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IL-6は、L細胞およびα細胞からのGLP-1分泌を増加させ、インスリン分泌を促進する

Interleukin-6 enhances insulin secretion by increasing glucagon-like peptide-1 secretion from L cells and alpha cells.

Ellingsgaard H, Hauselmann I, Schuler B, Habib AM, Baggio LL, Meier DT, Eppler E, Bouzakri K, Wueest S, Muller YD, Hansen AM, Reinecke M, Konrad D, Gassmann M, Reimann F, Halban PA, Gromada J, Drucker DJ, Gribble FM, Ehses JA, Donath MY.

Nat Med. 2011 Oct 30;17(11):1481-9.

【まとめ】
運動、肥満、2型糖尿病では、血中IL-6の上昇が起こる。本研究は、IL-6の投与または運動によるIL-6濃度の上昇が、小腸L細胞および膵α細胞からのGLP-1の分泌を刺激し、インスリン分泌と高血糖を改善することを明らかにした。IL-6はプログルカゴンとprohormone convertase(PC)1/3の発現を増加させることにより、α細胞からのGLP-1の産生を増加させる。2型糖尿病のモデルにおいては、IL-6は好影響をもたらし、IL-6の中和は高血糖とGLP-1の低下をきたす。このこれまで知られていなかった内分泌ループにおいて、IL-6はインスリン分泌に重要な役割を果たし、糖尿病治療に役立つ可能性がある。

【論文内容】
脂肪組織から分泌されるサイトカインであるIL-6は、インスリン抵抗性の原因となり、糖代謝を悪化させると考えられている。一方で、運動で筋収縮が起こるとIL-6が増加し、このことがインスリン抵抗性を改善することも知られている。このグループは以前、IL-6の主要なターゲットが膵α細胞であることを見出した。IL-6によってα細胞のアポトーシスが阻害され、高脂肪食負荷時の増殖が促進される。全身のIL-6欠損マウスではα細胞増殖が起こらないが、一方でインスリ分泌が障害され、高血糖をきたした。このように、高脂肪食に伴うβ細胞の代償が起きるにはα細胞の増殖が必要であることが示されている。しかし、このメカニズムは不明であった。

また、GLP-1は小腸L細胞で、前駆体であるプログルカゴンからprohormone convertase(PC)1/3によって切断されて分泌される。α細胞では、プログルカゴンは、PC2によって切断されグルカゴンを生成するが、糖尿病動物ではα細胞でもPC1/3の発現が増加して、GLP-1が産生されることが報告されている。そこで、肥満や運動によるIL-6の増加がβ細胞のインスリン分泌を促進する機構として、IL-6がL細胞およびα細胞からGLP-1を産生し、それによりβ細胞のインスリン分泌が促進される可能性を考えた。

運動はIL-6の増加を介して、GLP-1を増加させる
トレッドミル運動によって血中IL-6とGLP-1が増加した。IL-6欠損マウスや抗IL-6抗体投与マウスでは、このGLP-1増加が起きないことを確認した。すなわち、運動による全身のIL-6の増加によってGLP-1分泌を促進される。

IL-6はGLP-1を介してインスリン分泌を増加させる
マウスにIL-6を注入した場合、しないマウスに比べると、ipGTTを行っても血糖変動は変化ないが、OGTTを行うとインクレチン効果の増強により血糖低下が認められた。GLP-1受容体欠損マウスでは、IL-6による糖代謝改善効果は見られず、IL-6のインスリン分泌亢進作用にはGLP-1が必要であることが示された。また、IL-6濃度を間欠的に増加させると(1日2回投与)、GLP-1が増加しβ細胞機能・糖代謝が改善した。

IL-6は腸管および膵のGLP-1を増加させる
次にIL-6注入により組織のプログルカゴン(Gcg)mRNAとGLP-1量が増加するかを検討した。1日2回IL-6を投与したマウスでは、L細胞の多い回腸および大腸でのGcg mRNA発現とGLP-1量が増加した。さらに膵のGLP-1、グルカゴン、インスリン量もIL-6投与により増加した。回腸、大腸では、PC1/3の発現が増加していた(PC2は変化なし)。DPP4の発現量や活性は変化なかったので、IL-6はGLP-1の産生を促進すると言える(GLP-1の消失を減らすのではない)。

IL-6はL細胞でのGLP-1合成と分泌を増加させる
マウスのL細胞株(GLUTag細胞)に対するIL-6の直接の作用を検討した。GLUTag細胞にはIL-6受容体が発現しており、IL-6刺激によりSTAT3のリン酸化が亢進した。また、IL-6刺激により用量依存的にGLP-1発現とGLP-1のexocytosisが増加した。さらに、慢性的なIL-6刺激ではL細胞のグルコース応答性GLP-1分泌が増加した。

IL-6はヒト膵島α細胞からのGLP-1分泌を増加させる
ヒトの膵島にIL-6を添加し4日間培養した。その結果、IL-6刺激によるGLP-1分泌増加が認められ、その増加はIL-6受容体アンタゴニストであるsuper antagonist 7(Sant7)によって抑制された。ヒト膵島をグルコースを含むmediumで培養したconditioned mediumで、膵島を培養すると、インスリン分泌が促進され、これはGLP‐1アンタゴニスト(exendin(9-39))によって抑制された。したがって、ヒト膵島から分泌されたGLP-1は活性がある(bioactiveである)ことがin vitroで示された。次にFACSで濃縮したヒトα細胞をIL-6と培養したところ、GLP‐1発現が増加した。また、IL-6刺激により、プログルカゴンのプロセッシングがグルカゴンからGLP-1にシフトすることが確認され、これはPC1/3発現の増加によることが示された。

糖尿病モデル動物におけるIL-6の急性上昇の効果
肥満・糖尿病モデル動物では慢性的にIL-6が増加しているが、そこに急性にIL-6を増加させるとそれに反応してβ細胞機能が改善する余地があるかを検討した。高脂肪食負荷マウス、ob/obdb/dbマウスにボーラスでIL-6を投与するとインスリン分泌が上昇し、血糖が低下した。β細胞が破壊されたSTZ投与マウスではこのようなインスリン分泌の増強は起こらなかった。

IL-6は肥満に反応してα細胞をリプログラムする
このグループでは以前、高脂肪食を負荷したマウスではIL-6依存的にα細胞量が増加することを示しているが、この場合にグルカゴンは増加せず、GLP-1が増加(GLP-1:グルカゴン発現比が増加)していた。また、α細胞におけるPC1/3の発現の増加が免疫染色で示された。これらのことはIL-6欠損マウスでは起こらなかった。すなわち、IL-6は高脂肪食に伴う肥満に反応して濃度が増加し、α細胞のPC1/3発現が増加してグルカゴン産生からGLP‐1産生にシフトすると考えられる。

IL-6を抗体で阻害することによってdb/dbマウスの高血糖が悪化する
次に、db/dbマウスで増加した内因性IL-6を中和抗体の投与で抑制したところ、耐糖能の悪化が見られた。IL-6の抑制は、インスリン分泌には影響はないが、グルカゴン濃度が増加、膵GLP-1が低下していた。

【結論】
GLP-1はL細胞で産生され、血流に乗ってβ細胞に作用すると考えられている。本研究では、IL-6が、α細胞でプログルカゴン増加・PC1/3発現増加を介して、GLP-1産生を増加させることを示した。このGLP-1産生が膵島においてparacrine様に作用してβ細胞からのインスリン分泌を増加させると考えられた。
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by md345797 | 2011-11-29 21:19 | インスリン分泌

Alternatively activated macrophagesは適応熱産生を維持するためのカテコラミンを産生する

Alternatively activated macrophages produce catecholamines to sustain adaptive thermogenesis.

