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カテゴリ:大規模臨床試験( 21 )

砂糖入り甘味飲料と肥満の遺伝的リスク

Sugar-Sweetened Beverages and Genetic Risk of Obesity.

Qi Q, Chu AY, Kang JH, Jensen MK, Curhan GC, Pasquale LR, Ridker, Hunter DJ, Walter C. Willett WC, Rimm EB, Chasman DI, Hu FB, Qi L.

N Engl J Med. Published online September 21, 2012.

【まとめ】
背景 砂糖入り甘味飲料の消費の増加は、肥満の有病率増加と並行している。これらの甘味飲料の摂取が遺伝的素因とどのように相互作用し肥満をきたしているかは明らかではない。
方法 そこで、6934名の女性(Nurses’ Health Study: NHS)と4423名の男性(Health Professionals Follow-up Study: HPFS)、および再現コホートとして21,740名の女性(Women’s Geneome Health Study: WGFS)を対象として、遺伝的素因と砂糖入り甘味飲料の摂取の相互作用がBMIと肥満リスクに果たす役割を解析した。遺伝的素因のためには、32のBMIに関連した遺伝子座をもとにgenetic-predisposition score(GPS:遺伝的素因スコア)を計算した。
結果 NHSとHPFSコホートにおいて、遺伝的素因とBMIの関連は、砂糖入り甘味飲料を多く飲んでいる対象者の方が、少ない対象者より強かった。両者を合わせたコホートにおいて、10のリスクアリル増加ごとのBMI増加は、1.00(月あたり1 serving以下の摂取)、1.12(月あたり4 servings)、1.38(週あたり2-6 servings)、1.78 (1日あたり1 serving以上)であった。同じ砂糖入り甘味飲料の摂取カテゴリーで、10のリスクアレルごとの肥満頻度の相対リスクは、1.19、1.67、1.58、5.06と有意に上昇した。WGHSコホートにおいては、10のリスクアレル増加ごとのBMI増加は1.39、1.64、1.90、2.53と有意に増加、肥満頻度の相対リスクも1.40、1.50、1.54、3.16とそれぞれ有意に増加した。
結論 肥満と遺伝的素因の関連は、砂糖入り甘味飲料を多く飲んでいる人でより強いと考えられる。
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by md345797 | 2012-09-23 01:11 | 大規模臨床試験

砂糖入り甘味飲料の、青年期体重に対するランダム化試験

A Randomized Trial of Sugar-Sweetened Beverages and Adolescent Body Weight.

Ebbeling CB, Feldman HA, Chomitz VR, Antonelli TA, Gortmaker SL, Osganian SK, Ludwig DS.

N Engl J Med. Published online September 21, 2012.

【まとめ】
背景 砂糖入り甘味飲料は体重増加の原因となる。そこで、過体重または肥満の青年に自宅でノンカロリー飲料を飲むような介入を行うことにより、体重への影響を検討する。
方法 日常的に砂糖入り甘味飲料を消費している、224名の過体重または肥満の思春期男女(平均約15歳)をランダムに分け、「実験グループ」すなわち1年間砂糖入り甘味飲料を飲まないように介入したグループ(ペットボトルの水か人工甘味料を用いた「ダイエット」飲料、できれば水を薦めた)と「コントロールグループ」に割り付けた。1年の介入期間終了後は、追加の介入なくfollow-upのみを継続した。「実験グループ」の方が「コントロールグループ」よりも、体重増加が遅いことを想定して追跡を行った。
結果 ベースラインでの砂糖入り甘味飲料の消費は、「実験グループ」「コントロールグループ」で同じであった(1日1.7 servings)。これを「実験グループ」では、1年間ほぼ0となり、2年間でも「コントロールグループ」よりは少ない消費量となった。主要評価項目(primary outcome)である2年間のBMIの変化は2群間で有意差は認めなかった。ただし、1年目には「実験グループ」の方が、BMI(-0.57)、体重(-1.9 kg)の有意な低下が見られていた。さらに、1年目および2年目のBMI減少は、民族による違いが見られ、Hispanicの被験者のみでBMIの差を比較すると、1年目(-1.79 )、2年目(-2.35)で有意な低下が認められた。Non-Hispanicの被験者ではそのような差は認めなかった。
結論 過体重または肥満の青年において、「実験グループ」の方が「コントロールグループ」に比べて1年間の介入期間におけるBMIの増加が小さかったが、2年目のfllow-upの期間はそうではなかった。
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by md345797 | 2012-09-23 00:23 | 大規模臨床試験

砂糖なし甘味飲料または砂糖入り甘味飲料の、小児の体重に対する影響

A Trial of Sugar-free or Sugar-Sweetened Beverages and Body Weight in Children.

de Ruyter JC, Olthof MR, Seidell JC, Katan MB.

N Engl J Med. Published online September 21, 2012.

【まとめ】
背景 砂糖入り甘味飲料は満腹感を刺激しないため、他の食事の量が減ることがなく、過体重をもたらすと考えられている。しかし、砂糖入り甘味飲料とノンカロリー(人工甘味料による甘味)飲料とで体重増加に対する影響は検討されていない。
方法 641名の正常体重の小児(4歳10か月から11歳11か月)を対象に18か月にわたる試験を行った。参加者は、ランダムに250 mlの砂糖なし・人工甘味料を含む飲料(砂糖なしグループ)、または同量の砂糖入り甘味飲料(104 kcal)(砂糖グループ)を学校から配布され、割り付けられた(それぞれの飲料は味や外観からは区別がつかないようにした)。
結果 BMIのz score(オランダの同性・同年齢の小児の平均BMIからどれくらい離れているかの標準偏差SD)は、砂糖なしグループでは0.02 SDだったのに対し、砂糖グループは0.15 SDであった、体重増加は砂糖なしグループは6.35 kg、砂糖グループは7.37 kgであった。皮膚厚測定、ウエスト・身長比、脂肪量のいずれも、砂糖なしグループで有意に定値であった。
結論 正常体重の小児において、砂糖入り甘味飲料の飲用は、ノンカロリー飲料に置き換えることによって、体重増加と脂肪蓄積を減らすことができた。
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by md345797 | 2012-09-22 23:59 | 大規模臨床試験

血漿HDLコレステロールと心筋梗塞のリスク:メンデルランダム化による検討

Plasma HDL cholesterol and risk of myocardial infarction: a mendelian randomisation study.

