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アテローム性動脈硬化症の基礎から臨床へ

Progress and challenges in translating the biology of atherosclerosis.

Libby P, Ridker PM, Hansson GK.

Nature. 2011 May 19;473(7347):317-25.

【総説内容】
アテローム発生の現在の考え方

脂質異常症、高血圧、炎症性メディエータ―の増加などの刺激によって血管内皮細胞で接着分子が発現し、血流中の白血球が内皮細胞に結合することがアテローム発生の始まりである。同時に内皮透過性亢進により、LDLが内膜に取り込まれ、酸化LDLとなる。これを、単球由来のマクロファージが取り込み、泡沫細胞(foam cells)を形成する。そこに中膜からの平滑筋細胞(SMC)の遊走が起こり、脂質の豊富なプラークの壊死性コアが形成される。プラークはそれだけで血流を阻害する血管狭窄を起こすが、プラークが破綻すると血小板凝集が起こって血栓ができる。

脂質とアテローム性動脈硬化
LDLのサクセスストーリーには最終章がまだない:

脂質はプラーク形成に重要な役割を果たすが、特にLDLはヒトの心血管リスクや動脈硬化の形成に相関している。スタチンによる治療は大変な成功を収めたが、それでも残存するリスクにより心血管疾患の再発が起きている。そのため、新しい治療ターゲットに対するLDL降下療法が開発されつつある(NPC1L1阻害剤のezetimibe、PCSK9(LDL受容体分解に働く)の阻害剤など)

HDL、じれったい次の開拓分野:
HDL値は心血管リスクと逆相関することが知られており、HDLを増加させる治療が開発中であるが、いまだ確立されたものはない。HDL中のコレステロールはCETPによりApoB含有リポ蛋白に転送される。最近、CETP阻害薬であるanacetrapibが第Ⅲ相臨床試験で心血管イベントを減少させることが示されている。HDLの主要な蛋白であるApoA-Ⅰをターゲットにした治療や、ニコチン酸などがさらなる候補として考えられているが、現在十分な効果のあるものがない。

中性脂肪をめぐる臨床試験:
中性脂肪低下による心血管イベント改善効果は明らかではない。フィブラートは中性脂肪を低下させるが、心血管イベントや死亡率を下げることはない。Omega-3脂肪酸も中性脂肪を低下させるが、他にも炎症抑制、血小板凝集抑制の効果があり、今後心血管イベントにある程度効果があることが示されるかもしれない。近年、中性脂肪値よりもApo-CⅢを含有する中性脂肪の豊富なリポ蛋白が、炎症性メディエーターとして重要と考える報告もある。

酸化LDLが「ヒトの動脈硬化」を進行させるかは証明されていない:
実験的に酸化LDL(oxLDL)は動脈硬化を進展させることが報告されているが、これがヒトの動脈硬化に関与しているという直接的なエビデンスは少ない。アンチオキシダント(vitamin E/C、succinobucol)が心血管イベントを低下させることも示されていない。

マウスからヒトへ
アテローム中にT細胞が存在することが分かって以来、免疫系と炎症がアテローム形成に重要な働きを担っていることが明らかになっている。しかし、炎症と動脈硬化病変の形成の間にはどちらが原因かという問題(chicken-and-egg problem)が依然として存在する。また、抗炎症剤(炎症を抑制するmethotrexate、IL-1β阻害抗体canakinubab)を用いた臨床試験が進められている。

動脈硬化の理解に動物実験は不可欠であるが、ヒトに応用できるかどうかの限界も忘れてはならない。例えば、マウスでは血栓を伴うプラークの破綻はまず起こらない。マウスの実験では大動脈か近位の大血管の動脈硬化を見ているのに対し、ヒトの場合は構造(内膜SMCの存在)や血行動態(血流があるのが収縮期か拡張期か)の違う冠動脈や頚動脈、脳動脈における動脈硬化が重要である。実験的な動脈硬化は、ヒトの状態の完全なモデルとなっているわけではない。
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by md345797 | 2011-05-29 17:33 | 心血管疾患

アディポネクチンはマウス肝細胞において、LKB1-AMPKシグナル伝達非依存的に糖新生遺伝子発現を抑制する

Adiponectin suppresses gluconeogenic gene expression in mouse hepatocytes independent of LKB1-AMPK signaling.

Miller RA, Qingwei Chu Q, Le Lay J, Scherer PE, Ahima RS, Kaestner KH, Foretz M, Viollet B, Birnbaum MJ.

J Clin Invest. 2011;121(6):2518–2528, Published online May 23, 2011.

