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2型糖尿病に対する、肥満外科手術と通常薬物療法の比較

Bariatric Surgery versus Conventional Medical Therapy for Type 2 Diabetes.

Mingrone G, Panunzi S, De Gaetano A, Guidone C, Iaconelli A, Leccesi L, Nanni G, Pomp A, Castagneto M, Ghirlanda G, Rubino F.

N Engl J Med. 2012 Mar 26. Published online.

【まとめ】
胃バイパス(Roux-en-Y gastric bypass)および胆膵路転換手術(biliopancreatic diversion)は、高度の肥満患者の糖尿病を改善し、しばしば糖尿病の寛解(remission)をもたらす。そこで、糖尿病の治療としてこれらの手術と通常の薬物療法を比較する前向きランダム化研究が求められていた。この研究では、30-60歳のBMI35以上、5年以上の糖尿病歴を持ち、HbA1cが7.0%以上の60名の患者を、通常薬物療法群または手術(胃バイパスまたは胆膵路転換手術)群にランダムに割り付けた単一施設、非盲検、ランダム化試験を行った。一次エンドポイントは2年後の時点での糖尿病寛解(=薬物療法なしで、空腹時血糖100 mg/dl未満およびHbA1c 6.5%未満)の割合とした。2年後の時点で、薬物療法群では糖尿病の寛解が見られた患者はいなかったのに対し、胃バイパス群では75%、胆膵路転換手術では95%に寛解が見られた。また、HbA1cはすべての群で低下したが、2つの外科手術群で低下の程度が大きかった。以上より、高度肥満2型糖尿病患者において、肥満外科手術は薬物療法に比べ、よりよい血糖コントロールをもたらすことが示された。

【論文内容】
2010年には世界の2型糖尿病有病率は8.3%で、これは2030年までに9.9%に増加すると考えられている。この2型糖尿病患者の23%が高度肥満である。肥満外科手術(bariatric surgery)は、2型糖尿病を改善し心血管疾患を減少させることが報告されており、これらの効果は体重減少によるもの以外の原因も想定されている。腹腔鏡下調節性胃バンディング術(laparoscopic adjustable gastric banding)を行ったランダム化試験が1報知られているが、その報告では中程度の糖尿病を短期間改善したことしか示されていない。この研究では、より重症の糖尿病に対し、2種類の外科手術(胃バイパスまたは胆膵路転換手術)による長期間の効果を薬物療法と比較した。

60名の高度肥満の2型糖尿病患者を、薬物療法群と2種類の手術の合計3群に割り付け、2年間追跡した。ベースラインの特徴では3群に差はなかったが、脂質(総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪)のみが薬物療法群で高値であった。これは胃バイパス術を受ける患者の多くがあらかじめコレステロール低下薬を服用していたためと考えられた。

外科手術を受けた群のすべての患者が、薬物療法(経口薬およびインスリン)を手術15日以内に中止することができた。2年後の時点で糖尿病の寛解を示した患者は、薬物療法群では見られなかったが、胃バイパス群の75%(20名中15名)、胆膵路転換手術群の95%(20名中19名)に認められた。Kaplan–Meier分析によると、血糖正常化までの平均期間は胃バイパス群で10±2か月、胆膵路転換手術群で4±1か月であった。また、ロジスティック回帰分析によると、年齢、性別、ベースラインのBMI、糖尿病罹病期間、体重変化は2年後の糖尿病寛解の予測因子にはなっていなかった。HbA1cのベースラインから2年間の変化は、胃バイパス群(−25.18±20.89%)、胆膵路転換手術群(−43.01±9.64%)に比べ、薬物療法群では少なかった(−8.39±9.93%)。空腹時血糖の変化も同様であった。

2年後の時点での体重減少は、薬物療法群 (−4.74±6.37%)に比べ外科手術群の方が有意に大きかった(胃バイパス−33.31±7.88% 、胆膵路転換手術−33.82±10.17%)。外科手術2群間では有意差は認めなかった。BMIも薬物療法群(45.62±6.24 → 43.07±6.44)に対し、胃バイパス(44.85±5.16 →29.31±2.64)および胆膵路転換手術45.14±7.78 →29.19±4.90)群で有意に低下が大きかった。

