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糖尿病のグローバリゼーション

Globalization of diabetes: the role of diet, lifestyle, and genes.

Hu FB.

Diabetes Care. 2011 Jun;34(6):1249-57.

【総説内容】

糖尿病の世界的負担(global burden)

2型糖尿病はかつては西洋の病気であったが、今は世界のすべての国に広がっている。かつては豊かな国の病気であったが、今は貧困層で増加している。かつては成人病であったが、今は小児肥満の増加とともに小児にも広がっている。世界で2億8500万人が糖尿病であり、その人数は2030年までに4億3800人に増加すると考えられていて、その3分の2は低・中所得国が占める。世界中で医療費の12%が糖尿病に向けられると推定され、途上国では糖尿病の蔓延が経済成長の妨げとなっている。世界の糖尿病人口の60%は、急速な経済成長を遂げるアジアが占めている。例えば、1980年には中国の成人に占める糖尿病の割合は1%に満たなかったのが、2008年には10%近くに達している。中国成人の9200万人が糖尿病と考えられ、中国はインドに代わって、世界の糖尿病の中心となりつつある(ただし南インドの都市部では糖尿病の有病率が20%近くに達している)。アジア人の糖尿病は西洋人に比べ、若年発症が多く、肥満が少ない。妊娠糖尿病も多いため、その子供が2型糖尿病になる割合も多いとされている。

糖尿病増加の寄与因子
肥満と脂肪分布

肥満は全世界的に増加しているが、アジアでは欧米諸国に比較して肥満が少ない。にもかかわらず、糖尿病の有病率は高い(特にインドでは肥満が少ないにもかかわらず、糖尿病が多い)。アジア人は欧米人と比較して、同程度の腹囲でも内臓脂肪が多く、筋肉量が少ない。この特性(=metabolically obese)が肥満が少ないにもかかわらず、糖尿病が多いことにつながっていると考えられる。
食事
カロリーの質、すなわち糖質(glycemic load)やトランス脂肪が多いこと、穀類の線維や多不飽和脂肪が少ないことが糖尿病発症のリスクになることが示されている。インドでは、ghee (高度にトランス脂肪酸を含むバター)が多食され、糖尿病増加の原因となっている可能性がある。特に中国・インドで経済成長に伴い、動物性脂肪や高カロリー・低線維の食事の摂取が増加している。
身体活動
座りがちな行動(sedentary behavior)は糖尿病のリスクにつながる。1日2時間TVを見る時間が長くなると、糖尿病発症のリスクが14%増加するという報告もある。途上国においても、機械化と自動車の普及によって運動量が少なくなっている。
喫煙
喫煙は2型糖尿病の独立した危険因子であり、喫煙者は非喫煙者に比べ糖尿病発症のリスクが45%増加するとされている。喫煙者は、血漿コルチゾールが高値、テストステロンが低値になりやすく腹部脂肪蓄積が増えると考えられている。途上国の成人男性の50-60%が喫煙者であり、現在中国は世界一の、インドは世界第2位のタバコの生産・消費国でもある。
アルコール消費
高度のアルコール消費はカロリー摂取過剰や肥満を来たし、糖代謝異常のリスクになる。途上国においても西洋化した生活習慣により飲酒の機会が増加している。

遺伝的な感受性および遺伝子と環境の相互作用
今までに少なくとも40の遺伝子座が2型糖尿病と関連があることが分かっている。ゲノムワイド関連研究(GWAS)によって白人で明らかになった糖尿病遺伝子の多くがアジア人でも再現されているが、人種間で異なるものもある。例えば、白人の20-30%で糖尿病リスクと関連のあるTCF7L2は、アジア人では3-5%程度しか関連がない。一方、東アジア人で糖尿病に関連のあるKCNQ1は、白人ではの関連はまれである。

他の多因子疾患と同様、2型糖尿病も遺伝因子と環境因子の相互作用によって発症する。西洋食パターンと、10の確立した2型糖尿病感受性SNPによるgenetic risk score (GRS)に基づき、糖尿病発症のリスク(オッズ比)を算出した結果、GRSが高く、西洋食が進んだグループで糖尿病のリスクが高かった(ただし、GRSが低いグループでは、西洋食が進んでいても糖尿病のリスクに関連しなかった)。したがって、西洋食の影響は遺伝的感受性が高い群で効果を発揮することが分かった。