【まとめ】
アディポネクチンは、AMPK活性化を介して肝の糖産生を抑制することにより血糖を低下させると考えられている。このグループでは、肝臓特異的LKB1欠損マウスを作製し、アディポネクチンのシグナル伝達を検討した。LKB1欠損は、アディポネクチンの血糖降下作用を一部障害したが、アディポネクチンによる他の効果(肝の糖新生遺伝子発現やクランプにおける肝糖産生)は保たれた。また、LKB1、AMPK、またはCRTC2がない状態のprimary hepatocyteでも、アディポネクチンによる糖産生抑制、糖新生遺伝子発現の低下が起こった。したがって、アディポネクチン作用の一部はLKB1を介するものであるが、LKB1/AMPK/CRTC2に非依存性のシグナル伝達経路が存在する。

【論文内容】
AMPKは、エネルギー不足の状態、すなわちAMP/ATP比が増加すると活性が上昇するプロテインキナーゼであり、上流のAMPKK(LKB1およびCamKKβ)によってリン酸化・活性化され、下流のACCやCRTC2(別名TORC2*)をリン酸化する。これにより、筋肉の脂肪酸酸化や糖取り込みの増加、肝での脂肪合成、糖新生の低下が起こる。LKB1は主要なAMPKKであり、例えば肝臓でLKB1を欠損させると血糖上昇・耐糖能障害が起こることから、肝糖産生の重要な調節因子と考えられている。
アディポネクチンの血糖降下作用は肝のAMPK活性化を介するものと考えられ、実際マウス肝でdominant negative AMPKを発現させるとアディポネクチンによる血糖降下が阻害される。しかし、アディポネクチンの肝での作用がすべてAMPKを介するかは明らかではない。

肝のLKB1のコンディショナルな欠損マウスではアディポネクチン作用が部分的に障害される
ウイルスベクターを用いてCre recombinaseを肝で発現させ、肝でのコンディショナルなLKB1欠損マウスを作製した。このマウスでは血糖が上昇するが、インスリンが高値でインスリンシグナル伝達(Aktリン酸化など)も増加していた。このマウスでは、アディポネクチン投与による血糖降下および肝糖産生抑制が部分的に障害されていた。すなわち、アディポネクチンにはLKB1依存性・非依存性の肝糖産生抑制の作用がある。さらに、肝での遺伝子発現(G6pcなど)はLKB1欠損で増大するが、LKB1欠損マウスにアディポネクチンを投与するとコントロールと同様程度にまで抑制された。したがって、LKB1を欠損させてもアディポネクチンの肝の遺伝子発現低下に大きな影響はないことが分かった。

primary hepatocyteにおいて、アディポネクチンによる糖新生遺伝子抑制や糖産生抑制にLKB1/AMPK/CRTC2は必要でない
次にアディポネクチンの肝糖産生抑制作用は、肝細胞のアディポネクチン受容体によるものか、他の臓器からの影響によるものかを検討するため、肝臓LKB1欠損マウスからのprimary hepatocyteでのin vitro実験を行った。LKB1欠損hepatocyteでは、AICAR・phenformine・アディポネクチンによるAMPKリン酸化およびRaptor(AMPK target)が消失していた。このLKB1欠損hepatocyteで、dibutyryl-cAMP(db-cAMP)によって起こるG6pcなどの遺伝子発現増加・糖産生の増加は、アディポネクチンによって低下した。したがって、primary hepatocyteでもアディポネクチンによる糖新生遺伝子抑制や糖産生抑制にLKB1は必要でないと考えられた。

アディポネクチンによる糖新生遺伝子抑制や糖産生抑制にAMPKが関与していることを検討するため、AMPKのα1とα2の両方が欠損しているprimary hepatocyteを用いたところ、上記のLKB1欠損同様、アディポネクチンによる糖新生遺伝子抑制・糖産生抑制があり、アディポネクチンによる糖新生遺伝子抑制や糖産生抑制にAMPKは必要でないと考えられた。

CRTC2はAMPKによってリン酸化(不活性化)されるCREB coactivatorである。CRTC2欠損マウスのprimary hepatocyteをグルカゴン刺激すると糖新生遺伝子の転写促進が起こったが、アディポネクチンを添加したところこの促進は抑制された。

【結論】
アディポネクチンの肝での作用は、一部はLKB1を介するが、肝でのLKB-1欠損マウスでもアディポネクチンによる糖産生抑制・糖新生酵素の抑制が起こることで示されたように、LKB-1非依存性のシグナル伝達経路が示唆される。primary hepatocyteにおいて、アディポネクチンによる肝糖産生抑制・糖新生遺伝子抑制にLKB1/AMPK/CRTC2は必要でないという結果からも、これらのシグナル伝達とは独立の経路が存在することが示唆される。

*ここでのTORC2は、transducers of regulated CREBの略で、mTORC2(mTOR complex 2)とは別物であるので注意。
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by md345797 | 2011-05-25 17:09 | シグナル伝達機構

クラスⅡa HDACは、ホルモンにより活性化されるFOXOと哺乳類のグルコース恒常性を調節する

Class IIa Histone Deacetylases Are Hormone-Activated Regulators of FOXO and Mammalian Glucose Homeostasis.

Mihaylova MM, Vasquez DS, Ravnskjaer K, Denechaud P-D, Yu RT, Alvarez JG, Downes M, Evans RM, Montminy M, Shaw RJ.

