこのSINGDが、栄養飢餓時にオートファジーのないβ細胞が栄養飢餓を乗り切るための栄養供給の方法だろう。また、SINGDによって分解されるインスリン初期分泌顆粒がなくなってくると、それまでSINGDによって起きていたオートファジーの抑制は解除されるので(derepress)、インスリン分泌が増加せずにオートファジーが起きることも可能なのだろう。この「インスリン初期分泌顆粒がいつなくなってくるか」というタイミングが実験モデルやプロトコールによって大きく変わるので、結論も変わり、そのために従来の報告ではβ細胞のオートファジーとインスリン分泌の関係について一貫した説明がなされなかったのだと思われる。

なお、本研究はβ細胞にオートファジーを誘導することがインスリン分泌の増加につながるという結果を示したが、これが治療に役立つかは今後まだ検討が必要である。例えば、空腹時にインスリン分泌を促進してしまって低血糖を起こすようでは問題がある。また、オートファジーは一般に細胞における恒常的な機能、いわゆるhousekeeping機能を果たしていると考えられている。しかし、本研究の結果からは、オートファジーには例えば「インスリン分泌を調節する」というような特異的な役割もあるのかもしれない。ただし、これについてもさらに詳細な検討を待ってからの結論になるだろう。

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by md345797 | 2015-03-15 14:27 | インスリン分泌

内因性カンナビノイドによるβ細胞消失は、膵島浸潤マクロファージのNlrp3インフラマソーム活性化を介する

Activation of the Nlrp3 inflammasome in infiltrating macrophages by endocannabinoids mediates beta cell loss in type 2 diabetes.

Jourdan T, Godlewski G, Cinar R, Bertola A, Szanda G, Liu J, Tam J, Tiffany Han T, Mukhopadhyay B, Skarulis MC, Ju C, Aouadi M, Czech MP, Kunos G.

Nat Med. Published online 18 August 2013.

【まとめ】
2型糖尿病は、インスリン抵抗性を代償していたβ細胞機能が代償しきれなくなって高血糖を発症すると考えられており、その過程はモデル動物であるZucker diabetic fatty (ZDF)ラットで再現されている。Nlrp3 インフラマソーム(inflammasome)は、肥満に伴うインスリン抵抗性とβ細胞機能不全において重要な役割を果たす蛋白複合体である。また、内因性カンナビノイド(endocannabinoids)は末梢のCB1受容体(CB1R)の活性化を介してインスリン抵抗性とβ細胞機能不全を起こすことが知られている。この研究では、ZDFラットのβ細胞機能不全は、β細胞ではなく、膵島に浸潤したM1マクロファージのCB1Rシグナル伝達の異常によるものであること、さらにそれがマクロファージのNlrp3 inflammasomeの活性化を介するものであることを示した。ヒトおよびマウスのマクロファージに内因性カンナビノイドであるアナンダミド(anandamide)を添加して in vitroで培養するとこの効果は起こるが、CB1R欠損 (Cnr1-/-)マウスまたはNlrp3-/-マウスのマクロファージでは起きなかった。さらに、末梢CB1Rの薬剤による阻害、薬剤投与(クロドロン酸)によるマクロファージの欠損、またはsiRNAによるマクロファージ特異的なCB1Rノックダウンを行うと、マウスのβ細胞におけるインスリン分泌が回復し、血糖が正常化した。これらの結果から内因性カンナビノイドとインフラマソーム活性化はインスリン分泌低下に重要な役割を果たしており、マクロファージに発現するCB1Rが2型糖尿病治療に有用な治療ターゲットであることが明らかになった。

【論文内容】
2型糖尿病の発症には、脂肪組織の炎症に伴うインスリン抵抗性と、炎症性細胞の膵島への浸潤によるβ細胞機能不全が関与している。また、Nlrp3 inflammasomeはcaspase-1活性化を介してIL-1βの切断と分泌を起こす蛋白複合体である。内因性カンナビノイドは、その受容体であるCB1R およびCB2Rのリガンドであり、さまざまな作用がある。特にCB1Rの活性化は、摂食の促進、脂肪組織および肝での脂肪合成の増加、インスリン抵抗性と脂質異常症を引き起こすため、内因性カンナビノイド-CB1R系の過剰な活性化は内臓脂肪肥満とその合併症の発症につながりうる。そのため、長期にわたるCB1Rの阻害は、体重減少と肥満関連のインスリン抵抗性や脂質異常症の改善をもたらす。実際、2型糖尿病患者にCB1R拮抗薬を投与すると、血糖改善が認められる。しかし、このようなCB1Rアンタゴニスト(rimonabant)またはインバースアゴニスト(taranant)は、中枢神経系においてはCB1Rを活性化することによると考えられる精神症状の副作用があったため、その開発は中止されている。

2型糖尿病モデル動物であるZDFラットは、インスリン抵抗性をβ細胞機能が代償しきれなくなって高血糖を呈しているが、このラットに脳に移行性のあるCB1R阻害薬を投与すると、インスリン分泌が回復し高血糖が改善することが報告されている。この作用は、β細胞のCB1R活性化に伴って起こるβ細胞死を防ぐからなのか、または膵島に浸潤したマクロファージのCB1R活性化に伴って起こるβ細胞障害を防ぐためなのか、内因性カンナビノイドによる中枢神経系のCB1Rの活性化に伴って起きるβ細胞機能・β細胞生存の調節機構を介するのか、などそのメカニズムはよく分かっていない。本研究により、内因性カンナビノイドが膵島に浸潤したM1マクロファージ上のCB1Rを活性化し、それによりNlrp3 インフラマソームが活性化されることによってマクロファージからIL-1βが放出されるためにβ細胞障害が起きるという機構が示された。

【論文内容】
末梢のCB1R阻害は2型糖尿病の進行を遅延させる
8週齢のZDFラットに脳に浸透しないCB1RのインバースアゴニストであるJD5037を28日間経口投与した。コントロールのZDFラットは肥満、過食、肝のトリグリセリド含量高値と脂肪合成遺伝子(FasScd1)発現亢進、著明な高血糖、高トリグリセリド血症を示す。それに対し、JD5037を投与したZDFラットはコントロールと比べ体重の差はなかったが、肝の脂肪含量や脂肪合成遺伝子発現は有意に少なかった。なお、血糖は正常だが、インスリン分泌の増加が認められた。これは、JD5037投与によってβ細胞の機能と生存が改善しインスリン分泌は亢進しているが、インスリン抵抗性も起きて正常血糖になっていると考えられ、実際高インスリン正常血糖クランプにおいてインスリン抵抗性の亢進が認められた。