倹約遺伝子型(thrifty genotype)と倹約表現型(thrifty phenotype)
倹約遺伝子仮説とは、飢餓の時期に有利な遺伝子型を持つ体質が選別され、肥満・2型糖尿病発症に関与しているとするもので、ピマインディアンなど飢餓と飽食のサイクルを経過した民族で肥満・糖尿病が多いことをよく説明している。しかし、実際の肥満・糖尿病遺伝子座で明らかに倹約遺伝子と証明されたものはなく、その検討が進められている。「倹約遺伝子仮説」が祖先の遺伝子と現在の環境の不適合に基づくものであるのに対し、「倹約表現型仮説」は子宮内と成人の環境の不適合に基づくものである。後者によると、胎児の時期の低栄養が低体重やβ細胞量の減少、インスリン抵抗性の増加をきたし子宮内では有利であるが、その後成人してからの過栄養に伴う2型糖尿病発症に関わるとされる。中国での1950年代後半から1960年代前半にわたる大飢饉を経験したコホート研究により、飢餓による長期の代謝的影響が報告されている。これによると、胎児の時期に飢餓にさらされると、成人期に高血糖をきたすリスクが増加し、この影響は成人期に過栄養になるほど大きいとされる。現在のアジアでの糖尿病増加に、この現象が関与している可能性もある。

2型糖尿病の予防可能性
中国の大慶(Daqing)で行われた糖尿病予防研究では、6年間の食事・運動の介入によって糖尿病発症を31-46%減少させることができた。さらにFinnish Diabetes Prevention Studyおよび米国のDPP (Diabetes Prevention Program)、インドでのIDPP (Indian Diabetes Prevention Program)でも、生活習慣の介入で糖尿病発症を28-58%減少できた。このように、さまざまな民族および人種で食事・生活習慣介入で2型糖尿病は予防可能であることが示されている。これらの研究結果を、実際の臨床および健康政策にtranslateすることが急務である。
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by md345797 | 2011-07-31 19:13 | 症例検討/臨床総説

TGF-β/Smad3シグナル伝達を阻害すると、肥満・糖尿病をきたしにくい

Protection from Obesity and Diabetes by Blockade of TGF-β/Smad3 Signaling.

Yadav H, Quijano C, Kamaraju AK, Gavrilova O, Malek R, Chen W, Zerfas P, Zhigang D, Wright EC, Stuelten C, Sun P, Lonning S, Skarulis M, Sumner AE, Finkel T, Rane SG.

Cell Metab. 2011 Jul 6;14(1):67-79.

【まとめ】
Smad3欠損マウスは、高脂肪食を負荷しても肥満・糖尿病が起こりにくい。このメカニズムとして、Smad3欠損マウスの白色脂肪組織(WAT)は、褐色脂肪組織(BAT)および骨格筋の遺伝子発現プロファイルを示し、ミトコンドリア生合成が著明に増加していることが明らかになった。さらに、ヒトおよびマウスにおいてTGF-β1値は体重と相関があり、マウスに抗TGF-β抗体を投与してTGF-β/Smad3シグナルを阻害すると、肥満・糖尿病・脂肪肝を起こしにくくなる。これらのことから、TGF-βシグナルは糖・エネルギー代謝を調節する重要な因子であり、その阻害は肥満・糖尿病の治療に役立つ可能性があると考えられた。

【論文内容】
BATは、発生学的には骨格筋に関連があり、前駆細胞から褐色脂肪細胞への分化には転写因子PRDM16が重要な役割を果たしている。近年、ヒトにおいても代謝的に活発なBATが存在することが示されており、代謝疾患の治療への応用について関心がもたれている。
TGF-βは、TGF-β受容体serine/threonine kinase活性により転写因子Smad3を調節し、発生や増殖などに関与している。マウスやヒトでTGF-βレベルと肥満が相関していることが示されているが、その関連のメカニズムは不明であった。

