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バルサルタンの糖尿病発症および心血管イベントに対する効果

Effect of valsartan on the incidence of diabetes and cardiovascular events.

NAVIGATOR Study Group.

N Engl J Med. 2010 Apr 22;362(16):1477-90.

【まとめ】
耐糖能異常(IGT)患者に2型糖尿病、心血管イベントを起こさせない介入をすることは重要である。この臨床試験では、ARBバルサルタンによりIGT患者の糖尿病発症が14%低下したが、心血管イベント発症は低下しなかった。

【論文内容】
IGTからの糖尿病発症を減少させるには、生活習慣への介入、経口糖尿病薬(metformin, acarbose, rosiglitazone)が効果があったことが報告されているが、レニン・アンジオテンシン系阻害薬でこの効果があるかは知られていない。
このNAVIGATOR試験では、IGT患者9,518名をバルサルタン群とプラセボ群に分け、6.4年(心血管イベント)、と5年(糖尿病新規発症)追跡した。

追跡期間中、血圧はバルサルタン群で有意に低値、体重減少はバルサルタン群で少なく、腹囲は差はなかった。空腹時血糖、ブドウ糖負荷後2時間血糖値はバルサルタン群で有意に低値であった。

また、バルサルタンは糖尿病発症を有意に低下(14%)させた。しかし、心血管イベント、心血管死、全死亡は2群で差はなかった。

【結論】
バルサルタンはIGTから糖尿病発症のリスクを14%減少させたが、その効果は小さく、耐糖能異常の管理としては依然として生活習慣の介入が重要であると考えられる。
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by md345797 | 2010-11-30 16:41 | 大規模臨床試験

ナテグリニドの糖尿病発症および心血管イベントに対する効果

Effect of nateglinide on the incidence of diabetes and cardiovascular events.

NAVIGATOR Study Group.

N Engl J Med. 2010 Apr 22;362(16):1463-76.

【まとめ】
耐糖能異常(IGT)患者に速効型インスリン分泌促進薬ナテグリニドを投与しても、5年間の追跡期間中の糖尿病発症率は減少しなかった。また、心血管イベントのリスクも減少しなかった。したがって、ナテグリニドはIGTの血糖・心血管イベント発症管理には適していないという結論に達した。

【論文内容】
IGTにおいて、速効型インスリン分泌促進薬による①糖尿病発症、②心血管イベントリスクの減少効果は明らかではない。そこで、ナテグリニドによる①②の減少効果をdouble-blind randomized clinical trialによって検討した=NAVIGATOR(Nateglinide and Valsartan in Impaired Glucose Tolerance Outcome Research)。

9,518名のIGT患者をナテグリニド群、プラセボ群に割り付け、5.0年糖尿病発症について追跡した。その結果、①糖尿病の発症、②心血管イベント(中核的心血管アウトカム=心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院、および拡大心血管アウトカム=前述のアウトカムおよび不安定狭心症による入院、動脈血行再建)とも両群で差はなかった。
5年の追跡期間中、空腹時血糖はナテグリニド群で低値であったが、ブドウ糖負荷2時間値はナテグリニド群で高値(検査時にはナテグリニドを服用していない)であった。体重・腹囲はナテグリニド群で有意に高値であった。ナテグリニド群で低血糖のリスクが大きかった。

【結論】
IGTから糖尿病の発症については、STOP-NIDDM(acarbose)で25%低下、DPP (metformin)で31%低下、DREAM (rosiglitazone)で62%低下していたが、今回のNAVIGATORでは低下が見られなかった。
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by md345797 | 2010-11-29 16:33 | 大規模臨床試験

TBP-2欠損は肥満に影響せず、インスリン感受性・分泌を改善する

Disruption of TBP-2 ameliorates insulin sensitivity and secretion without affecting obesity.

Yoshihara E, Fujimoto S, Inagaki N, Okawa K, Masaki S, Yodoi J, Masutani H.

Nature Communications. Vol 1, Article No. 127, 2010 Nov 23.