Nguyen KD, Qiu Y, Cui X, Goh YP, Mwangi J, David T, Mukundan L, Brombacher F, Locksley RM, Chawla A.

Nature. 480,104–108, Published online, Nov 20, 2011.

【まとめ】
すべての恒温動物は、寒冷環境の中でも細胞・生理機能を継続するため、体温維持のための熱産生を行っている。視床下部が低温を感知すると、交感神経活性化を介して、褐色および白色脂肪組織(BATおよびWAT)にノルアドレナリンが放出される。これがβ3アドレナリン受容体を活性化し、ノルアドレナリンはWATで脂肪分解を起こすと同時に、BATで熱産生遺伝子(PPARγ-coactivator1a(Ppargc1a)、Ucp1、Acsl1)の活性化を起こす。

この研究では、マウスにおいて、IL-4刺激によるalternativeなマクロファージの活性化がこの適応熱産生(adaptive thermogenesis)に必要であるという予期しなかった結果を報告している。低温に曝露されると、脂肪組織マクロファージのalternativeな活性化が急速に促進されて、カテコラミンが分泌され、これがWATでの脂肪分解、BATでの熱産生遺伝子発現を惹き起こす。マクロファージのalternativeな活性化がないと寒冷に対する代謝適応が障害されるが、IL-4の投与によって、熱産生遺伝子発現、脂肪酸の遊離、エネルギー消費などがマクロファージを介して増加する。今回の研究で、寒冷に対する反応という哺乳類の重要なストレス反応が、alternatively activated macrophageによって起こることが明らかになった。

【論文内容】

マウスを30℃で飼育すると適応熱産生は必要ないが、それ以下の冷環境で飼育すると、体温維持のためBATによる熱産生が起きる。そこで、30℃と22℃(通常飼育温度)および4℃にマウスをおいた時のBATとWATのマクロファージの状態を比較した。低温に曝露した場合のBATとWATでalternative activationのmRNA、例えば Arg1(Arginase 1)、Mrc1(CD206)、Clec10a(CD301)の発現が増加した。それに対し、classical activationマーカーの発現の変化はなかった。フローサイトメトリーでも、同様の結果が得られた。ここで、IL-4/IL-13シグナルを欠損させたIl4-/-/Il13-/-およびStat6-/-マウスでは、寒冷刺激によるマクロファージのalternative activation(Arg1、CD206、CD301の発現)が起きない。

WTマウスに比べ、Il4-/-/Il13-/-およびStat6-/-マウスは、4℃においたときに体温の急激な低下をきたす。WTマウスでは、BATにおいて熱産生遺伝子(Ppargc1a、Ucp1)およびβ酸化遺伝子(Acox1、Acsl1)の発現増加が起きるが、Il4-/-/Il13-/-およびStat6-/-マウスではこの発現増加が減少している。IL-4/IL-13シグナルを骨髄細胞で欠損させたマウス(Il4raLoxP/LoxP LysmCre mice=マクロファージのみでIL-4シグナルが欠損しているマウス)を作製したところ、22℃と4℃でalternative activationが障害されていて、寒冷刺激による熱産生遺伝子(Ucp1、Acox1、 Acsl1、Ppargc1a)の発現が障害されていた。第2のモデルとして、clodronate(ビスフォスフォネートの一種)を含むリポソームを用いて、組織からマクロファージを薬理学的に取り除いたマウスモデルを作製した。このマウスでも、寒冷刺激による熱産生の障害が認められた。

寒冷刺激により、WATにおけるβアドレナリンシグナルが遊離脂肪酸の放出を促進し、その脂肪酸がBATで非共役呼吸(uncoupled respiration)の燃料になる。寒冷刺激では、WATマクロファージのalternative activationも障害されるため、遊離脂肪酸の放出も障害されているかを検討した。実際Il4-/-/Il13-/-マウスおよびStat6-/-マウスでは血中遊離脂肪酸が75%減少していた(Il4raLoxP/LoxPLysmCreマウスでも60%減少していた)。それに伴い、これらのマウスではBAT組織像において脂肪蓄積が減少していた。

次にin vitroで、分化した3T3-L1細胞を用いて、alternatively activated macrophageが脂肪分解を行う際に何の因子が放出されるのかを検討した。Alternatively activated macrophageから採取したconditioned mediumを脂肪細胞に添加すると、perilipinおよびHSLのリン酸化が起きる。これに伴いトリグリセリドの脂肪分解が増加(グリセロール放出の増加)が起こる。これらはStat6-/-マクロファージを用いた場合には起こらなかった。したがって、alternatively activated macrophageは、WATから動員した遊離脂肪酸をBATでの熱産生に用いる調節をしていると考えられる。

では上記の過程で、WAT/BATのマクロファージは、カテコラミン放出源として重要なのか?カテコラミン合成の律速酵素(tyrosine hydroxylase, Th)はマクロファージをIL-4刺激すると発現が誘導されるが、Stat6-/-マウスではIL-4によるThの誘導が起きなかった。さらに、脂肪組織マクロファージにおけるカテコラミン合成について検討した。低温刺激によりThの発現は増加し、IL-4/IL-13シグナル欠損マウスではThの発現とノルアドレナリン量が低下していた。

では、β3アドレナリン受容体アゴニスト(CL-316243)がIl4-/-/Il13-/-マウスの熱産生障害をresucueできるか検討した。このマウスにCL-316243を注入すると、体幹温度が上昇し、熱産生遺伝子発現が増加した。また、BATの脂肪滴の量も正常化した。

さらに、IL-4の急性投与により、マクロファージ依存性に酸素消費が上昇するかを検討した。コントロールマウスではIL-4は急速に酸素消費が増加したのに対し、Il4raLoxP/LoxP LysmCreマウスでは増加しなかった。したがって、BAT/WATにおけるalternatively activated macrophageが適応熱産生を調節していることが示された。

【結論】
Alternatively activated macrophagesはin vivoで熱産生を調節している。IL-4はマクロファージ依存性に(マクロファージを刺激することによって)、エネルギー消費を増加させる。さらに、alternatively activated macrophagesによるノルアドレナリン分泌が寒冷ストレスに対する生体反応を調節していることも明らかになった。交感神経に加えて、造血システム(その中でもalternatively activated macrophages)は第2の(非ふるえ)熱産生の調節回路を形成していると考えられる。
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by md345797 | 2011-11-25 07:33 | エネルギー代謝

脂肪細胞におけるNCoR欠損は、PPARγのリン酸化を低下させて活性を増加し、インスリン感受性を亢進させる

Adipocyte NCoR Knockout Decreases PPARγ Phosphorylation and Enhances PPARγ Activity and Insulin Sensitivity.