上記の結果からJD5037投与によりβ細胞アポトーシスが防止されていると考えられ、これも実際TUNEL陽性の膵島細胞が少なく、アポトーシスマーカーであるBak1、Bax、Fas、Faslg、Tnfrsf1aの発現低下、抗アポトーシスマーカーであるBcl2、Bcl2lの発現増加が確認された。JD5037投与によりβ細胞生存に関する転写因子Pdx1、Mafa、Neurog3の発現および増殖マーカーKi67の発現が増加し、β細胞数は増加していた。なお、ZDFラットの膵島で見られるCnr1(cannabinoid receptor 1、CB1Rの遺伝子)発現増加とアナンダミド(初めて発見された内因性カンナビノイド。別名arachidonoylethanolamide, AEA)量の増加は、JD5037投与により消失していた。ZDFラットのin vitro単離膵島ではグルコース応答性インスリン分泌(GSIS)が消失していたが、JD5037投与によりGSISと、β細胞の糖取り込みにかかわるグルコキナーゼ(Gck)、Glut2(Slc2a2)遺伝子の減少は回復していた。6週齢ZDFラットに3か月間JD5037を投与した場合は、高血糖とインスリン分泌低下の進行が遅延されたことから、末梢CB1Rの阻害は2型糖尿病の発症(β細胞機能の低下)を遅くすることができると考えられる。

CB1R阻害はZDFラット膵島へのマクロファージ浸潤を減少させる
ZDFラットの膵島は、CD68+マクロファージ(炎症性のM1マクロファージ。Tnf、Nos2発現が増加、Tgfb1、Il10、Arg1発現が低下している)の浸潤によってサイズが増加している。JD5037投与によって、M1からM2への移行が起こり、膵島マクロファージ浸潤は減少した。また、ZDF膵島ではNlrp3、IL-1β(Il1b)、IL-18(Il18)の発現、p65-NFκB蛋白量、caspase-1活性が増加していた。しかし、これらはJD5037投与により正常ラットのレベルまで低下した。なお、IL-1Rantagonist(Il1rn)発現は増加した。Nlrp3インフラマソームの形成には、Nlrp3とアダプター蛋白であるASCの結合が必要である。ZDFラット膵島ではASCをコードする遺伝子pycard(パイカード)の発現が増加していたが、これはJD5037の投与で正常化した。

クロドロネート投与によりマクロファージを欠失させると2型糖尿病の発症を遅延できる
ZDFラットにクロドロネート(クロドロン酸、マクロファージをアポトーシスさせるビスフォスフォネート薬)を内包したリポソームを投与すると高血糖やインスリン分泌減少を抑制できた。膵島へのマクロファージ浸潤とマクロファージ由来サイトカインMCP-1、TNF-αの発現はクロドロネート投与によって低下していた。また、膵のアナンダミド含量、Cnr1、Nlrp3、Txnip (TXNIP:thioredoxin interacting protein=ERストレスとNlrp3インフラマソーム活性化につなぐ蛋白)発現もクロドロネートによってマクロファージを欠失させることで減少、膵インスリン含量はやや増加した。

マクロファージにおけるCB1Rの選択的ノックダウンは2型糖尿病を軽減する
次に、ZDFラットの腹腔に、CB1R siRNAをβ1,3-d-glucanにカプセル化したsiRNA particles (GeRPs)を10日間注入し、マクロファージ特異的にCB1Rをノックダウンした。コントロールとして、scrambled siRNAを内包したGeRPsを注入した。CB1R siRNA注入により、腹腔内マクロファージのCR1RのmRNAは95%以上抑制された。CB1R siRNAを注入したZDFラットは、コントロールが進行性の高血糖、インスリン低値を示したのに対し、正常血糖、高インスリン血症を示した。さらに、このラットでは膵島内のインスリン発現、インスリン含量の増加、マクロファージ浸潤の低下、膵島のNlrp3、Pycard、 Il1b、 Il18、 Cnr1、Ccl2発現の低下が認められた。これらの効果は、JD5037やクロドロネート投与で見られたのと同様のものである。

高濃度グルコースおよびパルミチン酸はマクロファージ内のアナンダミド量を増加させる
ZDFラットから単離した膵島は、正常ラットやJD5037慢性投与ラットの膵島に比べ、アナンダミド含量が多く、アナンダミドの分解酵素(FAAH)活性が低く、合成酵素(NAPE-PLD)の発現が多かった。正常ラットの腹腔内マクロファージを250 μMのパルミチン酸または33 mMのグルコースとともに培養したところ、アナンダミド値はいずれも増加し、これらの効果は相加的なものであった。

アナンダミドの炎症惹起効果はマクロファージを介するものである
CB1Rを介する炎症性シグナル伝達はどの細胞で起きているかを検討するため、RAW264.7マクロファージ細胞またはMIN6インスリノーマ細胞、ヒト初代培養マクロファージ、マウス(野生型、Cnr1−/− およびNlrp3−/−)の腹腔内マクロファージにアナンダミドを添加する実験を行った。RAW264.7細胞にアナンダミドを加えると、IL-1β、TNF-α、MCP-1の分泌が著明に増加したが、MIN6細胞では増加が見られなかった。同様に、アナンダミドを添加したマクロファージではNlrp3、Casp1、Cnr1の発現が著明に増加したが、MIN6細胞では増加しなかった。したがって、内因性カンナビノイドは(β細胞に直接ではなく)マクロファージ由来のサイトカイン分泌増加を介して間接的にβ細胞アポトーシスを促進している可能性がある。