【まとめ】
核内蛋白TBP-2 (thioredoxin binding protein-2)は、肥満モデルマウスであるob/obマウスの筋肉・膵島で発現が増加している。TBP-2欠損ob/obマウスを作製したところ、ob/obマウスと比較して過食・肥満は改善されなかったが、インスリン感受性、インスリン分泌は改善した。インスリン感受性改善に伴い、筋肉のIRS-1/Akt経路が活性化され、インスリン分泌改善に伴い、膵島のミトコンドリアATP産生が増加(ミトコンドリアのUCP-2の転写が低下)していた。

【論文内容】
TBP-2は、thioredoxinのnegative regulatorであり、核内に局在している。また、TBP-2はα-arrestinファミリーに属する蛋白であり、細胞死の調節、細胞増殖、分化、免疫応答、エネルギー代謝などさまざまな生物学的機能を果たしている。本グループおよび他のグループは、TBP-2欠損または変異マウスではインスリン感受性、インスリン分泌が亢進することを明らかにしている。

ob/obマウスでは筋肉、脂肪組織、膵島でTBP-2の発現が増加していたため、TBP-2欠損ob/obマウスを作製し、TBP-2の役割を検討した。TBP-2欠損ob/obマウスは、ob/obマウスに比べ体重が増加(オス)か同じ(メス)で、摂食量も同じだが、血糖はWTと同じくらい低く、GTT・ITTで耐糖能、インスリン感受性も亢進していた。またこのマウスは、脂肪量および大型脂肪細胞が多く、血中adiponectin量は有意に低下していた。また、ob/obマウスの筋肉におけるIRS-1の発現低下、Aktのリン酸化低下は、TBP-2欠損によって回復した。

TBP-2欠損ob/obマウスは、ob/obマウスに比べ、GTTでのインスリン分泌が亢進している(膵島のmassは差がない)。これはTBP-2欠損により、glucose-stimulated insulin secretion (GSIS)が亢進することを示している。ob/obマウスにおける膵島のミトコンドリアの形態異常および機能低下(ATP産生低下)が、TBP-2欠損マウスでは改善している。INS-1細胞のTBP-2をsiRNAを用いてknockdownしてもミトコンドリアATP産生とGSISが増加することから、TBP-2はGSISを抑制する作用があると言える。

UCP-2はミトコンドリアのATP産生の主要な調節因子であり、UCP-2欠損はob/obマウスのGSISを回復させることが報告されている。TBP-2を過剰発現させたINS-1細胞ではUCP-2の発現が増加しており、TBP-2はPGC-1α依存性のpathwayによりUCP-2の転写活性を亢進させることが示された。

さらにTBP-2を結合させたビーズを用いて、結合蛋白としてMybbp1aを同定した。この蛋白は、PGC-1の転写を阻害することが知られており、PGC-1依存性UCP-2転写活性も抑制するが、TBP-2との結合によりその阻害がブロックされ、UCP-2転写が活性化されることが示された。

【結論】
TBP-2は、糖尿病においてインスリン感受性とインスリン分泌(GSIS)を調節する因子であり、その阻害または発現低下は2型糖尿病の新しい治療のアプローチとして有望である。
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by md345797 | 2010-11-28 00:06 | インスリン分泌

骨粗鬆症に対するビスフォスフォネート治療

Bisphosphonates for Osteoporosis.

Favus MJ.

N Engl J Med. 2010 Nov 18;363(21):2027-2035.

【骨粗鬆症とBisphosphonates】
閉経によるエストロゲン低下に伴い、骨髄間質細胞およびosteoblastからRANKL(receptor activator of NF κB ligand)の産生が増加し、RANKLの、osteoclast細胞表面のRANKへの結合が増加する。この結合がosteoclast前駆細胞を増殖させ、matureなosteoclastへの分化が促進される。これにより骨のturnoverが増加しresorption pitsの深さと数が増加する。Osteoblastによる骨形成はこれに追い付かず、骨密度が低下し骨折などを引き起こしやすくなる。Bisphosphonatesは、骨吸収を抑制し骨折を減少させる。Bisphosphonates(P-C-P)はpyrophosphates (P-O-P)に構造が似ており、コアのCに短い側鎖が二つ付いている(R1=骨結合のアフィニティを決め、R2=Nを含み骨吸収阻害の強さを決める)。
Bisphosphonateは、ハイドロキシアパタイトミネラル相に蓄積し濃度が上昇する。その後、osteoclast内に入り、FPPS(farnesyl pyrophosphate synthase)を阻害することにより、骨吸収を抑制する。

