Approach to the patient with amiodarone-induced thyrotoxicosis.
Bogazzi F, Bartalena L, Martino E.
J Clin Endocrinol Metab. 2010 Jun;95(6):2529-35. Review.
【まとめ】
ヨードを多く含む抗不整脈薬であるアミオダロンは、15-20%の患者に甲状腺機能異常を起こす。このAmiodarone-Induced Thyrotoxicosis(AIT)は、type1 (ヨードによる甲状腺機能亢進症)とtype2(薬剤性の破壊性甲状腺炎)および両者の混合形態に分類できる。両者の鑑別は、①甲状腺のRadioActive Iodine (RAI) uptakeでtype2は抑制されるのに対し、type1では正常か亢進していること、②甲状腺のカラードップラーエコーではtype1はhypervascularityがあるのに対し、type2ではないこと、などに基づいて行う。Type1の治療は抗甲状腺薬だが、type2の治療は経口ステロイドである。混合形態ではこの両方を行う。
【症例】
66歳男性、甲状腺中毒症のため来院した。2年前よりAfがあり、6か月前よりアミオダロンで洞調律を維持している。4週間前よりいらいら、動悸、体重減少があった。甲状腺の所見なし。FT4、FT3の著明な増加とTSHの感度以下の低下、抗TSH受容体抗体陰性が認められた。甲状腺エコーでは、ややhypoechoicでカラードップラーではhypervascularityなく血流正常。RAI uptake(RAIU)は0.7%と低下していた。
→典型的なtype2 AITである。アミオダロンを中止し、動悸に対しβ-blockerを用いた。経口prednisone 30mg/日を2週間続け、3か月でtaperしたところ正常に戻った。
【総説】
Type1 AITはもともと甲状腺異常があった場合に併発するが、type2は正常な甲状腺に生じる。先行する甲状腺異常の人に対してはアミオダロン投与を避けるためtype1は少なくなってきており、type2が多い。AITは男性に多い。
Thyrotoxicosisの診断自体は容易であるが、type1とtype2の鑑別は困難なことがある。基本的には上記の、ベースに甲状腺疾患があったかどうかと、放射性ヨード取り込み(RAIU)およびカラードップラーエコーによるvascularityの違いで鑑別する。
type1はIodine-induced hyperthyroidismであるため、治療は抗甲状腺薬で行う。ヨードが豊富にある甲状腺は反応しにくく、40-60mg/日の高用量のmethimazoleを長期間用いる。甲状腺のヨード取り込みを抑えて、抗甲状腺薬の反応を良くする目的で、過塩素酸カリウム(KClO4)を併用することが多い。
type2はdrug-induced destructive thyroiditisであり、経口ステロイドによく反応するself-limitingな疾患である。0.5-0.7mg/kg BWのprednisoneを(taperしながら)3カ月続ける。抗甲状腺薬は無効である。
困難なのは、type1とtype2のmixed formであり、甲状腺ホルモン合成が亢進しており、かつ、甲状腺破壊のため分泌も亢進している。治療は、抗甲状腺薬に経口ステロイドを併用する。
AITの診断がついた場合、アミオダロンを中止するかどうかは内分泌医と循環器医でよく相談する必要がある。循環器の立場から中止することが危険でなければ、中止することを勧める。ただし、アミオダロン中止後もAITは数カ月持続する(代謝産物の半減期が長いのと、他の臓器にヨードが蓄積されているため)。
放射性ヨード(RAI)による治療はRAIUが低いため通常は行われない。また薬物療法に抵抗性の場合はthyroidectomyを行うこともある。AIT回復後、再度アミオダロン投与が必要になった場合、予防的にRAIまたはthyroidectomyを行うことがある。