単離ヒトマクロファージにアナンダミドを添加した場合もNLRP3、PYCARD、IL1B、IL18、CNR1の発現増加とIL-1βとIL-18の分泌増加が認められ、これらの効果は100 nM JD5037の添加によって消失したため、ヒトマクロファージにおいてもCB1Rを介するインフラマソーム活性化が起こると考えられた。また、ZDFラット単離膵島にアナンダミド、IL-1β、高濃度グルコースを添加した影響を調べた。膵島でのIL-1β分泌量は高濃度グルコース(33 mM)またはアナンダミド(1 μM)の添加で増加し、その効果はグルコースの方がアナンダミドより大きかった。IL-1β (30 ng ml−1)添加により、 MCP-1 およびIL-6分泌が増加した。最後に、正常ヒト膵島でも高濃度グルコースはアナンダミドに比べてIL-1β分泌促進効果、およびIL-1β刺激によるMCP-1分泌刺激効果が大きかった。

【結論】
内因性カンナビノイドは末梢のCB1Rを介してβ細胞消失を引き起こし、これは2型糖尿病発症につながる。さらに、このCB1Rを介するシグナルは膵島に浸潤したマクロファージで起きている。内因性カンナビノイドは膵島浸潤マクロファージでのNlrp3インフラマソーム活性化とそれに伴うIL-1β放出を介してβ細胞のアポトーシスを惹き起こしている。

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図:内因性カンナビノイドがβ細胞死を起こす際の、膵島浸潤マクロファージ(右)とβ細胞(左)におけるシグナル伝達
AEA:内因性カンナビノイドの一種、アナンダミド、CB1R:β細胞および膵島浸潤マクロファージに発現している内因性カンナビノイド受容体、JD5037:CB1Rの阻害剤(インバースアゴニスト)、なお、この図はServier medical artのテンプレートを用いて作成したとのこと。
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by md345797 | 2013-08-28 03:30 | インスリン分泌

IL-6は、L細胞およびα細胞からのGLP-1分泌を増加させ、インスリン分泌を促進する

Interleukin-6 enhances insulin secretion by increasing glucagon-like peptide-1 secretion from L cells and alpha cells.

Ellingsgaard H, Hauselmann I, Schuler B, Habib AM, Baggio LL, Meier DT, Eppler E, Bouzakri K, Wueest S, Muller YD, Hansen AM, Reinecke M, Konrad D, Gassmann M, Reimann F, Halban PA, Gromada J, Drucker DJ, Gribble FM, Ehses JA, Donath MY.

Nat Med. 2011 Oct 30;17(11):1481-9.

【まとめ】
運動、肥満、2型糖尿病では、血中IL-6の上昇が起こる。本研究は、IL-6の投与または運動によるIL-6濃度の上昇が、小腸L細胞および膵α細胞からのGLP-1の分泌を刺激し、インスリン分泌と高血糖を改善することを明らかにした。IL-6はプログルカゴンとprohormone convertase(PC)1/3の発現を増加させることにより、α細胞からのGLP-1の産生を増加させる。2型糖尿病のモデルにおいては、IL-6は好影響をもたらし、IL-6の中和は高血糖とGLP-1の低下をきたす。このこれまで知られていなかった内分泌ループにおいて、IL-6はインスリン分泌に重要な役割を果たし、糖尿病治療に役立つ可能性がある。

【論文内容】
脂肪組織から分泌されるサイトカインであるIL-6は、インスリン抵抗性の原因となり、糖代謝を悪化させると考えられている。一方で、運動で筋収縮が起こるとIL-6が増加し、このことがインスリン抵抗性を改善することも知られている。このグループは以前、IL-6の主要なターゲットが膵α細胞であることを見出した。IL-6によってα細胞のアポトーシスが阻害され、高脂肪食負荷時の増殖が促進される。全身のIL-6欠損マウスではα細胞増殖が起こらないが、一方でインスリ分泌が障害され、高血糖をきたした。このように、高脂肪食に伴うβ細胞の代償が起きるにはα細胞の増殖が必要であることが示されている。しかし、このメカニズムは不明であった。

また、GLP-1は小腸L細胞で、前駆体であるプログルカゴンからprohormone convertase(PC)1/3によって切断されて分泌される。α細胞では、プログルカゴンは、PC2によって切断されグルカゴンを生成するが、糖尿病動物ではα細胞でもPC1/3の発現が増加して、GLP-1が産生されることが報告されている。そこで、肥満や運動によるIL-6の増加がβ細胞のインスリン分泌を促進する機構として、IL-6がL細胞およびα細胞からGLP-1を産生し、それによりβ細胞のインスリン分泌が促進される可能性を考えた。

運動はIL-6の増加を介して、GLP-1を増加させる
トレッドミル運動によって血中IL-6とGLP-1が増加した。IL-6欠損マウスや抗IL-6抗体投与マウスでは、このGLP-1増加が起きないことを確認した。すなわち、運動による全身のIL-6の増加によってGLP-1分泌を促進される。

IL-6はGLP-1を介してインスリン分泌を増加させる
マウスにIL-6を注入した場合、しないマウスに比べると、ipGTTを行っても血糖変動は変化ないが、OGTTを行うとインクレチン効果の増強により血糖低下が認められた。GLP-1受容体欠損マウスでは、IL-6による糖代謝改善効果は見られず、IL-6のインスリン分泌亢進作用にはGLP-1が必要であることが示された。また、IL-6濃度を間欠的に増加させると(1日2回投与)、GLP-1が増加しβ細胞機能・糖代謝が改善した。

IL-6は腸管および膵のGLP-1を増加させる
次にIL-6注入により組織のプログルカゴン(Gcg)mRNAとGLP-1量が増加するかを検討した。1日2回IL-6を投与したマウスでは、L細胞の多い回腸および大腸でのGcg mRNA発現とGLP-1量が増加した。さらに膵のGLP-1、グルカゴン、インスリン量もIL-6投与により増加した。回腸、大腸では、PC1/3の発現が増加していた(PC2は変化なし)。DPP4の発現量や活性は変化なかったので、IL-6はGLP-1の産生を促進すると言える(GLP-1の消失を減らすのではない)。

IL-6はL細胞でのGLP-1合成と分泌を増加させる
マウスのL細胞株(GLUTag細胞)に対するIL-6の直接の作用を検討した。GLUTag細胞にはIL-6受容体が発現しており、IL-6刺激によりSTAT3のリン酸化が亢進した。また、IL-6刺激により用量依存的にGLP-1発現とGLP-1のexocytosisが増加した。さらに、慢性的なIL-6刺激ではL細胞のグルコース応答性GLP-1分泌が増加した。

