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活性酸素種とインスリン抵抗性


Reactive oxygen species and insulin resistance: the good, the bad and the ugly.


Tiganis T.

Trends Pharmacol Sci. 2011 Feb;32(2):82-9.

【まとめ】
活性酸素種(ROS)はインスリン抵抗性を悪化させることが知られているが、膜のNADP(H) oxidaseにより産生されるROSは正常の細胞内シグナル伝達に必要であるとも考えられている。実際、インスリンはROSの産生を促進し、それがチロシンフォスファターゼ(PTP)の不活性化をもたらし、チロシンリン酸化依存性のインスリンシグナル伝達を促進させる。近年、H2O2がin vivoではインスリン感受性を亢進、インスリン抵抗性を減弱させることが報告されており、ROSはインスリン反応を増強もするし、減弱もさせることが分かってきた。

【糖尿病における「悪玉」ROS】
細胞内ROSの大部分は、ミトコンドリア呼吸によって産生される。産生されたsuperoxide(O2・-)はsuperoxide dismutase(SOD)によって速やかにhydrogen peroxide (H2O2)に変換される。H2O2は膜を通過して拡散し、catalase、peroxiredoxins(PRX)、glutathione peroxidases(GPX1-4)によって消去される。ミトコンドリアのほかのROS産生部位は、小胞体のERストレスと炎症性サイトカイン(TNFα、IL-6など)であり、これらは肥満・インスリン抵抗性の状態で亢進している。

【ROSはin vivoでインスリン抵抗性を亢進させる】
AntioxidantであるMnTBAPはob/obマウス、高脂肪食負荷マウスのインスリン抵抗性を改善するが、MnTBAPはsuperoxideやH2O2だけでなくperoxynitrite(ONOO-)や脂質のperoxy radicalも除去することから、そのインスリン抵抗性改善の正確なメカニズムは不明である。ミトコンドリアのcatalaseやSOD2を過剰発現させたトランスジェニックマウスは、高脂肪食によるインスリン抵抗性が起こりにくく、インスリン抵抗性発症にはミトコンドリアのsuperoxideが重要とされている。ROSはJNKやIKKβを活性化し、それらがIRS-1のセリンリン酸化を起こし、インスリン抵抗性を惹起すると考えられている。

【H2O2は「善玉」ROS?】(Loh, et al. Cell Metab 2009
ホルモンやサイトカイン刺激により膜のNADPH oxidase(NOX)複合体によってH2O2が生成され、H2O2はPTPs(PTP1BやPTENなど)を不活性化する。インスリン刺激によりH2O2が産生されると、PTP1B(IRSのチロシンリン酸化低下)やPTEN (PI3Kシグナルの抑制)の不活化により、インスリンシグナルが増強される。実際、antioxidant enzymeであるGpx1(H2O2を消去)の欠損マウスは、高脂肪食負荷でもインスリン抵抗性になりにくく、インスリンシグナル伝達が亢進していることが示されている。

では、Antioxidant投与はインスリン抵抗性発症に有益なのか、有害なのか(beneficial or detrimental)? 今のところ臨床的にはantioxidant(ビタミンC、E、βカロテンなど)の服用が2型糖尿病発症予防に有用というエビデンスはない。この問題に関しては、今後の検討が待たれる
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by md345797 | 2011-04-03 02:03 | インスリン抵抗性