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神経でのリポ蛋白リパーゼ(LPL)欠損は、エネルギーバランスを変化させ肥満を惹き起こす

Deficiency of lipoprotein lipase in neurons modifies the regulation of energy balance and leads to obesity.

Wang H, Astarita G, Taussig MD, Bharadwaj KG, Dipatrizio NV, Nave KA, Piomelli D, Goldberg IJ, Eckel RH.

Cell Metab. 2011 Jan 5;13(1):105-13.

【まとめ】
FFAを視床下部に注入すると食欲が抑制される。LPL(=TG-rich リポ蛋白からFFAを放出させる)がその過程にどのように影響しているか検討するため、神経特異的LPL欠損マウス(NEXLPL-/-)を作製した。このマウスは過食・肥満をきたし、視床下部での食欲亢進ペプチドであるAgRP・NPYの発現が増加、代謝率が低下していた。また、TG-rich リポ蛋白からのFFA取り込みが低下していた。したがって、脳でのLPLを介したTG-rich リポ蛋白の感知が、体重・エネルギーバランスの中枢制御に重要である。

【論文内容】
視床下部でのFA(fatty acid)によるエネルギーバランス調節についてはよく知られているが、脳でのde novo合成なのか、末梢でのFA利用なのかは分かっていない。FFAを視床下部(第三脳室)に注入すると食欲が抑制されるが、in vivoでのFFAの由来については不明である。そこで、神経特異的LPL欠損マウス(NEXLPL-/-)を作製し、中枢神経におけるFFA産生が摂食・エネルギー消費に与える役割を検討した。その結果、このマウスはコントロールと比較して肥満であり、一時的に摂食が増加し、代謝率・運動量が低下していた。

次に脳のLPLが、TG-rich リポ蛋白のFAをどう利用しているか検討するため、放射性ラベルしたTGを含むカイロミクロンをこのマウスに注入した。その結果、NEXLPL-/-マウスの視床下部ではTG-rich リポ蛋白由来のFA取り込みが減少していた。このことがエネルギーバランスと体重にどのように影響しているかを検討するため、食欲調節神経ペプチドの発現を調べた。その結果、NEXLPL-/-マウスの視床下部では食欲亢進ペプチドであるAgRPとNPYの発現が増加していた。

【結論】
神経特異的なLPL欠損により、肥満が惹起される。これは摂食亢進とともに運動量と代謝率の低下によって起こっており、視床下部のAgRPとNPYの発現増加を介している。
by md345797 | 2011-01-12 16:37 | エネルギー代謝