【臨床のEvidence】
FIT:2027名の閉経後の骨折ハイリスクの女性にランダムにプラセボとalendronateを割り付け、36か月観察した結果、椎体骨折がalendronate群で有意に少なかった。
VERT:2458名の閉経後の女性をプラセボとrisedronateに割り付けたところ、3年間の新規椎体骨折がrisedronate群で有意に少なかった。
HORIZON:7765名骨粗鬆症を持つ閉経後の女性をプラセボとzoledronateに割り付けたところ、36か月後の新規椎体骨折がzoledronateで有意に低かった(10.9% vs. 3.3%)。

【臨床使用】
すべての閉経後の女性で脊椎か大腿骨頚部の骨密度が骨粗鬆症の基準(T scoreが-2.5未満)を満たしている者は、骨折予防の長期治療を受けるべきである。経口剤可能であればalendronateかrisedronate、不可能であれば静注のzoledronic acidを用いる。大腿骨頚部の骨密度低下が正常かやや低下していればibandronateも用いられる。骨形成薬teriparatide(PTH 1-34)も用いられるが、大腿骨頚部骨折を減らすかどうかはまだ示されておらず、bisphosphonateより高価である。エストロゲンは閉経後女性の椎体・大腿骨頚部骨折に効果があるが乳がんおよび心血管疾患のリスクを増加させる。Raloxifeneは、経口SERM(selective estrogen-receptor modulator)であり椎体骨折のリスクを減らすことが分かっている。カルシトニン経鼻スプレーは抗骨吸収薬であるが、その効果は限られている。

経口bisphosphonateは週1回か月1回服用する。静注bisphosphonateは、ibandronateは3カ月1回、zoledronateは12カ月に1回である。ただし、治療の頻度はどのくらいが最適かはいまだにはっきりしていない。Bisphophonate開始3、6か月後には、bone-turnoverマーカーとしてosteocalcin、CTX(C-terminal telopeptide of type 1 collagen)を測定する。また、2年に1回DXAを用いた骨密度測定を行う。

【副作用】
発熱、食道炎および潰瘍、一時的な腎毒性がある。まれだが重篤な副作用として顎骨壊死(osteonecrosis of the jaw)がある。大多数の顎骨壊死は、骨髄腫や乳がんなどの治療でzoledronateやpamidronateを骨粗鬆症で用いる場合の10-12倍の量用いた時に起こっている。
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by md345797 | 2010-11-27 00:57 | 症例検討/臨床総説

原発性アルドステロン症 Update

Update in primary aldosteronism.

Stowasser M.

J Clin Endocrinol Metab. 2009 Oct;94(10):3623-30.


Primary aldosteronism (PA)は以前考えられていたより頻度が高く、高血圧の5-10%を占める。また、アルドステロン過剰は高血圧以外にも心血管系に悪影響を及ぼす。

【PAによる悪影響―Beyond Hypertension】
アルドステロン過剰は、血圧に対する影響とは独立に心血管系および腎に障害(炎症、リモデリング、線維化)をもたらす。PA患者は本態性高血圧患者と比較して、頚動脈中膜肥厚の増加や血管内皮機能の低下、左室壁肥厚と拡張機能の低下が見られる。正常血圧のFamilial hyperaldosteronism type I(FH-I)の患者では、対照者と比較して血中IL-6が増加している。腎機能に関しても同様で、PA患者では本態性高血圧患者と比較して尿中アルブミン排泄が多く、アルドステロンによるsodium retentionとvolume expansionに起因するglomerular hyperfiltrationに伴うものと考えられる。PAとメタボリックシンドロームの関連も検討されており、本態性高血圧患者と比較してPA患者ではメタボリックシンドロームの頻度が多いこと、インスリン抵抗性が強いこと(これにはアルドステロン過剰の直接の影響だけでなく、低カリウム血症の影響も関与しているかもしれない)などが報告されている。したがってPAの管理は単に血圧のコントロールだけでなく、アルドステロン過剰そのものに対する治療が必要である。

