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尿崩症、下垂体前葉機能低下症、下垂体茎肥厚を呈した患者

A patient with diabetes insipidus, anterior hypopituitarism and pituitary stalk thickening.

Tritos NA, Byrne TN, Wu CL, Klibanski A.

Nat Rev Endocrinol. 2011 Jan;7(1):54-9.

【症例】
42歳の女性、突然起きた強い口渇と多尿があり、1日12リットルの水を飲んでいた。月経不順もあった。視野異常、頭部外傷、悪性疾患の既往はなかった。
水制限試験で血清Naは147mmol/l、血清浸透圧は302mmol/kgと上昇、尿浸透圧は69(正常700以下)mmol/kgと低下した。尿浸透圧はデスモプレシン点鼻で367mmol/kgまで上昇したので、中枢性尿崩症と診断された。デスモプレシン点鼻治療が行われたところ、口渇・多尿の症状は軽快した。また中枢性性腺機能低下症があり、エストロゲン・プロゲステロン投与が行われた。なお、下垂体MRIでは下垂体茎の増強が認められた。

2年後、持続する疲労を訴え、FT4の低下・TSH正常と、中枢性甲状腺機能低下症が認められた。これに対しT4補充療法が行われたが、血清IGF-1値も低値であったため、GH刺激試験(GRH+アルギニン負荷)を行った。その結果、GH分泌反応が低下しており、GH欠損と診断、GH補充療法(0.2mg/日皮下注)を開始した。

1年後、左頸部の痛みと腫脹を訴え、顎下腺唾液腺炎と診断、顎下腺切除と組織診断によりランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis; LCH)であることが明らかになった。ホルモン補充療法を行い、内分泌学的には安定している。下垂体病変も診断から7年たっても変化なかった。

【診断】
口渇・多尿は、高血糖・高カルシウム血症・低カリウム血症を除外し、水制限試験で尿濃縮能欠乏・デスモプレシンに対する尿浸透圧の上昇を確認すれば尿崩症と診断できる。尿崩症の患者では下垂体前葉機能検査を行うべきであり、この患者では中枢性性腺機能低下症とGH欠損症が認められた。

MRIでの下垂体茎肥厚は、外傷性・先天性・炎症性・腫瘍性などの可能性が考えられる。本例ではリンパ球性下垂体炎またはLCHが考えられたが、顎下腺切除の組織診断によりLCHと診断された。LCHは成人では稀で(100万人に1-2人/年の発症)、その病態についても炎症性か腫瘍性か分かっていない。骨・肺・皮膚などが広く冒され、下垂体茎・視床下部に浸潤することもある。LCHで最も頻度が高い内分泌疾患は尿崩症であり、下垂体前葉機能低下症も通常起きる。

【治療と管理】
高用量グルココルチコイド療法および抗腫瘍化学療法との併用が推奨されているが、この治療には議論があるところである。内分泌欠損に対しては標準的な補充療法を行う。LCHの予後は病変の部位と拡がりによる。多臓器疾患では死亡率は20%にもなる。本患者のように下垂体と唾液腺に病変が限定しているような例では、緩慢な経過(indolent course)をたどる。
by md345797 | 2011-01-28 19:18 | 症例検討/臨床総説