Cell. 2011 May 13;145(4):607-621.

【まとめ】
肝において、クラスⅡヒストン脱アセチル化酵素(classⅡa HDAC:HDAC4, 5 and 7)は、AMPKファミリーキナーゼによりリン酸化され、核から除外される。空腹時ホルモンであるグルカゴンによって、classⅡa HDACは急速に脱リン化され、核に移行し、糖新生酵素(G6Paseなど)のプロモーターに結合する。一方で、HDAC4/5はHDAC3をrecruitして、FOXOを脱アセチル化・活性化することによって、糖新生酵素の転写を活性化する。マウス肝でclassⅡa HDACを欠失させると、FOXO標的遺伝子発現の抑制が起こり、血糖が低下、グリコゲン蓄積が増加する。2型糖尿病モデルマウスでclassⅡa HDACを抑制すると高血糖が改善したため、classⅠ/Ⅱ HDACはメタボリックシンドロームの治療のターゲットになりうる。

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by md345797 | 2011-05-13 02:33 | シグナル伝達機構

エネルギーバランス調節における中枢神経系PPAR-γの役割

A role for central nervous system PPAR-γ in the regulation of energy balance.

Ryan KK, Li B, Grayson BE, Matter EK, Woods SC, Seeley RJ.

Nat Med. 2011 May;17(5):623-6.

【まとめ】
この研究では、エネルギーバランス調節における中枢神経系のPPARγの役割を明らかにした。チアゾリジン系薬剤(TZD)でよく見られる副作用は体重増加である。ラット中枢神経系のPPAR-γを急性に活性化(TZD投与)または慢性に活性化(constitutive activeであるVP16-PPAR-γを視床下部に過剰発現)させると、正のエネルギーバランス(過食、体重増加)を示した。内因性のPPAR-γの活性化をPPAR-γアンタゴニストやshRNA発現によって阻害すると負のエネルギーバランス(食欲低下、体重減少)となり、高脂肪食(HFD)に伴うレプチン抵抗性が改善され、TZDによる過食が抑制された。

【論文内容】
視床下部のPPAR-γは急性・慢性の活性化で過食、肥満を引き起こす

TZDは、PPAR-γ活性化させ過食、肥満を引き起こすことが知られている。そこで、TZDであるrosiglitazone (rosi)が視床下部にあるPPAR-γを活性化し、エネルギーバランスを変化させるのではないかという仮説を立て、ラット第3脳室にrosiを注入する実験を行った。その結果、摂食が亢進し体重増加が起こった。また、このラットでは脳室周囲のc-Fos活性化(ニューロンの活性を表す)が起こっていた。次にリガンドなしでもconstitutiveに活性化するPPAR-γであるVP16PPAR-γをlentivirusベクターを用いてラット視床下部に過剰発現させたところ、同じく過食と肥満が起こった。 視床下部のPPAR-γは急性にも慢性にも食欲と体脂肪を増加させることが明らかになった。

中枢神経系のPPAR-γ活性化をGW9662によって阻害すると、負のエネルギーバランスとなる
次に末梢からrosiを投与し(rosiは脳血管関門を通過する)、脳室内にPPAR-γ アンタゴニストGW9662を注入したところ、または視床下部にPPAR-γのshRNAを注入したところ、rosiによる体重増加は阻害された。さらに、高脂肪食負荷ラットにGW9662を脳室内投与したところ、摂食と体重増加が抑制された。このラットはコントロールの高脂肪食ラットに比較して、血漿中のTSHが5倍以上高値であった。このことはPPAR-γと hypothalamic-pituitary-thyroid (HPT) axisとの関連を示唆している。

中枢神経系のPPARγ活性化をGW9662で抑制するとレプチン感受性が亢進する
高脂肪食による肥満の特徴は、レプチン抵抗性である。高脂肪食マウスにGW9662を投与すると、レプチンの標的遺伝子であるLPLの発現が低下した。このマウスにレプチンを腹腔内投与すると、摂食の低下と体重減少が認められ、レプチン感受性が亢進していることが分かった。

【結論】
以上の結果より、今まで知られていなかった視床下部のPPAR-γによるエネルギーバランスの中枢調節が明らかになった。PPAR-γ関連薬剤による体重増加は少なくとも一部はこの中枢性PPAR-γの調節によって説明できる。PPAR-γの内因性リガンドは不明だが、何らかの脂質とその代謝産物がリガンドではないかと考えられており、脂質がレプチン抵抗性をきたすメカニズムの一つは、視床下部のPPAR-γを介するものなのかもしれない。
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by md345797 | 2011-05-10 17:41 | エネルギー代謝

脳のPPARγは肥満を促進し、チアゾリジン系薬剤のインスリン感受性作用に必要である

Brain PPAR-γ promotes obesity and is required for the insulin-sensitizing effect of thiazolidinediones.

