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基礎インスリン投与中の2型糖尿病患者に対する1日2回のエキセナチド使用

Use of twice-daily exenatide in Basal insulin-treated patients with type 2 diabetes: a randomized, controlled trial.

Buse JB, Bergenstal RM, Glass LC, Heilmann CR, Lewis MS, Kwan AY, Hoogwerf BJ, Rosenstock J.

Ann Intern Med. 2011 Jan 18;154(2):103-12.


【まとめ】
エキセナチドとインスリンの併用は保険適応が認められていないが、現在までにこの併用についての報告は少ない。そこで、すでにインスリングラルギンで治療されている2型糖尿病患者の血糖がエキセナチド1日2回投与の追加で改善するかを、30週にわたってプラセボと比較検討した。その結果、エキセナチドはHbA1cおよび体重を低下させたが、副作用(悪心嘔吐、下痢、頭痛)も増加した。低血糖の頻度はプラセボ群と変わらなかった。

【論文内容】
基礎インスリン(Basal insulin replacement)療法中の2型糖尿病患者では、しばしば各食前のインスリン 補充(prandial replacement)が必要となる。GLP-1受容体アゴニストであるエキセナチドを1日2回投与することは、基礎インスリン投与を行っている患者では、保険適応上は認められていないが、検討の価値があるものと思われれる。

インスリングラルギン投与を行っている2型糖尿病患者(メトホルミン、ピオグリタゾン併用を含む)をランダムにエキセナチド群(10μg、1日2回、138名)とプラセボ群(123名)に割り付け、30週間観察した。その結果、HbA1cはエキセナチド群がプラセボ群に対し0.69%低下が大きかった。また、体重減少は2.7kg大きかった(-1.8 kg vs.+1.0 kg)。低血糖の頻度は両群で同等だったが、副作用のため試験を中止した人数はエキセナチド群13名、プラセボ群1名とエキセナチド群の方が多かった。その内容は、悪心、下痢、嘔吐、頭痛、便秘であった。

本試験の限界としては、短期間であることがまず挙げられる。また両群の性別、併用薬剤、HbA1c値にアンバランスがあった。

結論として、インスリングラルギン投与中の2型糖尿病患者に、エキセナチド1日2回を投与することにより、低血糖・体重増加なしに血糖コントロールを改善することができる。ただしエキセナチドには悪心・嘔吐・下痢・頭痛などの副作用がある。
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by md345797 | 2011-02-23 17:14 | 臨床研究

糖尿病治療ターゲットの個別化

Type 2 diabetes mellitus in 2010: Individualizing treatment targets in diabetes care.

Buse JB.

Nat Rev Endocrinol. 2011 Feb;7(2):67-8.

【総説内容】
世界では2型糖尿病患者は2億8500万人おり、2030年までに4億3900万人に増加すると予想されている。糖尿病の主要な死因は心血管疾患であるが、過去3つの大規模臨床試験(ACCORD、ADVANCE、VADT)の結果は、強化血糖コントロールが心血管アウトカムに有効であることを示せず、糖尿病治療の根本を揺るがした。ここでは、2010年の間に報告された、ACCORDの追加解析について取り上げる。

2010年5月のACCORD疫学解析ではHbA1cと死亡率について検討された。10251名の心血管疾患ハイリスクの2型糖尿病患者を強化血糖コントロール群(HbA1c <6.0%)と標準コントロール群(HbA1c 7.0-7.9%)にランダムに割りつけた(注:HbA1cはいずれもNGSP値であるため、JDS値では0.4%を引いて考える)。3.4年の追跡期間の後、強化コントロール群の方が有意に全死亡率が高かった。この原因として、強化コントロール群における重症低血糖、体重増加などが検討されたが、明らかなものは同定できなかった。

2010年6月にはACCORD研究において、血圧および脂質を強力に低下させた群の結果が示された。ACCORD-BP試験では、収縮期血圧を120未満と140未満に低下させた群で一次エンドポイントである心筋梗塞・脳梗塞の新規発症、心血管関連死に差は認められなかった。ACCORD-Lipid試験は、シンバスタチンで治療中の2型糖尿病患者にfenofibrateとプラセボの効果を比較したものだが、一次および二次エンドポイントに有意差はなかった。

ACCORD-Eyeサブ解析では、ACCORD試験で一次細小血管エンドポイントに達した2856名のサブグループを対象として4年間にわたり糖尿病網膜症の進展について検討した。その結果、血糖と脂質の強化療法を行った群では網膜症進展抑制が見られたが、血圧強化療法群では見られないという結果であった。