Smad3欠損マウスは、高脂肪食負荷による肥満やインスリン抵抗性が起こりにくい
Smad3-/-マウスは高インスリン正常血糖クランプによりインスリン感受性亢進を示し、高脂肪食負荷に伴う体重増加やインスリン抵抗性の悪化が少ない。このマウスでは、WATでのインスリンシグナル伝達(IR, Akt, Foxo1のリン酸化)が亢進している。また、高脂肪食負荷したSmad3+/+マウスでは肝への異所性脂肪沈着(ectopic fat deposition)が見られるが、Smad3-/-マウスでは少ない。

Smad3欠損によりWATからBATへの形質転換が誘導される
Smad3-/-マウスは脂肪量が少なく、白色脂肪細胞の大きさが減少していることが示された。Smad3-/-マウスのWATの形態はBATに似ており、褐色脂肪のマーカーであるUCP-1およびPGC-1α、PRDM16の発現が認められる。すなわち、Smad3シグナルの欠損により、白色脂肪細胞に褐色脂肪細胞の形質が認められるようになる。BAT特異的マーカーであるUCP-1およびPGC-1αは寒冷刺激により活性化されるが、寒冷刺激によりSmad3-/-マウスのWATにおいてBAT特異的マーカーが増加した。

Smad3欠損によりWATでのミトコンドリア生合成と機能が促進される
褐色脂肪細胞は筋肉に似て、ミトコンドリアが豊富である。Smad3-/-マウスのWATにおいて、ミトコンドリア数と活性を検討したところ、ミトコンドリアDNAコピー数の増加と、褐色脂肪細胞に見られるミトコンドリアが認められ、ミトコンドリアを単離すると基礎呼吸率の増加が認められた。

TGF-β/Smad3シグナルを阻害するとWATにBAT/骨格筋シグネチャが認められる
Smad3+/+および-/-マウスに通常食または高脂肪食を負荷し、WATを単離して発現遺伝子のマイクロアレイ解析を行った。さらに、TGF-β中和抗体(1D11)を投与した高脂肪食肥満マウスのWATもマイクロアレイ解析を行った。その結果、Smad3-/-およびTGF-β中和抗体投与マウスのWATで、BAT・ミトコンドリア機能(PGC-1α、Ucp1、chitochrome c oxidaseなど)・骨格筋(myosin, troponinなど)に特徴的な遺伝子発現が見られた。3T3-L1細胞におけるChIPアッセイにより、TGF-βはSmad3依存的にPGC-1αプロモーターを抑制している(これがPRDM16による転写低下につながる)ことが示された。したがって、WATにおいてSmad3シグナルの低下は、PGC-1-PRDM16 axisの活性化(BATに特徴的な遺伝子発現の増加)を来たし、WATをBrown-like WATに変換させる作用があることが分かった。

TGF-β1値は脂肪蓄積と正の相関を示し、体外からのTGF-β1の投与はBAT/ミトコンドリア遺伝子発現を抑制する
184名の非糖尿病のヒトにおいて、TGF-β1値はBMIと正の相関を示し、VO2maxと負の相関を示した。さらにob/obマウス、高脂肪食負荷マウスにおいてもTGF-β1値と体重、脂肪蓄積に関連が見られた。正常マウスにTGF-β1を腹腔内注射すると、WAT特異的転写産物(leptin, aP2, resistin)が増加し、BAT/ミトコンドリア特異的転写産物(PGC-1α、UCP1、PRDM16など)が低下した。

抗TGF-β抗体はob/obおよび高脂肪食負荷マウスの肥満・糖尿病を起こりにくくする
TGF-β/Smad3シグナルの抑制が耐糖能・体重増加に対して好影響を与えることが示されたため、これが治療に役立つかを検討すべく、抗TGF-β中和抗体をob/obおよび高脂肪食負荷マウスに投与した(この抗体はヒトにおいてFresolimumabとして、肺線維症などの臨床試験に用いられている)。抗TGF-β抗体投与によりSmad3のリン酸化が阻害され、体重増加の低下、耐糖能・インスリン抵抗性の改善、脂肪肝の改善、WATでのBAT/ミトコンドリアマーカーの発現増加が認められた。
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by md345797 | 2011-07-22 17:17 | エネルギー代謝

ヒト レジスチン―マウスからヒトへ

Human resistin: found in translation from mouse to man.