Voight BF, Peloso GM, Orho-Melander M, et al.

Lancet. 2012 May 17. Published online.

【まとめ】
背景:血漿HDLコレステロール高値は心筋梗塞リスクの減少に関連があるとされているが、その因果関係は明らかではない。遺伝子型(genotype)は、減数分裂時にランダムに決まり、非遺伝的な交絡因子から独立しており、疾患過程によって影響を受けないため、遺伝子型を操作変数(instrumental variable)として解析を行うメンデルランダム化 (メンデル無作為化、mendelian randomisation)を用いて、HDLコレステロールと心筋梗塞リスクの因果関係について検討した。
方法:ここでは2つのメンデルランダム化解析を行った。まず、HDLコレステロールのみを特異的に増加させるendothelial lipase遺伝子のSNP (LIPG Asn396Ser)を操作変数として用いて、20の臨床試験(20913名の心筋梗塞のcaseと95407名のcontrol)におけるSNPを調べた。次に、HDLコレステロールにのみ関連する14のSNPsに基づいた遺伝的スコア(genetic score)を操作変数として用いて、このスコアと心筋梗塞リスクの関連を12482名の心筋梗塞のcaseと41331名のcontrolで調べた。コントロールとして、LDLコレステロールのみに関連する13のSNPsの遺伝スコアも調べた。
結果:LIPG Asn396Serアレルを持つ人はHDLコレステロールが有意に高値であったが、脂質(LDLコレステロールとトリグリセリド)および非脂質関連(血圧など)の心筋梗塞危険因子はこのアレルを持たない人と同様であった。観察研究によれば、LIPG Asn396Ser によるHDLコレステロールの低下は、心筋梗塞のリスクを13%減少させると予想された(オッズ比 0.87、95%信頼区間0.84-0.91)。ところが実際のメンデルランダム化による検討では、LIPG Asn396Serアレルは心筋梗塞のリスクと関連がなかった(オッズ比 0.99、95%信頼区間 0.88-1.11、p=0.85)。LDLコレステロールに関しては、観察研究による推定(心筋梗塞のリスクの増加)は、遺伝的スコアによる結果と一致したが、HDLコレステロールに関しては観察研究による推定と遺伝的スコアによる結果は一致しなかった(HDLコレステロール増加に関連する遺伝的変異は、心筋梗塞リスク減少と関連がなかった)。
考察:メンデルランダム化研究によれば、HDLコレステロールを特異的に増加させる(ある種の)遺伝的変異は、心筋梗塞リスクの低下につながらなかった。したがって、血漿HDLコレステロールを増加させることが心筋梗塞リスク減少につながるという概念には疑問が持たれる。

【論文内容】
観察研究(observational studies)ではLDLコレステロールの高値は心筋梗塞リスク増加に関連し、HDLコレステロール高値は心筋梗塞リスク低下に関連していると考えられている。しかし観察研究では、ある血漿検査結果(ここではLDLコレステロールやHDLコレステロール)が、疾患発症の原因なのか、それとも疾患のマーカーなのかまでは判断できない。これは、遺伝的変異によってランダム化された大規模試験(メンデルランダム化研究)によって判定することが可能である。

LDLコレステロールについてはLDLが高値または低値をもたらす遺伝的変異と心筋梗塞リスクの因果関係が示されている。しかし、HDLコレステロールについてはそのような一定の関係は示されていない。近年、HDLコレステロールにのみに関連し、LDLコレステロールやトリグリセリドには関連しない遺伝子変異であるendothelial lipase遺伝子のSNP (LIPG Asn396Ser)が同定された。そこで、過去のcase-control研究および前向きコホート研究において、このHDLコレステロールを上昇させる遺伝子変異が心筋梗塞に予防的に働いているかを検討した。

まずcase-control研究において、LDLコレステロールに関連するSNPについて検討した。LDLコレステロールに関連する10のSNPのうち9のLDLコレステロール増加アレルは、心筋梗塞のリスク増加と関連していた(p<0.05)。同様の検討をHDLコレステロールでも行ったところ、HDLコレステロール増加に関連する15の遺伝子座のうち、6遺伝子座(LPL、TRIB1、APOA1-APOC3-APOA4-APOA5 cluster、CETPANGPTL4、GALNT2)は心筋梗塞リスク減少に関連していた(p<0.05)。しかし、これら6のSNPは、LDLコレステロールまたはトリグリセリドまたはその両方にも影響する。例えば、HDLコレステロール増加に関連するSNPであるAPOA1-APOC3-APOA4-APOA5のrs6589566は、LDLコレステロールとトリグリセリドを減少させた。これらのSNPにはこのような多面的効果(pleiotropic effect)があるため、HDLコレステロールのみの(LDLコレステロールやトリグリセリドとは独立した)心筋梗塞リスクに対する因果関係は不明であった。