IL-6はヒト膵島α細胞からのGLP-1分泌を増加させる
ヒトの膵島にIL-6を添加し4日間培養した。その結果、IL-6刺激によるGLP-1分泌増加が認められ、その増加はIL-6受容体アンタゴニストであるsuper antagonist 7(Sant7)によって抑制された。ヒト膵島をグルコースを含むmediumで培養したconditioned mediumで、膵島を培養すると、インスリン分泌が促進され、これはGLP‐1アンタゴニスト(exendin(9-39))によって抑制された。したがって、ヒト膵島から分泌されたGLP-1は活性がある(bioactiveである)ことがin vitroで示された。次にFACSで濃縮したヒトα細胞をIL-6と培養したところ、GLP‐1発現が増加した。また、IL-6刺激により、プログルカゴンのプロセッシングがグルカゴンからGLP-1にシフトすることが確認され、これはPC1/3発現の増加によることが示された。

糖尿病モデル動物におけるIL-6の急性上昇の効果
肥満・糖尿病モデル動物では慢性的にIL-6が増加しているが、そこに急性にIL-6を増加させるとそれに反応してβ細胞機能が改善する余地があるかを検討した。高脂肪食負荷マウス、ob/obdb/dbマウスにボーラスでIL-6を投与するとインスリン分泌が上昇し、血糖が低下した。β細胞が破壊されたSTZ投与マウスではこのようなインスリン分泌の増強は起こらなかった。

IL-6は肥満に反応してα細胞をリプログラムする
このグループでは以前、高脂肪食を負荷したマウスではIL-6依存的にα細胞量が増加することを示しているが、この場合にグルカゴンは増加せず、GLP-1が増加(GLP-1:グルカゴン発現比が増加)していた。また、α細胞におけるPC1/3の発現の増加が免疫染色で示された。これらのことはIL-6欠損マウスでは起こらなかった。すなわち、IL-6は高脂肪食に伴う肥満に反応して濃度が増加し、α細胞のPC1/3発現が増加してグルカゴン産生からGLP‐1産生にシフトすると考えられる。

IL-6を抗体で阻害することによってdb/dbマウスの高血糖が悪化する
次に、db/dbマウスで増加した内因性IL-6を中和抗体の投与で抑制したところ、耐糖能の悪化が見られた。IL-6の抑制は、インスリン分泌には影響はないが、グルカゴン濃度が増加、膵GLP-1が低下していた。

【結論】
GLP-1はL細胞で産生され、血流に乗ってβ細胞に作用すると考えられている。本研究では、IL-6が、α細胞でプログルカゴン増加・PC1/3発現増加を介して、GLP-1産生を増加させることを示した。このGLP-1産生が膵島においてparacrine様に作用してβ細胞からのインスリン分泌を増加させると考えられた。
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by md345797 | 2011-11-29 21:19 | インスリン分泌

Chemerinはマウスのβ細胞機能を調節する

Chemerin regulates β-cell function in mice.

Takahashi M, Okimura Y, Iguchi G, Nishizawa H, Yamamoto M, Suda K, Kitazawa R, Fujimoto W, Takahashi K, Zolotaryov FN, Hong KS, Kiyonari H, Abe T, Kaji H, Kitazawa S, Kasuga M, Chihara K, Takahashi Y.

Scientific Reports. Published on Oct 19, 2011.

【まとめ】
Chemerinにはいくつかの機能があることが知られているが、その生理的役割についてはよく分かっていない。本研究では、chemerin欠損マウスが、肝糖産生の増加とインスリン分泌障害により、耐糖能異常をきたすことを明らかにした。Chemerinとその受容体ChemR23はβ細胞に発現している。単離膵島および膵還流実験により、chemerin欠損マウスではグルコース応答性インスリン分泌(GSIS)の障害があることが分かった。Chemerin欠損マウスの膵島およびchemerinをノックダウンしたβ細胞株では、β細胞機能に重要な役割を果たす転写因子であるMafAの発現が低下しており、MafAのrescueによりGSISが回復する。このことから、chemerinはMafA発現を維持することによりβ細胞機能を調節していることが示された。

【論文内容】
Chemerinは、当初、皮膚において、オーファン受容体ChemR23のリガンドとして同定され、樹状細胞やマクロファージの化学走行を促進すると考えられている。また、抗炎症作用を持つとも考えられているが、chemerin/ChemR23の生理的な機能は不明である。最近、chemerinがadipokineであり、脂肪細胞での糖取り込みを促進するなどの報告がある。

Chemerin欠損マウスは糖代謝障害をきたす
本研究ではchemerin欠損マウスを作製した。Chemerin-/-マウスは外見上正常で体重・食事摂取もchemerin +/+と変わらなかった。IPGTTを行ったところ、chemerin-/-マウスは血糖が有意に高値であった。正常血糖高インスリンクランプによると、GIRは正常であったが(インスリン抵抗性は正常)、Rd(筋肉での糖取り込み)は増加、肝糖産生が増加していた。さらに、G6Pase、PEPCK発現も増加していた。

Chemerin欠損マウスは脂肪組織へのマクロファージ浸潤が減少
Chemerin-/-マウスでは、脂肪組織においてマクロファージマーカーであるCD68、F4/80およびMac3-陽性細胞は有意に減少していた。したがって、Chemerin-/-マウスではマクロファージ浸潤は減少していた。

Chemerinとその受容体ChemR23はβ細胞に発現している
組織でのchemerinの発現を検討したところ、chemerinはヒト膵に多く発現していた。ChemR23は主に白色脂肪組織、心臓、精巣に発現していたが、ChemR23は膵島にも発現しており、chemerinとChemR23はインスリンとの免疫染色によりβ細胞に発現していることが分かった。

Chemerin欠損β細胞はGSISが障害されている
Chemerin-/-マウスでは、膵島の形態や面積は正常だが、単離した膵島および膵還流実験においてGSISが障害されていることが示された。また、chemerinとChemR23の発現が確認されているMIN6細胞株でchemerinまたはChemR23をノックダウンするとGSISが障害された。