Lu M, Sarruf DA, Talukdar S, Sharma S, Li P, Bandyopadhyay G, Nalbandian S, Fan W, Gayen JR, Mahata SK, Webster NJ, Schwartz MW, Olefsky JM.

Nat Med. 2011 May;17(5):618-22.

【まとめ】
ニューロンにおけるPPARγの役割を検討するため、ニューロン特異的PPARγ欠損マウス(Pparg-BKO)を作製した。Pparg-BKOはコントロール(Pparg f/f)と比較して、高脂肪食(HFD)負荷に伴い摂食量が低下、エネルギー消費が増加、体重は減少した。レプチン投与にもよりよく反応した。チアゾリジン系薬剤(TZD)であるrosiglitazoneを投与すると、rosiによる過食、体重増加は少なかった。高インスリン正常血糖クランプでは、rosiはHFDに伴う肝臓のインスリン抵抗性を改善するが、Pparg-BKOではその効果が全く見られなかった。したがって、HFDによる体重増加は一部はニューロンのPPARγによるエネルギー消費低下と過食によるものであり、ニューロンのPPARγはTZDの肝臓のインスリン感受性促進作用に必要である。

【論文内容】
ニューロン特異的PPARγ欠損マウスはHFDによる体重増加が少ない

TZDは、脂肪合成や体液貯留だけでなく摂食を促進することで、体重増加をきたすことが知られている。これには脳のPPARγの作用が関連していることが示唆される。そこで、この研究ではsynapsin I Cre-LoxPシステムを用いて、Pparg-BKOを作製した。このマウスでは、ニューロン(脊髄、脳幹、視床下部、など)でPPARγの発現が欠損していることを確認した。このマウスとコントロール(Pparg f/f)マウスに高脂肪食を負荷すると、Pparg-BKOでエネルギー消費が増加、摂食量が低下し、体重が増加した。また、レプチン濃度に差はなかったが、Pparg-BKOマウスでレプチン感受性が亢進していた(レプチン投与によりレプチン受容体下流のSTAT3リン酸化が亢進)。

ニューロン特異的PPARγ欠損マウスはTZDに伴う過食が少なくエネルギー消費が多い
HFDを負荷したPpar-BKOマウスとPparg f/fマウスに高脂肪食を負荷後、rosiを投与したところ、コントロールマウスではrosiによる過食・体重増加が見られたが、BKOマウスでは体重増加は50%程度に減少していた。また、BKOではrosi投与に伴いWATにおけるUcp1、肝臓におけるUcp3の発現が増加し、エネルギー消費が増加、すなわち脳のPPARγはエネルギー消費を制限していることが明らかになった。

ニューロン特異的PPARγ欠損マウスはTZDに伴う肝臓のインスリン抵抗性改善が見られない
Ppar-BKOマウスはrosiによる耐糖能改善が少なく、クランプにおけるGIR(グルコース注入率)、GDR(糖取りこみ)が少なかった。しかし、rosiによるHGP(肝糖産生)の抑制は見られなかった。さらに、rosiによる肝臓でのインスリンシグナル伝達の亢進(AKT、GSK3、ERK1/2のリン酸化増加)もPpar-BKOマウスでは認めなかった。

【結論】

①ニューロン特異的PPARγ欠損マウスはレプチン感受性が亢進しており、高脂肪食による肥満が起こりにくい。②また、このマウスはrosiによる過食や肝のインスリン抵抗性改善が起こりにくかった。すなわち、脳のPPARγは高脂肪食による過食・肥満のメディエーターとなっており、rosiに伴う過食・肝のインスリン抵抗性改善作用を担っていると言える。
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by md345797 | 2011-05-09 04:57 | エネルギー代謝

B細胞はT細胞の調節と病原性IgG抗体の産生を介してインスリン抵抗性を増悪させる

B cells promote insulin resistance through modulation of T cells and production of pathogenic IgG antibodies.

Winer DA, Winer S, Shen L, Wadia PP, Yantha J, Paltser G, Tsui H, Wu P, Davidson MG, Alonso MN, Leong HX, Glassford A, Caimol M, Kenkel JA, Tedder TF, McLaughlin T, Miklos DB, Dosch HM, Engleman EG.

Nat Med. 17(5) 610–617 May 2011.