【PAの治療―Beyond BP Lowering】
片側PAに対する片側副腎摘除術、または両側・片側PA に対するスピロノラクトン、アミロライドによる薬物治療はよく知られている。アルドステロン過剰そのものに対する最近の治療としては、PAに対するエプレレノン(Eplerenone) がselective mineralocoricoid antagonistとして用いられている。これはスピロノラクトンと違い、アルドステロン選択性が高く、性ホルモン関連の副作用(女性化乳房など)がない。アルドステロン合成酵素阻害薬(現在第2相臨床試験中)もPA に対する新しい治療として期待されている。

【PAの診断】
PAの診断には、ARR(Aldosterone-to-Renin Ratio)が重要であるが、採血時の姿勢、時刻、食塩摂取、服薬など注意すべき因子がある。薬剤では偽陽性に出るものとして、βブロッカー、中枢性α2アゴニスト、NSAIDsがあり、偽陰性に出るものとしてACE阻害薬、ARB、ジヒドロピリジン型Caチャネルブロッカーがある。
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by md345797 | 2010-11-26 00:02 | 症例検討/臨床総説

Ghrelin‐O‐Acyltransferase阻害剤による血糖・体重の調節

Glucose and Weight Control in Mice with a Designed Ghrelin O-Acyltransferase Inhibitor.

Brad PB, Hwang Y, Taylor MS, Kirchner H, Pfluger PT, Bernard V, LinY-Y, Bowers EM, Mukherjee C, Song W-J, Longo PA, LeahyDJ, Hussain MA, Tschöp MH, Boeke JD, Cole PA.

Science. 2010 Nov. 18 (Published online

【まとめ】
Ghrelinは、体重増加を刺激する胃のペプチドホルモンである。Ghrelinは、ghrelin-O-acyltransferase (GOAT)という酵素により、Ser3残基がoctanylationという転写後修飾を受けることにより生物学的活性をもつ。

そこで、このGOATをantagonizeするペプチドアナログ、GO-CoA-TATをデザイン・合成した。このペプチドは、in vitro、培養細胞、マウスにおいて、GOATを強く阻害した。WTマウスに腹腔内投与した結果、耐糖能を改善、体重増加を抑制したが、ghrelin-KOマウスに投与してもその効果はなかった。Ghrelin作用の研究および代謝疾患の治療薬として、このペプチドが重要な役割を果たすと考えられる。

【論文内容】
このグループは、ghrelinのoctanoylationがghrelinとoctanoyl-CoAという2つの基質を触媒する酵素GOATによって起こるという説をもとに、2つの基質を持つ(bi-substrate)ペプチドアナログ、GO-CoA-TATをデザイン・合成した。

GO-CoA-TATを培養細胞(HeLa, HEK)に添加すると、細胞内でのGOATが阻害され、acyl ghrelinの産生が低下した。GO-CoA-TATをマウスの腹腔内に投与しても血清acyl ghrelinが低下し、in vivoでもGOATを阻害することが示された。中鎖トリグリセリド食(高脂肪食)を負荷したWTマウスにGO-CoA-TATを投与すると、体重増加が抑制され、体脂肪量が低くなった。Ghrelin-KOマウスではGO-CoA-TATを投与してもこれらの抑制は認められなかった。これらのマウスで摂食量に差はなかったので、GO-CoA-TATの効果は、(摂食抑制ではなく)代謝活性の増加によるものと推測される。

Ghrelinは膵島に対し、グルコース応答性インスリン分泌を抑制する作用があり、GO-CoA-TATはこの作用を阻害しインスリン分泌を亢進させた。In vivoでも、GO-CoA-TATを投与したマウスでは、GTTに伴うインスリン分泌の増加、血糖値の低下が認められた。さらに単離膵島をGO-CoA-TAT処理すると、UCP2 mRNA(インスリン分泌抑制に働く)の発現が抑制された。これによりインスリン分泌が促進されていると考えられる。

【結論】
本論文ではGOAT阻害による代謝疾患管理の薬理学的なアプローチを示した。GO-CoA-TATはacyl ghrelinの合成阻害に働くため、受容体のアンタゴニストにはない利点がある。①ホルモンが脳に作用する場合、阻害薬が脳血管関門を通過する必要がない。②受容体アンタゴニストではacyl ghrelinの増加を促進してしまう可能性がある、などの利点である。
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by md345797 | 2010-11-25 00:27 | エネルギー代謝

骨によるエネルギー代謝の内分泌制御

Endocrine regulation of energy metabolism by the skeleton.