脂質プロファイルに関しては、HDLコレステロールを除くすべての脂質プロファイルが、薬物療法群と胃バイパス群では差がなく、薬物療法群に比べ胆膵路転換手術群で改善していた。HDLコレステロールは、薬物療法群に比べ胃バイパス群で上昇、薬物療法群と胆膵路転換手術群で差がなかった。収縮期・拡張期血圧は、3群で有意に低下した(群間の差はなかった)。外科手術を受けた群での死亡者はなく、再手術が必要なヘルニアが1名、腸閉塞が1名あった。薬物療法群では、メトフォルミン投与による下痢が2名あった。

【結論】
高度肥満の2型糖尿病患者において、2つの肥満外科手術は通常の薬物療法より2年間の血糖コントロール改善効果が優れていた。糖尿病の寛解のタイミングは、胆膵路転換手術の方が胃バイパスより早く、これは胆膵路転換手術に伴う脂肪吸収低下によって血中中性脂肪、コレステロールの低下が起こったためと考えられる。本研究の限界は患者数が比較的少ないことであり、手術の安全性やその後の心血管イベント発症、2つの手術間の差などを検討するためには、より大きい多施設研究が求められる。
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by md345797 | 2012-03-29 17:41 | 大規模臨床試験

糖尿病肥満患者における、肥満外科手術と強化薬物療法の比較

Bariatric Surgery versus Intensive Medical Therapy in Obese Patients with Diabetes

Schauer PR, Kashyap SR, Wolski K, Brethauer SA, Kirwan JP, Claire E. Pothier CE, Thomas S, Abood B, Nissen SE, Bhatt DL.

N Engl J Med. Published online March 26 2012.

【まとめ】
今までにいくつかの観察研究で、肥満外科手術(bariatric surgery)後に2型糖尿病が改善することが示されている。今回行われた一施設ランダム化研究では、150名のコントロール不良の2型糖尿病肥満患者をランダム化して3群に分け、強化薬物療法のみの群と、薬物療法に加え外科治療(Roux-en-Y胃バイパスgastric bypass、または袖状胃切除術sleeve gastrectomy)を行った2群で効果を比較した。平均患者年齢は49±8歳、66%が女性、平均HbA1cが9.2±1.5%であった。一次エンドポイントは、治療12か月後のHbA1cが6.0%以下の患者の割合とした。一次エンドポイントに達した患者の割合は、薬物療法で12%だったのに対し、胃バイパス群は42%(P = 0.002)、袖状胃切除術群は37%(P = 0.008)であった。3群とも血糖コントロールは改善したが、12か月後の薬物療法群のHbA1cは7.5±1.8%であったのに対し、胃バイパス群は6.4±0.9% (P<0.001)、袖状胃切除術は6.6±1.0%(P = 0.003)であった。体重減少は、薬物療法群で-5.4±8.0 kgだったのに対し、胃バイパス群-29.4±9.0 kg、袖状胃切除術群は-25.1±8.5kg (いずれもP<0.001)であった。血糖、脂質、血圧を低下させる薬剤の使用数は、外科手術後には有意に減少したが、薬物療法のみの患者では増加した。HOMA-IRも外科手術後に有意に改善した。以上より、薬物療法のみに比較して、薬物療法に加え外科手術を行った場合、血糖コントロールが有意に改善することが示された。

