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アディポネクチンはマクロファージ由来IL-6を介する肝のIRS-2発現亢進によってインスリン感受性を増強する

Adiponectin Enhances Insulin Sensitivity by Increasing Hepatic IRS-2 Expression via a Macrophage-Derived IL-6-Dependent Pathway.

Awazawa M, Ueki K, Inabe K, Yamauchi T, Kubota N, Kaneko K, Kobayashi M, Iwane A, Sasako T, Okazaki Y, Ohsugi M, Takamoto I, Yamashita S, Asahara H, Akira S, Kasuga M, Kadowaki T.

Cell Metab. 2011 Apr 6;13(4):401-12.

【まとめ】
アディポネクチンが、肝臓におけるIRS-2のようなインスリンシグナル伝達分子に直接影響を及ぼすかどうかは不明であった。この研究では、アディポネクチンがSTAT3の活性化を介してIRS-2を増加させていることを報告している。このSTAT3の活性化は、以前から知られていたアディポネクチン受容体(AdipoR 1、AdipoR2)とは別にNFκBを活性化する経路を介して、マクロファージでのIL-6産生を伴っている。すなわち、アディポネクチンによるインスリン感受性亢進作用は、未同定のアディポネクチン受容体によるIL-6依存性経路を介する肝のIRS-2発現亢進によることが明らかになった。

【論文内容】
アディポネクチン欠損マウスの肝では、IRS-2の蛋白量およびインスリンによるリン酸化が低下しており、アディポネクチン投与によりそれらは回復した。また、インスリン抵抗性モデルのdb/dbマウスでも肝のIRS-2発現が低下しており、そこにアディポネクチンを投与したところ、IRS-2の発現・リン酸化は正常化し、それに伴うインスリンによるAkt/Foxo1のリン酸化、PI3Kの活性化も正常化した。

アディポネクチン投与により、db/dbマウスの肝臓ではSTAT3のリン酸化が認められたが、培養肝細胞であるFao細胞では認められなかった。したがって、何らかの血漿中の因子がSTAT3のリン酸化にかかわっていると考えられた。STAT3の活性化物質であるIL-6がアディポネクチン投与により増加していることから、アディポネクチンがIL-6分泌を促進し、IL-6によりSTAT3が活性化され、それに伴いIRS-2の発現が増加している可能性が考えられた。

IL-6抗体による中和を行ったマウスまたはIL-6KOマウスにアディポネクチンを投与しても、肝のSTAT3の活性化やIRS-2の発現亢進が起きなかった。また、肝臓特異的にSTAT3を欠損させたマウスでは肝のIRS-2の発現亢進が起きず、constitutive active STAT3を発現させたFao細胞ではIRS-2が増加した。

IL-6の由来を検討するために性腺周囲の白色脂肪組織の分画を検討したところ、アディポネクチンによるIL-6発現亢進は脂肪細胞(adipocytes)ではなく間質血管細胞(stromal vascular cells)で認められ、F4/80との共染色によりマクロファージ由来であることが分かった。さらに、IL-6KOマウスと野生型(WT)マウスの間で骨髄移植実験を行ったところ、WTの骨髄をIL-6KOマウスに移植するとアディポネクチンによりIL-6が誘導され肝でのIRS-2増加が起こった。したがってこの場合のIL-6が骨髄由来であることが分かる。

アディポネクチンによるIL-6産生はIκBの減少を伴い、NFκBによる転写調節を介した。さらに、培養マクロファージであるRAW264.7細胞にさまざまなフォームのアディポネクチンを添加しIL-6誘導の反応を見たところ、full-lengthのアディポネクチンが最も強くIL-6を誘導した。また、AdiopoR1、R2のダブルノックアウトマウスでもアディポネクチンによるIL-6の誘導が起きたため、未同定のアディポネクチン結合分子が存在すると考えられた。

【結論】
アディポネクチンは、マクロファージにおけるIL-6誘導を介して肝でSTAT3を活性化し、IRS-2の発現を亢進させる。さらに、この過程に関わるAdiopoR1、R2以外の未同定のアディポネクチン受容体の存在が示唆された。
by md345797 | 2011-04-07 00:23 | インスリン抵抗性