Lee NK, Sowa H, Hinoi E, Ferron M, Ahn JD, Confavreux C, Dacquin R, Mee PJ, McKee MD, Jung DY, Zhang Z, Kim JK, Mauvais-Jarvis F, Ducy P, Karsenty G.

Cell. 2007 Aug 10;130(3):456-69.

【まとめ】
骨はosteocalcinを分泌し、全身の糖代謝を調節する内分泌臓器である。このosteocalcinの活性を調節しているのがosteoblastにあるOST-PTPであり、OST-PTPがosteocalcinの転写後調節を介して活性を抑制していることが分かった。


【論文内容】
骨にあるOST-PTP(receptor-like tyrosine phosphatase、Esp遺伝子によってencodeされる)は、osteoblastとSertoli細胞特異的に発現している。このOST-PTPの役割を検討するため、Esp-/-マウスを作製した(全身およびosteoblast特異的KOマウス)。このマウスは、GTTでインスリン高値、血糖低値であり、膵島のサイズ・β細胞の量・増殖能とも増大していた。さらに、ITT・クランプにてインスリン感受性が更新、エネルギー消費が大きく、血中脂質が低下、血清adiponectinが増加していた。Esp-/-マウスの視床下部VMHにGTG(gold thioglucose)を注入すると、摂食はWTと同様に増加したが、体重増加は少なく、WTに比べ耐糖能、インスリン感受性とも改善していた。このマウスに高脂肪食を負荷した場合も同様であった。このマウスにSTZを投与し、インスリン分泌を低下させても(インスリン感受性亢進に伴い)、血糖上昇は少なかった。

次にosteoblast特異的にOST-PTPを過剰発現させたトランスジェニックマウスを作製したところ、膵島のインスリン含量低値、インスリン分泌低下、血糖上昇、インスリン感受性の低下が認められた。WTマウスの膵島および脂肪細胞をこのマウスのosteoblastとcocultureすると、それぞれインスリン分泌、adiponectinが上昇した。すなわち、osteoblastからの分泌因子がInsulin、Adiponectin発現を増加させていることが分かった。

この分泌因子検索のため、osteoblast特異的蛋白であるosteocalcin (Ocn)
に注目し、Ocn-/-を用いた検討を行った。Ocn-/-マウスは、耐糖能・インスリン感受性ともにWTよりも悪化しており、エネルギー消費が少ない。血中インスリン、adiponectinが低値であり、WTマウスの膵島および脂肪細胞をこのマウスのosteoblastとcocultureすると、それぞれインスリン分泌、adiponectinが低下することが分かった。

Esp-/-マウスとOcn-/-マウスのmetabolic phenotypeはちょうど正反対であり、OST-PTPによりOcnが調節されている可能性がある。しかし、Esp-/-マウスにおけるOcnの発現、血中濃度はWTと同様であった。Ocnはγ-carboxylationという転写後修飾を受けるが、Esp-/-でこの修飾がどう調節されいてるか検討した。Carboxylated Ocnはhydroxyapatite(HA)に結合しやすいが、Esp-/-ではHA結合(すなわちcarboxylated) Ocnが少ない。WTのosteoblastをwarfarin(γ-carboxylation阻害薬)処理すると、このosteoblastが脂肪細胞に対しadiponectinを産生させる能力が上昇する。Uncarboxylated Ocnが糖代謝改善活性を持つのであり、OST-PTPはγ-carboxylationを促進することにより、uncarboxylated Ocnの量を抑制していたことが分かった。

【結論】
Osteoblast特異的蛋白であるosteocalcin(Ocn)は、膵島の増殖能亢進、インスリン分泌増加、インスリン感受性亢進(adiponectin発現増加)という全身の糖代謝改善効果を示す。OsteoblastにあるOST-PTPは、Ocnを転写後修飾(γ-carboxylation)することにより、その糖代謝調節活性を低下させている(uncarboxylated Ocnが糖代謝調節活性を持つ)。2型糖尿病では血清Ocn濃度が低いという報告もあり、骨が全身のメタボリックシンドロームの発症を調節している可能性がある。
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by md345797 | 2010-11-24 13:31 | エネルギー代謝

口腔内骨再生に対するPTH(1-34)製剤テリパラチドの効果

Teriparatide and Osseous Regeneration in the Oral Cavity.

