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TLR4を介する脂肪によるインスリン抵抗性発症には、飽和脂肪酸によるセラミド生合成が必要

Lipid-induced insulin resistance mediated by the ptoinflammatory receptor TLR4 requires saturated fatty acid-induced ceramide biosynthesis in mice.

Holland WT, Bikman BT, Wang L-P, Yuguang G, Sargent KM, Bulchand S, Knotts TA Shui G, Clegg DJ, Wenk MR, Pagliassotti MJ, Scherer PE, Summers SA.

J Clin Invest. 2011 Apr. published online.

【まとめ】
脂肪によって起こるインスリン抵抗性のメカニズムの一つは、TLR4による飽和脂肪酸(SFAs)の認識によって起こる自然免疫のシグナル伝達である。本研究では、TLR4による飽和脂肪酸の認識がセラミド生合成の上流にあることを示す。またこの過程は、IKKβの活性化に依存して起きる。セラミド産生増加は、TLR4依存性のインスリン抵抗性に不可欠な要素であることも分かった。これらの結果から、脂肪によってインスリン抵抗性が起こる炎症経路には、セラミドが作用していることが明らかになった。

【論文内容】
飽和脂肪酸を多く含むラード油と不飽和脂肪酸が多い大豆油をそれぞれマウスに注入したところ、どちらも骨格筋のdiacylglycerol (DAG)が上昇し、クランプのグルコース注入率(GIR)が低下したが、ラード油注入のみで骨格筋中のセラミドが高値を示した。これらのマウスに、serine palmitoltransferase (SPT:セラミド合成酵素) の阻害剤を投与しておくと、筋肉のセラミドが上昇せずインスリン抵抗性(GIRの低下)が起こらなかった。また、ラード油注入ラットで血漿中のIL-6、TNFαが大きく上昇した。この実験をTLR4機能欠失マウス(TLR4lps-d)で行うと、ラード油によるセラミド増加やインスリン抵抗性が起きなかった。
TLR4アゴニストであるlipopolysaccharide(LPS)投与で、野生型マウスの単離筋でセラミドが増加し、糖取り込みが減少したが、TLR4lps-dマウスの単離筋ではセラミドは増加せず、糖取り込みが減少しなかった。ラード油注入実験では、野生型マウスは骨格筋・肝臓でセラミドが増加し、それぞれインスリン抵抗性を生じた(GIRの低下、肝糖放出抑制の減少)が、TLR4lps-dマウスでは高脂血症は生じたがセラミドの増加はなく、インスリン抵抗性も起こらなかった。骨格筋にはmyotubeやマクロファージが含まれるため、LPS投与実験をC2C12 myocytesとRAW264.7 macrophageを用いて行ったところ、LPS投与によってセラミドが増加し、インスリンによるAkt/PKBのリン酸化が抑制された。

TLR4の下流にはNFκBがあり、その上流のIKKβとの関連を検討した。C2C12 myocytesにIKK-WTとIKK-KDを過剰発現させLPS刺激したところ、IKK-KDを発現させた方はセラミドが産生されず、LPSによるAktリン酸化抑制も見られなかった。高脂肪食による肥満マウスにIKKβ阻害薬であるサリチル酸(sodium salicylate:NS)を投与したところ、NS投与によりインスリン抵抗性と耐糖能は改善し、高脂血症に差はなかったが骨格筋・肝臓のセラミドは有意に低下していた。

【結論】
脂肪によるインスリン抵抗性の説明には2つあり、ひとつは脂肪毒性仮説(脂肪が直接インスリン作用をブロックする)、もうひとつは炎症仮説(脂肪によるTLR4活性化によりマクロファージが脂肪組織に浸潤し炎症性サイトカインを放出させる)である。この研究により、その2つの説が、飽和脂肪酸→TLR4活性化→IKKβ活性化→SPTの活性化→セラミド生合成の増加→Aktリン酸化の低下、という経路を介して一元的に説明できるようになった。
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by md345797 | 2011-04-08 00:23 | インスリン抵抗性