Li P, Fan W, Xu J, Lu M, Yamamoto H, Auwerx J, Sears DD, Talukdar S, Oh D, Chen A, Bandyopadhyay G, Scadeng M, Ofrecio JM, Nalbandian S, Olefsky JM.

Cell. 2011 Nov 11;147(4):815-26.

【まとめ】
本研究では、脂肪細胞特異的なNuclear Receptor Corepressor(NCoR)ノックアウトマウスを作製、糖代謝におけるNCoRの機能について検討した。このマウスは、肥満を呈したにもかかわらず耐糖能が改善し、肝臓・筋肉・脂肪組織においてインスリン感受性が亢進していた。また、脂肪組織のマクロファージ浸潤や炎症も減少していた。このマウスでは脂肪組織において、CDK5を介するPPARγ ser-273リン酸化が低下して恒常活性型の状態のPPARγとなっており、PPARγによる遺伝子発現が増加していた。このことから、NCoRはCDK5がPPARγに結合し、リン酸化するためのアダプター蛋白になっていることが示唆された。すなわち、脂肪組織におけるNCoRの役割は、PPARγのser-273をリン酸化することによって、PPARγの転写を抑制することである。NCoRの欠損は脂肪分化、炎症の抑制、全身のインスリン感受性の亢進などチアゾリジン系薬剤の効果と同じ効果を示す。

【論文内容】
脂肪細胞でのNCoR欠損

脂肪細胞特異的なNCoR欠損マウス(AKO)を作製した(全身の欠損マウスは胚性致死)。このマウスに高脂肪食(HFD)を負荷すると、野生型(WT)に比べ摂食が多く、より肥満になった。このマウスの脂肪組織では、PPARγの反応性遺伝子(FAS, ACC, SREBP1c, SCD1/2)の発現が増加しており、PPARγが活性化されている可能性が考えられた。このHFD負荷AKOマウスでは、インスリン感受性・耐糖能が亢進しており、高インスリン正常血糖クランプによってもグルコース注入率、糖取り込み能、肝の糖抑制が亢進していた。さらに、インスリンによるFFAの抑制も2倍程度に亢進していた。したがって、脂肪細胞でのNCoR欠損は、全身および筋肉・肝臓・脂肪でのインスリン感受性を亢進させることが明らかになった。

脂肪細胞NCoR欠損マウスの脂肪細胞機能
AKOマウスの脂肪細胞は、WTに比較して小型であり、AKOでは脂肪細胞の数が増加していた。HFD負荷AKOマウスの脂肪細胞ではWTに比べPPARγ発現量が増加し、血中のレプチン・レジスチン・PAI-1が低下、アディポネクチンが増加していた。

脂肪組織のマクロファージ浸潤と炎症
HFD負荷AKOマウスの脂肪組織では、adipose tissue macrophages (ATMs)の浸潤が少なく、死んだ脂肪細胞を囲むcrown-like structures (CLS)の形成も少なかった。ATMs(F4/80+, CD11b+)は少なくとも2つのサブグループ(CD11c+のM1-likeマクロファージとCD11c-のM2-likeマクロファージ)からなる。M1の方が肥満で多く浸潤し、炎症性サイトカインを産生する。AKOマウスでは、炎症性マーカー(TNFα、IFNγ、IL-1β、iNOS、MCP-1など)の発現が少なく、M2で多く発現する非炎症性マーカー(arginase, Mgl2)の発現が多かった。AKO primary adipocyteからのconditioned mediumは、WTに比べてマクロファージの化学走行が少なかった。

脂肪細胞NCoR欠損マウスはPPARγ刺激に対する反応性が低い
HFD負荷したWTとAKOマウスにrosiglitazoneを投与し、高インスリン正常血糖クランプを行った。WTマウスではrosiによって筋肉・肝臓・脂肪においてインスリン抵抗性が改善したが、AKOマウスでは、もともとインスリン感受性が高く、肝でのインスリン抵抗性が改善したのみであった。AKOマウスでは、NCoR欠損によってPPARγの標的遺伝子の発現が脱抑制されているためと考えられる。AKOマウスの脂肪組織では、PPARγの発現量は増加している一方で、ser273のリン酸化が低下している(これはCDK5の活性低下によるものではなかった)。Rosiによってser273のリン酸化が減少するが、AKOではもともとこのリン酸化が低下している。WTマウスの脂肪組織では、TNFαによってCDK5が活性化されPPARγのリン酸化が増加するが、AKOマウスではPPARγリン酸化の増加は見られない。通常、PPARγとNCoRは直接結合し、これによってPPARγのCDK5への結合が増加するが、rosiによってその結合は減少すると考えられる。

遺伝子発現
WTとAKOマウスの白色脂肪細胞の遺伝子発現を検討した。AKOはWTに比べてPPARγシグナル伝達系の遺伝子発現が亢進していた。また、PPARγの活性化によって抑制されるRGS2の発現は低下していた。

【結論】
脂肪細胞特異的にNCoRを欠損させると、PPARγの転写が活性化され、これはPPARγのser 273リン酸化低下によるものと考えられる。これにより、脂肪組織へのマクロファージ浸潤が少なくなり、アディポカインの分泌が変化し、インスリン感受性が亢進する。脂肪細胞における「NCoRの抑制」は2型糖尿病の治療ターゲットになりうると考えらえる。

【解説記事】
Metabolic health and nuclear-receptor sensitivity.
Hollenberg AN.

N Engl J Med. 2012 Apr 5;366(14):1345-7.