Schwartz DR, Lazar MA.

Trends Endocrinol Metab. 2011 Jul;22(7):259-65.

【総説内容】
レジスチンは、マウス脂肪細胞においてチアゾリジン系薬剤によって減少する遺伝子産物をスクリーニングすることによって発見された。げっ歯類モデルでは、肥満ではレジスチンが高値であり、レジスチンを投与または過剰発現させるとインスリン抵抗性になることから、レジスチンはインスリン抵抗性のメディエーターであることが確立している。

レジスチンはヒトでも検出されるが、げっ歯類と違って主にマクロファージに発現し、脂肪組織においても炎症性の非脂肪細胞に存在する。ヒトの単核球では、炎症性刺激によってレジスチンの発現および分泌が増加する。

疫学研究では、アメリカの3つのケース・コントロール研究で、血清レジスチンが高値であると2型糖尿病発症のリスクが高いことが示されている。しかし、レジスチンが糖尿病の原因なのか、それとも代謝障害の結果なのか(an active player or merely a responder in metabolic dysfunction)は不明である。

肥満で非糖尿病のヒトでは、血清レジスチン値と肥満度の間に直接の関連が認められる。また、食事、運動によって体重を減少させるとレジスチン値も減少する。極度の肥満患者がbariatric surgeryを受けると、レジスチン値は低下する。このようにヒトのレジスチンは脂肪細胞由来ではないにも関わらず、肥満と脂肪蓄積(adiposity)との密接なつながりがある。

ヒトにおいてレジスチンは、炎症性疾患(関節リウマチや炎症性腸疾患にも)に伴って増加し、炎症性マーカー(CRP、TNF-α、IL-6)に相関する。

レジスチンは血管内皮細胞や心筋細胞内のシグナル伝達にも影響し、血清レジスチン値はヒトの冠動脈疾患、脳卒中、腎機能障害とも相関する。また、虚血とは独立して、レジスチンは心筋肥大・収縮力低下ももたらし、心不全にも影響する。

当初マウスの脂肪細胞で発見されたレジスチンは、現在ヒトにおいて主にマクロファージ由来の、炎症と代謝疾患をつなぐ重要な因子と考えられている。
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by md345797 | 2011-07-18 14:16 | インスリン抵抗性

Mir193b-365は褐色脂肪分化に必要である

Mir193b-365 is essential for brown fat differentiation.

Sun L, Xie H, Mori MA, Alexander R, Yuan B, Hattangadi SM, Liu Q, Kahn CR, Lodish HF.

Nat Cell Biol. 2011 Jul 10. Published online.

【まとめ】
最近の研究で、褐色脂肪細胞はin vivoではMyf5陽性筋芽前駆細胞(myoblastic progenitor)から、Prdm16の作用によって分化することが示されている。この研究では、褐色脂肪組織に多いmiRNA(microRNA)クラスターであるMiR-193b-365が、褐色脂肪分化の重要な調節因子であることを明らかにした。miR-193b、miR-365の発現を阻害すると、Runx1t1の発現亢進により褐色脂肪分化が障害され、筋分化マーカーの発現が誘導された。Mir193b、Mir365をC2C12 myoblastに強制発現させると、筋分化プログラムが阻害され、褐色脂肪細胞に分化した。Mir193b-365は、一部はPparαを介して、Prdm16により増加した。これらの結果から、Mir193b-365は褐色脂肪への分化促進および筋分化抑制に必要な調節因子であることが明らかとなった。