高脂肪食負荷chemerin-/-マウスとchemerinトランスジェニックマウス
Chemerin-/-マウスに高脂肪食を負荷すると、chemerin +/+に比べ耐糖能が悪化する。次に、肝でchemerinを過剰発現するためSAPプロモーター下でchemerinを発現するトランスジェニックマウスを作製した(chemerinが最も多く発現しているのが肝のため)。このchemerinトランスジェニックマウスは耐糖能が改善し、GSISが亢進していた。

Chemerinはβ細胞でのMafA発現を維持することによりGSISを調節する
Chemerin-/-マウスの単離膵島での遺伝子発現の変化を比較すると、MafAの発現が有意に低下していることが分かった。MIN6細胞でchemerinまたはChemR23をノックダウンすると、MafAの発現が低下した。Chemerin-/-マウスの単離膵島および前述のMIN6細胞でMafA発現をrescueすると、GSISが有意に改善された。

【結論】
Chemerin-/-マウスの膵島ではGSISが障害されており、chemerinは膵島においてMafA発現を維持することによりGSISを正に調節していると考えられた。
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by md345797 | 2011-11-10 07:27 | インスリン分泌

グルコース応答性のインスリン分泌を示すヒト膵β細胞株

A genetically engineered human pancreatic β cell line exhibiting glucose-inducible insulin secretion.

Ravassard P, Hazhouz Y, Pechberty S, Bricout-Neveu E, Armanet M, Czernichow P, Scharfmann R.

J Clin Invest. 2011 Aug 25 Published on line.

【まとめ】
げっ歯類の膵β細胞株(ラット、ハムスター、マウス由来)は存在するが、ヒトの膵β細胞株は30年以上の努力にも関わらず得られていなかった。この研究では、ヒト胎児組織に腫瘍形成を起こさせることにより、機能的なヒトβ細胞株を作製する技術を開発した。ヒト胎児膵芽に、インスリンプロモーター下にSV40LTを発現させるレンチウイルスベクターを形質導入し、それをSCIDマウスに移植して膵組織を発生させた。新しく形成されたSV40LTを発現するβ細胞は、増殖してインスリノーマを形成した。そのβ細胞にヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)を導入し、別のSCIDマウスに移植し、それをin vitroで増殖させ細胞株を得ることができた。その細胞株の一つであるEndoC-βH1は、多くのβ細胞特異的マーカーを発現しており、他の膵細胞のマーカーは発現していなかった。この細胞は、グルコースやその他のインスリン分泌刺激に反応してインスリンを分泌し、糖尿病マウスに移植すると糖尿病を改善した。この細胞は、大規模創薬研究や糖尿病の細胞治療にも有用な手段になる。さらに、この技術はヒト細胞株を作製する一般的な方法にもなりうる。

【論文内容】
ヒト胎児膵由来のインスリン陽性細胞

ヒト胎児の膵原基に、ラットインスリンⅡプロモーター下でSV40LTを発現するレンチウイルスベクターを導入し、SCIDマウスの腎被膜下に移植した。移植3か月後、インスリン陽性細胞でSV40LTの発現が増殖(増殖マーカーのKi67が陽性)を促しており、インスリノーマを形成していた。この腫瘤を取り出し、細胞の老化を防止するため、hTERTを発現させるレンチウイルスを導入し別のSCIDマウスに移植した。このマウスは低血糖をきたし、インスリン発現細胞はSV40LTおよびPDX1陽性であったが、グルカゴンやアミラーゼは陽性ではなかった。

EndoC-βH1ヒトβ細胞株の派生と特徴
上記のインスリノーマを持った移植マウスを500以上作製し、in vitroで細胞株を派生させた。そのうちの一つであるEndoC-βH1は、冷凍・融解可能で、少なくとも80 passageを継代でき、ヒト膵島と同程度のβ細胞転写因子(PDX1、MAFA、NKX6-1、PAX6、NEUROD1)を発現していた。グルコースセンサーであるグルコキナーゼ(GCK)も高レベルに発現していた。グルカゴンやソマトスタチン、IAPP(islet amyloid pancreatic polypeptide)は陰性であった。

インスリン量とインスリン分泌
EndoC-βH1細胞は、0.46μg/million cellsのインスリンを含む。グルコース刺激によりインスリン分泌は3倍に増加し、GLP1R agonistであるexendin-4や、K-ATPチャネル阻害薬のglibenclamide、分枝鎖アミノ酸(L-leucine)によってもインスリン分泌が促進された。

EndoC-βH1細胞の移植によりマウス糖尿病が改善する
EndoC-βH1細胞のin vivoでの機能を検討するため、STZを投与したSCIDマウスにEndoC-βH1細胞を移植した。数日以内に血糖は低下し、GTTでの反応も改善した。このマウスの膵にはインスリン陽性細胞はほとんどないが、移植部位にはヒトのインスリン陽性細胞が認められた。

【結論】
グルコース応答性のインスリン分泌を示すヒト膵β細胞株を作製する技術を開発した。この技術は他のヒトの細胞株作製に応用可能である。このEndoC-βH1細胞はヒトβ細胞の生理学の理解、大規模創薬研究、糖尿病の細胞治療に有用と考えられる。
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by md345797 | 2011-08-26 17:28 | インスリン分泌

Cdkal1によるtRNA Lysの修飾が欠損すると、マウスで2型糖尿病を発症する

Deficit of tRNALys modification by Cdkal1 causes the development of type 2 diabetes in mice.

Wei FY, Suzuki T, Watanabe S, Kimura S, Kaitsuka T, Fujimura A, Matsui H, Atta M, Michiue H, Fontecave M, Yamagata K, Suzuki T, Tomizawa K.

J Clin Invest. 2011 Aug 15 published on line.