そこで、HDLコレステロール特異的に影響し、心血管リスクとなる他の脂質 (LDLコレステロール、トリグリセリド)および非脂質因子(血圧、BMI、血糖、CRP、waist-to-hip比、フィブリノーゲン、small LDL particle)に影響しない変異を用いた検討が必要である。それには、endothelial lipase遺伝子のSNPであるLIPG Asn396Ser(約2.6%のヒトが持つアミノ酸置換で、この置換があるとHDLコレステロールが0.08-0.28 mmol/L増加、LDLコレステロール・トリグリセリドには影響なし)が有効である。このLIPG Asn396Serは、メンデルランダム化のための3つの基準を満たしている。すなわち、①操作変数(instrumental variable)となる遺伝子型(LIPG Asn396Ser)が中間バイオマーカー(HDLコレステロール)に関連している、②この遺伝子型は交絡因子には関連していない、③この遺伝子型は中間バイオマーカーのみによって臨床アウトカム(心筋梗塞リスク)に影響している、という3点である。

LIPG Asn396Serアレルを持つヒトは遺伝的にHDLコレステロールが高いため(オッズ比 0.87、95%信頼区間0.84-0.91)、心筋梗塞のリスクが13%低いことが予想された。ところが実際には、6の前向きコホート研究の50763名で、LIPG Asn396Serと心筋梗塞リスクの関連を検討したところ、4228名の心筋梗塞発症者においてLIPG Asn396Serとの関連はなかった。6の研究のメタアナリシスでもLIPG Asn396Serと心筋梗塞発症との関連はなかった(オッズ比 1.10、p=0.37)。また、16685の心筋梗塞のcaseと48872のcontrolを比較したcase-control研究でも、それらの研究のメタアナリシスでも、LIPG Asn396Serと心筋梗塞発症との関連はなかった(それぞれオッズ比 0.94、p=0.41、オッズ比 0.99、p=0.85)。

さらに、LDLコレステロールのみを増加させる13のSNPsと、HDLコレステロールのみを増加させる14のSNPsで遺伝的スコアを作成し、53146名のcaseとcontrolでこれらの遺伝的スコアと心筋梗塞のリスクとの関連を調べた。その結果、遺伝的スコアによるLDLコレステロールの1 SDの増加は心筋梗塞のリスク増加に関連したが(オッズ比 2.13、p=2x10(-10))、遺伝的スコアによるHDLコレステロールの1 SDの増加は心筋梗塞のリスク増加に関連しなかった(オッズ比 0.93、p=0.63)。

【結論】
今回のメンデルランダム化による検討の結果、HDLコレステロールを特異的に増加させる遺伝的変異であるLIPG Asn396Serは心筋梗塞のリスクと関連しなかった。また、HDLコレステロールを特異的に増加させる14のSNPsを組み合わせた遺伝的スコアも、心筋梗塞のリスクと関連しなかった。以上より、①血漿HDLコレステロールを増加させることが必ずしも心筋梗塞リスクにつながらない、②血漿HDLコレステロールは心筋梗塞リスクの代理指標(surrogate measure)にならない、という結論が導かれた。

なお、過去に血漿HDLコレステロールを上昇させるCETPの遺伝的変異が心筋梗塞リスクを4%低下させるという報告がされたが、その後CETP変異はHDLコレステロール増加だけではなく、LDLコレステロール低下ももたらすと考えられ、CETP変異のHDLおよびLDLコレステロールに対する効果は区別しにくいことが明らかになっている。

今回のメンデルランダム化研究により、血漿LDLコレステロールに関連する遺伝的変異は心筋梗塞のリスクと関連したが、HDLコレステロールに関連する変異は心筋梗塞のリスクと関連しなかった。以上より、HDLコレステロールを増加させる治療や生活習慣の介入は、心筋梗塞リスク減少につながらない可能性が考えられた。
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by md345797 | 2012-08-02 17:46 | 大規模臨床試験

糖代謝異常患者に対する基礎インスリン投与による心血管およびその他のアウトカム

Basal Insulin and Cardiovascular and Other Outcomes in Dysglycemia.

ORIGIN Trial Investigators, Gerstein HC, Bosch J, Dagenais GR, Díaz R, Jung H, Maggioni AP, Pogue J, Probstfield J, Ramachandran A, Riddle MC, Rydén LE, Yusuf S.

N Engl J Med. 2012 Jul 26;367(4):319-28. Epub 2012 Jun 11.

【まとめ】
十分な基礎インスリン投与により空腹時血糖値を正常化することにより心血管イベントが減少するかどうかは確認されていない。そこで、12,537名の心血管リスクを持つ糖代謝異常(空腹時血糖異常、耐糖能異常、2型糖尿病)患者を対象に、空腹時血糖95 mg/dlを目標にinsulin glargineの投与、または通常療法を行った(なお、これらを2群に分け、n-3脂肪酸とプラセボ投与も行った)。主要評価項目(coprimary outcome)は、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、さらに心血管疾患による死亡および心不全に対する再灌流療法または入院とした。また、細小血管疾患、糖尿病発症、低血糖、体重の変化、癌の発症についても両群で比較した。

平均6.2年のfollow-up後、心血管アウトカムの発症率はinsulin glargine群と通常療法群で同様であった。ランダム化時点での非糖尿病患者の新規糖尿病発症率は、insulin glargine群で有意に低かった。重篤な低血糖の発症率もinsulin glargine群で有意に多かった。体重はinsulin glargine群で1.6 kg増加、通常療法群で 0.5 kg減少した。癌の発症率は両群で差がなかった。以上より、空腹時血糖の正常化を目的としてinsulin glargineを投与した場合、心血管アウトカムを増加させることはなかった。Inuslin glargine投与は、糖尿病新規発症を減少させたが、低血糖が増加し、体重もやや増加させた。癌の発症を増加させることはなかった。