【論文内容】
ヒトでは褐色脂肪組織(BAT)の量は最小限しかないと考えられていたが、近年はヒトでもかなりの量のBATがあり機能を有していることが明らかになってきた。マウスでは、BATが欠損すると過食、肥満を呈する。褐色脂肪の特徴であるUcp1蛋白を白色脂肪細胞に過剰発現させると、エネルギー亢進が起こり肥満が防止できる。最近、褐色脂肪細胞はMyf5陽性の筋芽細胞から分化することが明らかになっている。またPrdm16は、褐色脂肪と筋肉への分化のスイッチとなる重要な調節因子で、その過剰発現により褐色脂肪分化を、その欠損により筋分化を誘導することができる。今回その分化決定にMir193b-365クラスターが重要であることが分かった。

マウスWAT、BAT、骨格筋のサンプルからmiRNAアレイを用いて、褐色脂肪分化に特徴的なmiRNAを検索したところ、Mir193b-365が同定された。miR-193b-365の発現を阻害すると、間質血管分画(SVF)細胞からの褐色脂肪分化(脂肪蓄積、Ucp1発現など)が減少した。miR-193bのターゲット検索にてRunx1T1(褐色脂肪細胞分化を阻害)が同定された。miR-193bをレトロウイルスベクターを用いてC2C12筋芽細胞(myoblast)またはヒトprimary myoblastに過剰発現させると、myotubeヘの分化が抑制され、褐色脂肪細胞への分化が促進された。

Prdm16はBATへの分化のmaster regulatorと考えられている。Prdm16をレトロウイルスを用いてC2C12 myoblastに過剰発現させるとmiR-193b とmiR-365は増加し、shRNAを用いて欠損させるとmiR-193b とmiR-365は減少した。Mir193b-365のプロモーター領域のシークエンス解析により、Mir193bの上流にPparα結合部位が存在することが分かった。Pparαは、褐色脂肪選択的な転写因子で、BATにおける筋肉関連蛋白の発現抑制に働いている。Prdm16は、少なくとも一部Pparαを介してMir193b-365増加に働いていることが示された。

【結論】
褐色脂肪組織に特有のmiRNAを検索することにより、褐色脂肪への分化制御の新たな一面が明らかになった。Mir193b-365の動物モデルにおける役割が明らかになれば、褐色脂肪分化機構の更なる解明が進み、肥満や代謝疾患の治療に役立つと思われる。
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by md345797 | 2011-07-13 18:50 | エネルギー代謝

2型糖尿病の新しい治療

Management of type 2 diabetes: new and future developments in treatment.

Tahrani AA, Bailey CJ, Del Prato S, Barnett AH.

Lancet. 2011 July 9 378, 182-197.

【総説内容】

β細胞機能不全に対する薬剤

新しいインクレチン関連治療薬
・GLP-1は血糖依存性にインスリン分泌を増強、グルカゴン分泌を抑制し、摂食を抑制し、β細胞量を増加させる(これはヒト2型糖尿病ではまだ示されていないが)などの作用がある。現在GLP-1受容体アゴニスト(exenatide, liraglutide)と選択的DPP-4阻害薬(sitagliptin, vildagliptin, saxagliptin)が用いられている。
・新しいGLP-1受容体アゴニストとして、短時間作用型(lixisenatide)や徐放型(週1回投与でよいonce-weekly exenatide、taspoglutide、albiglutideなど)が、DPP-4阻害薬として、linagliptin(注:2011年5月に米国で承認)、alogliptinが臨床試験中である。Linagliptinは肝で代謝されるため、腎機能低下患者でも使用できる。

非インクレチン関連β細胞刺激薬
・グルコキナーゼ活性化薬(piragliatinなど)は、β細胞にてグルコースのリン酸化を促進することにより、インスリン分泌を増強する。この薬剤は糖尿病患者での血糖を低下させるとの報告があるが、低血糖のリスクも増加させる(下記の肝での作用参照)。
・β細胞における脂肪酸の受容体であるG-protein-coupled receptor(特に40、119、120)を刺激するアゴニストは、β細胞のcAMPを増加させてインスリン分泌を増強する。

