Teriparatide and Osseous Regeneration in the Oral Cavity.
Bashutski JD, Eber RM, Kinney JS, Benavides E, Maitra S, Braun TM, Giannobile WV, McCauley LK.
N Engl J Med. 2010 Oct 16. [Epub ahead of print]
【背景】
副甲状腺ホルモン(PTH)は、骨に対してcatabolic action(骨吸収)とanabolic action(骨形成)という相対する作用を有する。副甲状腺機能亢進症では、PTHが持続的に高値を示し、骨吸収および骨形成が著明に亢進した高骨代謝回転を呈する結果、骨量は減少する。一方、PTHを「間欠的に」投与すると骨形成が促進され、骨量が増加することが知られている。PTH(84アミノ酸)の生理活性はN端の34アミノ酸のみで十分であり、PTH(1-34)テリパラチドが「骨形成促進薬」として用いられている(従来のビスフォスフォネートは「骨吸収阻害薬」である)。PTHは他の薬剤にはない強力な骨形成作用を有することから、テリパラチドは従来にない強力な骨粗鬆症および骨折治療薬として期待されている。
【論文内容】
重篤な慢性歯周病を持ち、歯根膜手術を受けた40名の患者を、テリパラチド1日1回投与群とプラセボ群に割り付け、経口カルシウム・ビタミンD投与と合わせて6週間治療した。1年のフォローアップの後、歯槽骨のレントゲン的測定、臨床的指標(periodontal probing depth, clinical attachment level, bleeding on probing)、血清指標(カルシウム、骨特異的ALP、25-hydroxyvitamin D)、骨バイオマーカー(P1NP, osteocalcin, ICTP)、全身のbone mineral density(DXA)、QOL(Oral Health Impact Profile)の変化を検討した。
その結果、テリパラチド治療群の方はプラセボ投与群に比べ、レントゲン的な骨再生が有意に増加しており(29% vs. 3%)、臨床的指標の改善も大きかった(periodontal probing depthの低下は33% vs. 20%、clinical attachment levelは22% vs. 7%)。テリパラチド群で重篤な副作用はなく、他の指標では有意差を認めなかった。
【結論】
テリパラチドは、臨床的指標をよく改善し、歯槽骨欠損の改善も大きく、口腔内骨創傷治癒を促進した。テリパラチドは、従来指摘されてきたように骨粗鬆症に効果があるだけでなく、歯周病に伴う顎の局所的な骨欠損にも治療的効果が認められた。
骨吸収阻害薬であるビスフォスフォネートの副作用にBisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw(BRON-J)があるが、テリパラチドはBRON-Jの治療薬としての役割も期待される。