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糖尿病治療ターゲットの個別化

Type 2 diabetes mellitus in 2010: Individualizing treatment targets in diabetes care.

Buse JB.

Nat Rev Endocrinol. 2011 Feb;7(2):67-8.

【総説内容】
世界では2型糖尿病患者は2億8500万人おり、2030年までに4億3900万人に増加すると予想されている。糖尿病の主要な死因は心血管疾患であるが、過去3つの大規模臨床試験(ACCORD、ADVANCE、VADT)の結果は、強化血糖コントロールが心血管アウトカムに有効であることを示せず、糖尿病治療の根本を揺るがした。ここでは、2010年の間に報告された、ACCORDの追加解析について取り上げる。

2010年5月のACCORD疫学解析ではHbA1cと死亡率について検討された。10251名の心血管疾患ハイリスクの2型糖尿病患者を強化血糖コントロール群(HbA1c <6.0%)と標準コントロール群(HbA1c 7.0-7.9%)にランダムに割りつけた(注:HbA1cはいずれもNGSP値であるため、JDS値では0.4%を引いて考える)。3.4年の追跡期間の後、強化コントロール群の方が有意に全死亡率が高かった。この原因として、強化コントロール群における重症低血糖、体重増加などが検討されたが、明らかなものは同定できなかった。

2010年6月にはACCORD研究において、血圧および脂質を強力に低下させた群の結果が示された。ACCORD-BP試験では、収縮期血圧を120未満と140未満に低下させた群で一次エンドポイントである心筋梗塞・脳梗塞の新規発症、心血管関連死に差は認められなかった。ACCORD-Lipid試験は、シンバスタチンで治療中の2型糖尿病患者にfenofibrateとプラセボの効果を比較したものだが、一次および二次エンドポイントに有意差はなかった。

ACCORD-Eyeサブ解析では、ACCORD試験で一次細小血管エンドポイントに達した2856名のサブグループを対象として4年間にわたり糖尿病網膜症の進展について検討した。その結果、血糖と脂質の強化療法を行った群では網膜症進展抑制が見られたが、血圧強化療法群では見られないという結果であった。

ACCORD-ADVANCE-VADT以後の世界では、細小血管合併症を予防するにはHbA1cのターゲットは7%未満、というコンセンサスが得られている。さらに重篤な低血糖やその他治療に伴う副作用がなければ、より低いHbA1cが望ましいとしている。ACCORD試験の結果からは、サブグループに基づいたHbA1cターゲットの個別化(individualization of HbA1c target)という観点が提案された。今後のACCORDの解析およびフォローアップにおいて、血圧や脂質管理のindividualizationという考え方も出てくるであろう。
by md345797 | 2011-02-22 17:25 | 症例検討/臨床総説