「ほっ」と。キャンペーン

一人抄読会

syodokukai.exblog.jp
ブログトップ

<   2012年 09月 ( 4 )   > この月の画像一覧

砂糖入り甘味飲料と肥満の遺伝的リスク

Sugar-Sweetened Beverages and Genetic Risk of Obesity.

Qi Q, Chu AY, Kang JH, Jensen MK, Curhan GC, Pasquale LR, Ridker, Hunter DJ, Walter C. Willett WC, Rimm EB, Chasman DI, Hu FB, Qi L.

N Engl J Med. Published online September 21, 2012.

【まとめ】
背景 砂糖入り甘味飲料の消費の増加は、肥満の有病率増加と並行している。これらの甘味飲料の摂取が遺伝的素因とどのように相互作用し肥満をきたしているかは明らかではない。
方法 そこで、6934名の女性(Nurses’ Health Study: NHS)と4423名の男性(Health Professionals Follow-up Study: HPFS)、および再現コホートとして21,740名の女性(Women’s Geneome Health Study: WGFS)を対象として、遺伝的素因と砂糖入り甘味飲料の摂取の相互作用がBMIと肥満リスクに果たす役割を解析した。遺伝的素因のためには、32のBMIに関連した遺伝子座をもとにgenetic-predisposition score(GPS:遺伝的素因スコア)を計算した。
結果 NHSとHPFSコホートにおいて、遺伝的素因とBMIの関連は、砂糖入り甘味飲料を多く飲んでいる対象者の方が、少ない対象者より強かった。両者を合わせたコホートにおいて、10のリスクアリル増加ごとのBMI増加は、1.00(月あたり1 serving以下の摂取)、1.12(月あたり4 servings)、1.38(週あたり2-6 servings)、1.78 (1日あたり1 serving以上)であった。同じ砂糖入り甘味飲料の摂取カテゴリーで、10のリスクアレルごとの肥満頻度の相対リスクは、1.19、1.67、1.58、5.06と有意に上昇した。WGHSコホートにおいては、10のリスクアレル増加ごとのBMI増加は1.39、1.64、1.90、2.53と有意に増加、肥満頻度の相対リスクも1.40、1.50、1.54、3.16とそれぞれ有意に増加した。
結論 肥満と遺伝的素因の関連は、砂糖入り甘味飲料を多く飲んでいる人でより強いと考えられる。
[PR]
by md345797 | 2012-09-23 01:11 | 大規模臨床試験

砂糖入り甘味飲料の、青年期体重に対するランダム化試験

A Randomized Trial of Sugar-Sweetened Beverages and Adolescent Body Weight.

Ebbeling CB, Feldman HA, Chomitz VR, Antonelli TA, Gortmaker SL, Osganian SK, Ludwig DS.

N Engl J Med. Published online September 21, 2012.

【まとめ】
背景 砂糖入り甘味飲料は体重増加の原因となる。そこで、過体重または肥満の青年に自宅でノンカロリー飲料を飲むような介入を行うことにより、体重への影響を検討する。
方法 日常的に砂糖入り甘味飲料を消費している、224名の過体重または肥満の思春期男女(平均約15歳)をランダムに分け、「実験グループ」すなわち1年間砂糖入り甘味飲料を飲まないように介入したグループ(ペットボトルの水か人工甘味料を用いた「ダイエット」飲料、できれば水を薦めた)と「コントロールグループ」に割り付けた。1年の介入期間終了後は、追加の介入なくfollow-upのみを継続した。「実験グループ」の方が「コントロールグループ」よりも、体重増加が遅いことを想定して追跡を行った。
結果 ベースラインでの砂糖入り甘味飲料の消費は、「実験グループ」「コントロールグループ」で同じであった(1日1.7 servings)。これを「実験グループ」では、1年間ほぼ0となり、2年間でも「コントロールグループ」よりは少ない消費量となった。主要評価項目(primary outcome)である2年間のBMIの変化は2群間で有意差は認めなかった。ただし、1年目には「実験グループ」の方が、BMI(-0.57)、体重(-1.9 kg)の有意な低下が見られていた。さらに、1年目および2年目のBMI減少は、民族による違いが見られ、Hispanicの被験者のみでBMIの差を比較すると、1年目(-1.79 )、2年目(-2.35)で有意な低下が認められた。Non-Hispanicの被験者ではそのような差は認めなかった。
結論 過体重または肥満の青年において、「実験グループ」の方が「コントロールグループ」に比べて1年間の介入期間におけるBMIの増加が小さかったが、2年目のfllow-upの期間はそうではなかった。
[PR]
by md345797 | 2012-09-23 00:23 | 大規模臨床試験

砂糖なし甘味飲料または砂糖入り甘味飲料の、小児の体重に対する影響

A Trial of Sugar-free or Sugar-Sweetened Beverages and Body Weight in Children.

de Ruyter JC, Olthof MR, Seidell JC, Katan MB.