Bashutski JD, Eber RM, Kinney JS, Benavides E, Maitra S, Braun TM, Giannobile WV, McCauley LK.

N Engl J Med. 2010 Oct 16. [Epub ahead of print]

【背景】
副甲状腺ホルモン(PTH)は、骨に対してcatabolic action(骨吸収)とanabolic action(骨形成)という相対する作用を有する。副甲状腺機能亢進症では、PTHが持続的に高値を示し、骨吸収および骨形成が著明に亢進した高骨代謝回転を呈する結果、骨量は減少する。一方、PTHを「間欠的に」投与すると骨形成が促進され、骨量が増加することが知られている。PTH(84アミノ酸)の生理活性はN端の34アミノ酸のみで十分であり、PTH(1-34)テリパラチドが「骨形成促進薬」として用いられている(従来のビスフォスフォネートは「骨吸収阻害薬」である)。PTHは他の薬剤にはない強力な骨形成作用を有することから、テリパラチドは従来にない強力な骨粗鬆症および骨折治療薬として期待されている。

【論文内容】
重篤な慢性歯周病を持ち、歯根膜手術を受けた40名の患者を、テリパラチド1日1回投与群とプラセボ群に割り付け、経口カルシウム・ビタミンD投与と合わせて6週間治療した。1年のフォローアップの後、歯槽骨のレントゲン的測定、臨床的指標(periodontal probing depth, clinical attachment level, bleeding on probing)、血清指標(カルシウム、骨特異的ALP、25-hydroxyvitamin D)、骨バイオマーカー(P1NP, osteocalcin, ICTP)、全身のbone mineral density(DXA)、QOL(Oral Health Impact Profile)の変化を検討した。

その結果、テリパラチド治療群の方はプラセボ投与群に比べ、レントゲン的な骨再生が有意に増加しており(29% vs. 3%)、臨床的指標の改善も大きかった(periodontal probing depthの低下は33% vs. 20%、clinical attachment levelは22% vs. 7%)。テリパラチド群で重篤な副作用はなく、他の指標では有意差を認めなかった。

【結論】
テリパラチドは、臨床的指標をよく改善し、歯槽骨欠損の改善も大きく、口腔内骨創傷治癒を促進した。テリパラチドは、従来指摘されてきたように骨粗鬆症に効果があるだけでなく、歯周病に伴う顎の局所的な骨欠損にも治療的効果が認められた。

骨吸収阻害薬であるビスフォスフォネートの副作用にBisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw(BRON-J)があるが、テリパラチドはBRON-Jの治療薬としての役割も期待される。
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by md345797 | 2010-11-23 00:02 | 臨床研究

冠動脈心疾患およびそのハイリスク患者に対するCETP阻害薬アナセトラピブの安全性―DEFINE study

Safety of Anacetrapib in Patients with or at High Risk for Coronary Heart Disease.

Cannon CP, Shah S, Dansky HM, Davidson M, Brinton EA, Gotto AM, Stepanavage M, Liu SX, Gibbons P, Ashraf TB, Zafarino J, Mitchel Y, Barter P; the DEFINE Investigators.

N Engl J Med. 2010 Nov 17. [Epub ahead of print]

【背景】
コレステリルエステル転送蛋白(CETP:cholesteryl ester transfer protein)は、リポ蛋白間の転送を担う蛋白である。HDLに取り込まれた末梢のコレステロールはコレステリルエステル(CE)へと変換されるが、このCEをアポ蛋白B含有リポ蛋白に転送するのがCETPである。転送されたCEはLDLに変換され肝臓のLDL受容体を介して、肝臓に取り込まれる(コレステロールの逆転送系)。CETP欠損症では、この反応が阻害されるため、高HDL低LDL血症を呈する。CETP活性がないげっ歯類では動脈硬化が起こりにくいのに対して、CETP活性の高いウサギ、ヒトでは動脈硬化が起こりやすいことから、CETP欠損症は抗動脈硬化的と考えられる(異論もある)。また、CETP欠損症は日本に特有の疾患である。
 
各種のCETP阻害薬が、低HDL血症に対する治療薬としての期待がもたれている。しかし、2006年12月にファイザー社のCETP阻害薬であるトルセトラピブとアトルバスタチンとの併用をアトルバスタチンと比較したILLUMINATE試験が、併用例で血圧上昇などに伴い死亡が61%増加したため早期中止となった。今回、メルク社のCETP阻害薬アナセトラピブの第3相臨床試験が行われ、その安全性について検討された。