ACCORD-ADVANCE-VADT以後の世界では、細小血管合併症を予防するにはHbA1cのターゲットは7%未満、というコンセンサスが得られている。さらに重篤な低血糖やその他治療に伴う副作用がなければ、より低いHbA1cが望ましいとしている。ACCORD試験の結果からは、サブグループに基づいたHbA1cターゲットの個別化(individualization of HbA1c target)という観点が提案された。今後のACCORDの解析およびフォローアップにおいて、血圧や脂質管理のindividualizationという考え方も出てくるであろう。
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by md345797 | 2011-02-22 17:25 | 症例検討/臨床総説

哺乳類代謝のSirtuin-1による調節

Sirtuin-1 regulation of mammalian metabolism.

Gillum MP, Erion D-M, Shulman GI.

Trends Mol Med. 2011 Jan, 17 (1) 8-13.


Sirtuin 1 (SirT1)は栄養センサーの働きをするNAD+依存性脱アセチル化酵素であり、細胞内のターゲット蛋白(p53、NFκB、PGC-1α、FOXOs、histones H3 and H4)への作用を介して多様な働きをする。SirT1の発現量と活性はカロリー制限により増加し、正常血糖を保ち、効率的なエネルギー利用を促進する。この総説では、SirT1が絶食に対する適応反応を肝糖新生と脂肪酸酸化およびadiponectinの増加と免疫活性化の制限をもとに、どのように統合・調節しているかを述べる。最後にはSirT1の2型糖尿病治療のターゲットとしての役割について考察する。

【SirT1と糖新生・脂肪酸酸化】
絶食・カロリー制限に対する肝の機能は、糖新生によって血糖を正常に保つことである。そのためにCREB、CRTC2、FOXO1、PGC-1αが協調して、糖新生酵素(G6Pase、PEPCK)の発現を誘導する。SirT1はFOXO1、PGC-1αを脱アセチル化し、この反応を進行させる。肝臓でSirT1を欠損させたマウスでは、高脂肪食による肝での脂肪合成が低下しており、耐糖能異常が起こりにくい。SirT1は、AMPKとPGC-1を活性化することにより肝の脂肪酸酸化を増加させ、SREBP-1cの活性を阻害することにより肝の脂質合成を低下させる。このようにSirT1は絶食・カロリー制限時の肝の反応(糖新生の増加、脂肪酸酸化の増加と脂肪合成の低下)を起こす。

【SirT1とadiponectin】
3T3-L1脂肪細胞において、SirT1によりFOXO1が脱アセチル化されるとC/EBPへの結合が増加し、adiponectinの転写が亢進する。このことはin vivoのモデルで、Sirt1の過剰発現マウスでadiponectinレベルが亢進し、脂肪組織でのSirT1欠損マウスでadiponectinレベルが低下することでも示されている。

【SirT1と炎症】
SirT1はNFκB p65を脱アセチル化しその遺伝子発現能を低下させるため、SirT1は肥満やインスリン抵抗性における低レベル炎症状態(low-grade inflammation state)に関与していることが示唆される。SirT1の欠損で炎症過程の異常が認められる(自己免疫や肝・脂肪での炎症・マクロファージの活性化など)。そのため、肥満やインスリン抵抗性に伴うSirT1活性の低下は、低レベルの炎症だけでなく、明らかな炎症(NASHなど)にも関与している可能性がある。

【脳におけるSirT1、β細胞におけるSirT1】
脳において食欲亢進させるAgrpニューロンでSirT1を欠損、またはSirT1阻害薬(EX527)投与を行うと、食欲が低下する。このSirT1の食欲を増進させる機能は、絶食中の視床下部でSirT1の発現が増加していることにも関連がある。一方で、食欲抑制するPOMCニューロンでSirT1を欠損させると肥満になり、このことは前述のSirT1が食欲増加に働くということに反する。この矛盾は現在理解されていないが、SirT1はニューロンのホメオスタシスに関与しているのかもしれない。
また、膵β細胞特異的にSirT1を過剰発現させるとインスリン分泌が増加し、SirT1のloss of functionでは逆のことが起こる。ただし、膵におけるSirT1が糖代謝にどのくらい影響しているのかは今後定量的な検討が必要である。

【代謝疾患治療薬のターゲットとしてのSirT1】
赤ワインに含まれるポリフェノールであるレスベラトロール(resveratrol)がsirtuinsの酵素活性を亢進させることが知られている。レスベラトロール投与によるげっ歯類での代謝疾患での有用性が報告されているものの、SirT1特異的に作用しているためではないとする報告もあり、今後の検討が必要である。
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by md345797 | 2011-02-14 20:07 | エネルギー代謝

脳におけるインスリンは、脂肪組織の脂肪分解と脂肪合成を調節する

Brain insulin controls adipose tissue lipolysis and lipogenesis.