【まとめ】
内臓脂肪組織(VAT)ヘのT細胞・マクロファージの浸潤による慢性炎症は、肥満に関連したインスリン抵抗性・耐糖能異常の特徴である。この研究では、B細胞がこの過程にどのように影響しているかを検討した。食事による肥満(Diet-induced obesity: DIO)マウスのVATにはB細胞が蓄積し、B細胞を欠損させたマウスではに高脂肪食を負荷しても、体重増加にも関わらずインスリン抵抗性を示さない。B細胞の糖代謝への影響は、炎症性T細胞・マクロファージの活性化と病原性のIgG抗体産生が関与している。B細胞を欠損させるCD20抗体を投与するとインスリン抵抗性が消失し、IgGを投与するとインスリン抵抗性がもたらされる。さらに肥満のヒトにおけるインスリン抵抗性では、IgGの特有のプロファイルが見られる。これらのことから、インスリン抵抗性におけるB細胞の重要性が指摘され、以上の知見がインスリン抵抗性の診断・治療に役立つと考えられる。

【論文内容】
インスリン抵抗性の原因の一つは、VATのマクロファージ浸潤による慢性炎症である。すなわち、高脂肪食(HFD)負荷による肥満(DIO)マウスのVATにおいて、M1マクロファージが、炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1β、IL-6)を放出していることがインスリン抵抗性の一因と言える。T細胞もVATの炎症に関与しており、炎症性CD8+T細胞やIFN-γ産生CD4+T細胞が肥満によるインスリン抵抗性に関与しているという報告がある。逆に、VATのFoxp3+ regulatory T細胞には炎症に対し保護的な効果がある。マクロファージやT細胞に比べ、B細胞についてはインスリン抵抗性の発症への関与が今までほとんど知られていなかった。

DIOマウスにおいてB細胞は糖代謝を障害する
HFD負荷マウスのVATにおいて有意なB細胞の蓄積、IgGの産生が認められた。このB細胞蓄積のインスリン抵抗性への影響を検討するため、B nullマウス(免疫グロブリンμ重鎖欠損マウス=成熟B細胞が作られない)にHFDを負荷した。その結果、HFD-WTマウスに比べて体重に差はないが、空腹時血糖は低下し、インスリン抵抗性が改善した。さらにHFD-B nullマウスにHFD-WTマウスからB細胞を腹腔内注入すると、耐糖能が悪化した。正常食(NCD)負荷WTマウスからのB細胞注入では悪化は起きなかったため、HFD由来の病原性(pathogenic) B細胞がインスリン抵抗性を惹き起こすことが分かった。

HFD-WTマウスとHFD-B nullマウスを比較すると、後者の方が炎症性M1マクロファージが少なかった。VATのstromal vascular cell(SVC)の培養上清では、HFD-B nullマウスの方がIFN-γが少なかった。また全身の resistin、PAI-1濃度も少なく、DIOマウスにおいてB細胞は全身および局所(VAT)の炎症を起こしていると考えられる。。

B細胞はT細胞と協調してインスリン抵抗性を悪化させる
B細胞機能へのT細胞の影響を明らかにするため、HFD負荷RAG-1 nullマウス(リンパ球が欠損)にHFD-WTマウスのB細胞を注入した。しかし、このマウスでは(HFD-B nullマウスにHFD-WTマウスのB細胞を注入した場合と違って)HFDによるインスリン抵抗性は改善しなかった。したがってインスリン抵抗性改善のためには他のリンパ球が必要と考えられる。B細胞は、CD8+とCD4+のT細胞に、それぞれMHC classⅠとclassⅡを介して抗原提示することによって活性化させる。そこで、HFD-B nullマウスにHFD負荷したMHC classⅠ欠損とclassⅡ欠損のマウスのB細胞を注入した。しかしHFD-WTマウスのB細胞を注入した場合と違って、IFNγの産生およびインスリン抵抗性の増悪は起きなった。したがって、B細胞のT細胞(CD8+とCD4+の両方)への抗原提示がインスリン抵抗性発症に重要であると考えられる。

IgG抗体はインスリン抵抗性のメディエーターである
HFDによる肥満はVATのB細胞におけるIgG産生亢進を伴うため、HFD負荷およびNCDマウスの血清から精製したIgGをB nullマウスに腹腔内注入した。どちらのIgGを注入したマウスも体重に差はなかったが、HFD-IgG (pathogenic antibody)を注入したマウスでインスリン抵抗性・耐糖能の悪化が認められた。

B細胞の除去はインスリン抵抗性を改善する
マウスCD20特異的なモノクローナル抗体(注:ヒトCD20モノクローナル抗体はrituximab)を用いて、HFD負荷マウスのB細胞除去を行うと、体重減少は見られないが、VATからのIFNγ・TNFαの産生低下、インスリン抵抗性・耐糖能異常の改善が認められた。

【結論】
B細胞は病原性IgGの産生を介して肥満によるインスリン抵抗性の発症に関与している。VATにrecruitされたB細胞がT細胞を活性化しIFNγを産生、これがM1マクロファージを増強することで炎症性サイトカインの産生、インスリン抵抗性の悪化につながると考えられる。
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by md345797 | 2011-05-07 17:29 | インスリン抵抗性

アディポネクチン欠損マウスは、肺の内皮細胞アポトーシスをきたし慢性閉塞性肺疾患(COPD)様の形質を示す

Involvement of Endothelial Apoptosis Underlying Chronic Obstructive Pulmonary Disease-like Phenotype in Adiponectin-null Mice: Implications for Therapy.