N Engl J Med. Published online September 21, 2012.

【まとめ】
背景 砂糖入り甘味飲料は満腹感を刺激しないため、他の食事の量が減ることがなく、過体重をもたらすと考えられている。しかし、砂糖入り甘味飲料とノンカロリー(人工甘味料による甘味)飲料とで体重増加に対する影響は検討されていない。
方法 641名の正常体重の小児(4歳10か月から11歳11か月)を対象に18か月にわたる試験を行った。参加者は、ランダムに250 mlの砂糖なし・人工甘味料を含む飲料(砂糖なしグループ)、または同量の砂糖入り甘味飲料(104 kcal)(砂糖グループ)を学校から配布され、割り付けられた(それぞれの飲料は味や外観からは区別がつかないようにした)。
結果 BMIのz score(オランダの同性・同年齢の小児の平均BMIからどれくらい離れているかの標準偏差SD)は、砂糖なしグループでは0.02 SDだったのに対し、砂糖グループは0.15 SDであった、体重増加は砂糖なしグループは6.35 kg、砂糖グループは7.37 kgであった。皮膚厚測定、ウエスト・身長比、脂肪量のいずれも、砂糖なしグループで有意に定値であった。
結論 正常体重の小児において、砂糖入り甘味飲料の飲用は、ノンカロリー飲料に置き換えることによって、体重増加と脂肪蓄積を減らすことができた。
[PR]
by md345797 | 2012-09-22 23:59 | 大規模臨床試験

Myf5前駆細胞由来の白色脂肪細胞の存在と、Myf5系列でのPTEN欠損による体脂肪の再分布

PTEN Loss in the Myf5 Lineage Redistributes Body Fat and Reveals Subsets of White Adipocytes that Arise from Myf5 Precursors.

Sanchez-Gurmaches J, Hung C-M, Sparks CA, Tang Y, Li H, Guertin DA.

Cell Metab. 16(3) 348-362, September 5, 2012.

【まとめ】
Myf5を発現する間質前駆細胞は褐色脂肪細胞と骨格筋を発生させると考えられてきたが、本研究では、これらの細胞が白色脂肪細胞のある種の集団も発生させることを示した。褐色および白色脂肪組織は、Myf5陽性(Myf5+)とMyf5陰性(Myf5 neg)系列由来の脂肪前駆細胞(APCs)を含んでおり、その数は個々の脂肪組織の部位によって異なっていた。白色脂肪細胞の中のある集団は、β3-adrenoreceptor刺激に反応して、Myf5+およびMyf5 negの両方の前駆細胞からそれぞれ発生した。すなわち、”brite”脂肪細胞は複数の起源を持つ。さらに、myf5+系列でPTENを欠損させると、Myf5+由来脂肪細胞のみが選択的に増加することによって、体脂肪の再分布が起こり脂肪腫症と脂肪萎縮が併存した。以上より、①Myf5+前駆細胞由来である脂肪細胞の範囲は今まで考えられていたより広い(ある種の白色脂肪細胞も含む)。②脂肪細胞系列間のPI3K活性の違いによって(=PTEN欠損によりPI3K活性は増加)、体脂肪の分布が変化することが明らかになった。

【論文内容】
白色脂肪組織(WAT)が不均一(heterogeneous)であることは最近明らかになっており、個々の白色脂肪細胞は発生学的に異なると考えられている。また、β3-adrenergic receptor刺激によって誘導される、白色脂肪内の「褐色脂肪様」細胞、brite細胞が、肥満治療に有用と考えられ注目を集めている。褐色脂肪は白色脂肪に比べ、発生学的には骨格筋に近く、遺伝子発現も筋発生様の転写プロファイルを持つ。褐色脂肪細胞は、筋発生のための転写因子Myf5を発現する間質前駆細胞由来である。Myf5+前駆細胞から褐色脂肪と骨格筋が発生し、Myf5 neg前駆細胞から白色脂肪とbrite脂肪が誘導されると考えられてきた。