核内受容体は、リガンドが結合していないとき、核内コリプレッサー(nuclear corepressor)が結合し転写活性は抑制されている。この核内コリプレッサーには、NcoR1(nuclear-receptor corepressor 1)やNcoR2(別名SMRT:silencing mediator of retinoid and thyroid hormone receptors)がある。核内受容体は、リガンドが結合することによって、これらのコリプレッサーから分離され、転写活性が促進される。コリプレッサーには、甲状腺機能低下症(=甲状腺ホルモン受容体がNcoR1やSMRTに結合し続けていてリガンドが結合しない)のように、疾患の原因として重要なものがある。

NcoR1を脂肪組織特異的に欠損させると(上記論文)、高脂肪食負荷した場合肥満になりやすいがインスリン感受性は亢進しているという状態になる。この形質は、脂肪細胞の核内受容体PPARγに、リガンドであるthiazolidinedionesが結合した状態と同じである。したがって、NcoR1の欠損はPPARγの内因性リガンドの感受性を亢進させ、PPARγによる遺伝子発現を促進すると考えられた。また、NcoR1はPPARγの翻訳後調節として、PPARγ活性を抑制するSerリン酸化を起こしていると考えられた(NcoR1欠損によりこの抑制が解除され、PPARγの脱リン酸化・活性化が起きる)。

また、NcoR1を骨格筋特異的に欠損させると(Yamamoto et al.)、筋肉量が増加し、ミトコンドリア量も増加することにより、運動能が改善され、酸化的代謝が亢進する。この形質は、PPARδ(骨格筋に多く発現)がリガンドによって活性化された状態と同じである。

これらの結果により、核内受容体(PPARsや甲状腺ホルモン受容体)とそのコリプレッサー(NcoR1やSMRT)の結合を阻害すると、リガンド(thiazolidinedionesや甲状腺ホルモン)への感受性が亢進することが、in vivoで示された。今後、このようなコリプレッサーと核内受容体の結合を標的とした治療が期待される。
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by md345797 | 2011-11-24 07:12 | インスリン抵抗性

HGF受容体(Met)‐インスリン受容体複合体は肝の糖代謝を調節する

A hepatocyte growth factor receptor (Met)-insulin receptor hybrid governs hepatic glucose metabolism.

Fafalios A, Ma J, Tan X, Stoops J, Luo J, Defrances MC, Zarnegar R.

Nat Med. Published online Nov 13, 2001.

【まとめ】
Metは、肝細胞成長因子(HGF)に対する膜貫通型のチロシンキナーゼ細胞表面受容体であり、形態的にインスリン受容体(INSR)と関連がある。本研究では、HGF-Metシグナルが肝の糖取り込みを刺激し、肝糖産生を抑制することを示した。Metは、INSRと直接Met-INSRハイブリッド複合体を形成することによって、肝のインスリン刺激に重要な役割を果たすことが分かった。HGF-Metシステムはマウスのインスリン不応性モデル(ob/obマウス)において、インスリン反応性を回復することも示された。これらの結果により、肝のインスリン抵抗性の分子機構が新しく明らかになり、HGFが2型糖尿病の治療に役立つ可能性が示唆された。

【論文内容】
HGFはMet(HGF受容体)を発現している肝細胞にparacrine様に作用する。INSRと同様、αとβサブユニットからなる受容体チロシンキナーゼである。インスリンとHGF、INSRとMetの各細胞外ドメインに配列のホモロジーはないが、キナーゼドメインの3つのチロシンがリン酸化されてキナーゼ作用が最大になる点は共通している。これらのことから、本研究ではMetとINSRの相互作用があるかどうかを検討した。

MetはIRS1/2を結合し、チロシンリン酸化する
HGFは、ヒト肝細胞primary cultureにおいて、インスリンと同程度にブドウ糖取り込み、グリコゲン合成を起こす。このインスリンとHGFの作用は相加的である。HGF刺激5分以内にMetはIRS1、IRS2を結合する。この際HGF刺激によりINSRにもIRS2が結合し、いずれも十分にチロシンリン酸化される。IRS1/2は2つの部位のチロシンリン酸化(PI3K活性化、MAPK活性化に必要)を起こすが、これらはインスリンでもHGFでもリン酸化される。(Cell-freeシステムによりMetキナーゼとIRS1のみでもIRS1はリン酸化されるため、上記はINSRを介した間接的なリン酸化ではない。)

MetとINSRは分子複合体を形成する
Hepa1-6細胞を用いた共免疫沈降実験で、細胞をHGFおよびインスリン刺激するとMetとINSRが共沈した。次に、精製したMetキナーゼとINSRキナーゼを用いて、32P-ATPの存在下でキナーゼアッセイを行った。Metのみ、INSRのみではなく、MetをINSRに加えた場合にINSRの十分なリン酸化が起こった。次に、血清を除いたヒト肝細胞のprimary cultureにHGFのみ、インスリンのみ、または両方を加え、INSRの活性化を調べた。その結果、HGFのみでもINSRのTyr1146, 1150, 1151がリン酸化された。ここで、siRNAを用いてMetの発現を減少させると、INSRのリン酸化は減少した。すなわち、INSRの十分な活性化にはMetが必要であると言える。さらに、Hepa1-6細胞に(Metのチロシンキナーゼ活性を抑制した)DN-Metを発現させると、HGFによるINSRリン酸化とMetへのIRSsの結合が減少した。

Metは肝の糖代謝に関与している
アルブミンプロモーター下(肝特異的)にDN-Metを発現させるトランスジェニックマウスを作製したところ、空腹時高血糖であり、耐糖能も低下していた。また、Met特異的siRNAでMetをノックダウンしたマウスでも、Metの発現量が少ないほど耐糖能が悪化した。

HGFは糖尿病マウスのインスリン反応性を回復する
ob/obマウスにHGFを注入すると、グルコース注入後の血糖上昇が抑制された。また、ob/obマウスに0.25mU/gのインスリンを注入しても血糖は低下しなかったが、HGFと同時にインスリンを注入すると血糖が低下した。さらに、ob/obマウスにグルカゴン負荷を行うと、肝糖放出が増加するが、ここに HGFを加えると、グルカゴンによる糖放出が抑制された。

HGFは肝でAktリン酸化およびFoxO1のリン酸化(核からの除外)を起こし、糖新生に働くG6Pase、PEPCKの発現を低下させる。また、HGFの投与で肝のGLUT2発現が低下する(GLUT2は肝の糖取り込み、肝の糖放出の両方向に作用する)。

【結論】
肝細胞においては、INSRのみ、Metのみでは限られたシグナル伝達しか起こさないが、INSRとMetの複合体により十分なグルコース調節のためのシグナル伝達が保たれると考えられる。そのため、HGFの投与は2型糖尿病治療に応用できる可能性がある。
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by md345797 | 2011-11-17 17:25 | シグナル伝達機構

組織因子-PAR2シグナル伝達系は食事による肥満と脂肪炎症を促進する

Tissue factor-protease-activated receptor 2 signaling promotes diet-induced obesity and adipose inflammation.