Scherer T, O'Hare J, Diggs-Andrews K, Schweiger M, Cheng B, Lindtner C, Zielinski E, Vempati P, Su K, Dighe S, Milsom T, Puchowicz M, Scheja L, Zechner R, Fisher SJ, Previs SF, Buettner C.

Cell Metab. 2011 Feb 2;13(2):183-94.

【まとめ】
インスリンは主要な抗脂肪分解ホルモンである(Insulin is a major antilipolytic hormone)。白色脂肪組織(WAT)においてインスリンによる脂肪分解抑制が効かないと(unrestrained lipolysis)、遊離脂肪酸が増加し、全身のインスリン抵抗性・脂肪毒性(lipotoxicity)につながる。またインスリンは脂肪合成を促進する作用があり、これが阻害されると(impaired de novo lipogenesis)、パルミトオレイン酸のようなインスリン感受性脂肪酸の合成が減少してしまう。

本研究ではSDラットの視床下部にインスリンを注入したところ、脂肪組織のHSL活性が低下し脂肪分解が抑制された。また、神経におけるインスリン受容体欠損マウスでは脂肪分解抑制が効かず、脂肪合成が障害された。したがって、視床下部におけるインスリン抵抗性が、遊離脂肪酸の増加・インスリン感受性脂肪酸の低下につながり全身のインスリン抵抗性をもたらすという悪循環をきたすと考えられた。

【論文内容】
SDラットの第三脳室(icv)またはmediobasal hypothalamus (MBH)にインスリンを注入し視床下部局所のインスリン濃度を上昇させるモデルを用いて、脂肪組織の脂肪分解・脂肪合成について検討した。このモデルでは、膵クランプ(=somatostatin注入により内因性インスリン分泌を抑制した上で、インスリンを持続注入)により、血漿インスリン値は正常一定に保った。視床下部へのインスリン注入を行うと、全身の脂肪分解は抑制(血中グリセロール・遊離脂肪酸が低下)され、このlipolytic fluxが肝の糖産生(HGP)を増加させた。視床下部のインスリン刺激は、脂肪分解酵素であるHSL(hormone sensitive lipase)のPKAによるリン酸化・活性化を抑制した。

インスリンはWATにおける脂肪合成を増加させ、これによりインスリン感受性ホルモン(lipokine)と考えられる脂肪酸であるパルミトオレイン酸(palmitoleate、16:1n7)合成が増加することが知られている。視床下部インスリン刺激でも脂肪合成酵素(FAS、ACC)発現が増加し、脂肪合成が亢進した。

これらの効果が交感神経系(SNS)を介しているかを検討するため、外科的および6-OHDAを用いた薬理学的交感神経切断を行ったところ、これらの操作でHSLリン酸化が抑制された。また、脳のインスリン抵抗性を導入するため、S961の投与(インスリンがインスリン受容体に結合するのを阻害するペプチド)、および神経特異的インスリン受容体欠損マウス(NIRKO)を用いて同様の実験を行ったところ、脂肪分解抑制・脂肪合成亢進がブロックされた。脂肪合成では特にパルミトオレイン酸の合成亢進がブロックされていた。

【結論】
脳におけるインスリン抵抗性は、交感神経系の低下を介して脂肪分解抑制をブロックし、グリセロールと遊離脂肪酸を血中に放出、肝における糖産生を増加させ全身の脂肪毒性を悪化させる。また、脳におけるインスリン抵抗性は、肥満時に見られる脂肪合成酵素の発現を減少させ、インスリン感受性脂肪酸であるパルミトオレイン酸を減少させ全身のインスリン抵抗性を引き起こすと考えられる。
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by md345797 | 2011-02-09 22:50 | エネルギー代謝

インスリンによる脂肪分解抑制は、オートクリン機構による乳酸とその受容体GPR81を介する

An autocrine lactate loop mediates insulin-dependent inhibition of lipolysis through GPR81.

Ahmed K, Tunaru S, Tang C, Muller M, Gille A, Sassmann A, Hanson J, Offermanns S.

Cell Metab. 2010 Apr 7;11(4):311-9.