α細胞機能不全に対する薬剤
・2型糖尿病では空腹時グルカゴン濃度が高く、食後のグルカゴン分泌の抑制が障害されている。インクレチン治療により、グルカゴン分泌抑制がブドウ糖依存性に(高血糖のときのみ)促進される。グルカゴン受容体アンタゴニストが現在試験中である。
・さらに、GLP-1受容体アゴニストとグルカゴンの一部(グルカゴン受容体を活性化させない)のhybrid peptideであるDAPD(dual-acting peptide for diabetes)や、GLP-1受容体とグルカゴン受容体のアゴニストであるoxyntomodulin(L細胞からGLP-1とともに分泌される)が研究段階にある。

インスリン作用促進薬
インスリン受容体βサブユニットのチロシンキナーゼを活性化する、非ペプチド代謝産物(demethylasterriquinone:L-783281やTLK16998)は、インスリンとその受容体の結合に影響を与えず、インスリンの存在下でのみβサブユニットの活性化を増強する。

非インスリン依存性経路に対する薬剤
SGLT2阻害薬
腎のグルコース再吸収による糖新生は、糖産生全体の20-25%を占め、その多くが腎のsodium-glucose-cotransporter-2 (SGLT2)による糖再吸収による。2型糖尿病では腎による糖産生が増加しており、SGLT2の阻害薬(dapagliflozin, canagliflozinほか)が開発中である。Dapagliflozinは薬剤未使用(drug-naïve)またはインスリン治療中の糖尿病患者の血糖を低下させる。尿路感染のリスクも増加するが、これは標準的な治療で管理可能である。

肝に対する薬剤
グルコキナーゼの変異は、MODY (heterozygous)およびpermanent neonatal diabetes (homozygous)の原因となり、過剰な活性化は低血糖の原因となる。グルコキナーゼ活性化剤はインスリン分泌促進だけでなく、肝のグルコース貯蔵も増加させ、耐糖能を改善する。Glucose-6-phosphataseは、糖新生の最後のステップとなる酵素であり、この抑制は肝糖産生を低下させる。メトホルミンやインスリンはこの酵素を抑制するため、G6Pase阻害薬も検討されている。これらの薬剤では低血糖に注意が必要である。他にfructose-1,6-bisphosphataseやglycogen phosphorylaseが治療のターゲットと考えられている。

メタボリックシンドロームに対する薬剤
・GIPはGLP-1同様、グルコース依存性のインスリン分泌を増強するが、GLP-1と違ってグルカゴン分泌を抑制せず、脂肪蓄積を促進し、摂食に対する影響はほとんどない。そこで、GLP-1アンタゴニストが脂肪減少、糖代謝の促進につながる可能性があり、経口の薬物も報告されている。

・11β-hydroxysteroid-dehydrogenese-1は、活性の低いcortisoneを活性の高いcortisolに変換する酵素であり、この酵素の欠損マウスではインスリン抵抗性が改善されることが知られている。この酵素の阻害剤INCB13739は、2型糖尿病における高血糖・脂質異常を改善する。

・PPARγ活性化薬は糖代謝を改善し、PPARα活性化薬(fibrates)は脂質異常を改善する(TGの低下とHDL-Cの増加)が、dual PPAR-α/PPAR-γ agonist (glitazars)は両者を改善することが分かっている。Aleglitazarは、副作用(浮腫・体重増加)が少なく、高血糖・脂質異常を改善する。心血管疾患の頻度を低下させるかどうかは第Ⅲ相臨床試験中(ALECARDIO)である。

作用機序が不明な薬剤
ドーパミンD2受容体アゴニスト
Bromochriptineは、インスリン分泌を増加させることなく、おそらくは視床下部ニューロンの活性を変化させて、迷走神経経由で肝の糖産生を低下させることにより、血糖を低下させることが示されており、米国では2010年に2型糖尿病治療薬として認可された。

胆汁酸抑制薬(Bile acid sequestrants)
作用機序は不明だが、2009年に認可されたcolesevelamは経口血糖降下薬またはインスリンとの併用で低血糖のリスクを上げることなく血糖を低下させることが示されている。