【論文内容】
空腹時血糖の上昇は、心血管イベントの独立した危険因子である。しかし、強化血糖降下療法により低血糖のリスクが増加し、死亡率が上昇するという報告(ACCORD)もある。また、インスリン投与が心血管疾患や癌の発症を増加させるかもしれないとする懸念もあった。一方で、UKPDSでは新規発症2型糖尿病において、インスリンによる強化療法は心筋梗塞を15%、死亡を13%減少させるとしている。本研究、ORIGIN (Outcome Reduction with an Initial Glargine Intervention) trialでは、基礎インスリンによる空腹時血糖正常化が心血管アウトカムを減少させるかを検討した。

12,537名の心血管ハイリスクを持つ糖代謝異常(空腹時血糖異常、耐糖能異常、2型糖尿病)患者を、空腹時血糖が95 mg/dl以下になるようにinsulin glargineを夜1回投与する群と、通常療法群(各担当者が最良と判断する治療を行う)にランダムに割り付けた。1年後にinsulin glargine群の50%が空腹時血糖が94 mg/dl以下となり、その後も維持された。5年後のinsulin glargine注射の遵守率は85%であった。通常療法群では、研究終了時に11%がインスリンを使っており、19%は経口糖尿病薬を使っていなかった。開始2年時のinsulin glargine群の空腹時血糖(90 mg/dl)は、通常療法群(119 mg/dl)より低かった。

複合主要評価項目(coprimary composite outcomes:第一は心血管疾患による死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中。第二は心不全に対する再灌流療法または入院)は、insulin glargine群と通常療法群で有意差はなかった。第一、第二の主要評価項目に対するハザード比はそれぞれ1.02(95%信頼区間 0.94-1.11)、1.04(0.90-1.08)であった。

ランダム化の時点で糖尿病がなかった1456名のうち、insulin glargineに割り付けられた群(737名)と通常療法に割り付けられた群(719名)で新規糖尿病発症率を比較したところ、35%と43%であり(オッズ比 0.69、95%信頼区間 0.56-0.86, P=0.001)insulin glargine群で有意に糖尿病発症率が低かった。また、癌の発症率(ハザード比 0.94、95%信頼区間 0.88-1.13, P=0.97)および癌による死亡も両群で有意差はなかった。重篤な低血糖は、insulin glargine群が通常療法群に比べ有意に多かった(1.00 vs. 0.31 per 100 person-years、P<0.001)。6.2年のfollow-up期間の体重の変化は、insulin glargine群で平均1.6 kgの増加に対し、通常療法では0.5 kgの減少が見られた。

【結論】
空腹時血糖を低下させることを目標に6.2年間insulin glargineを投与した場合、通常療法に比べて、心血管アウトカムの増加は認められなかった。なお、insulin glargine投与により、糖尿病新規発症が減少、低血糖が増加、体重が増加したが、癌の発症の増加は見られなかった。

(本研究の限界として、insulin glargine群で最終的に47%にmetforminが用いられていたということがある。Metforminは心保護作用が報告されており、insulin glargineに心血管を障害する作用があってもそれが軽減されてしまった可能性がある。また、本研究でinsulin glargine群に割り付けられた人は通常ならインスリンを処方されない場合があり、そのような人では空腹時血糖が通常のインスリン治療より低下している可能性もある。)
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by md345797 | 2012-07-13 17:35 | 大規模臨床試験

糖代謝異常患者におけるn-3脂肪酸と心血管アウトカム

n-3 Fatty Acids and Cardiovascular Outcomes in Patients with Dysglycemia.

ORIGIN Trial Investigators, Bosch J, Gerstein HC, Dagenais GR, Díaz R, Dyal L, Jung H, Maggiono AP, Probstfield J, Ramachandran A, Riddle MC, Rydén LE, Yusuf S.

N Engl J Med. 2012 Jul 26;367(4):309-18. Epub 2012 Jun 11.

【まとめ】
n-3脂肪酸の摂取は心筋梗塞や心不全の患者で心血管イベントを予防すると考えられているが、2型糖尿病およびそのリスク患者での効果は不明である。この研究では、12,536名の心血管イベントハイリスクを持つ、空腹時血糖異常(impaired fasting glucose)、耐糖能異常(impaired glucose tolerance)、または糖尿病の患者を、n-3脂肪酸のエチルエステルを含む1gカプセル連日服用群またはプラセボ服用群にランダムに割り付けた(なお、これらの患者はinsulin glargine投与群と通常療法群に分けた)。主要評価項目(primary outcome)は、心血管疾患による死亡とした。平均6.2年間のfollow upの間、主要評価項目はプラセボ服用群に比べ、n-3脂肪酸服用群で有意に低下しなかった。n-3脂肪酸服用は、主要な血管イベントの発症率、総死亡、不整脈による死亡にも影響はなかった。n-3脂肪酸服用群はプラセボ群に比べ、トリグリセリド値は14.5 mg/dl有意に低下したが、他の脂質への影響はなかった。結論として、n-3脂肪酸の1g連日投与は、心血管イベントハイリスクを持つ糖代謝異常患者の心血管イベント発症率を減少させなかった。

【論文内容】
n-3脂肪酸の摂取は、不整脈、トリグリセリド高値、動脈硬化プラーク、血管内皮機能障害、血小板凝集、炎症に効果があると考えられている。疫学研究でも、定期的に魚を食べるか、n-3脂肪酸を含むサプリメントを摂取する人は心血管イベントのリスクが低いことが知られている。メタアナリシスでも、n-3脂肪酸摂取は、致死的・非致死的心血管イベントを減少させることが示されてきたが、ランダム化・プラセボ比較盲検試験に限ったメタアナリシスでは、n-3脂肪酸を含むサプリメントは心血管アウトカムに影響がないとされている。今までに、糖代謝異常患者(2型糖尿病、空腹時血糖異常、耐糖能異常)の患者において、n-3脂肪酸の効果を検討する研究がなかったため、本研究、ORIGIN(Outcome Reduction with Initial Glargine Intervention) にて検討した。