【まとめ】
Cdk5 regulatory associated protein 1-like1(Cdkal1)の遺伝子多型は、さまざまな民族でインスリン分泌低下と2型糖尿病のリスクに関連していることが分かっているが、この蛋白の機能は不明であった。本研究では、Cdkal1が、tRNA Lys(UUU)において2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン(ms2t6A)を合成するメチルチオトランスフェラーゼ(MTT)であることを示し、AAAおよびAAGコドンのLys(リシン)ヘの正確な翻訳に必要であることを示した。膵β細胞で特異的にCdkal1を欠損させたマウス(β cell KOマウス)は膵島の過形成、インスリン分泌の低下、血糖調節の障害を示した。Cdkal1欠損β細胞においては、プロインスリン中のLysコドンの翻訳障害により、グルコース応答性のプロインスリン合成が低下している。また、ERストレス関連遺伝子の発現が亢進しており、異常な構造のERが認められた。さらに、β cell KOマウスは高脂肪食誘導性のERストレスが起こりやすかった。これらの結果から、グルコース応答性のプロインスリン翻訳には、tRNA Lys(UUU)の修飾が必要であり、これがcdkal1のリスク対立遺伝子を持つ患者における糖尿病発症のメカニズムであると考えられた。

【論文内容】
このグループは、Cdkal1がMTTであることを明らかにし、細菌においてtRNAのms2t6Aを合成することを報告してきた。本研究では、マウスのMIN6細胞およびヒトHeLa細胞において、Cdkal1が哺乳類のms2t6A合成を修飾することを示し、この修飾がtRNA Lys(UUU)によるAAAおよびAAG→Lysの正確な翻訳に必要であることを明らかにした。

Cdkal1はERに局在する蛋白であり、Cdk5/p35(=インスリン分泌に関連)とは結合せず機能的な関連はない。Cdkal1の膵β細胞特異的KOマウスを作製(βcell KOマウス)したところ、膵島の形態に変化はないがサイズの増大を認めた。さらにグルコース応答性インスリン分泌の低下および血糖の上昇が認められた。

プロインスリンのプロセッシングにおいて、Lys残基は、インスリンA鎖とC-ペプチドの切断部位に存在するため、特に重要である。そのためLysの翻訳異常により(プロ)インスリンの切断異常が起こり、結果的にインスリン産生の低下、耐糖能障害につながりうる。実際、Cdkal1欠損のβ細胞では、14C-リシンのプロインスリンへの取り込みが低下し、βcell KOマウスでは膵および血漿中のC-ペプチドが減少していた。

Cdkal1欠損のβ細胞では、GLUT2の発現が低下しており細胞質に存在した。これはβ細胞のERストレスが関連していると考え、ERストレス関連遺伝子の発現を検討したところspiced Xbp1発現が亢進しており、異常な構造のERが認められた。

βcell KOマウスに高脂肪食を負荷すると、WTに比べ体重には差がなかったが、血糖高値、インスリンの低値が認められた。ITTではインスリン感受性に差はなかった。Cdkal1の欠損によりβ細胞でのERストレスが亢進し、インスリン分泌が低下し、耐糖能異常をきたすと考えられた。

【結論】
tRNAのアンチコドン周辺の核酸の化学修飾は、翻訳の正確性と効率に重要な役割を果たす。今回、Cdkal1によるtRNA Lys(UUU)の修飾が、インスリン中のLysを正確に翻訳するのに必要であることを示した。この翻訳障害はプロインスリンの折り畳み異常を起こし、β細胞でのERストレスを惹起する。これらの結果により、Cdkal1の異常がインスリン分泌を低下させるメカニズムが明らかになった。
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by md345797 | 2011-08-18 08:05 | インスリン分泌

膵島の低酸素化亜集団は内分泌細胞の機能的備蓄として働いている

A low-oxygenated subpopulation of pancreatic islets constitutes a functional reserve of endocrine cells.

Olsson R, Carlsson PO.

Diabetes. 2011 Aug;60(8):2068-75.

【まとめ】
膵島の血液還流は大きく変動し、血糖値によって緊密に調節されている。膵島の酸素化についてはin vitroで詳しく検討されてきたが、in vivoでの知見は少ない。Pimonidazoleは、組織の酸素分圧が10 mmHg未満で細胞内に蓄積するため、免疫染色で低酸素マーカーとして用いられる。正常マウスでは20-25%の膵島が低酸素状態(酸素分圧10 mmHg未満)であるのに対し、膵移植後のマウスでは低酸素化膵島の割合が2倍であり、60%部分膵切除マウスではその割合がほとんどなかった。さらに、よく酸素化された膵島はleucine依存性の蛋白合成(プロインスリン合成を含む)が50%多く、酸素化は代謝に関連していることが明らかになった。以上から、休眠中の低酸素化膵島(dormant low-oxygenated islets)の亜集団(subpopulation)があることが明らかになり、これらは膵内分泌細胞の機能的備蓄(functional reserve)として働いていると考えられた。

【論文内容】
膵島は、膵全体の1-2%の体積しか占めないが、膵全体の5-10%の血流を受けている。表面積の大きい膵島の酸素分圧は40 mmHg程度で、他の腹腔内臓器に比べ大幅に高い。このような高度な血管形成はβ細胞の複製や膵島ホルモンの速い流出に重要な役割を果たしていると考えられる。膵島の血液還流は膵島の大きさによってさまざまであるが、この不均一な酸素化(heterogeneous islet oxygenation)が各々の膵島の機能に異なる影響を与えている。

正常ラットに膵移植、または60%膵部分切除を行い、それぞれ膵島を2倍、または40-50%にしたラットを作製した。これらのラットの膵島を取り出してカバーグラスに乗せ、pimonidazole取り込み(低酸素のマーカー:酸素分圧が10 mmHg未満の臓器に蓄積する)を検討した。

コントロールのラットでは、20-25%の膵島がpimonidazole陽性となる。膵移植をしたラットではpimonidazole陽性細胞の割合が増加しており、膵切除をしたラットでは陽性細胞の割合が大きく低下していた。

β細胞の蛋白合成には不均一性(heterogeneity)があることが知られている。この研究では、pimonidazoleに染色されない膵島の方が、蛋白合成(leucine-dependent protein biosynthesis=プロインスリン生合成を含む)が多いことが示された。また、pimonidazoleに染色されない膵島の方が、血流が多い(=microsphere(血流を測定するために注入した高分子微粒子)の分布数が多い)ことが分かった。

【結論】
本研究では、膵島の酸素化に大きな不均一性があることを初めて示した。さらに、低酸素化の亜集団(20-25%)は、血流が少なく蛋白合成が少ないため機能的に不活性であり、インスリン産生の機能的備蓄として働いていることが示唆された。この休眠中の膵島(dormant islet)の割合は、マウスにおいて膵移植/膵切除によって大きく減少/増加したことから、妊娠やインスリン抵抗性などの場合に同様のことが起こる可能性もあると考えられた。今後、「ヒトの膵島ではどのくらいの割合が不活性なのか」、「肥満や運動時にそれがどのように変わるか」、「活性化・不活性化を決めるメカニズムは」などの問題が想定される。
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by md345797 | 2011-08-17 07:17 | インスリン分泌

膵β細胞における糖鎖付加と糖輸送の減弱による糖尿病発症への経路

Pathway to diabetes through attenuation of pancreatic beta cell glycosylation and glucose transport

Ohtsubo K, Chen MZ, Olefsky JM, Marth JD

Nat Med. 2011 Aug 14 published on line.