Badeanlou L, Furlan-Freguia C, Yang G, Ruf W, Samad F.

Nat Med. 2011 Oct 23;17(11):1490-7.

【まとめ】
凝固カスケードの開始因子である組織因子(tissue factor)は、凝固因子Ⅶa依存性にプロテアーゼ活性化受容体2(protease-activated receptor2: PAR2)を活性化する。本研究では、この「組織因子-Ⅶa-PAR2シグナル伝達系」が肥満やインスリン抵抗性に関与することを示す。
PAR2、または組織因子の細胞質ドメインを欠損させたマウスは、高脂肪食を負荷しても体重減少・インスリン抵抗性が起きにくい。
造血細胞では、組織因子-PAR2シグナル伝達の欠損は脂肪組織のマクロファージの炎症を抑制し、特異的な抗体でマクロファージの組織因子シグナルを阻害した場合も急速にインスリン抵抗性が改善する。
それに対し、非造血細胞における組織因子-Ⅶa-PAR2シグナルは特異的に肥満を促進した。脂肪細胞の組織因子の細胞質ドメイン依存性Ⅶaシグナルは、Aktのリン酸化を抑制し、肥満や代謝に関連する転写調節を抑制する。脂肪細胞の組織因子を抗体で阻害すると急速にエネルギー消費が増大した。
以上より、組織因子シグナルの抑制は、肥満における代謝とインスリン抵抗性を改善する治療に役立つと考えられた。

【論文内容】
組織因子の細胞質ドメインとPAR2は、高脂肪食による肥満を促進する

高脂肪食(HFD)に伴う肥満によって血漿・内臓脂肪中の組織因子活性は増加する。この組織因子の細胞質ドメイン欠損マウス(TFΔCT mice)およびPAR2欠損マウス(F2rl1-/-)は、HFDにしても肥満を起こしにくく、インスリン感受性と耐糖能が正常に近い。これらのマウスの内臓脂肪には、炎症性マクロファージ(CD11b+CD11c+)が形成するcrown-like-structures(CLSs)が多く存在する。

組織因子とPAR2はマクロファージによる炎症を促進する
組織因子は、脂肪組織において抗炎症性マクロファージ(CD11b+CD11c-)よりも炎症性マクロファージ(CD11b+CD11c+)に多く発現している。次に、WTマウスに致死量放射線を照射し、TFΔCTまたはPAR2欠損マウス由来の骨髄を移植し(造血細胞(すなわちマクロファージ)でのみ組織因子-PAR2シグナルが欠損)、HFDを負荷した。このマウスは耐糖能・インスリン抵抗性が亢進している。このマウスの脂肪組織では、炎症性サイトカインであるIL-6が少なく、抗炎症性サイトカインであるIL-10が多い。

組織因子の抑制はインスリン感受性を増大させる
次に、ヒト組織因子を内因性組織因子プロモーター下に発現させたノックインマウス(TFKI mice)を作製した。このマウスは、ヒト組織因子選択的モノクローナル抗体10H10で、組織因子-Ⅶa-PAR2シグナル伝達を阻害することができる。10H10抗体の投与により、HFD負荷したこのマウスのマクロファージの炎症性サイトカインは少なく、耐糖能は改善した。また、マウス組織因子のⅦaへの結合を阻害するモノクローナル抗体21E10でも同様の炎症性サイトカインの低下、マウスの耐糖能改善が起きた。

非造血細胞組織因子とPAR2は肥満を促進する
さらに、TFΔCTおよびPAR2欠損マウスにWTの骨髄を移植すると(非造血細胞以外で、組織因子-PAR2シグナル欠損の状態になり)、体重低下、過食だが活動量・代謝が増加、血糖・FFAの低下、炎症性マクロファージの低下(CLSsの減少)などが認められる。

脂肪細胞の組織因子-Ⅶaシグナル伝達は肥満を調節する
PAR2-arrestinシグナル伝達は、PI 3K/Aktを抑制するが、脂肪細胞のAkt活性化が組織因子-Ⅶa-PAR2によって障害されていることを確認した。脂肪細胞のAkt活性化はadiponectin発現に必要であり、これはⅦaによって抑制される。脂肪細胞では、組織因子-Ⅶa-PAR2シグナル伝達により、β-arrestinを活性化し、Aktの抑制を介して、adiponectin発現を低下、これがAMPK-PPARα低下を介してエネルギー消費を低下させ、肥満、インスリン抵抗性を起こす。

【結論】
脂肪細胞では、組織因子-Ⅶa-PAR2がβ-arrestinを介して、Akt活性を抑制し、adiponectin発現低下を介して、インスリン抵抗性を惹き起こす。また、脂肪組織のマクロファージでは、組織因子-Ⅶa-PAR2が炎症性マクロファージを増やし、炎症性サイトカイン(IL-6,TNFα)の増加、抗炎症性サイトカイン(IL-10)の低下を介して、インスリン抵抗性を惹き起こす。これにより凝固系組織因子-Ⅶa-PAR2)と炎症脂肪組織マクロファージ)と代謝脂肪組織でのエネルギー消費)が関連していることになり、組織因子-Ⅶa-PAR2の阻害が、炎症改善・代謝促進につながりうることが明らかになった。
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by md345797 | 2011-11-16 01:02 | エネルギー代謝

HDL亜分画の生物学的活性と心血管疾患との関連

Biological activities of HDL subpopulations and their relevance to cardiovascular disease.

Camont L, Chapman MJ, Kontush A.

Trends Mol Med. 2011 Oct;17(10):594-603.

【総説内容】
HDLコレステロールと心血管疾患

HDLコレステロール低下と冠動脈心疾患のリスクの間には強い相関があるが、近年問題になっているのは、HDLの量(血中のHDL値)だけでなく、HDLの質(生物学的機能)である。HDLは、動脈壁のマクロファージなど末梢組織からコレステロールを引き抜き肝に運んで胆汁から排泄する、コレステロール逆転送系(reverse cholesterol transport; RCT)の中心的な役割を果たしている。さらに、HDLはさまざまな生物学的活性(抗酸化作用、抗炎症作用など後述)を持つことが知られるようになっている。

HDLの不均一性(heterogeneity)
HDLは構造、組成、生物学的活性などの点で不均一な粒子である。形態は、円盤状(discoid)と球状(spherical)があり、コレステリルエステルとトリグリセリドを疎水性の核として含むものは球状になる。また、超遠心によってlarge、light、lipid-rich HDL2と、small、dense、protein-rich HDL3に分けられる。アポ蛋白の構成により、apoA-Iのみを含むLpA-I、apoA-IとapoA-IIを含むLpA-I:A-II、およびapoEを含む粒子がある。また、2次元電気泳動によって、10以上のHDL亜集団に分けられる。これは、円盤状の前駆体であるpre-β、αおよびpre-α粒子である。

