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AMPKとcalcineurinによる寿命調節は、CRTCとCREBを介する

Lifespan extension induced by AMPK and calcineurin is mediated by CRTC-1 and CREB.

Mair W, Morantte I, Rodrigues AP, Manning G, Montminy M, Shaw RJ, Dillin A.

Nature. 2011 Feb 17;470(7334):404-8.

【まとめ】
C. elegans (線虫)において、AMPKの活性化とcalcineurinの不活性化は老化を遅らせるため、これらは哺乳類の老化関連疾患の治療標的として重要と考えられている。本研究ではこの寿命延長が、CRTC-1 (線虫のCRTC)の転写後調節だけによっていることが示された。CRTC-1はAMPKによって不活性化される直接のターゲットであり、CRTC-1は転写因子CREB homologue-1 (CRH-1:線虫のCREB)と結合する。AMKPの活性化、calcineurinの不活性化はCTCR・CRH-1の活性を低下させることにより、転写活性を抑制し、寿命を延長する。crtc-1の発現を低下させると、crh-1依存性に寿命が延長され、crh-1の発現を低下させても寿命延長が起こる。エネルギー状態を反映するAMPKとcalcineurinによるCRTCとCREBの活性化低下は、低エネルギー状態に対応する寿命延長の分子機構であると言える。

【論文内容】
寿命調節に関わるAMPK(とcalcineurin)は、CRTCs の2つのセリンをリン酸化(脱リン酸化)し、転写調節を不活性化(活性化)するため、CRTCsが寿命調節にかかわっているのではないかとの仮説を立てた。実際、CRTC-1の発現をRNAiで低下させた線虫の寿命は、野生型に比べて53%延長していた。これは、AMPK(AAK-2 catalytic subunit)の過剰発現、calcineurin(tax-6 catalytic subunit)のノックダウンによる寿命延長と同様の効果であった。

絶食(starvation)と熱ショックを加えると(すなわちAMPK活性化・calcineurin不活性化が起きると)、CRTC-1は、刺激により核から細胞質に移行(nuclear exclusion, cytosolic sequestering)し不活化される。AMPKの活性型を発現させるとこの移行が起きるが、不活性型AMPKでは起きない。CTCRが核から細胞質に移行し細胞質で保持されるには、AMPKにリン酸化される(calcineurinによって脱リン酸化される)2つのセリンに14-3-3が結合することが必要であり、14-3-3のノックダウンではCRTC-1の核から細胞質への移行・不活化が起きなかった。また、constitutiveに核にとどまるCRTC-1 mutant (14-3-3結合Ser→Alaに置換)は、AMPKの過剰発現やcalcineurinのノックダウンを行っても寿命が延長しなかった。そのため、AMPK(とcalcineurin)はCRTC-1をリン酸化(脱リン酸化)することで、寿命を延長(短縮)していると考えられる。

CTRC-1の下流については、CREB(線虫ではCRH-1)がCRTC-1に直接結合することが免疫沈降で示された。さらにCRH-1によって転写が調節されている遺伝子を線虫全ゲノムアレイを用いて調べたところ、CRH-1によって調節されている遺伝子は、AMPK・calcineurinによって調節されている遺伝子はかなりオーバーラップしていることが分かり、CRH-1はAMPK・calcineurinの主要な下流因子であることが明らかになった。このことからCRTCsとCREBが、AMPK ・calcineurinの下流で寿命調節の重要な働きをしていることが分かる。

【結論】
線虫を用いた寿命に関する検討で、CRTC-1(哺乳類のCRTCs)とCRH-1(哺乳類のCREB)が寿命調節に重要な働きをしていることが明らかになった。

高栄養の時は、calrineurinが活性化されて、CRTCのセリンを脱リン酸化する。脱リン酸化型・活性型CRTCは核に存在し、CREBに結合してターゲット遺伝子の転写を活発にする(この遺伝子発現が寿命の短縮に関係すると考えられ、ERストレスを起こすものが多い)。

一方、低栄養の時は、エネルギー不足を感知してAMPKが活性化されて、CRTCのセリンをリン酸化する。このリン酸化型CRTCは14-3-3が結合するため、細胞質にsequesterされ、核に存在できない不活性型となる。そのため、ターゲット遺伝子の転写は止まる。これが寿命延長につながる。
by md345797 | 2011-04-10 07:21 | シグナル伝達機構