Case records of the Massachusetts General Hospital: Case 38-2010: a 13-year-old girl with an enlarging neck mass.
Cabot RC, Harris NL, Shepard JA, Rosenberg ES, Cort AM, Ebeling SH, Peters CC, Misra M, Parangi S, Ross DS, Shailam R, Sadow PM.
N Engl J Med. 2010 Dec 16;363(25):2445-54.
【症例提示】
8日前から腫大しつつある頚部腫瘤を呈した13歳の少女が当院を受診した。近医にてTSH 5.59 (0.28-3.89)と上昇、T3・T4は正常、抗TPO抗体 244 (<35)と抗サイログロブリン抗体 3000(<40)と高値であった。当院入院にて、甲状腺は硬く、左葉に腫瘤を触知した。甲状腺エコーにて、びまん性に腫大した甲状腺で間質は不均一、多数の高エコー領域を認めた。Levothyroxine投与を開始したが、甲状腺腫大は進行し、頚部リンパ節も触知された。飲み込む時に痛みを感じたが、声のかすれや呼吸困難はなかった。
【鑑別診断】
先天性の原因(cyst)は否定的であり、炎症性(thyroiditis)、結節性病変(thyroid nodule)、甲状腺癌(thyroid cancer)が鑑別に挙げられる。慢性自己免疫性甲状腺炎は10代のgoiterのよくある原因である。抗TPO・サイログロブリン抗体の上昇も認められる。しかし、急速に腫大する甲状腺腫瘤を考えると否定的である。甲状腺結節(甲状腺炎→TSH増加→濾胞の過形成)も考えられるが、levothyroxine投与後も甲状腺腫大が進行していることから、悪性であることが懸念された。甲状腺乳頭癌(papillary thyroid cancer)は小児甲状腺癌で最多のタイプである。その中でもびまん性硬化型(diffuse sclerosing variant)は腫瘤増大が大きく転移の率も高い。
【診断】
慢性自己免疫性甲状腺炎を伴う、びまん性硬化型甲状腺乳頭癌
【病理診断と経過】
甲状腺とリンパ節から針吸引生検を行ったところ、それぞれから甲状腺乳頭癌およびその転移と診断された。その後、甲状腺全摘とリンパ節切除が行われた。さらに放射性ヨード治療を行ったところ、2年後には症状なく、現在もlevothyroxine 150mg投与を続けている。