Prospective influences of circadian clocks in adipose tissue and metabolism.
Gimble JM, Sutton GM, Bunnell BA, Ptitsyn AA, Floyd ZE.
Nat Rev Endocrinol. 2011 Feb;7(2):98-107.
【まとめ】
概日リズムは、脂肪組織を含む内分泌臓器の機能に重要な役割を果たしている。糖・脂質代謝における概日リズムによる調節は解明が進んでいる。概日周期の乱れは、2型糖尿病や肥満の増加に深くかかわっており、代謝疾患において概日メカニズムは新しい治療のターゲットになりうる。
【概日時計の分子機構】
BMAL1とCLOCKのヘテロダイマーは、概日時計のフィードバックループの「positive arm」であり、遺伝的に高度に保存されたE-Box領域に結合する転写因子である。この標的遺伝子であるCRY1、CRY2とPER1-3のヘテロダイマーは、「negative arm」としてBMAL1遺伝子の転写を抑制することで概日時計のフィードバックループを形成する。このループが約24時間周期で振動(oscillate)する。これらの概日蛋白は、脂肪・糖代謝に関連するNR1D1/2(REV-ERBα/β)も調節している。生体の概日リズムに重要な部位は中枢神経系の視交叉上核(SCN)であるが、脂肪組織を含むほとんどの組織に概日蛋白によるフィードバックループは存在している。
概日蛋白は脂肪細胞分化に重要であり、BMAL1をsiRNAで発現抑制した3T3-L1 preadipocyteやBMAL1-/-マウスのMEFでは脂肪分化が起こらない。また、BMAL1-/-マウスでClockの変異があると、膵島が小さく耐糖能異常が起きる。
【概日時計の乱れ】
概日リズムは外部刺激(光、食事、薬剤など)に同調するが、光に対する同調はSCNが、食事に対する同調はMcr3(melanocortin receptor 3)が維持している。核内受容体リガンド(例えばglucocorticoid receptor ligand であるデキサメサゾン)の投与は末梢組織の概日遺伝子振動を調節する。
脂肪組織は光刺激に対する概日調節の主要なターゲットである。1950年代に夜食行動と肥満の関連が初めて報告され、80年代後期から90年代初期にかけて、糖尿病患者と正常者で糖・インスリン代謝の日内変動に差があることが分かった。また、双極性障害の患者で概日リズムの乱れがあることが知られており、2種類の薬剤、リチウム(GSK3β阻害薬)とバルプロ酸(histone deacetylase 阻害薬で、histone acetyltransferase活性をもつCLOCKを調節する)が用いられている。脂肪組織では、lipoprotein lipaseやadipokine (adiponectin、leptin)の分泌が概日リズムを形成しており、肥満ではそれらの異常が認められる。糖尿病モデル動物(例えばSTZ投与マウス)でも概日周期の乱れが出現することが知られている。
【治療における概日メカニズム】
チアゾリジン系薬剤を2型糖尿病患者に投与する際のタイミングは効果に影響するだろうか?PPARγはBmal1の転写を調節し、チアゾリジン系薬剤はその転写を活性化させるという報告がある。甲状腺ホルモンやエストロゲン補充療法でも同様な問題が考えられる。今後、肥満や2型糖尿病治療でも時間生物学的な考慮が必要となるだろう。