Regulation of glucose homeostasis through a XBP-1–FoxO1 interaction
Zhou Y, Lee J, Reno CM, Sun C, Park SW, Chung J, Lee J, Fisher SJ, White MF, Biddinger SB, Ozcan U.
Nat Med. 2011 Mar;17(3):356-65.
【まとめ】
XBP-1s(spliced form of X-box-binding protein-1)は、小胞体ストレス応答(小胞体のタンパク質折りたたみ機能)を増強し、その結果インスリン感受性が改善されることが知られている。本研究では、XBP-1sが転写因子FoxO1と結合して、プロテアソームによるFoxO1分解を誘導することを見出した。さらに、インスリン欠乏またはインスリン抵抗性のマウスにおける
in vivo での肝臓におけるXBP-1sの過剰発現の効果を検討した。その結果、インスリンシグナル伝達または小胞体ストレス応答が改善されない場合でも、XBP-1sの過剰発現によって血糖が低下することを見いだした。重度のインスリン抵抗性を示す ob/obマウスに、DNAに結合できず小胞体ストレス応答を増強できない変異型XBP-1sを発現させても、血糖が低下し耐糖能が改善した。したがってXBP-1sはFoxO1との相互作用によって、小胞体ストレス応答とは関係なく、肝臓のインスリン抵抗性を改善でき、XBP-1sの発現増加は2型糖尿病に対する新規治療法となるかもしれない。
【論文内容】
小胞体ストレス応答に重要な役割を果たすXBP-1sと、肝の糖新生を調節するFoxO1の関連を調べるため、これらをMEFsに共発現させた。その結果、XBP-1sの発現を増やしていくとFoxO1の蛋白量が低下してくることが分かり、26S proteasome阻害薬を添加したところこのことが起きなかったため、XBP-1sによりFoxO1のdegradationが起こることが示された。また、免疫沈降とtwo-hybrid assayにより、両者が直接結合することが分かった。XBP-1sのFoxO1への作用は、FoxO1のAktによるリン酸化とは無関係に起きた(PI3KおよびmTORの阻害剤、BEZ235でAkt活性化を阻害しても起きた)。
次に、中等度の濃度のAd-XBP-1sを
ob/obマウスに注入し肝臓に過剰発現させたところ、血糖低下が認められたが、ITTでのインスリン抵抗性の改善やインスリンシグナル(IRS-1リン酸化、Aktリン酸化)の改善は認めなかった。核におけるFoxO1の蛋白量は低下し、糖新生酵素
G6pc、Pck1の発現も低下していた。すなわち、XBP-1sのFoxO1への作用はインスリン抵抗性改善およびインスリンシグナル伝達非依存性に起きる。
また、DNAに結合しないがFoxO1に結合するXBP-1s mutant (ΔDBD)は、小胞体ストレス関連蛋白を活性化できないが、FoxO1のdegradationを起こすことができた。このmutantを
ob/obマウスに注入しても血糖低下が起きたため、XBP-1sは小胞体ストレス応答への関与とは独立に糖代謝を調節していることが分かった。
さらに、XBP-1sをSTZによるインスリン欠乏マウス、肝でのインスリンシグナル欠損マウス(LIRKOおよびliver-specific IRS-1/2 DKOマウス)に注入しても、これらのマウスの血糖を低下させ、糖新生酵素の発現を抑制した。
以上のXBP-1sの作用はFoxO1依存性に起きることが、Ad-shFoxO1の注入によってFoxO1をdepletionすることで示された。逆にXBP-1s欠損マウスを用いてXBP-1をdepletionすると、FoxO1が増加し耐糖能が悪化した。
【結論】
XBP-1sは、小胞体ストレスの改善という作用を介さず、またインスリン抵抗性の改善という作用を介さず、糖尿病における糖新生の増大を改善することで血糖を低下させる。その点で、XBP-1sの肝臓での発現は、1型および2型糖尿病の新しい治療法につながるかも知れない。