褐色脂肪分化の調節についてはよく分かっていないが、in vitroでは脂肪前駆細胞からの脂肪細胞への分化にはインスリンを用い、これはPI3K活性化を介する機構が考えられている。PI3K活性は、PTENによって負に調節されている。この研究では、conditionalにMyf5+系列のみでPTENを欠損(PI3Kを活性化)させるマウスを作製し、in vivoでの褐色脂肪分化の変化を調べた。その結果、Myf5+系列でPTENを欠損させると、全身の脂肪組織分布が変化し、脂肪腫症と部分的脂肪萎縮が同時に起きた。予想外なことに、これは、Myf5+-Cre+前駆細胞由来の白色脂肪、褐色脂肪の増加によるものであった。Myf5+前駆細胞由来の脂肪細胞の範囲は今まで考えられていたものより広く、Myf5+前駆細胞のPI3K活性化により体脂肪の再分布が起きることが示された。

Myf5+前駆細胞でのPTEN欠損は、脂肪腫症と部分的脂肪萎縮を同時に起こす
PTEN fl/flマウスとmyf5-creノックインマウスを交配して、褐色脂肪前駆細胞でPI3Kシグナルが活性化されたマウスを作製した。このPTEN myf5cKOマウスは出生時からコントロールに比べ、馬の首輪様(horse collar-like)の成長と、水雷型(torpedo shape)によってはっきり区別できた。6-12週では体重は正常だったが、脂肪の分布は著しく異なっていた。すなわち、肩甲骨間(interscapular)、肩甲骨下(subscapular)、頚部(cervical)褐色脂肪組織(iBAT、sBAT、cBAT)と、肩甲骨間(iWAT)、後腹膜(retroperitoneal:rWAT)、脊椎(vertebral) のWATが大きく増加していた。さらに、腸間膜(mesenteric)、性腺周囲(perigonadal:pgWAT)、鼠径部(inguinal: ingWAT)、臀部(gluteal)、後面皮下(posterior subcutaneous)のWATは欠損していた。このように、PTEN myf5cKOマウスは重篤な脂肪腫症と部分的脂肪萎縮を合併していた。

PTEN myf5cKOマウスの脂肪組織では、脂肪細胞が大きく、細胞数も多い
PTEN myf5cKOマウスのBATの脂肪滴は典型的な多房性(multilocular)を示していたが、脂肪細胞の大きさは大きかった。PTEN myf5cKOマウスのrWAT、iWATでは単房性(unilocular)の脂肪滴を持つ大きい白色脂肪細胞(コントロールの2倍程度)を認めた。PTEN myf5cKOマウスは6週齢では、褐色脂肪の細胞数も多かった。

PTEN myf5cKOマウスは白色、褐色脂肪のどちらにおいてもPTENを完全に欠損している
PTEN myf5cKOマウスの胚の褐色脂肪前駆細胞および6週齢のBATでは、PTENの確実な欠損とPI3Kシグナルの増強(AKT S473リン酸化の増加)が認められた。なお、興味深いことに、下肢骨格筋では(骨格筋なのでMyf5系列と考えられるが)PTEN欠損が認められなかった。過去の報告によると、Myf5+およびMyf5 negの両方の系列から骨格筋が発生する(骨格筋の部位によってどちら由来か異なる)と考えられており、下肢骨格筋はMyf5 neg由来の筋芽細胞(PTENを発現している)がMyf5+由来の筋芽細胞(PTEN発現なし)に融合してPTEN欠損を代償してしまっている可能性が考えられた。一方、白色脂肪はMyf5+前駆細胞か由来とは考えられていない。ところが予想外なことに、PTEN myf5cKOマウスのiWATとrWATでは、BAT同様のPTEN欠損が認められた。このことは、「褐色脂肪はMyf5+前駆細胞由来の唯一の脂肪」という前提に反し、「ある種の白色脂肪もMyf5+前駆細胞由来である」ことを示唆する。

