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CRTC3はカテラコミンシグナルをエネルギーバランスに結び付ける

CRTC3 links catecholamine signalling to energy balance.

Song Y, Altarejos J, Goodarzi MO, Inoue H, Guo X, Berdeaux R, Kim JH, Goode J, Igata M, Paz JC, Hogan MF, Singh PK, Goebel N, Vera L, Miller N, Cui J, Jones MR; CHARGE Consortium; GIANT Consortium, Chen YD, Taylor KD, Hsueh WA, Rotter JI, Montminy M.

Nature. 2010 Dec 16;468(7326):933-9.

【まとめ】
CREB(cAMP response element binding protein)を単離し、そのcoactivatorであるCRTC(当初はTORCとも呼ばれていた*)の機能と代謝への関連の解明を続けてきたSalk InstituteのMarc Montminyのグループの報告。CRTC3-/-マウスを作製したところ、脂肪組織でのβアドレナリン受容体のシグナル伝達の減弱によって肥満が促進された。メキシコ系アメリカ人コホートにおいて、転写活性が増加しているヒトCRTC3異型が肥満と関連づけられていることもあり、脂肪細胞のCRTC3はヒトの肥満の発症に関与している可能性がある。

【論文内容】
βアドレナリン受容体が活性化されると、cAMPの上昇に伴ってCRTCs(CREB regulated transcriptional coactivators)による遺伝子発現が増加する。CRTCは3種類(Crtc1-3)が存在し、Crtc1は主に脳に発現しレプチンによるエネルギー消費を、Crtc2(別名TORC2*)は肝臓に発現し空腹時の糖新生を調節している。Crtc2ノックアウトマウスは糖新生が低下し、高脂肪食負荷によるインスリン抵抗性が減弱している。今回、Crtc3(WATに主に発現している)の役割を検討するため、Crtc3-/-マウスを作製した。

Crtc3-/-マウスは高脂肪食負荷時の体重増加が少なかったが、これはWTと比べ食事摂取・運動量は同じであるのに対し、エネルギー消費(酸素消費量・脂肪酸酸化)が増加していたためと考えられた。またCrtc3-/-マウスでは、高脂肪食による脂肪肝や脂肪組織マクロファージ浸潤も少なかった。また、インスリン感受性が亢進し、耐糖能も正常であった。このマウスの脂肪細胞にISO(isoproterenol, βアドレナリン受容体agonist)を加えると、WTマウスに比べ、lipolysis ratesが増加していた。Crtc3はカテコラミンシグナルに反応して活性化され、Rgs2 (adenyl cyclase活性を阻害するG-protein)の発現を亢進させることによりadenyl cyclase活性を抑制した。

Crtc3による転写活性が増加するミスセンス変異(S72N)と肥満との関連をメキシコ系アメリカ人のコホートで調べたところ、72Nが肥満(BMI, hip-circumference)と関連づけられた。

【結論】
高脂肪食は、エネルギー摂取の増加とそれに伴う肝臓への異所性脂肪蓄積により肥満とインスリン抵抗性を引き起こす。Crtc3は脂肪組織のカテコラミンシグナルを減弱させることにより、この過程に関与している。Crtc3は、予想外なことに、脂肪細胞cAMPシグナルのnegative feedback regulator(シグナルをself-attenuate するメカニズム)であった。また、脂肪細胞においてカテコラミンによるlipolysisやfatty-acid oxidationを制限する、いわゆる「倹約遺伝子」の役割もはたしていると考えられる。

*ここでのTORCやTORC2は、transducers of regulated CREBの略で、mTORC2(mTOR complex 2)とは別物であるので注意。
by md345797 | 2011-01-17 16:27 | エネルギー代謝