12,611名の心血管ハイリスクをもつ糖代謝異常患者を、n-3脂肪酸(EPA 465 mg +DHA 375 mgを含む)を1gまたはプラセボのオリーブオイル1gを服用する2群に、ランダムに割り付け、平均6.2年間追跡した。n-3脂肪酸摂取群の心血管系による死亡は574名(9.1%)、プラセボ群では581名(9.3%)、ハザード比は0.98(95%信頼区間0.87-1.10)で、主要評価項目の有意な減少は見られなかった。また、n-3脂肪酸摂取群の主要な血管イベントの発症は、1034名(16.5%)、プラセボ群では1017名(16.3%)、ハザード比1.01(95%信頼区間0.93-1.10)と有意差は見られず、総死亡、不整脈による死亡にも差は認められなかった。なお、n-3脂肪酸摂取群ではプラセボ群より、トリグリセリド値が14.5 mg/dl有意に低下していた。その他の脂質、糖代謝、血圧に有意差は認めなかった。

【結論】
本研究では、糖代謝異常患者に対する1gのn-3脂肪酸の6.2年間の投与により、心血管疾患による死亡は減少しなかった。過去の臨床試験の結果との違いについては、①過去の、発症3か月以内の心筋梗塞または心不全患者にn-3脂肪酸を投与した研究は、本研究に比べ、n-3脂肪酸の抗不整脈効果が大きく現れた可能性がある。②また、本研究を含む最近の患者は従来の研究の患者に比べ心保護治療を受けていたとも考えられる。最近の研究では、心筋梗塞患者にn-3脂肪酸投与してもイベント減少につながらないという報告もある。③さらに、本研究は空腹時血糖異常、耐糖能異常、糖尿病の患者であり、このような患者にはn-3脂肪酸が有効でない可能性もある。
現在さらに、n-3脂肪酸で心血管イベントが予防できるかを検討する3つの大規模臨床試験が進行中である(Rischio and Prevenzione study、ASCEND、VITAL)。
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by md345797 | 2012-07-13 07:55 | 大規模臨床試験

TAK-875とプラセボとグリメピリドの2型糖尿病に対する効果:第2相ランダム化試験

TAK-875 versus placebo or glimepiride in type 2 diabetes mellitus: a phase 2, randomised, double-blind, placebo-controlled trial.

Burant CF, Viswanathan P, Marcinak J, Cao C, Vakilynejad M, Xie B, Leifke E.

Lancet. 2012 Apr 14;379(9824):1403-11.

【まとめ】
膵β細胞において、遊離脂肪酸受容体1(free fatty acid receptor 1:FFAR1;別名GPR40)が脂肪酸によって活性化されると、グルコース依存性のインスリン分泌が促進される。そこで、この受容体の選択的活性化薬であるTAK-875が、2型糖尿病患者において、低血糖のリスクなく血糖コントロールを改善できるかを検討した。本研究は、外来2型糖尿病患者を対象とした第2相ランダム化二重盲検比較試験で、426名の患者をプラセボ群、TAK-875(6.25、25、50、100、200 mg)群およびグリメピリド(4mg)群(各1日1回)にランダムに割り付け12週間経過観察した。一次アウトカムは、ベースラインからのHbA1cの変化とした。12週後のHbA1cのベースラインからの低下は、TAK-875群50mgで-1.12%、グリメピリド群で-1.05%、プラセボ群で-0.13%であった。TAK-875投与群の低血糖イベント(3%)は、プラセボ群(2%)と同様であったが、グリメピリド群では有意に高値(19%)であった。TAK-875は、2型糖尿病患者の血糖コントロールを、低血糖のリスクなく、有意に改善することができた。この結果から、FFAR1の活性化は2型糖尿病治療の重要なターゲットになると考えられた。

【論文内容】
遊離脂肪酸受容体であるFFAR1(GPR40)は、膵β細胞に多く発現し、不飽和中鎖脂肪酸または長鎖脂肪酸によって活性化される。FFAR1が脂肪酸によって活性化されると、グルコースが高濃度のときのみインスリン分泌を増強する。このグルコース依存性インスリン分泌の増強のメカニズムは明らかではないが、GLP-1による増強経路とも異なることが示唆されている。いずれにせよ、FFAR1活性化は、2型糖尿病患者において、低血糖を起こすことなく血糖コントロールを改善することが予想され、実際糖尿病マウスの実験でもそのような結果が報告されていた。

TAK-875(Takeda Global Research and Development提供)は、経口の強力なFFAR1選択的アゴニストであり、小規模臨床試験でグルコース依存性インスリン分泌を改善することが示されていた。本研究では、TAK-875の2型糖尿病患者に対する効果と安全性をプラセボおよびグリメピリドと比較することにより検討した。
426名の2型糖尿病患者(食事・運動療法でコントロール不良、76%がメトフォルミンを内服)を、プラセボ群、TAK-875群(6.25 mg、25 mg、50 mg、100 mg、 200mg)、グリメピリド群(4 mg)の7群にランダムに割り付けた。12週間後のHbA1cの減少は、プラセボ群で-0.13%であったのに対し、グリメピリド群で-1.05%、TAK-875の50mg以上の投与群で約-1.0%であった。12週間後の空腹時血糖の低下も、TAK-875の25-200 mg服用群およびグリメピリド群ではプラセボ群に比べて有意に大きかった。12週間後に行ったブドウ糖負荷試験(GTT)時のグルコースのAUC(area under the curve)は、プラセボ群に比べ、TAK-875投与群とグリメピリド群で有意に少なかった。この時のインスリンのAUCは、TAK-875投与群とグリメピリド群とプラセボ群で有意差はなかった。