HDLは最大でも50種の蛋白を含み(例えばsmall、dense、protein-rich HDL3では、LCAT、PON1、PAF-AHなどを含む)それによってもHDLの不均一性が高まる。HDL亜分画では含む脂質の種類も違っている(コレステロール:コレステリルエステル比、SM/PC比や、dense HDL3粒子におけるsphingosine-1-phosphate(S1P)など)。

HDL亜分画の生物学的活性
コレステロール引き抜き作用:コレステロール引き抜きは、一方向性のABCA1、ABCG1および双方向性のSR-BIなどを介して起こる。ABCA1を介するコレステロール引き抜きはapoA-Iを介してだけでなく、small discoid reconstituted HDL(rHDL)粒子によっても起こる。

抗酸化作用:small、dense HDL3にはLDLを酸化的障害から保護する作用がある。HDL3では、前述のLCAT、PON1、PAF-AHなどを含むため、過酸化脂質からの防御作用がある。

抗炎症作用:HDLは、サイトカインによる血管内皮細胞への接着分子の発現を抑制し、単球の血管内皮への結合を阻害する役割がある。

細胞保護作用:HDL3は血管内皮細胞保護作用を持ち、これにはapoA-IおよびS1Pが関与している。

血管拡張作用:HDLはNO放出とPGI2産生によって血管拡張に働く。HDLがSR-BIに結合するとPI3K/Aktシグナル経路が活性化され、eNOSのリン酸化が起こる。また、HDL2およびHDL3は血管内皮細胞からPGI2分泌を促進する。CETP阻害薬のdalcetrapibは、large HDL粒子を増やして、NOを介した血管拡張を起こす。

抗血栓作用:HDLは血小板活性化や凝固因子活性化の抑制を介する抗血栓作用を持つ。Large light HDL2はHDL3よりその作用が強い。

抗感染作用:HDLは、血中のLPS(lipopolysaccharide)に結合し、胆汁から捨てることによって抗感染作用を持つ。

機能欠陥のあるHDL
HDLは進行性に組成や構造が変化し、正常な生物学的機能を失っていく。メタボリックシンドロームでは、HDL3の組成の変化(コレステリルエステルの減少、トリグリセリドの増加、apoA-I、PON1、LCATの減少など)によりコレステロールの容量が減少し、抗酸化・抗炎症作用を失ってしまう。特異的な生物学的機能と機能欠陥のあるHDL亜分画を同定することにより、新たな心血管疾患のバイオマーカーと薬剤ターゲットが得られると思われる。
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by md345797 | 2011-11-13 12:56 | その他

肥満者へのレスベラトロール30日間補充によるカロリー制限様効果

Calorie Restriction-like Effects of 30 Days of Resveratrol Supplementation on Energy Metabolism and Metabolic Profile in Obese Humans.

Timmers S, Konings E, Bilet L, Houtkooper RH, van de Weijer T, Goossens GH, Hoeks J, van der Krieken S, Ryu D, Kersten S, Moonen-Kornips E, Hesselink MK, Kunz I, Schrauwen-Hinderling VB, Blaak EE, Auwerx J, Schrauwen P.

Cell Metab. 2011 Nov 2;14(5):612-22.

【まとめ】
レスベラトロールは、肥満モデル動物のエネルギー代謝とミトコンドリア機能において、カロリー制限様効果をもたらす天然の化合物である。今回、11人の肥満者に対し、プラセボと150㎎/日のレスベラトロールを30日間クロスオーバー投与する検討を行った。レスベラトロールは睡眠時および安静時の代謝率を低下させた。また、レスベラトロールは筋肉において、ミトコンドリアの量を変化させることなく、AMPKを活性化し、SIRT1とPGC-1αの蛋白量を増加させ、クエン酸合成酵素の活性を増加させた。また、筋肉の脂肪酸由来基質に対するミトコンドリア呼吸を改善した。さらにレスベラトロールは筋肉細胞内脂質量を増加させ、肝内脂質量、血糖、中性脂肪、ALTと炎症マーカーを減少させた。レスベラトロールにより、収縮期血圧は低下し、HOMA indexは改善した。食後の状態で、脂肪分解(lipolysis)、血漿中の脂肪酸、グリセロールは減少した。結論として、肥満者に対する30日間のレスベラトロール補充は、カロリー制限様の代謝変化をもたらすことが示された。

【論文内容】
試験デザインと血漿生化学値・臨床検査値の変化

11名の肥満男性(肥満以外は健康)に対し、プラセボとレスベラトロール(150㎎/日、99%のresVida)を投与する無作為、二重盲検、クロスオーバー試験を4週間行った。レスベラトロール投与後は、ALT、レプチン、炎症性マーカー(TNFα、IL-6)が低下、血糖、血漿インスリン値は低下しHOMA indexが改善した。また、レスベラトロール投与後は、睡眠時代謝率が低下した(カロリー制限の模倣効果と考えられる)。また、収縮期血圧、平均動脈圧が低下した。

組織での脂肪分解
次に、レスベラトロールが脂肪組織や骨格筋で食後の脂肪酸化を促進するかについて検討した。レスベラトロール投与後は脂肪組織でのグリセロール量が低下、脂肪酸酸化は低下した。

ミトコンドリア活性の増加
プラセボとレスベラトロール投与で、筋生検を行い、469個の遺伝子発現をマイクロアレイを用いて検討したところ、219が増加、250が低下していた。レスベラトロール投与により、ミトコンドリア酸化的リン酸化関連遺伝子は発現が亢進し、炎症に関する遺伝子が発現低下していた。レスベラトロールはAMPKを活性化することが知られており、レスベラトロール投与によりAMPKαサブユニットのThr172のリン酸化レベルが増加していた。AMPKの下流のSIRT1とミトコンドリアの主要な調節因子であるPGC-1αの発現、ミトコンドリア活性のマーカーであるクエン酸合成酵素の活性はレスベラトロール投与により増加した。

肝臓・骨格筋における脂肪蓄積
レスベラトロール投与後は、肝内脂肪量は低下したが、筋肉細胞内脂肪は2倍増加した。これは筋肉の持久的トレーニングの効果と同様のものと考えられる。

【結論】
レスベラトロールの30日間投与は、カロリー制限様の代謝に対する好ましい効果をもたらした。今後、長期的な用量依存的なレスベラトロール補充の効果を確認すべきである。
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by md345797 | 2011-11-12 22:58 | エネルギー代謝

Chemerinはマウスのβ細胞機能を調節する

Chemerin regulates β-cell function in mice.