【まとめ】
遊離脂肪酸の濃度が上昇すると、β細胞において転写因子FOXA2およびHNF1Aの核からの除外と発現の低下が起きる。これは、β細胞でグリコシルトランスフェラーゼ4a(GnT-4a)の発現低下をもたらし、高血糖、耐糖能異常、高インスリン血症、脂肪肝、筋肉・脂肪組織でのインスリン作用の低下などをきたす。β細胞特異的に GnT-4a 蛋白発現を増加させると、糖輸送担体の発現および糖輸送が維持され、これらの疾患が起こらなくなる。これらのことはヒト膵島でも起こっており、食事性または肥満に伴う2型糖尿病の発症メカニズムを説明できると考えられる。

【論文内容】
GnT-4a (Mgat4a遺伝子によってエンコードされるグリコシルトランスフェラーゼ)欠損マウスは2型糖尿病のモデル動物として知られている。GnT-4aはβ細胞表面でのGlut2(Slc2a2によってエンコードされる糖輸送担体)発現を促進し、その欠損は高脂肪食負荷による糖尿病発症をもたらす。β細胞のGnT-4aによる糖鎖形成とその結果起こる糖輸送の促進は糖尿病発症に重要な関連があると考えられる。

Mgat4aとSlc2a2の発現調節はFoxa2およびHnf1aによる
WTマウスに高脂肪食を負荷すると、膵島でのMgat4aおよびSlc2a2のRNAが減少する。これらの膵島では転写因子Foxa2およびHnf1aのMgat4a・Slc2a2のプロモーター領域への結合が低下していた。これはFoxa2およびHnf1aの核への局在が妨げられている(nuclear exclusion、細胞質に移行している)ためと発現が低下しているためであることが分かった。

パルミチン酸はβ細胞機能不全を起こす
パルミチン酸によりFoxa2およびHnf1aの核からの除外が促進されるが、アンチオキシダントであるN-アセチルシステインによってこの効果は阻害された。パルミチン酸はMgat4aおよびSlc2a2の発現減少をもたらすが、N-アセチルシステインによって発現は正常化する。これらの効果は非糖尿病ヒトの膵島でも同様であり、パルミチン酸によりGSIS(グルコース応答性インスリン分泌)は阻害された。

2型糖尿病におけるヒト膵島の機能不全
正常のヒトの膵島ではFOXA2およびHNF1Aの核への局在が見られるが、2型糖尿病の膵島ではこれらは核から除外されている。また、2型糖尿病の膵島では、MGAT4AおよびSLC2A2の発現が低下しており、それに伴ってGSISが低下している。さらに、GnT-4aによる糖鎖付加の障害により、糖輸送担体発現が低下していることが示された。

β細胞にGnT-4aを発現させると、糖尿病になりにくい
以上の知見に基づき、β細胞にヒトMGAT4A遺伝子を恒常的に発現させたトランスジェニック(Tg)マウスを作製した。通常、β細胞のGlut2は高脂肪食負荷によって細胞内のエンドソームやリソソームに移行してしまうが、このTgマウスでは高脂肪食負荷してもGlut2が細胞表面に存在した。さらに、高脂肪食負荷Tgマウスでは耐糖能、高インスリン血症、 GSISの正常化が認められた。また、このマウスでは、インスリン抵抗性の改善、インスリンによるAktリン酸化亢進、 IRS-1のSer307のリン酸化低下が認められた。さらに、脂肪肝の減少も見られた。

β細胞にGlut2を発現させると、糖尿病になりにくい
次に、β細胞にヒトSLC2A2遺伝子を恒常的に発現させたTgマウスを作製した。その結果GLUT2糖蛋白は、高脂肪食負荷でも細胞表面に多く存在した。さらに、この Tgマウスでは、高脂肪食負荷をしても血糖・インスリン値が低下、インスリン抵抗性が改善した。
インスリン抵抗性改善については、GnT-4aまたはGlut2のβ細胞での過剰発現により、インスリン分泌が正常化したことに伴って、高インスリン血症に伴うインスリンのdesensitizationが起こらなくなり、インスリン抵抗性が改善したと想定される。

【結論】
高脂血症、肥満に伴う遊離脂肪酸の増加は、Foxa2およびHnf1aの核からの除外によりMgat4aとSlc2a2(GnT-4aとGlut2)の発現低下をもたらす。GnT-4aは、Glut2に糖鎖を付加して膵β細胞表面に安定して発現させる役割があることから、これらの発現低下はβ細胞の糖輸送を低下させ、GSISを減弱し、さらには全身のインスリン抵抗性を惹き起こし、糖尿病発症につながると考えられる。
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by md345797 | 2011-08-15 17:27 | インスリン分泌

膵β細胞のClass IA PI 3-キナーゼはインスリン分泌を調節している

Class IA Phosphatidylinositol 3-Kinase in Pancreatic β Cells Controls Insulin Secretion by Multiple Mechanisms.

Kaneko K, Ueki K, Takahashi N, Hashimoto S, Okamoto M, Awazawa M, Okazaki Y, Ohsugi M, Inabe K, Umehara T, Yoshida M,Kakei M, Kitamura T, Luo J, Kulkarni RN, Kahn CR, Kasai H, Cantley LC, Kadowaki T.

Cell Metab. 2010 Dec 1;12(6):619-32.

