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肥満と糖恒常性に対する腸管微生物叢の影響

Effects of the gut microbiota on obesity and glucose homeostasis.

Greiner T, Bäckhed F.

Trends Endocrinol Metab. 2011 Apr. 22(4)117-123.

【論文内容】
近年の食事の変化は、腸管の微生物構成を変化させ、肥満や糖尿病の増加につながっていると考えられている。ヒトの腸管の微生物叢(gut microbiota)は、約200種の主要な細菌とそうでない約1000種の細菌によって成り立つ。主要な細菌には3群あり(Firmictutes門、Bacteroidetes門、Actinobacteria門)、合計で、細菌叢の95%以上を占める。腸管細菌叢は、食事の変化によって、その組成や転写ネットワークを急速に変化させる動的な「臓器」といえる。例えば、マウスに高脂肪食を負荷すると、24時間以内にFirmicutes門(特にErysipelotrichi )が増加、さらにそのトランスクリプトームも変化する。

腸管細菌叢は、肥満や脂肪の状態に影響を与える環境因子でもある。肥満者は、正常者とは異なる細菌叢を持っている(例えば肥満者はBacteroidesが少なく、体重減少によりBacteroidesが増加する)。また、無菌マウスは、通常のマウスに比べて体重が少なく、摂食による肥満を起こしにくい。このマウスに正常の細菌叢を植えつけると、体脂肪が50%増加しインスリン感受性が低下する。腸管細菌叢は食事から得られるエネルギーを増加させることによって、肥満に直接関与していると考えられる。

自然免疫は、マクロファージにおいてTLRsを介して炎症性シグナル伝達を活性化することにより、インスリン抵抗性や肥満を引き起こす。TLRsは腸管細菌叢の構成を変えることができ、それがメタボリックシンドロームや肥満に関連している。

2型糖尿病では、腸管細菌叢のうちFirmicutes門、特にFaecalibacterium prausnitziiが減少していることが知られており、F. prausnitziiはインスリン抵抗性を軽減する「probiotic」として働いていると考えられている。そのため、腸管細菌叢が糖尿病の診断や治療に使われる可能性がある。

生体のエネルギー摂取が多くなると、腸管細菌叢の発酵によりshort chain fatty acids (SCFAs)が増加する。SCFA受容体であるGpr41とGpr 43を欠損させたマウスはコントロールに比べて痩せていることから、SCFAsと肥満の関連が指摘されている。また食事による肥満では、腸管細菌叢は小腸から分泌されるAngptl (angiopoietin-like protein) の発現を抑制し、その結果、脂肪組織でのLPL活性が増加して脂肪のTG貯蔵が増加する。またAngptl4の減少により骨格筋での脂肪酸酸化が低下する。高脂肪食では血液中のlipopolysaccharide (LPS)が増加するが、それによりLPS受容体複合体であるTLR-4/CD14を介して肥満、インスリン抵抗性が出現する。

腸管粘膜の細胞の1%は、腸管内分泌細胞 (enteroendocrine cells)であり、これらの細胞からのホルモン分泌も腸管細菌叢の影響を受けている。腸管内分泌細胞のGrp41(SCFAsの受容体)が刺激されると、PYY発現が増加し、その影響で腸管の食物通過が遅くなりエネルギー摂取量が増加する。また、経口でoligofructose(OFS)を投与すると腸管のBifidobacteriumが増加することによって腸管L-細胞の数が増加し、GLP-1量が増加する。

【結論】
ライフスタイルの変化により食事内容が大きく変わっているが、カロリー摂取量が増加したというだけでなく、腸管細菌叢が変化していることにより、肥満・糖尿病が増加していると考えられる。現在までに腸管細菌叢によってコントロールされるシグナルネットワークについてはあまり分かっていない。「健康な腸」の構成を理解するとともに、それに近付けていくことは疾患の治療につながりうる。
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by md345797 | 2011-04-06 18:23 | 糖尿病の病態生理