白色脂肪細胞の中のある集団はMyf5+前駆細胞由来である
そこで、myf5-cre;R26R-EYFPマウス(前にmyf5-creノックインアレルを発現した細胞のみにYFPを発現するマウス)を作製し、Myf5+系列を追跡した。予想通り、このマウスは、BATや骨格筋で高レベルのYFPを発現しており、これは褐色脂肪と骨格筋がMyf5+前駆細胞由来であることと一致する。しかし、このマウスは、BATと同程度にiWATとrWATでYFPを発現していた(ingWATやpgWATに比べると15-20倍多く発現)。しかも、iWATやrWATでのYFP発現は、褐色脂肪マーカー(ucp1、prdm16)の発現とは相関せず、例えばYFP発現の少ないingWATではucp1、prdm16が多く発現していた。以上より、myf5系列の追跡では、BATおよび骨格筋に加えて、iWATとrWATもラベルされた。

さらに、Myf5+系列を追跡するための確認として、myf5-cre;R26R-LacZマウスを作製したところ、同様にBATとiWAT、rWATでLacZ陽性であり、ingWAT、pgWATではLacZは陰性であった。Myf5 neg系列由来と考えられるingWATには多房性脂肪滴を含む脂肪細胞(=brite脂肪細胞)が多く含まれており、Myf5+由来と考えられるiWATとrWATには単房性脂肪細胞が多く含まれていた。

では、Myf5+系列由来のiWATとrWATは、BATに特有の遺伝子発現signatureを示すのかをqRT-PCRで検討した。まず、iBATはrWATに比べて褐色脂肪マーカー(cidea、prdm16、zic1、ucp1)の発現が多く、rWATはiBATに比べて白色脂肪マーカー(HoxC8、Hoxc9、Dpt)の発現が多かった。したがって、rWATは、Myf5+系列由来とは言え、褐色脂肪signatureは持たなかった。すなわち、Myf5+前駆細胞は(褐色脂肪に加え)、白色脂肪の中のある種の集団を生み出すと考えられた。

Myf5+前駆細胞由来の脂肪前駆細胞(APC)の数は、脂肪組織の部位によって異なる
myf5-cre;R26R-LacZマウスから、個々の脂肪組織(fat depot)を単離し、それぞれのstromal vascular fraction (SVF)を調整して、LacZ発現を検討した。コントロールに比べ、このマウスのiBAT、iWAT、rWATは強くLacZに染色された。ingWAT、pgWATはLacZ陽性細胞が少なかった。これらのSVF細胞を分化させたところ、iBAT由来の脂肪含有細胞(SVF中のadipogenic cells)はほとんどがLacZ陽性(=Myf5+前駆細胞由来)であり、iWATとrWAT由来の脂肪含有細胞は半分程度がMyf5+前駆細胞由来であった。それに対し、ingWATとpgWAT由来の脂肪含有細胞にはMyf5+前駆細胞由来のものはほとんどなかった。

SVFは、血液、血管、神経、マトリックス細胞に加え、脂肪細胞前駆細胞(APCs:adipocyte progenitor cells)を含む。そこで、myf5-cre;R26R-EYFPマウスの各脂肪組織からAPCsを精製し(CD31-:CD45-:Ter119-:CD29+:CD34+:Sca1+)、flow cytometryでYFPの発現を検討した。その結果、BATから精製したAPCsの85%はYFPを発現していた(褐色脂肪はMyf5+前駆細胞由来であることに一致する)。iWATとrWATから精製したAPCsでは、それぞれ48.9%、69.4%がYFPを発現していたが、ingWATとpgWATのAPCsではそれぞれ6.1%、9.1%しかYFPを発現していなかった。

次に、WATに存在するMyf5系列のAPCsが、褐色脂肪の遺伝子発現signatureを示すのかを調べた。その結果、iBAT由来のAPCsでは、YFP陽性のものもYFP陰性のものも褐色脂肪マーカーZic1を発現していたが、YFP陽性のもののみがprdm16を発現していた。また、rWAT由来のYFP陽性APCsは、褐色脂肪マーカーは発現しておらず、白色脂肪マーカーを多く発現していた。したがって、 WATに存在するMyf5+のAPCsは古典的な褐色脂肪マーカーを発現しているわけではなく、BAT前駆細胞とは異なる遺伝子発現signatureを持っていることが分かる。