代謝手術(Metabolic surgery)
代謝手術には、胃形成術、腹腔鏡下調節性胃バンディング(laparoscopic adjustable gastric banding)、袖状胃切除術(sleeve gastrerctomy)、胃バイパス術(gastric bypass)、胆膵路転換手術(biliopancreatic diversion)などのさまざまな種類がある。胃バイパス術と胆膵路転換手術後には2型糖尿病が改善するが、この効果は体重減少とは独立したものであり、メカニズムとして消化管ホルモンの変化(食後GLP-1やPYYの増加、ghrelin基礎分泌の低下)が重要と考えられている。代謝手術を行える施設は、米国ではこの8年で10倍に増加している。この方法は肥満・2型糖尿病治療の重要な選択枝になりつつあるが、さらなるエビデンスの蓄積が求められていもいる。
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by md345797 | 2011-07-12 18:32 | 症例検討/臨床総説

ヒトとマウスでの、podocyte機能と糖尿病腎症におけるmTORの役割

Role of mTOR in podocyte function and diabetic nephropathy in humans and mice.

Gödel M, Hartleben B, Herbach N, Liu S, Zschiedrich S, Lu S, Debreczeni-Mór A, Lindenmeyer MT, Rastaldi MP, Hartleben G, Wiech T, Fornoni A, Nelson RG, Kretzler M, Wanke R, Pavenstädt H, Kerjaschki D, Cohen CD, Hall MN, Rüegg MA, Inoki K, Walz G, Huber TB.

J Clin Invest. 2011 Jun 1;121(6):2197-209.

【まとめ】
慢性糸球体疾患は、腎不全や心血管疾患死亡に関連し、重要な健康上の問題になっている。この研究では、糸球体足細胞(podocyte)機能の維持のためには、mTOR活性がコントロールされていることが重要で、mTOR調節障害では糸球体病変が認められることを示す。マウスpodocyteでmTORC1を遺伝的に欠損させると、蛋白尿と進行性糸球体硬化をきたす。さらに、マウスpodocyteからmTORC1とmTORC2の両者を同時に欠損させると糸球体病変が悪化したことから、両方のmTOR complexがpodocyteのホメオスタシスを維持するのに重要であることが分かった。

それに対して、ヒトの糖尿病腎症はmTOR活性亢進を伴っており、早期の糸球体過形成、過剰濾過といった特徴を示す。遺伝的にpodocyteのmTORC1のコピー数を減少させることによって、mTORC1シグナル伝達を抑制したマウスでは、糸球体硬化症が抑制され、糖尿病腎症における糸球体疾患の進行が改善した。これらの結果から、podocyteホメオスタシスのためにはmTOR活性のバランスが取れている必要があり、mTOR阻害はpodocyteを保護し、進行性の糖尿病腎症を予防することが示唆される。
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by md345797 | 2011-07-09 23:30 | 糖尿病合併症

PodocyteのmTORC1活性化は、マウスにおいて糖尿病腎症発症に重要である

mTORC1 activation in podocytes is a critical step in the development of diabetic nephropathy in mice.

Inoki K, Mori H, Wang J, Suzuki T, Hong S, Yoshida S, Blattner SM, Ikenoue T, Rüegg MA, Hall MN, Kwiatkowski DJ, Rastaldi MP, Huber TB, Kretzler M, Holzman LB, Wiggins RC, Guan KL.

J Clin Invest. 2011 Jun 1;121(6):2181-96.

【まとめ】
糖尿病腎症(Diabetic nephropathy:DN) ではpodocyte(足細胞・糸球体上皮細胞)の機能不全が蛋白尿・糸球体硬化の発症に重要と考えられているが、そのメカニズムは明らかではない。この研究では、糖尿病マウスにおいてpodocyteのmTORC1活性が増加していることを明らかにした。PodocyteでmTORC1活性化を起こす、podocyte特異的Tsc欠損マウス (PcKOTsc1:Tsc1はmTORC1の上流のnegative regulator)を作製したところ、podocyteの消失、糸球体基底膜の肥厚、メサンギウム細胞の増殖、蛋白尿など、DNで見られる形質が認められた。mTORC1の異常な活性化はスリット膜蛋白(slit diaphragm protein)の局在異常を起こし、podocyteにおけるERストレス亢進を伴う上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition)様の形質転換を引き起こす。逆に、PcKOTsc1マウスで化学シャペロンによってERストレスを軽減すると、podocyteの形質転換、podocyteの消失が抑制される。最後に、糖尿病マウスにおいてpodocyte特異的にmTORC1を欠損させると、DNの発症が抑制される。これらの結果から、podocyteにおけるmTORC1の活性化はDN発症に重要であり、podocyteのmTORC1活性抑制がDN予防の治療につながると考えられる。
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by md345797 | 2011-07-08 08:00 | 糖尿病合併症