Takahashi M, Okimura Y, Iguchi G, Nishizawa H, Yamamoto M, Suda K, Kitazawa R, Fujimoto W, Takahashi K, Zolotaryov FN, Hong KS, Kiyonari H, Abe T, Kaji H, Kitazawa S, Kasuga M, Chihara K, Takahashi Y.

Scientific Reports. Published on Oct 19, 2011.

【まとめ】
Chemerinにはいくつかの機能があることが知られているが、その生理的役割についてはよく分かっていない。本研究では、chemerin欠損マウスが、肝糖産生の増加とインスリン分泌障害により、耐糖能異常をきたすことを明らかにした。Chemerinとその受容体ChemR23はβ細胞に発現している。単離膵島および膵還流実験により、chemerin欠損マウスではグルコース応答性インスリン分泌(GSIS)の障害があることが分かった。Chemerin欠損マウスの膵島およびchemerinをノックダウンしたβ細胞株では、β細胞機能に重要な役割を果たす転写因子であるMafAの発現が低下しており、MafAのrescueによりGSISが回復する。このことから、chemerinはMafA発現を維持することによりβ細胞機能を調節していることが示された。

【論文内容】
Chemerinは、当初、皮膚において、オーファン受容体ChemR23のリガンドとして同定され、樹状細胞やマクロファージの化学走行を促進すると考えられている。また、抗炎症作用を持つとも考えられているが、chemerin/ChemR23の生理的な機能は不明である。最近、chemerinがadipokineであり、脂肪細胞での糖取り込みを促進するなどの報告がある。

Chemerin欠損マウスは糖代謝障害をきたす
本研究ではchemerin欠損マウスを作製した。Chemerin-/-マウスは外見上正常で体重・食事摂取もchemerin +/+と変わらなかった。IPGTTを行ったところ、chemerin-/-マウスは血糖が有意に高値であった。正常血糖高インスリンクランプによると、GIRは正常であったが(インスリン抵抗性は正常)、Rd(筋肉での糖取り込み)は増加、肝糖産生が増加していた。さらに、G6Pase、PEPCK発現も増加していた。

Chemerin欠損マウスは脂肪組織へのマクロファージ浸潤が減少
Chemerin-/-マウスでは、脂肪組織においてマクロファージマーカーであるCD68、F4/80およびMac3-陽性細胞は有意に減少していた。したがって、Chemerin-/-マウスではマクロファージ浸潤は減少していた。

Chemerinとその受容体ChemR23はβ細胞に発現している
組織でのchemerinの発現を検討したところ、chemerinはヒト膵に多く発現していた。ChemR23は主に白色脂肪組織、心臓、精巣に発現していたが、ChemR23は膵島にも発現しており、chemerinとChemR23はインスリンとの免疫染色によりβ細胞に発現していることが分かった。

Chemerin欠損β細胞はGSISが障害されている
Chemerin-/-マウスでは、膵島の形態や面積は正常だが、単離した膵島および膵還流実験においてGSISが障害されていることが示された。また、chemerinとChemR23の発現が確認されているMIN6細胞株でchemerinまたはChemR23をノックダウンするとGSISが障害された。

高脂肪食負荷chemerin-/-マウスとchemerinトランスジェニックマウス
Chemerin-/-マウスに高脂肪食を負荷すると、chemerin +/+に比べ耐糖能が悪化する。次に、肝でchemerinを過剰発現するためSAPプロモーター下でchemerinを発現するトランスジェニックマウスを作製した(chemerinが最も多く発現しているのが肝のため)。このchemerinトランスジェニックマウスは耐糖能が改善し、GSISが亢進していた。

Chemerinはβ細胞でのMafA発現を維持することによりGSISを調節する
Chemerin-/-マウスの単離膵島での遺伝子発現の変化を比較すると、MafAの発現が有意に低下していることが分かった。MIN6細胞でchemerinまたはChemR23をノックダウンすると、MafAの発現が低下した。Chemerin-/-マウスの単離膵島および前述のMIN6細胞でMafA発現をrescueすると、GSISが有意に改善された。

【結論】
Chemerin-/-マウスの膵島ではGSISが障害されており、chemerinは膵島においてMafA発現を維持することによりGSISを正に調節していると考えられた。
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by md345797 | 2011-11-10 07:27 | インスリン分泌

Rac1 GTPaseは、ミネラロコルチコイド受容体(MR)を活性化させ、食塩感受性高血圧の発症に必須である

Rac1 GTPase in rodent kidneys is essential for salt-sensitive hypertension via a mineralocorticoid receptor-dependent pathway.

Shibata S, Mu S, Kawarazaki H, Muraoka K, Ishizawa K, Yoshida S, Kawarazaki W, Takeuchi M, Ayuzawa N, Miyoshi J, Takai Y, Ishikawa A, Shimosawa T, Ando K, Nagase M, Fujita T.

J Clin Invest. 2011 Aug 1;121(8):323-43

【まとめ】
以前このグループでは、アルドステロンによって調節される核内転写因子であるミネラロコルチコイド受容体(MR)と、small GTPaseであるRac1のクロストークが蛋白尿を伴う腎臓病に重要な役割を果たしていることを報告した。今回の研究では、高食塩負荷が食塩感受性動物の腎でRac1を活性化し、MR活性化を介して血圧上昇と腎障害をきたすことを明らかにした。

高食塩食は、食塩感受性Dahl-SラットではRac1の活性増加を、食塩非感受性Dahl-Rラットでは活性低下をもたらす。高食塩負荷したDahl-Sラットは、血清アルドステロン値が低下しているにもかかわらず、Rac1の活性増加によってMRシグナルが増加しており、Rac1を阻害するとMRの抑制を伴って高血圧と腎障害が防止された。さらに、アルドステロン注入ラットおよび、副腎切除後にアルドステロン補充を行ったDahl-Sラットでは、食塩誘導性のRac1活性化とアルドステロンが相互依存的にMRの活性亢進と高血圧を示した。最後に、食塩感受性におけるRac1の役割を、Rho GDP-dissociation inhibitor αを欠損したマウスで確認した。以上より、Rac1は食塩感受性の決定因子であり、この知見は食塩感受性の高血圧および腎障害のメカニズムの解明につながると考えられた。

【論文内容】
現代社会では塩分の過剰摂取により、アルドステロンの減少にもかかわらず、高血圧、心血管障害、腎障害の進行が進んでいる。最近、このグループではMRとRac1のシグナルのクロストークを同定した。本研究では、高食塩食下でRac1の活性化が食塩感受性高血圧を起こすことを示す。