【まとめ】
膵β細胞でのClass IA PI 3-キナーゼ(PI3K)の役割を検討するため、β細胞でPI3Kを欠損(調節サブユニットの遺伝子pik3r1を膵特異的に欠損、かつpik3r2を全身で欠損)させたβDKOマウスを作製した。このマウスは、インスリン分泌低下に伴う耐糖能異常をきたし、そのメカニズムとしてインスリン顆粒のexocytotic machinery (SNARE complex)の発現低下とCa2+ influxの細胞間同期(synchronization) の消失があることが明らかになった。したがって、β細胞におけるPI3Kシグナルはインスリン分泌調節に重要であり、2型糖尿病の治療ターゲットになりうる。

【論文内容】
PI3Kの調節サブユニットは、70%以上がp85α、20%がp85βであり、それぞれpik3r1、pik3r2によってエンコードされている。膵β細胞でのPI3Kシグナルの役割を検討するため、β細胞特異的pik3r1KOマウス、全身のpik3r2KOマウス、それらをかけ合わせてPI3Kシグナルのほとんどをshut downしたβDKOマウスを作製した。
βpik3r1KOマウスおよびβDKOマウスは体重、血糖、インスリン値はそれぞれのコントロールと差がなかったが、GTTでglucose-stimulated insulin secretion(GSIS)低下による耐糖能異常を認めた。
βDKOマウスはコントロールと比べて、膵島面積が小さくβ細胞のアポトーシスが増加していたが、同時にBrdU-陽性β細胞も増加していた。このマウスの膵島ではPI3Kシグナルが低下しているが、同時にErk1/2リン酸化が増加しており、アポトーシスに代償的に細胞増殖を活性化させていた。

βDKOマウスのインスリン分泌障害のメカニズムを明らかにするため、2光子励起イメージング法を用いてexocytotic eventsを検討した。その結果、このマウスではグルコース刺激に伴うexocytotic eventsの数が減少、Ca2+ influxが低下していた。また、コントロールマウスでは、すべてのβ細胞のCa2+ influxが同時に起こるのに対し、βDKOマウスではそのsynchronicityが消失していた。さらに、インスリン顆粒のexocytosisに重要なSNARE complex蛋白の発現が減少しており、gap-junctionを通じてβ細胞がcell-cell synchronizationを行うためのConnexin36の発現も低下していた。βDKOマウスに見られるこれらの低下は、PI3Kシグナルの下流にあるAktのconstitutive-active formを過剰発現させると正常化し、GSISの回復にもつながった。

【結論】
膵β細胞におけるClass IA PI3Kは、膵β細胞のインスリン分泌に重要な役割を担っている。そのメカニズムとしてPI3Kが、細胞内Ca2+ influxのcell-cell synchronizationを維持していること、exocytosisに重要なSNARE complex蛋白の発現に関わっていること、β細胞の抗アポトーシス効果も担っていることなどが明らかになった。PI3K pathwayの活性化は末梢組織のみならず膵β細胞でも、2型糖尿病治療戦略として重要である。
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by md345797 | 2010-12-02 20:21 | インスリン分泌

TBP-2欠損は肥満に影響せず、インスリン感受性・分泌を改善する

Disruption of TBP-2 ameliorates insulin sensitivity and secretion without affecting obesity.

Yoshihara E, Fujimoto S, Inagaki N, Okawa K, Masaki S, Yodoi J, Masutani H.

Nature Communications. Vol 1, Article No. 127, 2010 Nov 23.

【まとめ】
核内蛋白TBP-2 (thioredoxin binding protein-2)は、肥満モデルマウスであるob/obマウスの筋肉・膵島で発現が増加している。TBP-2欠損ob/obマウスを作製したところ、ob/obマウスと比較して過食・肥満は改善されなかったが、インスリン感受性、インスリン分泌は改善した。インスリン感受性改善に伴い、筋肉のIRS-1/Akt経路が活性化され、インスリン分泌改善に伴い、膵島のミトコンドリアATP産生が増加(ミトコンドリアのUCP-2の転写が低下)していた。

【論文内容】
TBP-2は、thioredoxinのnegative regulatorであり、核内に局在している。また、TBP-2はα-arrestinファミリーに属する蛋白であり、細胞死の調節、細胞増殖、分化、免疫応答、エネルギー代謝などさまざまな生物学的機能を果たしている。本グループおよび他のグループは、TBP-2欠損または変異マウスではインスリン感受性、インスリン分泌が亢進することを明らかにしている。

ob/obマウスでは筋肉、脂肪組織、膵島でTBP-2の発現が増加していたため、TBP-2欠損ob/obマウスを作製し、TBP-2の役割を検討した。TBP-2欠損ob/obマウスは、ob/obマウスに比べ体重が増加(オス)か同じ(メス)で、摂食量も同じだが、血糖はWTと同じくらい低く、GTT・ITTで耐糖能、インスリン感受性も亢進していた。またこのマウスは、脂肪量および大型脂肪細胞が多く、血中adiponectin量は有意に低下していた。また、ob/obマウスの筋肉におけるIRS-1の発現低下、Aktのリン酸化低下は、TBP-2欠損によって回復した。

TBP-2欠損ob/obマウスは、ob/obマウスに比べ、GTTでのインスリン分泌が亢進している(膵島のmassは差がない)。これはTBP-2欠損により、glucose-stimulated insulin secretion (GSIS)が亢進することを示している。ob/obマウスにおける膵島のミトコンドリアの形態異常および機能低下(ATP産生低下)が、TBP-2欠損マウスでは改善している。INS-1細胞のTBP-2をsiRNAを用いてknockdownしてもミトコンドリアATP産生とGSISが増加することから、TBP-2はGSISを抑制する作用があると言える。

UCP-2はミトコンドリアのATP産生の主要な調節因子であり、UCP-2欠損はob/obマウスのGSISを回復させることが報告されている。TBP-2を過剰発現させたINS-1細胞ではUCP-2の発現が増加しており、TBP-2はPGC-1α依存性のpathwayによりUCP-2の転写活性を亢進させることが示された。

さらにTBP-2を結合させたビーズを用いて、結合蛋白としてMybbp1aを同定した。この蛋白は、PGC-1の転写を阻害することが知られており、PGC-1依存性UCP-2転写活性も抑制するが、TBP-2との結合によりその阻害がブロックされ、UCP-2転写が活性化されることが示された。

【結論】
TBP-2は、糖尿病においてインスリン感受性とインスリン分泌(GSIS)を調節する因子であり、その阻害または発現低下は2型糖尿病の新しい治療のアプローチとして有望である。
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by md345797 | 2010-11-28 00:06 | インスリン分泌