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耐糖能異常から糖尿病発症を予防するためのピオグリタゾン治療

Pioglitazone for diabetes prevention in impaired glucose tolerance.

DeFronzo RA, Tripathy D, Schwenke DC, Banerji MA, Bray GA, Buchanan TA, Clement SC, Henry RR, Hodis HN, Kitabchi AE, Mack WJ, Mudaliar S, Ratner RE, Williams K, Stentz FB, Musi N, Reaven PD, for the ACT NOW Study

N Engl J Med. 2011 March 24. 364:1104-1115.


【まとめ】ピオグリタゾンが耐糖能異常(IGT)から2型糖尿病が発症するリスクを減少させることができるかを検討した。ピオグリタゾン群はプラセボ群と比較して、2.4年間の追跡後の糖尿病発症は72%少なかった。体重増加、浮腫の出現はピオグリタゾン群の方が多かった。

【論文内容】
耐糖能異常(IGT)から2型糖尿病の発症は、生活習慣の調節やメトホルミン、チアゾリジン系薬剤(トログリタゾン、ロシグリタゾン)、アカルボース、摂食調節外科手術によって減少させることができることが示されている。チアゾリジン系薬剤では、トログリタゾンは現在使用できず、ロシグリタゾンは心血管疾患リスク増大のためピオグリタゾンが使えない患者のみで使用可能となっている状態である。そこで本研究では、ピオグリタゾンがIGTから2型糖尿病が発症するリスクを減少させることができるかを検討した。

602名の患者(平均BMIが34.5±0.4)にピオグリタゾンとプラセボを無作為に割り付け平均2.4年間追跡した。空腹時血糖は年4回、経口ブドウ糖負荷試験は年1回行い、糖尿病を発症したかどうかの診断は繰り返しの検査に基づいて行った。

2型糖尿病の年間発症率は、ピオグリタゾン群で2.1%だったのに対し、プラセボ群で7.6%であった(ピオグリタゾン群の糖尿病発症のハザード比は0.28)。IGTから正常耐糖能への転化は、ピオグリタゾン群で48%、プラセボ群で28%であり、空腹時血糖の低下はそれぞれ11.7mg/dl vs. 8.1mg/dl、2時間後血糖の低下はそれぞれ、30.5 mg/dl vs. 15.6 mg/dl、HbA1cの変化は、-0.04% vs. +0.20%であった。

ピオグリタゾン投与により、拡張期血圧低下と頚動脈内膜肥厚の低下、HDL-Cの増加、ALT/ASTの低下が認められた。体重増加はピオグリタゾン群の方が大きく(3.9kg vs. 0.77kg)、浮腫の発現も多かった(12.9% vs. 6.4%)。

IGTに対するピオグリタゾン治療は、糖尿病発症のリスクを減少させた。18患者を1年間治療すると、1件の糖尿病発症を予防することができる。ピオグリタゾンはHDL-Cの低下や拡張期血圧の低下、頚動脈内膜肥厚の減少をきたしたが、糖尿病合併症の予防に効果があるかは長期的な検討を待つ必要がある。
by md345797 | 2011-03-24 20:22 | 大規模臨床試験