β3-adrenoreceptorアゴニストを長期投与してもMyf5+脂肪細胞系列は選択的に増加しない
では、WATに存在するMyf5系列由来の脂肪細胞が、ingWATに存在するMyf5 negのbrite脂肪細胞とは区別できる、別のbrite脂肪細胞の集団である可能性を検討した。WATに存在するMyf5系列由来の脂肪細胞は、誘導可能な褐色脂肪細胞なのか(brite脂肪細胞になるのか)を調べるために、myf5-cre;R26R-LacZマウスに1週間CL316,243(β3-adrenoreceptorアゴニスト)を投与した。CL316,243によって誘導されたrWATの多房性細胞はLacZ陽性であり、この組織(後腹膜)はMyf5系列の細胞が多いことが分かった。ingWATとrWATの両方ともCL316,243によってucp1発現が強く誘導された。以上より、β3-adrenoreceptor刺激は、Myf5+およびMyf5 negの両方の系列からのbrite脂肪細胞の産生を誘導するといえる。次に、Myf5系列のAPCsにCL316,243を長期に投与し、選択的に刺激した。myf5-cre;R26R-EYFPマウスでは、BATにおいてYFP陽性のAPC組成は変わらなかった。興味深いことに、CL316,243はiWATのYFC陰性APC組成を増加させた。(rWAT、ingWAT、pgWATではCL316,423による効果は少なかった。)したがって、CL316,423は、Myf5+前駆細胞由来のAPCsの増大を選択的に刺激しないといえる。

Myf5-creでPTEN欠損させると、Myf5+前駆細胞由来の脂肪細胞系列を選択的に増殖させる
Myf5+系列でPTENを欠損させると体脂肪の再分布が起きるメカニズムを理解するため、PTEN myf5cKO-LacZマウス(Myf5+系列でPTENをconditionalに欠損させ、Myf5+由来細胞はLacZで染色されるようにしたマウス)を用いた検討を行った。このマウスでは、iBAT、sBAT、iWAT、rWATが一様にLacZ染色された。このWAT由来の細胞を分化させると、脂肪含有細胞のほとんどはLacZ染色された(=Myf5+前駆細胞由来であった)。さらに、PTEN myf5cKO-YEPマウス(Myf5+系列でPTENをconditionalに欠損させ、Myf5+由来細胞はYEPでラベルしたマウス)では、WATに存在するPTEN欠損YFP陽性(=Myf5+由来)APCsは、コントロールのAPCsに比べ90%程度増加していた。すなわち、myf5+系列におけるPTENの欠損は、WATにおけるAPC中のMyf5+系列細胞の増加をもたらすことが示された。さらに、PTEN myf5cKOマウスの脂肪の過形成は、APCの脂肪合成能力(adipogenic potential)によるものではなく、APCの数の増加によることも分かった。

最後に、PTEN myf5cKO-YEPマウスのiBATとrWATから精製したAPCsの分子プロファイルを行った。このマウスのBAT APCsは褐色脂肪マーカー(Zic1、Prdm16)を発現し、これらはこのマウスのrWAT APCsでは検出されなかった。逆にこのマウスのrWATでは白色マーカー(Hoxc8、Hoxc9)が高度に発現していたが、iBATでは発現していなかった。したがって、myf5+系列でPTENを欠損させても、APCのidentity(分子プロファイル)には影響せず、BATとWATの両方でMyf5+前駆細胞由来の脂肪細胞を増加させることが示された。

d0194774_22551141.jpg


【結論】
本研究により、単房性の白色脂肪細胞のうち、ある種の集団はMyf5+前駆細胞由来であることが示された。すなわち、WATはMyf5+由来またはMyf5 neg由来の両方の細胞集団を含む。また、iWAT内に見られるbrite脂肪細胞はMyf5+由来ではなかった。さらに、β3-adrenoreceptor刺激に反応してWATにおいてMyf5+から発生する多房性脂肪細胞はごく一部であった。したがって、褐色脂肪細胞とbrite脂肪細胞とある種の白色脂肪細胞の発生学的由来は、単純にMyf5+に基づいて考えることはできない。

さらに、Myf5+系列のPTENの欠損(PI3K活性化)により、体脂肪の再分布が起こることが分かった。このような変異が脂肪前駆細胞に及ぼす影響を検討することは、肥満やメタボリックシンドロームのようなありふれた疾患や、ヒトの多発性対称性脂肪腫症(multiple symmetrical lipomatosis)のようなまれな疾患(PTEN myf5cKOマウスの形質に似ており、本症の原因もMyf5系列のような何らかの脂肪細胞系列が選択的に障害されているためかもしれない)の理解につながる可能性がある。

[PR]
by md345797 | 2012-09-05 01:13 | その他