Sirtuin regulation of mitochondria: energy production, apoptosis, and signaling.
Verdin E, Hirschey MD, Finley LW, Haigis MC.
Trends Biochem Sci. 2010 Dec;35(12):669-75.
【ミトコンドリアのサーチュイン】
哺乳類には7種のサーチュインがあり (SIRT1-7)、
in vitroでは①NAD+依存性脱アセチル化酵素と②ADP-リボシル化酵素の活性を持つ。SIRT4のみ②の活性だけを持っている。SIRT1、6、7が核に、SIRT2は主に細胞質に、SIRT3、4、5はミトコンドリアに存在する。本総説はミトコンドリアのサーチュインSIRT3-5を扱う。これらは、ここ10年詳しく研究されてきたSIRT1(100kDa)と異なって小さく、30-40kDaの大きさである。近年、SIRT3-5がミトコンドリアでのエネルギー産生、アポトーシス、シグナル伝達に深く関与していることが分かってきた。
【ミトコンドリアにおけるサーチュインの代謝・エネルギー産生に関する役割】
絶食(nutrient deprivation)の状態では、NAD+が増加するため、サーチュインの活性は増加する。そのため、この酵素はメタボリックセンサーであると言える。
絶食時には肝臓におけるSIRT3の量、活性が増加し、脂肪酸酸化の中心的な酵素であるLCAD(長鎖アシルCoA脱水素酵素)が脱アセチル化、活性化される。そのため、
Sirt3-/-マウスでは、この活性化が阻害され、脂肪酸酸化が阻害されて脂肪肝をきたす。肝臓のSIRT3はアセチルCoA合成酵素(AceCS2)を脱アセチル化することによって活性化するため、
Sirt3-/-マウスでは、絶食時のATP産生が低下し低温暴露に対する耐性低下(cold intolerance)が見られた。
またSIRT3は、ミトコンドリア電子伝達系のcomplex I、II、ATP synthaseとも結合して脱アセチル化していることが分かっている。そのため、
Sirt3-/-マウスではATPの産生が低下している。
SIRT4は、GDH(グルタミン酸脱水素酵素)をADPリボシル化することにより、活性を抑制し、TCAサイクルを調節している。膵β細胞ではアミノ酸刺激によるインスリン分泌を負に調節している。
SIRT5は、CPS1(カルバモイルフォスフェート合成酵素)を脱アセチル化することにより活性化させている。CPS1は尿素カイロに関与する酵素であり、アンモニアの排泄にかかわっている(
Sirt5-/-マウスでは血中アンモニア濃度が増加)。