12週間後のインスリン感受性(Matsuda indexで評価)の変化は、プラセボ群とグリメピリド群とTAK-875群で有意差はなかった。また、insulinogenic index(ここではGTTの最初の30分のC-peptide:glucoseの比)の比較によると、TAK-875投与群(25、100、200 mg)でプラセボ群に対してグルコース応答性のインスリン分泌の有意な増加が認められた。グリメピリド群は、プラセボに対して有意なグルコース応答性インスリン分泌の増加は認めなかった。

12週間の体重の変化については、グリメピリド群ではプラセボ群と比較し1.59 kg増加していたのに対し、TAK-875群ではプラセボ群と比較し0.86-1.27 kgの増加にとどまった。

発生した有害事象の発症率はプラセボ群とTAK-875群で同じであったが、グリメピリド群で高かった。そのうち低血糖の頻度は、プラセボ群とTAK-875群では同じく低かったが、グリメピリド群では有意に高かった。

【結論】
TAK-875は膵β細胞のFFAR1に対する直接作用によって、インスリン分泌を増強する。(なお、げっ歯類の動物実験では腸管内分泌細胞にあるFFAR1を活性化してGLP-1の分泌させることが示されており、これがTAK-875の上記の効果につながった可能性がある。)本研究の限界として、短期間(12週間)で小サイズ(各群60名程度)の検討であり、今後さらに大規模な研究が必要であろう。本研究では、2型糖尿病治療において、TAK-875によるFFAR1の活性化は、低血糖なく、また体重増加も少なく、血糖コントロールを改善することが示された。
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by md345797 | 2012-04-23 21:57 | 大規模臨床試験

2型糖尿病に対する、肥満外科手術と通常薬物療法の比較

Bariatric Surgery versus Conventional Medical Therapy for Type 2 Diabetes.

Mingrone G, Panunzi S, De Gaetano A, Guidone C, Iaconelli A, Leccesi L, Nanni G, Pomp A, Castagneto M, Ghirlanda G, Rubino F.

N Engl J Med. 2012 Mar 26. Published online.

【まとめ】
胃バイパス(Roux-en-Y gastric bypass)および胆膵路転換手術(biliopancreatic diversion)は、高度の肥満患者の糖尿病を改善し、しばしば糖尿病の寛解(remission)をもたらす。そこで、糖尿病の治療としてこれらの手術と通常の薬物療法を比較する前向きランダム化研究が求められていた。この研究では、30-60歳のBMI35以上、5年以上の糖尿病歴を持ち、HbA1cが7.0%以上の60名の患者を、通常薬物療法群または手術(胃バイパスまたは胆膵路転換手術)群にランダムに割り付けた単一施設、非盲検、ランダム化試験を行った。一次エンドポイントは2年後の時点での糖尿病寛解(=薬物療法なしで、空腹時血糖100 mg/dl未満およびHbA1c 6.5%未満)の割合とした。2年後の時点で、薬物療法群では糖尿病の寛解が見られた患者はいなかったのに対し、胃バイパス群では75%、胆膵路転換手術では95%に寛解が見られた。また、HbA1cはすべての群で低下したが、2つの外科手術群で低下の程度が大きかった。以上より、高度肥満2型糖尿病患者において、肥満外科手術は薬物療法に比べ、よりよい血糖コントロールをもたらすことが示された。

【論文内容】
2010年には世界の2型糖尿病有病率は8.3%で、これは2030年までに9.9%に増加すると考えられている。この2型糖尿病患者の23%が高度肥満である。肥満外科手術(bariatric surgery)は、2型糖尿病を改善し心血管疾患を減少させることが報告されており、これらの効果は体重減少によるもの以外の原因も想定されている。腹腔鏡下調節性胃バンディング術(laparoscopic adjustable gastric banding)を行ったランダム化試験が1報知られているが、その報告では中程度の糖尿病を短期間改善したことしか示されていない。この研究では、より重症の糖尿病に対し、2種類の外科手術(胃バイパスまたは胆膵路転換手術)による長期間の効果を薬物療法と比較した。

60名の高度肥満の2型糖尿病患者を、薬物療法群と2種類の手術の合計3群に割り付け、2年間追跡した。ベースラインの特徴では3群に差はなかったが、脂質(総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪)のみが薬物療法群で高値であった。これは胃バイパス術を受ける患者の多くがあらかじめコレステロール低下薬を服用していたためと考えられた。

外科手術を受けた群のすべての患者が、薬物療法(経口薬およびインスリン)を手術15日以内に中止することができた。2年後の時点で糖尿病の寛解を示した患者は、薬物療法群では見られなかったが、胃バイパス群の75%(20名中15名)、胆膵路転換手術群の95%(20名中19名)に認められた。Kaplan–Meier分析によると、血糖正常化までの平均期間は胃バイパス群で10±2か月、胆膵路転換手術群で4±1か月であった。また、ロジスティック回帰分析によると、年齢、性別、ベースラインのBMI、糖尿病罹病期間、体重変化は2年後の糖尿病寛解の予測因子にはなっていなかった。HbA1cのベースラインから2年間の変化は、胃バイパス群(−25.18±20.89%)、胆膵路転換手術群(−43.01±9.64%)に比べ、薬物療法群では少なかった(−8.39±9.93%)。空腹時血糖の変化も同様であった。

2年後の時点での体重減少は、薬物療法群 (−4.74±6.37%)に比べ外科手術群の方が有意に大きかった(胃バイパス−33.31±7.88% 、胆膵路転換手術−33.82±10.17%)。外科手術2群間では有意差は認めなかった。BMIも薬物療法群(45.62±6.24 → 43.07±6.44)に対し、胃バイパス(44.85±5.16 →29.31±2.64)および胆膵路転換手術45.14±7.78 →29.19±4.90)群で有意に低下が大きかった。