Nakanishi K, Takeda Y, Tetsumoto S, Iwasaki T, Tsujino K, Kuhara H, Jin Y, Nagatomo I, Kida H, Goya S, Kijima T, Maeda N, Funahashi T, Shimomura I, Tachibana I, Kawase I.

Am J Respir Crit Care Med. 2011 May 1;183(9):1164-75.

【まとめ】
本研究では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症におけるアディポネクチンの役割を明らかにした。アディポネクチン欠損マウスは、進行性の気管の拡大、肺コンプライアンスの増加をきたし、肺気腫を起こす。肺以外にも全身性の炎症および、体重減少、脂肪萎縮、骨粗鬆症が起きている。このマウスでは、肺の内皮細胞における血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)-2およびPECAM-1の発現が低下し、内皮細胞のアポトーシスが亢進しており、このことがCOPD様形質を起こしていると考えられた。さらに、このマウスに、アデノウイルスを用いてアディポネクチンを補充すると、肺気腫様形質を改善することができた。したがって、COPDの発症にアディポネクチンが関与している可能性があり、その治療にアディポネクチン投与が有用であると考えられた。

【論文内容】
エラスターゼにより誘導された肺気腫は低アディポネクチン血症を起こす

アディポネクチン(APN)のCOPDへの関与を検討するため、エラスターゼを経鼻投与した肺気腫モデルマウスのAPNの発現を検討した。エラスターゼ投与後は肺血管に発現するAPNが3日目以降減少し、血漿のAPN濃度も低下した。

アディポネクチン欠損マウスは進行性にCOPD様形質を示す
さらに肺気腫の発症とAPNの関与を検討するため、APN欠損マウスの肺の形態をWTマウスと比較したところ、3週から80週にかけて進行性の肺気腫を認めた。また、全身プレシスモグラフィーで肺コンプライアンスと全肺気量の増加が認められた。さらにCTでは肺の透過性が亢進していた。

アディポネクチン欠損マウスは全身性の炎症、体重減少、脂肪萎縮を認める
APN欠損マウスの肺のlysateではprotease(MMP-9)が増加しており、血漿中にCOPD発症に重要なサイトカインであるTNF-α、IFN-γ、IL-6が増加していた。また、80週ではCRPも増加しており全身性の炎症の存在が示唆された。また、80週のAPN欠損マウスではWTに比べ体重減少、骨密度低下、内臓・皮下脂肪の萎縮が認められ、COPD患者の特徴と一致していた。

アディポネクチン欠損により肺の内皮細胞アポトーシスが亢進し、これにはVEGFR-2およびPECAM-1の低下が伴う
APN欠損マウスの肺ではcleaved caspase-3の発現が増加、内皮細胞(CD31+)でTUNEL+であり、内皮細胞のアポトーシスが亢進していることが分かった。このメカニズムを検討するために、肺におけるVEGF受容体(VEGFR-2)およびPECAM-1(CD31)の発現を確認したところ、どちらも発現が低下していた。このことがAPN欠損マウスの肺内皮細胞のアポトーシス亢進につながり、さらに肺気腫を惹き起こしている可能性がある。

アディポネクチン欠損マウスへのアディポネクチン補充は内皮細胞アポトーシスを低下させ、肺気腫を改善する
APN欠損マウスにAd-APNを尾静脈から注入すると、VEGFR-2、PECAM-1の発現低下が回復し、内皮細胞アポトーシスが少なくなり、肺気腫が起こらなくなった。

【結論】
肺気腫の進展には低アディポネクチン血症が伴っており、アディポネクチン欠損マウスではヒトCOPDで見られるような肺胞拡大が認められる。このCOPD様形質は、内皮細胞のVEGFR-2、PECAM-1の発現低下を伴い内皮細胞アポトーシスが亢進していることによる。またこのマウスには全身性の炎症と肺外の症状(年齢に伴う体重減少、骨粗鬆症、脂肪萎縮など)が認められ、この点も全身疾患としてのCOPDと類似していた。最後にアディポネクチン補充療法は、内皮細胞アポトーシスを抑制して肺気腫様形質の進展を阻害することが示された。
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by md345797 | 2011-05-05 19:56 | その他

TZDsは近位尿細管にてPPARγのnongenomicなシグナル伝達を介してNa+と共役したHCO3-の吸収を促進する

Thiazolidinediones Enhance Sodium-Coupled Bicarbonate Absorption from Renal Proximal Tubules via PPARγ-Dependent Nongenomic Signaling.

Endo Y, Suzuki M, Yamada H, Horita S, Kunimi M, Yamazaki O, Shirai A, Nakamura M, Iso-O N, Li Y, Hara M, Tsukamoto K, Moriyama N, Kudo A, Kawakami H, Yamauchi T, Kubota N, Kadowaki T, Kume H, Enomoto Y, Homma Y, Seki G, Fujita T.

Cell Metab. 2011 May 4;13(5):550-61.