Rac1はMRの調節を介して、血圧の食塩感受性に関与している
Dahl食塩感受性ラット(Dahl-S)とDahl食塩非感受性ラット(Dahl-R)にそれぞれ正常食塩食(0.3%)と高食塩食(8%)を3週間投与したところ、Dahl-Sに高食塩食を投与したときのみ血圧が上昇し、アルブミン尿が出現した。アルドステロン濃度はDahl-RよりDahl-Sの方が低く、それぞれ高食塩負荷でさらに低下した。腎でのRac1活性を測定したところ、高食塩食を投与したDahl-SでRac1活性が増加し、核へのMRの移行も増加していた。Dahl-Rでは高食塩負荷でRac1活性、MRの核移行も低下していた。

Dahl-Sの食塩感受性高血圧におけるMRシグナルの亢進はRac1活性化によるものかを検討するため、これらのラットにRacの特異的阻害剤Nsc23766を投与した。その結果、Dahl-Sに高食塩負荷したラットの血圧が低下し、尿アルブミンが減少した。また、Rac1活性とMRの核への移行、MRの活性(sgk1発現)が低下し、腎硬化症も減少した。以上より、高食塩食はRac1活性化を介してDahl-SのMR活性を増強し食塩感受性高血圧を惹き起こすことが分かった。

食塩とアルドステロンの協調作用におけるRac1の役割
食塩とアルドステロンは協調してMRを活性化し臓器障害を起こすことが知られている。SDラットにアルドステロンを持続注入し、低食塩食(0.05%, Aldo+LS)および高食塩食(8%, Aldo+HS)を負荷した。その結果、Aldo+HSのみ血圧が上昇し、このラットでのみRac1活性上昇、MR活性化が増加した。このAldo+HSにNsc23766を投与すると、Rac1活性が低下、MR活性も低下し、血圧が正常化、尿蛋白も減少した。

さらに、高食塩食負荷Dahl-Sラットでのアルドステロンの影響を見るために、このDahl-Sラットの副腎摘出を行った後高食塩食を負荷した。このラットのアルドステロンは感度以下で、高血圧とアルブミン尿は完全にブロックされた。腎のRac1活性も抑制されていたため、高食塩負荷によるRac1活性化にはアルドステロンが必要であることが分かった。このラットでは、MRの核への局在・活性化(sgk1発現)が低下していた。このラットにアルドステロンを補充すると、これらは回復した。したがて、MRシグナル亢進と食塩感受性高血圧の発症には、Rac1シグナルとアルドステロンの「相互依存性」が関与していると考えられる。

Arhgdia-/-マウスは食塩感受性に血圧上昇・腎機能低下を認める
GDIαは非活性型Rac1に結合し、非活性を保つ分子である。この欠損マウスであるArhgdia-/-マウスは、アルドステロンは低値であるが、MR活性化は亢進しており、食塩感受性の高血圧と腎硬化症を起こす。このマウスに高食塩負荷を負荷した場合に生じるアルブミン尿は、Nsc23766およびeplerenoneによって改善した。

【結論】
高食塩食負荷により、Dahl-SラットではRac1活性化が起きる(Dahl-Rでは起きない、この違いの原因は何らかの遺伝子の差によるものだが不明)。Rac1活性化により、アルドステロンが低値であってもMRの活性化が起こり、Na保持によって食塩感受性の高血圧・腎機能障害がもたらされる。高食塩とアルドステロンは相互依存的にRac1を活性化し、Rac1による病的な過程を促進する。
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by md345797 | 2011-11-09 07:01 | 腎高血圧

Rac1 GTPaseによるミネラロコルチコイド受容体(MR)機能の修飾:蛋白尿を伴う腎臓病での役割

Modification of mineralocorticoid receptor function by Rac1 GTPase: implication in proteinuric kidney disease.

Shibata S, Nagase M, Yoshida S, Kawarazaki W, Kurihara H, Tanaka H, Miyoshi J, Takai Y, Fujita T.

Nat Med. 2008 Dec;14(12):1370-6.

【まとめ】
ミネラロコルチコイド受容体(MR)の阻害によって、蛋白尿を伴う腎臓病の転帰が改善することが示されている。しかし、腎臓病におけるMR依存的な転写活性の調節機構についてはほとんど知られていない。この研究では、Rac1(低分子量G蛋白Rhoファミリーに属する)が、MRシグナルの強力な活性化因子として働くという新しい役割を明らかにした。

HEK293細胞に恒常活性型(CA-Rac1)を過剰発現させると、MRのレポーター活性が亢進した。CA-Rac1は、糸球体上皮細胞(podocyte)でもMRの核への集積を促進した。さらに、Arhgdia-/-マウス(Rho GDP解離抑制因子α欠損マウス)では、大量のアルブミン尿やpodocyteの障害を伴う腎機能障害が認められる。このマウスのアルドステロン濃度は正常であるが、腎臓でRac1活性とMRシグナルの増加が認められた。このマウスのMRの過剰な活性化と腎障害は、Rac特異的な低分子阻害剤によって軽減された。さらに、Arhgdia-/-マウスのアルブミン尿と組織学的変化はMRの阻害によって抑制されたことから、Rac1-MRの病的な役割が確認された。これらの結果から、Rac1とMRのシグナルクロストークがMR活性を修飾することが明らかになり、Rac1は慢性腎臓病(CKD)の治療標的になることが示された。

【論文内容】
MRの活性はそのリガンド(アルドステロン)以外にも影響されることが知られていたが、そのtransactivationの機構は不明であった。そこで、Rho GTPaseがMRの機能に及ぼす影響を検討するため、HEK293細胞に恒常活性型Rac1(CA-Rac1)を発現させたところ、アルドステロンなしでもMR受容体の転写活性を促進することが示された。

次に、Rho GTPaseを不活性のままにしておくRho GDP dissociation inhibitorに注目し、疾患モデルとしてArhgdia(Alpaca Rho GDP dissociation inhibitor (GDI) alpha)欠損マウスについて検討した。このマウスでは、(Rac1を不活性にする機構が欠損しているため)アルドステロンが正常にもかかわらず、MR活性が増加し、蛋白尿と腎障害が認められる。

このArhgdia-/-マウスに、Rac特異的な阻害薬であるNSC23766を投与すると、腎のRac1活性が低下、MRシグナルも低下し、蛋白尿と腎機能は改善した。

最後にArhgdia-/-マウスにMRの選択的アンタゴニストであるeplerenoneを投与したところ、このマウスの蛋白尿はほぼ消失した。また、電顕像でも腎硬化症は改善した。(NSC23766では蛋白尿が部分的に改善し、eplerenoneではほぼ完全に消失した理由として、NSC23766がRac1を完全には阻害しない可能性、またはRac1がMRを活性化する経路以外にもMR活性系が在る可能性、などが考えられる。)

本研究で、small GTPaseであるRac1のMRの調節因子という新しい役割が明らかになった。また、in vivoでRac1を阻害することが腎機能に好影響を与えることを初めて示した。
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by md345797 | 2011-11-07 22:42 | 腎高血圧