脂質プロファイルに関しては、HDLコレステロールを除くすべての脂質プロファイルが、薬物療法群と胃バイパス群では差がなく、薬物療法群に比べ胆膵路転換手術群で改善していた。HDLコレステロールは、薬物療法群に比べ胃バイパス群で上昇、薬物療法群と胆膵路転換手術群で差がなかった。収縮期・拡張期血圧は、3群で有意に低下した(群間の差はなかった)。外科手術を受けた群での死亡者はなく、再手術が必要なヘルニアが1名、腸閉塞が1名あった。薬物療法群では、メトフォルミン投与による下痢が2名あった。

【結論】
高度肥満の2型糖尿病患者において、2つの肥満外科手術は通常の薬物療法より2年間の血糖コントロール改善効果が優れていた。糖尿病の寛解のタイミングは、胆膵路転換手術の方が胃バイパスより早く、これは胆膵路転換手術に伴う脂肪吸収低下によって血中中性脂肪、コレステロールの低下が起こったためと考えられる。本研究の限界は患者数が比較的少ないことであり、手術の安全性やその後の心血管イベント発症、2つの手術間の差などを検討するためには、より大きい多施設研究が求められる。
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by md345797 | 2012-03-29 17:41 | 大規模臨床試験

糖尿病肥満患者における、肥満外科手術と強化薬物療法の比較

Bariatric Surgery versus Intensive Medical Therapy in Obese Patients with Diabetes

Schauer PR, Kashyap SR, Wolski K, Brethauer SA, Kirwan JP, Claire E. Pothier CE, Thomas S, Abood B, Nissen SE, Bhatt DL.

N Engl J Med. Published online March 26 2012.

【まとめ】
今までにいくつかの観察研究で、肥満外科手術(bariatric surgery)後に2型糖尿病が改善することが示されている。今回行われた一施設ランダム化研究では、150名のコントロール不良の2型糖尿病肥満患者をランダム化して3群に分け、強化薬物療法のみの群と、薬物療法に加え外科治療(Roux-en-Y胃バイパスgastric bypass、または袖状胃切除術sleeve gastrectomy)を行った2群で効果を比較した。平均患者年齢は49±8歳、66%が女性、平均HbA1cが9.2±1.5%であった。一次エンドポイントは、治療12か月後のHbA1cが6.0%以下の患者の割合とした。一次エンドポイントに達した患者の割合は、薬物療法で12%だったのに対し、胃バイパス群は42%(P = 0.002)、袖状胃切除術群は37%(P = 0.008)であった。3群とも血糖コントロールは改善したが、12か月後の薬物療法群のHbA1cは7.5±1.8%であったのに対し、胃バイパス群は6.4±0.9% (P<0.001)、袖状胃切除術は6.6±1.0%(P = 0.003)であった。体重減少は、薬物療法群で-5.4±8.0 kgだったのに対し、胃バイパス群-29.4±9.0 kg、袖状胃切除術群は-25.1±8.5kg (いずれもP<0.001)であった。血糖、脂質、血圧を低下させる薬剤の使用数は、外科手術後には有意に減少したが、薬物療法のみの患者では増加した。HOMA-IRも外科手術後に有意に改善した。以上より、薬物療法のみに比較して、薬物療法に加え外科手術を行った場合、血糖コントロールが有意に改善することが示された。

【論文内容】
観察研究では肥満外科手術は2型糖尿病をもつ高度肥満患者の血糖コントロールと心血管疾患リスクを改善することが示されているが、外科手術群と強化薬物療法群を比較したランダム化研究はほとんどない。このSurgical Treatment and Medications Potentially Eradicate Diabetes Efficiently (STAMPEDE) 研究では、2型糖尿病肥満患者150名をランダム化して3群に分け、強化薬物療法群と薬物療法+外科手術群(Roux-en-Y胃バイパス、または袖状胃切除術の2群)の12か月後の血糖コントロール改善を比較した。なお、外科手術は、単一の外科医により腹腔鏡下で行われた。その後、3、6、9、12か月目に体重、腹囲、血圧、HbA1c、血糖をチェックした。一次エンドポイントは、ランダム化12か月後のHbA1cが6.0%以下の患者の割合とし、二次エンドポイントは、空腹時血糖、空腹時インスリン、脂質、高感度CRP、HOMA-IR、体重減少、血圧、有害事象、併発した疾患、服薬数の変化とした。

150名の対象者のうち、12か月後に140名が研究を終了した。12か月後のHbA1cが6.0%以下だった対象者は、薬物療法のみの群で12%、胃バイパス群で42%(P=0.002)、袖状胃切除群で37%(P=0.008)であり、手術の2群間では差がなかった。

12か月後の時点で、2つの外科治療群は薬物療法のみの群に比べ、有意にHbA1cと空腹時血糖が低かった。薬物療法群では、後半の6か月間で徐々にHbA1cが増加したが、外科手術群では12か月後まで低下が持続した。

使用した糖尿病薬の数は、薬物療法群では増加していたのに対し、外科手術群では有意に減少した。また、インスリンを使用した患者は薬物療法群では38%だったのに対し、胃バイパス群で4%、袖状胃切除群で8%まで減少した。

12か月後の体重、BMI、腹囲、waist-to-hip比は、薬物療法群に比べ外科手術群で有意に低かった。

12か月後の高インスリン血症を示す患者の割合、HOMA-IRも外科手術群で有意に低かった。また外科手術群では、HDLコレステロールが有意に増加、高感度CRPが有意に低下していた。12か月後の時点で、高脂血症薬および降圧剤の数も、外科手術群で有意に少なかった。

12か月後の時点での有害事象は、外科手術群で4名の患者に外科的な介入が必要であった。3群とも死亡例はなく、重篤な低血糖や栄養不良、過度の体重減少も見られなかった。