【論文内容】
LDLの上昇、HDLの低下は心血管疾患のリスクとなる。スタチンは強力にLDLを低下させるが、スタチン治療の後にも残存リスク(residual risk)として低HDL血症が残る。HDLを上昇させる方法としてCETP阻害薬が有用であるが、最初のCETP阻害薬であるトルセトラピブは(CETP阻害活性とは別の作用として)、血圧上昇、アルドステロン値上昇などに伴う心血管イベントと死亡が増加することが分かっている。本研究 (DEFINE study)では強力なCETP阻害薬であるアナセトラピブの効果と安全性を、冠動脈心疾患およびそのハイリスク患者を対象に検討した。

1,623名のスタチン服用患者をrandomizeしてアナセトラピブ群とプラセボ群に割り付けた。24週までにLDL-Cは81から45mg/dlまで低下(プラセボの39.8%低下)、HDL-Cは41から101 mg/dlまで上昇(プラセボの138.1%上昇)した。76週までに、血圧・電解質・アルドステロン値の上昇はなく、心血管イベント発症率もアナセトラピブ群とプラセボ群で差はなかった。

【結論】
CETP阻害薬・アナセトラピブによる治療はLDL-Cの低下、HDL-Cの増加をもたらし、副作用は許容範囲のものであった。この治療はトルセトラピブで認めたような心血管イベント発症の増加も起こさなかった。
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by md345797 | 2010-11-22 00:59 | 大規模臨床試験

PI 3-キナーゼの調節サブユニット(p85α)はXBP-1の核への移行を増加させ、UPRを調節する

A regulatory subunit of phosphoinositide 3-kinase increases the nuclear accumulation of X-box-binding protein-1 to modulate the unfolded protein response.

Winnay JN, Boucher J, Mori MA, Ueki K, Kahn CR.

Nat Med. 2010 Apr;16(4):438-45.

【まとめ】
PI 3-キナーゼの調節サブユニットであるp85αが、小胞体ストレス下でXBP-1と結合し、ストレス反応(UPR)を引き起こしていることが分かった。p85αは、インスリンシグナル伝達におけるPI 3-キナーゼpathwayと小胞体ストレスに対する反応を結びつけるという、今まで知られていなかった役割を果たしている。

【論文内容】
このグループは、p85αの結合蛋白をbacterial two-hybrid systemを用いて検討し、XBP-1を同定した。HEK293 細胞にp85αとXBP-1sを発現させ、これらが結合すること、この結合はtunicamycin(小胞体ストレスが亢進)で消失することを示した。p85αはXBP-1sを安定化して、核への移行を増加させ、p85αの量が増えるとその移行が促進されることが分かった。

次に、p85αとXBP-1s の結合は、小胞体ストレスに対する反応(UPR:unfolded protein response)を調節しているかを検討するため、p85α欠損マウスのpreadipocyte cell lineにtunicamycinを加えた。その結果、コントロールに比べ、p85α欠損状態では小胞体ストレスに伴うXBP-1sの核への移行が減少していた。さらに他のUPR passwayであるCHOP、ATF-6の核への移行も低下しており、小胞体ストレスに対する反応が減弱していた。

p85α欠損細胞では、XBP-1のスプライシングが減少しており、そのためにXBP-1sが産生されない。ヒト肝細胞cell lineでsiRNAを用いてp85を減少させ小胞体ストレスを加えた場合も同様のことが起こり、細胞の種類に関係なくp85とXBP-1 の結合が小胞体ストレス反応に重要なことが分かる。

肝臓特異的p85α欠損マウスにtunicamyinを投与しても同様のUPRの低下と炎症反応の増加(肝臓マクロファージの増加、TNFαの増加)を示した。

【結論】
インスリン抵抗性の状態(肥満、高脂血症、炎症など)では小胞体ストレスが増加しており、UPRが起きているが、インスリンシグナル伝達とUPRの関連を初めて示した。それには、小胞体ストレス依存性にp85αがXBP-1と結合することが重要な役割を果たしている。
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by md345797 | 2010-11-21 00:13 | インスリン抵抗性