【まとめ】
チアゾリジン系薬剤(TZDs)は、水分貯留の副作用が問題になるが、その機序は不明である。この研究では、TZDsが、近位尿細管においてNaと共役したbicarbonate(HCO3-)の再吸収を刺激することをin vitro、in vivoで明らかにした。この過程は、PPARγ/Src/EGFR/ERK経路(PPARγによる転写活性化を介さない急性のシグナル伝達経路)を介し、ウサギ・ラット・ヒトで見られる(マウスでは見られない)。

【論文内容】
インスリン抵抗性改善に効果があるチアゾリジン系薬剤(TZDs)は、腎でのNa・水の再吸収を促進して浮腫を起こすことがあるが、そのメカニズムは不明である。PPARγを介したeptherial Na channel (ENaC)の転写促進が重要と考えられているが、それだけでないとする報告もある。

TZDsの、単離ウサギ近位尿細管のNa+/HCO3-輸送機能に対する作用
まず、TZDsが近位尿細管輸送を促進するかを検討するため、Na+-HCO3- cotransporterであるNBCe1に対するTZDsの効果を調べた。単離したウサギ近位尿細管にpioglitazone(PGZ)またはrosiglitazone(RGZ)を投与したところ、submicromolarの濃度で数分以内にNBCe1活性が上昇した。TZDsは急性に近位尿細管でのNa+とHCO3-再吸収を刺激することが分かる。このHCO3-再吸収促進は、PD98059(MEK阻害剤)、GW9662(PPARγantagonist)、AG1478(EGFR tyrosine kinase 阻害剤)によって阻害されたため、TZDsの近位尿細管への作用には、PPARγによって活性化されたEGFR/ERK経路の関与が示唆された。

TZDの近位尿細管輸送に対する影響の、種による違い
上記のウサギによる実験をラットで行っても同様の結果だったが、マウスではPGZによるNBCe1活性上昇は見られなかった。一方、PP2(Src阻害剤)はウサギのこの活性上昇を完全に抑制した。マウスの近位尿細管ではSrcがconstitutiveに活性化されており(近位尿細管以外の他の細胞では活性化されていない)、下流のEGFRシグナル(ERK活性化)が常に起こっていてPGZに反応しないことが分かった。ヒトの近位尿細管はウサギ、ラットと同様Srcのconstitutiveな活性化は起こっておらず、PPARγ刺激によるERK活性化を介するNBCe1活性化が起こることが示された。

TZDの急性 in vivo効果
ラットにPGZを単回投与し、90分以上尿を採取した。PGZ投与によって尿量が減少し、FE of Lithium+と自由水クリアランスが低下し(クレアチニンクリアランスと尿中Na排泄は変化なかった)、尿浸透圧は増加した。PGZと同時にアセタゾラミド(近位尿細管輸送阻害剤)を投与すると、これらの変化は消失した。PGZは急性に近位尿細管再吸収を刺激し水貯留を促進することが示唆された。

PPARγ依存性のNHE1活性の刺激
次にPPARγ-/-マウスの唯一の生きている細胞であるEF(embryonic fibroblast) 細胞を用いて、NHE1(Na+/H+ exchanger、ERK経路によって刺激される)の調節について検討した。WTおよびPPARγ-/-のEF細胞は細胞内アシドーシスによってERK依存的にNHE1活性化が起こるが、PGZによる活性化はPPARγ-/-細胞では起きない。WT細胞でのNHE1活性化はPD98059、GW9662、AG1478で阻害されるが、actinomycinD(転写阻害剤)では阻害されない。そのため、PGZによるNHE1活性化阻害はPPARγ依存性のnongenomicな(ゲノムの転写を介さない)、ERK活性化を伴うシグナル伝達によると考えられた。

PPARγ依存性の急速なシグナル伝達はnongenomicであり、Srcを介する
PPARγ-/-のEF細胞に全長PPARγをadenovirusで発現させたところ、PGZによるERK依存性のNHE1活性化がrescueされた。ここで、リガンド結合ドメイン(LBD)のみでDNA結合ドメインのないPPARγコンストラクトを発現させても同様にrescueが起こった。このことからNHE1の活性化にはリガンド結合は必要だが、転写活性化は不要であることが分かった。そこで、PGZによるNHE1活性化におけるSrcの役割を検討するため、Src-/-マウス由来のEF細胞を用いて同様の検討をしたところ、Src-/-ではNHE1活性化が起こらなかった。PPARγによるnongenomicなシグナル伝達にはSrcが必要であり、免疫沈降実験にてPPARγとSrcが共沈すること、PGZは両者の結合を促進することが明らかになった。

【結論】
この研究では、TZDsがウサギ・ラット・ヒトの近位尿細管にてNaと共役したbicarbonateの再吸収を促進することを示し、これはPPARγ/Src/EGFR/ERK経路を介するNBCe1 (Na+-HCO3- cotransporter)の活性化によることを明らかにした。また、EF細胞を用いた検討でPPARγ/Src/EGFR/ERK経路(転写活性化を介さない急性のシグナル伝達経路)を介するNHE1(Na+/H+ exchanger)活性化機構を解明した。近年、核内受容体がnongenomicな作用を及ぼすことが知られている。PPARγも何らかの選択的modulatorによって、部分的に(この場合nongenomicな経路を刺激しない)活性化ができれば、水分貯留の副作用の少ない薬剤が可能になるかもしれない。
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by md345797 | 2011-05-04 20:59 | 腎高血圧

骨髄由来細胞療法は、内因性の心筋前駆細胞を刺激し心臓の修復を促進する

Bone marrow-derived cell therapy stimulates endogenous cardiomyocyte progenitors and promotes cardiac repair.

