The regulatory subunits of PI3K, p85α and p85β, interact with XBP-1 and increase its nuclear translocation.
Park SW, Zhou Y, Lee J, Lu A, Sun C, Chung J, Ueki K, Ozcan U.
Nat Med. 2010 Apr;16(4):429-37.
【まとめ】
小胞体ストレスに対する応答(UPR: unfolded protein response)が起きる一つの経路として、転写因子XBP-1sの核への移行が重要である。本研究ではXBP-1sの結合蛋白としてPI 3-キナーゼのp85サブユニットを同定し、核への移行と結果的にUPRが起きることに必要であることを示した。
【論文内容】
このグループでは、XBP-1sに結合する蛋白を検索し、免疫沈降とtandem mass spectroscopyを用いてp85αを同定した。MEFにXBP-1s、p85を発現させた実験で、p85α、p85βともXBP-1sの転写活性を増加させ、その核への移行を促進した。さらに、免疫沈降を用いて、p85αとβは通常結合しており、インスリンによってその結合が解離して、XBP-1との結合が起こり、その核への移行が増加する、という今まで知られていなかったインスリンシグナル伝達が明らかになった。
次にin vivoでのXBP-1とp85の結合を検討するため、肥満モデル(ob/obマウス)を絶食後、refeedingした。その結果、正常マウスではrefeeding後にXBP-1sのp85との結合および核への移行が見られたのに対し、ob/obマウスではそれが認められなかった。すなわち、ob/obマウスでは肥満による小胞体ストレス増大があっても、XBP-1sのp85との結合と核への移行が障害されており、UPRが起こりにくいことが分かった。
そこで、p85αおよびβをアデノウイルスを用いてob/obマウスの肝に過剰発現させたところ、XBP-1sとp85の結合は増加、核への移行も促進され、UPRが増加した。その結果、ob/obマウスの血糖値も低下した。
次に肝特異的p85αおよびβKOマウスを作製し、これらのdouble KOマウスも作製した。このマウスではXBP-1sの核への移行が消失し、肝でのUPRが低下した。
【まとめ】
p85α、p85βの「XBP-1sのregulatory subunitとしての役割」を明らかにした。また、インスリンにより、p85α/p85βのheterodimerizationが阻害され、XBP-1sと結合し、核への移行が促進されるという新しいインスリンシグナル伝達系が発見された。このメカニズムは、肥満モデルであるob/obマウスでは抑制されているが、p85の量を増やすことで改善、p85を欠損させることで消失することが示された。