Decorinのアイソフォームは、脂肪前駆細胞の表面にあるレジスチン受容体である

An Isoform of Decorin Is a Resistin Receptor on the Surface of Adipose Progenitor Cells.

Daquinag AC, Zhang Y, Amaya-Manzanares F, Simmons PJ, Kolonin MG.

Cell Stem Cell. 2011 Jun 15. published online.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21683670

【まとめ】
脂肪間質細胞(ASCs: adipocyte stromal cells)は、白色脂肪組織(WAT)における間葉系前駆細胞(mesenchymal progenitors)の働きがある。In vivoでマウスASCsに結合するペプチドを検索するため、phage display technologyとFACS(fluorescence-activated cell sorting)を統合した方法によって、ペプチドライブラリーをスクリーニングした。その結果、CSWKYWFGECというペプチドが特異的にASCsに結合することが分かり、その細胞表面受容体として、decorin(DCN)のいままで報告されていなかった切断産物(cleavage product)が同定された(これは、DCNのグリカン化される部分が欠損しているのでΔDCNと名付けた)。さらにΔDCNの結合蛋白のスクリーニングにより、ΔDCNには、今まで受容体が知られていなかったレジスチンが結合することが明らかになった。ΔDCNを3T3-L1細胞に発現させると、レジスチン依存的に、細胞の増殖・移動が促進されたが、脂肪蓄積は抑制された。これらのことから、ΔDCNは脂肪前駆細胞においてレジスチンの受容体として機能しており、WATの増加を調節していると考えられる。

【論文内容】
ランダムペプチドライブラリーをスクリーニングすることによって、ASCsに結合するペプチドWAT7(CSWKYWFGEC)を同定した。マウスにこのペプチドを含むphageを静注し、このペプチドがWATの間質・血管構造に in vivoで結合(homing)することを確認した。

マウスWATの間質血管分画(SVF)から膜蛋白を抽出し、WAT7ペプチドに結合する約40kDaの蛋白を同定した。Mass spectrometric analysisにより、この蛋白はdecorin (DCN:別名proteoglycan Ⅱ)のアイソフォームであることが分かり、グリカン化される部分が切断(cleavage)され欠損しているため、ΔDCNと名付けた。これはDCNの今まで知られていなかった切断産物である。ΔDCNがWAT7ペプチドの受容体として機能するには、ASCsの膜表面に発現している必要があるが、マウスSVFの膜表面蛋白からΔDCNを単離することができ、ΔDCNが細胞膜表面蛋白であることが示された。

さらに、affinity chromatographyを用いてWATからΔDCNのリガンドを単離したところ、リガンドはレジスチンであった。次に3T3-L1細胞にlentivirusを用いてΔDCNまたは全長DCNを発現させると、ΔDCNを発現させた細胞では細胞増殖・移動が増加した。3T3-L1細胞の分化を誘導したところ、脂肪分化(大きい脂肪滴の形成)がΔDCNを発現させた細胞では抑制された。以上の実験では培養液中のウシ血清のレジスチンが作用しており、ΔDCNのみの作用を増強していると考えられる。ここにマウスレジスチンを加えると、さらにΔDCNの作用が増強され、脂肪分化がより抑制された。

【結論】
レジスチンとその受容体(ΔDCN)は、脂肪組織の間葉系前駆細胞のマーカーとなることが明らかになった。これにより、レジスチンが脂肪組織の増加を調節する機構が解明されると思われる。
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by md345797 | 2011-07-01 20:46 | シグナル伝達機構