【論文内容】
観察研究では肥満外科手術は2型糖尿病をもつ高度肥満患者の血糖コントロールと心血管疾患リスクを改善することが示されているが、外科手術群と強化薬物療法群を比較したランダム化研究はほとんどない。このSurgical Treatment and Medications Potentially Eradicate Diabetes Efficiently (STAMPEDE) 研究では、2型糖尿病肥満患者150名をランダム化して3群に分け、強化薬物療法群と薬物療法+外科手術群(Roux-en-Y胃バイパス、または袖状胃切除術の2群)の12か月後の血糖コントロール改善を比較した。なお、外科手術は、単一の外科医により腹腔鏡下で行われた。その後、3、6、9、12か月目に体重、腹囲、血圧、HbA1c、血糖をチェックした。一次エンドポイントは、ランダム化12か月後のHbA1cが6.0%以下の患者の割合とし、二次エンドポイントは、空腹時血糖、空腹時インスリン、脂質、高感度CRP、HOMA-IR、体重減少、血圧、有害事象、併発した疾患、服薬数の変化とした。

150名の対象者のうち、12か月後に140名が研究を終了した。12か月後のHbA1cが6.0%以下だった対象者は、薬物療法のみの群で12%、胃バイパス群で42%(P=0.002)、袖状胃切除群で37%(P=0.008)であり、手術の2群間では差がなかった。

12か月後の時点で、2つの外科治療群は薬物療法のみの群に比べ、有意にHbA1cと空腹時血糖が低かった。薬物療法群では、後半の6か月間で徐々にHbA1cが増加したが、外科手術群では12か月後まで低下が持続した。

使用した糖尿病薬の数は、薬物療法群では増加していたのに対し、外科手術群では有意に減少した。また、インスリンを使用した患者は薬物療法群では38%だったのに対し、胃バイパス群で4%、袖状胃切除群で8%まで減少した。

12か月後の体重、BMI、腹囲、waist-to-hip比は、薬物療法群に比べ外科手術群で有意に低かった。

12か月後の高インスリン血症を示す患者の割合、HOMA-IRも外科手術群で有意に低かった。また外科手術群では、HDLコレステロールが有意に増加、高感度CRPが有意に低下していた。12か月後の時点で、高脂血症薬および降圧剤の数も、外科手術群で有意に少なかった。

12か月後の時点での有害事象は、外科手術群で4名の患者に外科的な介入が必要であった。3群とも死亡例はなく、重篤な低血糖や栄養不良、過度の体重減少も見られなかった。

本研究の限界として、follow-up期間が12か月という短期間であったこと、単一施設でのオープンラベル試験であったことが挙げられる。ただし、これに関してはさらに4年間の追跡期間を設けている。

【結論】
コントロール不良の糖尿病患者の治療として、肥満外科手術は有効な方法であり、糖尿病薬を減らせることが示された。さらに、外科手術により心血管疾患リスクが減少し、それに対する薬物も減らすことができた。今後さらに大きい多施設研究で、外科手術の利点と外科的リスクのバランスを検討すべきである。
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by md345797 | 2012-03-28 17:25 | 大規模臨床試験

LDLコレステロールに対するPCSK9モノクローナル抗体の効果

Effect of a Monoclonal Antibody to PCSK9 on LDL Cholesterol

Stein EA , Mellis S, Yancopoulos GD, Stahl N, Logan D, Smith WB, Lisbon E, Gutierrez M, Webb C, Wu R, Du Y, Kranz T, Gasparino E, Swergold GD.

N Engl J Med 2012;366:1108-18

【まとめ】
セリンプロテアーゼの一つであるproprotein convertase subtilisin/kexin 9 (PCSK9)は、LDL受容体に結合してその分解を促進し、その結果LDLコレステロール値を増加させる。このグループは、PCSK9に対するモノクローナル抗体(REGN727)の3つの第1相試験の結果を報告している。

健常者ボランティアを対象に、REGN727の静脈投与(40名)または皮下投与(32名)とそれぞれプラセボと比較する2つのランダマイズ試験を行った。さらに、ヘテロ家族性高コレステロール血症でアトルバスタチンを服用者(21名)と、非家族性高コレステロール血症でアトルバスタチン服用者(30名)、または食事療法のみの非家族性高コレステロール血症者(10名)を対象にREGN727を皮下投与したランダマイズ試験を行った。一次アウトカムは有害事象の発生、二次アウトカムはREGN727の脂質プロファイルに対する効果とした。