Loffredo FS, Steinhauser ML, Gannon J, Lee RT.

Cell Stem Cell. 2011 Apr 8;8(4):389-98.

【まとめ】
細胞療法(cell therapy)は障害後の心機能を改善することが知られているが、そのメカニズムは不明である。このグループは、4-OH-tamoxifen投与後に心筋でGFPが発現するマウスを作製、心筋梗塞後はnon-GFP前駆細胞によって心筋が再生されることを示した。骨髄由来のc-kit+細胞を心筋に注入すると、この再生が促進された。この現象は、体外から投与されたc-kit+細胞の心筋へのtransdifferentiationやcell fusionによっては説明できなかった。心筋に注入されたc-kit+細胞によって内因性の心筋前駆細胞活性が刺激されることが、心筋細胞療法のメカニズムであることが示された。

【論文内容】
骨髄由来c-kit+細胞療法は心筋梗塞後の内因性の心筋前駆細胞を刺激する
このグループは以前作製した4-OH-tamoxifen投与後に心筋特異的にpermanentにβgalに代わってGFPが発現するMerCreMer-ZEGマウス(「pulse」labelingが可能)に、4-OH-tamoxifen投与後14日後に冠動脈結紮により心筋梗塞を起こした後、WTマウスのc-kit+骨髄細胞を左室心筋に注入した。その結果、心筋梗塞後GFP+心筋の割合は減少し、c-kit+骨髄細胞注入後はさらに減少した。その分βgal+細胞の割合が増加しており、再生した心筋細胞は骨髄細胞からのtransdifferentiationでないことが示唆された。心筋梗塞後のBrdU陽性細胞はGFP-でありβgal+の前駆細胞からの分化であることが示された。

心筋梗塞後の骨髄間質幹細胞による細胞治療では内因性前駆細胞を刺激しない
上記の結果がc-kit+細胞に特異的であるかを検討するため、骨髄由来の間質幹細胞(MSCs:臨床研究では心筋への分化が示されている)を用いて同様の実験を行った。しかし、MSCsではc-kit+細胞のように内因性の前駆細胞を活性化する効果はなく、心機能の改善も見られなかった。

Transdifferentiationやcell fusionでは、c-kit+細胞による心筋再生刺激は説明できない
次にMerCreMer-ZEGマウス(♂)の骨髄由来細胞を、心筋梗塞後のWTマウス(♀)に心筋内注入し、その後に4-OH-tamoxifen投与を行った。その結果、梗塞巣辺縁にGFP+の心筋はなく、Y染色体(♂由来)陽性の心筋細胞も見られなかった。これは骨髄由来細胞から心筋細胞へのtransdifferentiationがないことを示し、別の実験(MerCreMre-/ZEG+♂マウスの骨髄をMerCreMre+/ZEG-♂マウスの心筋に注入する)でドナーとレシピエントの間のcell fusionによるものではないことも示された。

c-kit+細胞による細胞治療心筋前駆細胞の数を増加させる
さらに、♂マウスから採取した骨髄c-kit+細胞を、心筋梗塞を起こさせた♀マウスの心筋細胞に注入し、BrdUを浸透圧ミニポンプで注入した。これらのマウスの梗塞巣辺縁をnkx2.5、GATA4(心臓発生に関与する転写因子)で免疫染色した。その結果、c-kit+細胞注入群でnkx2.5+GATA4+細胞の総数、BrdU陽性細胞の数とも増加しており、心筋前駆細胞の数を増加させていることが示唆された。

また、最初の心筋梗塞モデル動物に、内因性の前駆細胞を活性化しうる幹細胞chemokineであるSDF-1αを心筋局所に投与したが、心筋梗塞後のGFP+細胞の割合の低下は見られず、SDF-1が心筋前駆細胞を刺激しているのではないということが分かった。

【結論】
心筋梗塞後にc-kit+骨髄細胞を心筋内に注入することで、内因性の前駆細胞由来の心筋再生ができ、心機能を改善することができる。このc-kit+細胞の効果は、これらの細胞が直接心筋にtransdifferentiationすることによるものではなく、ドナー前駆細胞とレシピエントc-kit+細胞の間の何らかのparacrine communicationによるものではないかと思われる。
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by md345797 | 2011-05-03 17:56 | 再生治療