【背景】
脂肪組織は体内最大のエネルギーリザーバーである。摂食後、エネルギーはTGとして蓄積され、エネルギー必要時にはTGは加水分解されNEFAとして血中に放出される。この過程はヒトでは、カテコラミン、ナトリウム利尿ペプチド、インスリンによって厳格に制御されている。

カテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)がβアドレナリン受容体に結合すると、AC(adenylyl cyclase)が活性化され細胞内cAMPが増加する。これによりPKAが活性化され、PKAによりperilipinとHSLがリン酸化され、TGの加水分解が進行する。

インスリンは主要な抗脂肪分解ホルモン(antilipolitic hormone)であり、PDE3Bを活性化、これがcAMPを不活性な5’AMPに加水分解し、PKAによるHSLのリン酸化を低下させる。これにより、脂肪分解が抑制される。

【論文内容】
GPR81はorphan G protein-coupled receptorであり、本研究では乳酸がこの受容体の内因性リガンドであることを見出した。乳酸は脂肪分解を抑制することが知られていたので、GPR81欠損マウスでは乳酸を注入しても脂肪分解が起こらないことを確認した。このマウスでは、運動によって乳酸が増加しても脂肪分解がWTと変わらなかったことから、GPR81は運動中の脂肪分解抑制には関与していないと言える。一方、GPR81欠損マウスでは、インスリンによる脂肪分解抑制(insulin-dependent antilipolysis)が低下しており、in vitroのWATでも同様であった。

【結論】
インスリンは脂肪細胞のグルコース取り込みを増加させ、脂肪細胞内でグルコースがピルビン酸を経て乳酸に変換され細胞外に放出される。これがautocrine/paracrine的に脂肪細胞表面の乳酸受容体GPR81に作用し、Giを介してACを不活性化、細胞内cAMPを低下させ、脂肪分解を抑制すると考えられる。
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by md345797 | 2011-02-07 16:44 | エネルギー代謝

アジアにおける糖尿病

Diabetes in Asia.

Ramachandran A, Ma RC, Snehalatha C.

Lancet. 2010 Jan 30;375(9712):408-18.

【総説内容】
日本を除くアジア諸国における糖尿病の現状について概説する。
アジアは糖尿病が急増する主要な地域であるが、2030年までにインドと中国が糖尿病罹患者の最も多い2国になると考えられている(インド:7940万人、中国:4230万人)。2025年までに世界人口は79億人になると考えられており、その50%を6か国が占め、3か国がアジア(インド、中国、パキスタン)である。2003年には、世界の糖尿病人口は1億9400万人(5.1%)、耐糖能異常が3億1400万人(8.2%)であり、そのうち大体80%が途上国(主にインド、中国)で、さらにこの先20年で大きく増加するものと考えられている。この増加にはアジアの急速な経済成長がひとつの重要な要因になっている。

アジア人は多民族であり、2型糖尿病の原因も多様であると考えられる。アジア人は他の人種よりインスリン抵抗性が強いという報告があり、β細胞機能低下が早く起きる可能性がある。また、アジア人に特有な感受性遺伝子(KCNQ1など)とアジア人・白人に共通の遺伝子変異(FTOなど)がある。

糖尿病の年齢であるが、インド人では糖尿病罹患率は60歳台に多く、中国では70-89歳に多いといったように差がある。アジア諸国の糖尿病の特徴は、若年発症の糖尿病が急速に増加しているということである。これは食生活の変化、運動量の低下、仕事時間の延長、睡眠の減少によると考えられている。小児の糖尿病も急増しており、肥満が増加するにつれて(香港では12-13歳の8-10%が肥満である)さらにこの傾向は進行するものと思われる。

インスリン抵抗性、高インスリン血症はアジア人、特に東南アジア人で多く見られる。インド人では肥満に関わらず高レプチン、低アディポネクチン血症が見られ、肥満によってこれらが悪化する。アジア人は他の人種よりBMIが少ないが、BMIと健康リスクの関連も少ない(BMIが低くても糖尿病・心血管障害のリスクが大きい)。アメリカに移住した南アジア人は、白人と違って内臓肥満がなくてもインスリン抵抗性が見られる。アジア人はアディポネクチン値が低く、2型糖尿病と心血管障害のリスクが大きい。アメリカに移住した南アジア人女性も同じ傾向を示す。

アジア人糖尿病患者は若年発症が増えてきたため、合併症のリスクが高くなっている。北アメリカでは、糖尿病性末期腎症はアジア人の方が白人より80%も多いが、膝下切断は60-69%少なく、心血管障害は24-33%少ないとされる。このように末梢血管障害は少ないとされているが、神経障害の頻度は高く足感染のリスクは大きい。
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by md345797 | 2011-02-02 19:31 | 症例検討/臨床総説