本研究の限界として、follow-up期間が12か月という短期間であったこと、単一施設でのオープンラベル試験であったことが挙げられる。ただし、これに関してはさらに4年間の追跡期間を設けている。

【結論】
コントロール不良の糖尿病患者の治療として、肥満外科手術は有効な方法であり、糖尿病薬を減らせることが示された。さらに、外科手術により心血管疾患リスクが減少し、それに対する薬物も減らすことができた。今後さらに大きい多施設研究で、外科手術の利点と外科的リスクのバランスを検討すべきである。
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by md345797 | 2012-03-28 17:25 | 大規模臨床試験

LDLコレステロールに対するPCSK9モノクローナル抗体の効果

Effect of a Monoclonal Antibody to PCSK9 on LDL Cholesterol

Stein EA , Mellis S, Yancopoulos GD, Stahl N, Logan D, Smith WB, Lisbon E, Gutierrez M, Webb C, Wu R, Du Y, Kranz T, Gasparino E, Swergold GD.

N Engl J Med 2012;366:1108-18

【まとめ】
セリンプロテアーゼの一つであるproprotein convertase subtilisin/kexin 9 (PCSK9)は、LDL受容体に結合してその分解を促進し、その結果LDLコレステロール値を増加させる。このグループは、PCSK9に対するモノクローナル抗体(REGN727)の3つの第1相試験の結果を報告している。

健常者ボランティアを対象に、REGN727の静脈投与(40名)または皮下投与(32名)とそれぞれプラセボと比較する2つのランダマイズ試験を行った。さらに、ヘテロ家族性高コレステロール血症でアトルバスタチンを服用者(21名)と、非家族性高コレステロール血症でアトルバスタチン服用者(30名)、または食事療法のみの非家族性高コレステロール血症者(10名)を対象にREGN727を皮下投与したランダマイズ試験を行った。一次アウトカムは有害事象の発生、二次アウトカムはREGN727の脂質プロファイルに対する効果とした。

REGN727を投与した人のうち、有害事象のために試験を中断した人はいなかった。3つの試験すべてで、REGN727はLDLコレステロール値を有意に低下させた。3番目の試験(高コレステロール血症患者を対象とした試験)で、REGN727の用量が50、100、150 mgの場合、アトルバスタチン服用者ではLDLコレステロール値をそれぞれ、77.5 mg/dl、61.3 mg/dl、53.8 mg/dl(ベースラインのLDLコレステロール値を100%とした場合に、-39.2、-53.7、-61.0パーセンテージポイント)低下させた。

以上3つの第1相試験において、PCSK9に対するモノクローナル抗体は、健常者ボランティアおよび家族性または非家族性高コレステロール血症患者のLDLコレステロール値を有意に低下させた。

【論文内容】
2003年に、PCSK9のgain-of-function変異による常染色体優性高コレステロール血症が報告された。その後、PCSK9はLDL受容体活性の翻訳後調節を行っていることが分かった。すなわち、PCSK9は肝で合成されて血中に入り、肝のLDL受容体に結合してLDL受容体のdegradationを起こし、その結果受容体に結合できなくなったLDLコレステロールが血中で増加して高コレステロール血症をきたすメカニズムが明らかにされた。また、PCSK9のloss-of-function変異が血中LDLコレステロール値を低下させ、心血管疾患の発症を減少させていることも報告された。そこで、PCSK9の阻害が高コレステロール血症患者のLDLコレステロール値を低下させる可能性が考えられた。REGN727は、ヒトPCSK9に高度に特異的なトモノクローナル抗体であり、PCSK9のLDL受容体との結合を阻害する。この報告では、REGN727をヒトに用いた最初の研究の結果を報告した。

単回投与試験(single-dose studies)では、REGN727の静脈投与40名、皮下投与32名の健常者を対象とした。静脈投与群は、1.0、3.0、6.0、12.0 mg/kg体重のREGN727投与群に分け、それぞれプラセボ投与群と比較した。皮下投与群では、50、100、150、250 mgのREGN727投与群に分け、それぞれプラセボ投与群と比較した。

反復投与試験(multiple-dose study)では、ヘテロ家族性高コレステロール血症でアトルバスタチン服用患者21名、非家族性高コレステロール血症でアトルバスタチン服用患者30名、および非家族性高コレステロール血症で食事療法のみの患者10名を対象とした。3群いずれも、REGN727(50、100、150 mg投与またはプラセボ)をdays 1、29、43に皮下投与した。

単回投与試験では、有害事象のために試験継続不可能となった人はいなかった。反復投与試験でも重篤な有害事象が起きた患者はおらず、すべての対象者が試験を継続した。

単回投与試験では、REGN727の静脈投与または皮下投与のいずれの場合でも、LDLコレステロールの低下の程度と期間が用量依存的であり、高用量投与した群の方がLDLコレステロール低下期間が長かった。

反復投与試験では、REGN727の用量が50、100、150 mgでアトルバスタチン服用患者のLDLコレステロールの低下がそれぞれ77.5、61.3、53.8 mg/dl(ベースラインからの変化が-39.2、-53.7、-61.0パーセンテージポイント)であった。LDLコレステロール低下の程度は、家族性高コレステロール血症と非家族性高コレステロール血症の間で、またアトルバスタチン服用者と食事療法のみの間で、有意差はなかった。

【結論】
PCSK9とLDL受容体の結合を阻害するヒトモノクローナル抗体REGN727は、今回3つの試験で有意にLDLコレステロール値を低下させた。この効果は、健常者および、家族性・非家族性の高コレステロール血症の患者の両方で有意であった。さらに、アトルバスタチンを併用している患者でも有意に認められた。
(なお、この研究はRegeneron PharmaceuticalsとSanofiから援助を受けた。)
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by md345797 | 2012-03-23 09:14 | 大規模臨床試験