REGN727を投与した人のうち、有害事象のために試験を中断した人はいなかった。3つの試験すべてで、REGN727はLDLコレステロール値を有意に低下させた。3番目の試験(高コレステロール血症患者を対象とした試験)で、REGN727の用量が50、100、150 mgの場合、アトルバスタチン服用者ではLDLコレステロール値をそれぞれ、77.5 mg/dl、61.3 mg/dl、53.8 mg/dl(ベースラインのLDLコレステロール値を100%とした場合に、-39.2、-53.7、-61.0パーセンテージポイント)低下させた。

以上3つの第1相試験において、PCSK9に対するモノクローナル抗体は、健常者ボランティアおよび家族性または非家族性高コレステロール血症患者のLDLコレステロール値を有意に低下させた。

【論文内容】
2003年に、PCSK9のgain-of-function変異による常染色体優性高コレステロール血症が報告された。その後、PCSK9はLDL受容体活性の翻訳後調節を行っていることが分かった。すなわち、PCSK9は肝で合成されて血中に入り、肝のLDL受容体に結合してLDL受容体のdegradationを起こし、その結果受容体に結合できなくなったLDLコレステロールが血中で増加して高コレステロール血症をきたすメカニズムが明らかにされた。また、PCSK9のloss-of-function変異が血中LDLコレステロール値を低下させ、心血管疾患の発症を減少させていることも報告された。そこで、PCSK9の阻害が高コレステロール血症患者のLDLコレステロール値を低下させる可能性が考えられた。REGN727は、ヒトPCSK9に高度に特異的なトモノクローナル抗体であり、PCSK9のLDL受容体との結合を阻害する。この報告では、REGN727をヒトに用いた最初の研究の結果を報告した。

単回投与試験(single-dose studies)では、REGN727の静脈投与40名、皮下投与32名の健常者を対象とした。静脈投与群は、1.0、3.0、6.0、12.0 mg/kg体重のREGN727投与群に分け、それぞれプラセボ投与群と比較した。皮下投与群では、50、100、150、250 mgのREGN727投与群に分け、それぞれプラセボ投与群と比較した。

反復投与試験(multiple-dose study)では、ヘテロ家族性高コレステロール血症でアトルバスタチン服用患者21名、非家族性高コレステロール血症でアトルバスタチン服用患者30名、および非家族性高コレステロール血症で食事療法のみの患者10名を対象とした。3群いずれも、REGN727(50、100、150 mg投与またはプラセボ)をdays 1、29、43に皮下投与した。

単回投与試験では、有害事象のために試験継続不可能となった人はいなかった。反復投与試験でも重篤な有害事象が起きた患者はおらず、すべての対象者が試験を継続した。

単回投与試験では、REGN727の静脈投与または皮下投与のいずれの場合でも、LDLコレステロールの低下の程度と期間が用量依存的であり、高用量投与した群の方がLDLコレステロール低下期間が長かった。

反復投与試験では、REGN727の用量が50、100、150 mgでアトルバスタチン服用患者のLDLコレステロールの低下がそれぞれ77.5、61.3、53.8 mg/dl(ベースラインからの変化が-39.2、-53.7、-61.0パーセンテージポイント)であった。LDLコレステロール低下の程度は、家族性高コレステロール血症と非家族性高コレステロール血症の間で、またアトルバスタチン服用者と食事療法のみの間で、有意差はなかった。

【結論】
PCSK9とLDL受容体の結合を阻害するヒトモノクローナル抗体REGN727は、今回3つの試験で有意にLDLコレステロール値を低下させた。この効果は、健常者および、家族性・非家族性の高コレステロール血症の患者の両方で有意であった。さらに、アトルバスタチンを併用している患者でも有意に認められた。
(なお、この研究はRegeneron PharmaceuticalsとSanofiから援助を受けた。)
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by md345797 | 2012-03-23 09:14 | 大規模臨床試験